不動産売却後の確定申告には何を出す?必要書類と注意点をわかりやすく解説

本記事では、不動産を売却して確定申告をする時の必要書類を一覧にして紹介します。また、不動産売却時に利用できる制度も紹介し、特例を受けた時に必要な書類も併せて解説します。不動産売却後の確定申告に必要な書類が知りたい人は必見です。
記事の目次
不動産売却後の確定申告に必要な書類は?

不動産売却時の確定申告で必要な書類は、以下の8種類です。これらは、確定申告をする時に常に必要になる書類です。
不動産売却後の確定申告の必要書類一覧
番号 | 内容 | 入手場所 |
---|---|---|
1 | 譲渡所得の内訳書 | 税務署 |
2 | 確定申告書 | 税務署 |
3 | 確定申告書第三表(分離課税用の申告書) | 税務署 |
4 | 譲渡時の売買契約書のコピー | - |
5 | 譲渡費用(仲介手数料など)の領収書コピー | - |
6 | 取得時の売買契約書のコピー | - |
7 | 取得費用の領収書コピー | - |
8 | 譲渡した土地の全部事項証明書 | 法務局 |
その他、源泉徴収票やマイナンバーなども確定申告に必要になるので準備しておきましょう。
1~3の確定申告用書類は、譲渡所得がいくらだったかを申告するための書類です。譲渡所得は、給与所得などとは別に計算をして、個別に課税されます。所定の用紙に記入が必要です。
4、5の譲渡時の書類は、譲渡した不動産がいくらなのかを知らせるための書類です。仲介手数料がわかる書類も提出し、経費がわかるようにしましょう。6、7の取得時の書類は、不動産を購入した当初いくらだったかを知らせるための書類。8の書類は、所有者や土地の所在地など不動産の情報を知らせるための書類です。
いずれの書類も、照合や事実確認をするため提出が必要です。書類の入手場所はそれぞれ違うので、よく確認して用意しましょう。
なお、自分でコピーするなどして用意する書類の入手場所の記載は省略します。
特例などを利用した不動産売却後の確定申告で必要な書類は?

特例や特別控除を利用したい時には、内容に応じて必要になる書類が加わります。本章では、1章で紹介した書類に追加で必要になる書類を紹介します。(なお、自分でコピーするなどして用意する書類の入手場所の記載は省略します。)
国税庁では、特例を受ける場合に必要な書類についてチェックシート(PDF)を用意しています。こちらも併せて確認してください。
居住用財産の3,000万円特別控除を利用する場合
必要書類 | 入手場所 |
---|---|
戸籍の附票などの居住証明資料 | 市区町村 |
居住用財産の3,000万円特別控除とは、自分が居住していたマイホームを売却する場合に、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例です。この特例では、不動産の所有期間は問いません。
10年超所有軽減税率の特例を利用する場合
必要書類 | 入手場所 |
---|---|
戸籍の附票などの居住証明資料 | 市区町村 |
10年超所有軽減税率の特例とは、自分が居住していたマイホームを売却する場合、譲渡所得の課税率が10年以上所有していれば低くなる特例です。
相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例を利用する場合
必要書類 | 入手場所 |
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相続財産の取得費に加算される 相続税の計算明細書 |
税務署 |
相続税の申告書コピー | - |
相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例とは、相続で得た不動産を売却した場合、一定の相続税額を譲渡資産の取得費に加算できる特例。適用は不動産の相続財産のみです。
空き家の3,000万円特別控除を利用する場合
必要書類 | 入手場所 |
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被相続人居住用家屋等確認書 | 市区町村 |
家屋を譲渡する場合に耐震基準適合証明書 または建設住宅性能評価書 |
指定検査機関など |
空き家の3,000万円特別控除とは、相続あるいは遺贈で取得した空き家を売却した場合、特定の条件を満たすと、譲渡所得額から最高3,000万円まで控除できる特例です。
特定居住用財産の買換え特例を利用する場合
必要書類 | 入手場所 |
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戸籍の附票など | 市区町村 |
マイホーム買い換え時売買契約書のコピー | - |
マイホーム買い換え時新居の 土地・建物の全部事項証明書 |
法務局 |
耐震基準を示す書類として下記のいずれか
・耐震基準適合証明書
