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不動産を売却したら確定申告は必要?不要?どちらかわからない時の教科書

不動産を売却したら確定申告が必要なのかは、どのようにして判断すればよいのでしょうか
不動産を売却すると、必ず確定申告は必要なのでしょうか。不動産の売却は、利益が出る場合もありますが、出ない場合もあります。利益が出なければ確定申告はしなくてよいと思われがちですが、実際はどうなのでしょうか。

実は、不動産売却後の確定申告は不要な場合もあれば、必要な場合もあります。もし、確定申告が必要なのに申請しなかったら、罰金が発生してしまう可能性も。そこで本記事では、不動産を売却した時に確定申告が不要なケースと必要なケースをわかりやすく解説します。また、申請をしないとどうなるかもあわせて解説するので、参考にしてみてくださいね。

不動産売却の確定申告が不要なケースは?

不動産を売却した時に確定申告が不要なのはどのようなケースでしょうか
不動産を売却した時に確定申告が不要なのはどのようなケースでしょうか

不動産を売却して利益があった場合には、「譲渡所得」の確定申告が必要です。ということは、譲渡所得が発生しない時には、基本的に確定申告が不要になります。

譲渡所得とは、一般的に、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得のことをいいます。ただし、お店の商品などの棚卸資産や山林などの譲渡による所得は、譲渡所得にはなりません。

引用:国税庁ホームページ No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)

譲渡所得が発生したら、確定申告にて、譲渡所得分に対する譲渡所得税と住民税を納めなければなりません。確定申告がおこなわれる2月16日から3月15日までに納める必要があります。

譲渡所得は、その他の課税所得(給与所得や不動産所得、事業所得など)とは分離して個別に計算し、譲渡所得税が徴収されます。住民税の金額は、譲渡所得の金額をもとに算出され、翌年の6月頃から順次徴収されます。

不動産の売却で譲渡所得が発生するのは、利益があった場合です。譲渡所得がプラスになるかは、次の計算式で計算します。

譲渡所得=
収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除

「収入金額」は、不動産を売却した時に買主から受け取った金額、「取得費」は、不動産を取得する時にかかった費用、「譲渡費用」は、売却するためにかかった費用です。この計算式で譲渡所得がマイナスになった場合、確定申告は原則として不要です。

不動産売却の確定申告が必要なケースは?

不動産を売却した際に確定申告が必要となるケースはどのような時でしょうか
不動産を売却した際に確定申告が必要となるケースはどのような時でしょうか

不動産の売却で確定申告が必要なのは、以下に当てはまる場合です。

  • 譲渡所得がプラスになった時
  • 何らかの控除や特例の適用を受けたい場合

譲渡所得がプラスになった場合に確定申告しなければならないというのは分かりやすいと思いますが、何らかの控除や特例の適用を受けたい場合とは、どういうことでしょうか?

不動産売却時に利用できる特別控除や特例は、大きく分けると5つあります。

  • 3,000万円の特別控除の特例
  • 10年超所有軽減税率の特例
  • 買い換えの特例
  • マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  • 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

3,000万円の特別控除の特例

「3,000万円の特別控除の特例」とは、居住用不動産を売却した場合、所有期間に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる制度です。例えば、購入価格が3,000万円だった住宅を6,000万円で売却し、譲渡益が3,000万円あった場合、譲渡所得税はゼロになるということです。

ただし、特例を受けるためには適用条件があります。
売却する不動産は、自身で住んでいた住居に限ります。もし売却時に住んでいない場合は、住まなくなってから3年になる年の12月31日までに売らなければなりません。また、貸駐車場など居住用以外の用途で使っていないことや、売却した相手が親子や夫婦など近親者ではないことも適用条件となっています。

参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」

10年超所有軽減税率の特例

「10年超所有軽減税率の特例」とは、売却した居住用不動産の所有期間が10年を超えていた場合、長期譲渡所得(所有期間5年超)の税率よりもさらに低い税率になるという特例です。

ただし、所有期間の考え方は、売却時点でなく売却した年の1月1日から始まるということには注意が必要です。例えば、2010年10月1日から所有しており、2020年10月2日に売却した場合を想定します。単純に考えると10年所有しているのですが、制度上は所有期間を1月1日からカウントしますので、この場合、売却した10月2日時点の所有期間は9年間となり、特例は適応されません。

