このページの一番上へ

不動産を売却する時の登記費用は?登記の種類と誰が払うかを徹底解説

不動産の売却では登記費用がかかります
不動産を売却する時、さまざまな費用がかかりますが、そのなかの一つに登記費用があります。登記は不動産に関する権利や利用状況を公的に証明する制度であり、制度を利用するには登録免許税・司法書士報酬がかかります。

本記事では、不動産売却時の登記費用を登記の種類とともに紹介。さらに、登記の種類ごとに登記費用を売主・買主のどちらが支払うのかも解説します。

不動産の売却で登記が必要な理由

不動産の売却で登記が必要な理由を解説します
不動産の売却で登記が必要な理由を解説します

不動産登記には、表示と権利の登記の2種類があります。表示の登記(表題部登記)は不動産登記簿の表題部に不動産の物理的状況を公示するもの。具体的には、土地・建物の所在・構造などが記録されます。

権利の登記(権利部登記)は、所有権など不動産の権利関係に関する登記です。表示の登記には申請義務がありますが、権利の登記には申請義務がないため、法律上は原則として権利の登記をおこなわなくても問題ありません。

しかし、権利の登記をおこなわなければ、不動産の所有者の権利が守られず、不都合が生じることも。そのため、不動産売却では以下の理由で権利の登記が必要になります。

所有権を明確にする

不動産は外見だけでは所有者を判別しにくいため、権利の登記をおこなうことで、誰が正式な所有者であるかを公的に示す目的があります。登記簿に記録された情報は、法務局で参照可能です。

売却後は、買主が新たな所有者として登録される必要があります。実務上は所有権が明確でなければ、取引の確実性と安全性を担保できないため、権利の登記は必須といえるでしょう。

第三者対抗要件を満たす

万が一、登記をしなかった場合、第三者対抗要件を満たさないため、別の人に不動産の所有権を主張される可能性があります。複数人が同一不動産に対して権利を主張する場合、先に登記を完了した者が優先されます。

第三者に先に登記を済ませられると、所有権を奪われることも。そのため、実際の権利登記は決済日当日に司法書士に依頼して、速やかに申請がおこなわれることが一般的です。登記の申請義務はありませんが、自分の権利を守るためにも必ず登記をおこないましょう。

不動産の売却でかかる登記費用

不動産の売却でかかる登記費用を紹介します
不動産の売却でかかる登記費用を紹介します

不動産の売却における登記費用の内訳は、登録免許税と司法書士報酬の2種類に分けられます。それぞれの費用を紹介します。

登録免許税

登録免許税は、不動産の登記をおこなう際にかかる税金です。具体的な税額と計算方法は、登記手続きの種類によって異なります。租税特別措置法による軽減税率が適用される場合もあり、適用期間中に登記手続きをおこなった場合は、税金が優遇されるため、覚えておきましょう。

登録免許税の支払方法は、銀行への現金納付・オンライン申請による電子納付があります。税額が3万円以下の場合は、登録免許税の金額に相当する収入印紙の貼り付けによる納税も可能。司法書士に依頼する場合は、司法書士に登録免許税を立て替えて支払ってもらいます。

司法書士報酬

司法書士報酬は、登記申請を代行してもらう場合の専門家への報酬です。依頼内容に応じた報酬を司法書士に支払うことで、専門知識が必要になる登記手続きを任せられます。報酬体系は事務所によって異なり、依頼する登記手続きによっても変化します。

不動産の売却における登記の種類と費用の目安

不動産の売却における登記の種類と費用の目安を紹介します
不動産の売却における登記の種類と費用の目安を紹介します

不動産の売却で必要になる登記の種類は、5つあります。それぞれの費用を、目安を含めて詳しく解説します。

抵当権抹消登記

抵当権抹消登記は、住宅ローンなどで設定された抵当権を、完済後に登記簿上から消す手続き。抵当権が残っている場合は、売却時に必ずおこないましょう。

登録免許税は不動産1筆ごとに1,000円と定められており、複数筆ある場合はその分課税されます。土地と建物の両方にかかるため、どちらにも抵当権が設定されている場合の税額は2,000円です。