(築年数が25年を超える場合) ・建設住宅性能評価書
(築年数が25年を超える場合) ・保険加入証明書等
(築年数が25年を超える場合) ・指定検査機関等
|
指定検査機関や 指定保険会社など |
まだ買い替えていない場合は 買換(代替)資産の明細書 |
税務署 |
特定居住用財産の買換え特例とは、居住用の財産を、2023年12月31日までに売って、代わりの不動産に買い換えた時、一定の要件を満たせば、譲渡益に対する課税を繰り延べられる特例です。ただし、譲渡益が非課税となるわけではないので、注意しましょう。
居住用財産買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除を利用する場合
必要書類 | 入手場所 |
---|---|
戸籍の附票などの居住していたことを 証明する資料 |
市区町村 |
買い換え売買契約書のコピー | - |
買い換え時の新居の土地・建物の 全部事項証明書 |
法務局 |
買い換え時の新居の借入金残高証明書 (年末現在) |
銀行 |
居住用財産の譲渡損失の金額の明細書 (確定申告書付表) |
税務署 |
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び 繰越控除の対象となる金額の計算書 |
税務署 |
居住用財産を買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は、居住用財産を買い換えた時に譲渡損失が生じたら、給与所得や事業所得と損益通算できます。それと同時に、譲渡損失が控除し切れない場合は、翌年以降3年間繰り越せる特例です。
特定の居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を利用する場合
必要書類 | 入手場所 |
---|---|
戸籍の附票などの居住していたことを 証明する資料 |
市区町村 |
譲渡資産の借入金残高証明書 (売買契約日前日現在のもの) |
銀行 |
特定居住用財産の譲渡損失の金額の明細書 《確定申告書付表》 |
税務署 |
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び 繰越控除の対象となる金額の計算書 |
税務署 |
特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例は、住宅ローンが残るマイホームを買い換えた時に、住宅ローン残債を下回って譲渡損失が生じたら、給与所得や事業所得と損益通算できます。また、譲渡損失が控除し切れない場合は、翌年以降3年間繰り越せる特例です。
不動産売却後の確定申告で必要な書類に関する注意点は?

不動産売却後の確定申告で必要になる書類に関する注意点はあるのでしょうか。本章では、書類を集めたり提出したりする際の注意点をまとめました。
確定申告には期限がある
これまで紹介してきたように、確定申告には多くの書類が必要になります。使用する特例によっては、合計で10数枚の書類を用意しなくてはなりません。コピーで済むものもあれば、所定の用紙を取り寄せて記入しなくてはならないものもあります。
確定申告の期限は、毎年2月16日から3月15日までです。申告は、税務署に持参する方法や郵送、e-Taxで申告する方法があります。郵送でおこなう場合は、3月15日ぎりぎりに投函すると期限を過ぎてしまう可能性があるので、日程には余裕をもって行動しましょう。
もし申告できていなかったり、期限を超過してしまうと、延滞税などを余分に支払うペナルティが発生する可能性があります。確定申告には期限があることに注意し、期限内に書類を用意できるよう注意しましょう。
どのような特例が適用できるか事前に把握しておく
不動産売却後に確定申告が必要なのは、譲渡所得税が発生する場合と特例の適用を受ける場合です。もし、特例が適用されると譲渡所得がなくなるはずだったのに、特例を知らなくて余分に納税してしまったり、自己判断で特例の控除をして書類を提出していなかったりすると脱税になってしまうかもしれません。
まずは、どのような特例があって、適用をうけられるのはどのようなケースかを正しく把握しておきましょう。
書類の不備や申告漏れに注意する
不動産売却後の確定申告は、物件の評価額や取得価額を理解し、計算するなどの専門的な知識が必要になります。また、税法や制度は変更される場合もあるので、書類の作成方法がわからなかったり、判断に迷ったりする場合もあります。
自己判断で申告すると、不備や、申告すべき内容を忘れるなど申告漏れをしてしまうかもしれません。前述で述べたように期限に遅れたり申告が漏れていると、ペナルティの対象になります。
自分で作成するのに不安がある人は、税理士などの専門家に相談するなどして、不備や申告漏れがないよう注意しましょう。
この記事のQ&A
Q:不動産売却後の確定申告に必要な書類は?