なお、特例を受けるためには、自身で住んでいた住居であること、もしくは、住まなくなってから3年になる年の12月31日までに売却した住居であることなど、先ほどと同様、その他の適用条件があります。

参考:国税庁「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」

買い換えの特例

「買い換えの特例」とは、これまで住んでいた住居を売り、売却した年の前年から翌年までの3年の間にマイホームを買い替えた場合、売却時の譲渡益を繰り延べできる特例です。例えば2,500万円で購入した住居を6,000万円で売却し、7,500万円の住居に買い換えた場合を想定します。最初に売却して得た3,500万円の譲渡益は課税対象となりますが、この特例を適用させると、新しく購入した7,500万円の住居を売却するまで、課税を繰り延べられます。

特例を受けるための適用条件は、自身で住んでいた住居であったとともに、売却代金は1億円以下であり、売却相手は近親者ではないなどの決まりがあります。さらに、買い替える建物の床面積が50平米以上、買い替えまでの期間は3年以内なども条件に含まれますので注意してください

なお、この特例は、税金を払わなくてよくなるわけではなく、税金の支払いを繰り延べているだけなので、一時的に税金の支払いを先送りしたい人向けの制度といえます。また、この特例と3,000万円の特別控除は併用できないので、あまりメリットは大きくないかもしれません。

参考:国税庁「No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特」

マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」とは、これまで住んでいた住居を売却して新しいマイホームに買い替えた際に損失が生じた場合に適用できる制度です。譲渡損失については、給与などの他の所得との損益通算をすることができ、所得から譲渡損益を差し引いた金額について所得税が課税されます。譲渡損益は、譲渡年の翌年以後3年間繰越すことが可能です。

例えば、6,000万円で購入した住居を2,500万円で売却し譲渡損益が3,500万円だった場合を見てみましょう。

譲渡年:給与所得(1,000万円)-譲渡損失(3,500万円)=所得税0円→2,500万円は繰越し
譲渡後1年:給与所得(1,000万円)-繰越損失(2,500万円)=所得税0円→1,500万円は繰越し
譲渡後2年:給与所得(1,000万円)-繰越損失(1,500万円)=所得税0円→500万円は繰越し
譲渡後3年:給与所得(1,000万円)-繰越損失(500万円)=総所得は500万円として課税

※併用可能なその他の控除は適用なし

売却した住居は、自分が住んでいた住居、あるいは過去一定期間内に住んでいた住居に限ります。また、譲渡した前年の1月1日から翌年12月31日までに新しい住居を取得し、かつ新しい住居を取得した年の12月31日までに居住を開始していることが条件です。さらに、新しい住居を取得した年の12月31日において返済期間10年以上の住宅ローン残債があり、新しい住居の床面積は50平米以上ある必要があります。

参考:国税庁「No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」

特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」とは、住宅ローンが残っている状態の住居を売却した際に、住宅ローン残債を下回る価格になってしまった場合、譲渡損失をその年の給与所得や事業所得などと損益通算できる制度です。なお、売買契約日の前日付の住宅ローン残高から売却価格を差し引いた残額が、損益通算の限度額となります。

例えば、6,000万円で購入した住居が2,500万円で売却になった時、4,000万円の住居ローンが残っていたとします。住宅ローン残高4,000万円-売却価格2,500 = 1,500万円となり、この1,500万円を先ほどの例と同様に、給与などの所得より差し引いて計算され、所得税が控除されます。こちらも、譲渡損失は譲渡した年と翌年以降3年に渡り繰り越せます。

適用になるには条件は、自身が住んでいた住居であるとともに、売却した年の1月1日の時点で所有期間が5年以上あることや、売却した前日の時点で住宅ローンの返済期間が10年以上残っていたこと、売却価格が住宅ローン残高を下回っていることなどです。

参考:国税庁「No.3390 住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき(特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)」

不動産を売却して譲渡益があるのに確定申告しなかったらどうなる?