司法書士に登記手続きを依頼した場合は、5万円以下の費用になることが多いでしょう。所有権移転登記と比較して、司法書士報酬の相場は安い傾向にあります。

住所・氏名変更登記

住所・氏名が登記簿上と異なる場合、売却前に変更登記をおこなわなければトラブルに発展する危険性があります。最悪の場合は売却手続きが進まなくなり、取引中止になるかもしれません。具体的には、登記されている住所が古い場合や、氏名が旧姓のままであることが挙げられるでしょう。

基本的には、名義が変更された時点で登記手続きを済ませておくべきです。しかし、相続してそのまま不動産を売却する場合や、万が一、名義変更を怠っている場合は必ず売却前に対応しましょう。

費用の目安は抵当権抹消登記と同様で、登録免許税は不動産1筆ごとに1,000円、司法書士報酬も同等の相場になります。

相続登記

相続登記は、相続により不動産の所有権を移転する手続きです。権利の登記は原則として法律上の義務を負いません。しかし、相続登記は例外であり、3年以内に手続きをおこなうことが義務化され、怠った場合は10万円以下の過料の対象になります。

不動産を売却する場合は、売却前に速やかに被相続人から自身の名義に変更する必要があります。

登録免許税の計算式
  固定資産税評価額 × 税率

相続した場合の税率は0.4%です。ただし、条件を満たす場合は2027年3月31日まで免税措置が適用されます。

司法書士報酬は相続人数や、遺産分割協議書を作成する場合など、依頼範囲によって異なります。安い場合は数万円程度、高額になる場合は10万円を大きく超えることもあるでしょう。

所有権移転登記

所有権移転登記は、売主から買主へ不動産の所有権を正式に移す登記手続きです。登記簿に買主が新たな所有者として記録されることで、買主は不動産の所有権を主張できるようになります。所有権移転登記には登録免許税がかかりますが、一般的に買主がこの費用を支払います。

登録免許税の計算式
  不動産の固定資産税評価額 × 税率

売買による移転の場合、税率は以下のとおりです。所有権移転登記の費用は下記の税率をあてはめて求めることができます。

項目 本則税率 軽減税率
土地売買による所有権移転登記 2.0% 1.5%
住宅用家屋の所有権移転登記 2.0% 0.3%

登録免許税の軽減措置が適用される場合は、税率が下がります。土地売買による所有権移転登記は2026年3月31日、住宅用家屋の所有権移転登記の場合は2027年3月31日までが適用期限です。

また、所有権移転登記を司法書士に依頼する場合は、数万円程度が目安。依頼先・依頼内容によっては10万円を超えることもあります。

抵当権設定登記

抵当権設定登記は、住宅ローンなどの融資に際して、金融機関が不動産を担保とするためにおこなう手続きです。買主が住宅ローンを利用して物件を購入する場合に必要となり、買主が費用を支払います。

登録免許税の計算式
  借入金額 × 0.4%

ただし、住宅用不動産で要件を満たす場合は、軽減措置により2027年3月31日まで税率は0.1%です。

司法書士報酬は、金融機関とのやり取りや書類作成量、借入額の規模によって変化します。目安は数万円程度、場合によっては10万円を超えることもあります。

不動産売却の登記費用は誰が払う?