A:常に必要なのは以下の8種類です。
- 譲渡所得の内訳書
- 確定申告書B様式(譲渡所得がある場合)
- 確定申告書第三表(分離課税用の申告書)
- 【譲渡時の書類】売買契約書のコピー
- 【譲渡時の書類】譲渡費用(仲介手数料など)の領収書コピー
- 【取得時の書類】売買契約書のコピー
- 【取得時の書類】取得費用の領収書コピー
- 譲渡した土地の全部事項証明書
その他、源泉徴収票やマイナンバーなどが確定申告に必要です。
Q:特例などを利用した不動産売却後の確定申告で必要な書類は?
A:例えば、居住用財産の3,000万円特別控除を利用する際には、不動産と住民票の住所が異なる場合、戸籍の附票などの居住していたことを証明する資料が必要です。居住用財産の3,000万円特別控除とは、自分が居住していたマイホームを売却する場合には譲渡所得から3,000万円を控除できる特例です。書類は、居住している市区町村に問い合わせて入手しましょう。
居住用財産を買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を受けたい場合には、戸籍の附票などの居住していたことを証明する資料や、居住用財産買い換え時の書類として新居の土地・建物の全部事項証明書などが必要になります。
ちなみに、居住用財産を買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例とは、居住用財産を買い換えた時に譲渡損失が生じたら、給与所得や事業所得と損益通算できるのと同時に、譲渡損失が控除し切れない場合は、翌年以降3年間繰り越せる特例です。
他にも使用できる特例はあります。それぞれ必要となる書類は異なるので、該当の特例にはどのような書類が必要になるのか、その都度確認しましょう。
Q:不動産売却後の確定申告の必要書類作成で注意することは?
A:まず、申告にあたり特例が適用できるかを確認しましょう。次に、書類に不備や申告漏れがないようにすること、提出期限内に提出することも大切です。不動産売却後の確定申告は、物件の評価額や取得価額を理解し、計算するなどの専門的な知識が必要になります。
また、税法や制度は変更される場合もあるので、書類の作成方法がわからなかったり判断に迷ったりする場合もあるでしょう。不動産売却後の確定申告では、申請の内容によっても前後しますが、10数枚の書類を提出しなければならない可能性も。
不動産売却後の確定申告は、専門知識がないと難しいでしょう。申告できていなかったり、期限を超過してしまうと、延滞税などを余分に支払うペナルティが発生する可能性があります。自分で作成することに不安がある人は、税理士など専門家に相談するなどして、正しく申告できるようにしましょう。
まとめ
本記事では、不動産を売却して確定申告をする時の必要書類を一覧にして紹介しました。また、不動産売却時に利用できる制度も紹介し、特例を受けた時に必要な書類もあわせて解説しました。
利用する特例によっても異なりますが、不動産売却後の確定申告で提出すべき書類はたくさんあります。書類を用意するのには時間もかかるので、余裕をもって計画的にすすめましょう。
もし遅延したり、提出を忘れたりすると、違約金を支払わなければならないなど不利益を被ってしまいます。確定申告をスムーズにするために、本記事がお役に立てば幸いです。
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執筆者
長谷川賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
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