不動産を売却して譲渡益があるのに確定申告をしなかったらどうなってしまうのでしょうか
不動産を売却して譲渡益があるのに確定申告をしなかったらどうなってしまうのでしょうか

もし、譲渡益があるにも関わらず確定申告をしないでいたらどうなるのでしょうか。確定申告漏れになると、「無申告加算税」が課されるペナルティがあります。

無申告加算税は原則として、納付すべき税額に対し以下の割合で税額が加算されます。

  • 50万円までは15%
  • 50万円を超える部分は20%

申告漏れにはくれぐれも気を付けましょう。

ただし、申告漏れしていても下記の条件下では、無申告加算税が課されない場合もあります。

  • 法定申告期限から1カ月以内に自発的に申告をおこなう場合
  • 法定納期限までに税金を全額納付し、過去5年間に無申告加算税や重加算税を課せられたことがなく、無申告加算税の適用を受けていない場合

なお、期限後に申告する場合、延滞税が発生する場合もあります。また、確定申告をおこなっても、支払う税金が少なすぎる場合や返金が多すぎる場合、故意に税金計算に関する情報を隠した場合など、悪質な場合はさらにペナルティが課されます。

不動産を売却して譲渡益が発生する場合に、確定申告が必要かを自分で判断できない時は税理士などの専門家に相談し、手続きに不備がないようにしましょう。

この記事のQ&A

Q:不動産売却の確定申告が不要なケースは?

A:不動産を売却した際に譲渡所得が発生しない場合は、基本的には確定申告が不要です。譲渡所得とは一般的に、土地、建物などの資産を譲渡することによって生じる所得をいいます。譲渡所得の計算式は、譲渡所得=収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除です。この計算で譲渡所得がマイナスになると確定申告は不要です。

Q:不動産売却の確定申告が必要なケースは?

A:不動産の売却で確定申告が必要なのは、譲渡所得がプラスになった時に加え、何らかの控除や特例の適用を受けたい場合です。もし、控除や特例の適用を受けるなら、譲渡所得がマイナスになる場合でも、確定申告は必要です。不動産売却時に利用できる特別控除や特例は、大きく分けると5つあります。

  • 3,000万円の特別控除の特例
  • 10年超所有軽減税率の特例
  • 買い換えの特例
  • マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
  • 特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

これらの特例では、譲渡所得から3,000万円を控除できたり、譲渡益にかかる税金を繰り延べできたりします。条件によっては多額の税金を支払わなくてよくなるケースもあり、大きな節税になります。ただし、適用されるには条件があるため、よく確認しましょう。

Q:不動産を売却して譲渡益があるのにも関わらず、確定申告しなかったらどうなる?

A:もし、譲渡益があるにも関わらず確定申告をしないでいると、「無申告加算税」が課されるペナルティがあります。原則として、納付すべき税額に対し50万円までは15%、50万円を超える部分は20%の割合で加算されます。期限後に申告した場合は、延滞税が発生する場合もあるので気を付けましょう。
また、確定申告をおこなっても、支払う税金が少なすぎる場合や返金が多すぎる場合、故意に税金計算に関する情報を隠した場合など、悪質な場合はさらにペナルティが課されることもあります。

Q:税金がゼロでも確定申告が必要な時はある?

A:結果として支払うべき税金がゼロでもマイナスでも、特別控除の特例などを適用して譲渡所得を計算したい場合は、確定申告が必要です。確定申告で、特例の条件が適用できるかなどを判断するので、必要書類などを集めて適切に準備しましょう。

Q:特例は組み合わせることができる?

A:「3,000万円特別控除の特例」と、「10年超所有軽減税率の特例」は併用できます。適用条件をクリアしているのが前提となりますが、10年超居住の住居を売却するなら両方の特例を申請しましょう。
なお、「買換えの特例」と、「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と、「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」は併用できません。

まとめ

本記事では、不動産を売却した際に確定申告が不要なケースと必要なケースを解説しました。不動産売却後の確定申告は、譲渡益が出なければ不要ですが、譲渡益が出なくても確定申告をすれば控除が受けられるケースもあります。
また、確定申告が必要なのに申請しなかった場合、罰金が発生してしまう可能性もあります。

自分の場合は必要か、よく確認することが大切です。もし不安がある場合は税務署に確認するとよいでしょう。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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