不動産売却時の登記費用は売主・買主どちらが支払うのかを解説します
不動産売却時の登記費用は売主・買主どちらが支払うのかを解説します

不動産売却時の登記費用は、一般的に売主が負担する費用と、買主が負担する費用に分けられます。ただし、法律上で明確に定められているわけではありません。登記費用は売主・買主のうち誰が支払うのか、以下に内容をまとめました。

売主が負担する登記費用 買主が負担する登記費用
抵当権抹消登記 所有権移転登記
住所・氏名変更登記 抵当権設定登記
相続登記  

抵当件抹消登記、住所・氏名変更登記、相続登記は売主自身が、不動産の権利関係を抹消するために必要な登記です。そのため、これらの登記費用も売主が負担することが一般的になります。
一方で、所有権移転登記と抵当権設定登記は、不動産取得後に買主と融資をおこなう金融機関が権利を主張するために必要になります。したがって、慣習的に買主が負担する費用です。

法律では定められていない

ここまで、不動産登記費用について売主と買主どちらが負担するのか解説しましたが、法律上は明確な規定が存在しません。そのため、登記手続きの性質を根拠に慣習で決まっています。ただし、当事者間で合意があれば、売主が買主の登記費用を負担する契約も可能です。

例えば、慣習では買主が負担する所有権移転登記の費用を、売主が負担しても問題はありません。最終的には、売買契約で当事者が合意した登記費用を、それぞれ負担することになります。

不動産売却時の登記費用を抑えるポイント

不動産売却時の登記費用を抑えるポイントを解説します
不動産売却時の登記費用を抑えるポイントを解説します

最後に、不動産売却時の登記費用を抑えるポイントについて、詳しく見ていきましょう。

複数の司法書士から見積もりを取る

不動産登記の司法書士報酬は事務所ごとに異なり、同一内容の依頼でも提示額に差が出ることがあります。そのため、登記を司法書士に依頼する場合は、複数の司法書士に見積もりを依頼しましょう。

基本的には価格を比較して、安値を提示した司法書士に依頼することになります。しかし、依頼内容が複雑で高度なサポートを必要とする場合や、他の依頼先の報酬と比較して極端に安い場合は注意が必要です。

事前に司法書士の経験・実績を確認し、インターネット上で口コミ・評判を調べて、信頼できる依頼先であるかを確認しましょう。また、売買を仲介する不動産会社から司法書士を紹介される場合もありますが、必ず紹介された司法書士に依頼する必要はありません。

登録免許税軽減措置を確認する

登録免許税の軽減措置は、住宅用不動産の売買を中心に一定要件を満たす場合に適用され、税率が本則税率より軽減・免税される制度です。登録免許税の軽減措置では、それぞれ適用期限が決まっています。

ただし、期限が迫ると法律が改正されて、延長される場合もあるので、軽減措置を利用する際には、個別の条件と最新の期限を確認しましょう。

自分で登記する

不動産の登記手続きは一般的に司法書士に依頼しますが、自分で登記することで司法書士報酬を節約できる可能性があります。ただし、自ら登記申請をおこなう場合、申請方法を正しく理解し、書類を不備なく提出できる専門知識が必要です。
また、抵当権設定登記では、多くの金融機関が司法書士を介した手続きを求めるため、自分でおこなうことが難しい場合も。よって、司法書士に依頼せずにできる登記の種類は限られます。

手続きに不備があれば、追加修正が必要になり、登記に時間がかかる可能性があります。登記を自己完結できたとしても、かけた手間を考えると労力に見合わないかもしれません。自分で登記して登記費用を節約できそうでも、時間や手間を考えるなら、司法書士に依頼するほうが総合的にメリットは大きいでしょう。

まとめ

不動産売却時の登記費用は、一般的に、売主が不動産の権利関係を整理して抹消する費用を、買主が権利を主張するための登記費用を負担します。登記では共通して、登記にかかる税金である登録免許税、専門家である司法書士への報酬を支払うことになります。

自分で登記ができる場合もあるため、司法書士報酬を支払わないケースも考えられます。しかし、時間と手間を考えれば、節約できるコストに見合わない可能性も高いため、おすすめできません。登記は不動産の権利関係を正しい状態にするために必要な手続きであるため、専門家である司法書士に相談して正しくおこなうことが重要です。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
関連する記事を見る
不動産お役立ち記事・ツールTOPへ戻る