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家を売却した年の住宅ローン控除はどうなる?適用の条件や注意点を徹底解説

住宅ローン控除は売却した年にも受けられるのか条件などを解説します
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して住宅を購入した方に対し、所得税や住民税を軽減してくれる制度です。住宅ローンの返済がある方にとっては利用するべき制度のひとつです。通常、住宅ローン控除は返済をしている時に利用しますが、住宅を売却した年には利用できるのでしょうか。

そこで本記事では、住宅ローン控除は売却した年にも受けられるのか、控除が受けられるのはどのようなケースかを解説します。また、住宅ローン控除を受けるための条件や注意点もあわせてお伝えします。制度の詳細を理解して活用すれば、納める税金が軽減されるため、ぜひ押さえておきましょう。

住宅ローン控除は売却した年に受けられる?

売却した年に住宅ローン控除が受けられるのはどのような条件でしょうか
売却した年に住宅ローン控除が受けられるのはどのような条件でしょうか

住宅ローン控除は住宅を売却した年にも利用できます。ただし、適用には条件があります。本章では、売却した年に住宅ローン控除が受けられるケースと受けられないケースを紹介します。損失が出た場合と利益が出た場合に分けて、それぞれ見ていきましょう。

不動産売却で損失が出た時は受けられる

不動産を売却して損失が出た場合、住宅ローン控除を利用できます。損失の金額を出す計算式は次のとおりです。

売却価格-(売却のための諸費用+不動産取得費用)

例えば売却価格が2,000万円で、売却にかかった費用が300万円、不動産の取得費が1,900万円の場合は、次のように計算できます。

2,000万円-(300万円+1,900万円)=-200万円

上記の場合は200万円の損失になります。取得費よりも高い金額で売却しても、売却に対して必要になった費用が多いと、損失が発生します。不動産自体の価格だけでなく、売却のための費用も考慮するのがポイントです。

不動産売却で利益が出た時は受けられない

売却時の価格が高額になって、購入価格や売却関連費用と不動産の取得費を差し引いても利益が出る場合は住宅ローン控除の適用外です。例えば売却価格が2,500万円で、売却関連費用が300万円、不動産の取得費が1,900万円は、次のように計算できます。

2,500万円-(300万円+1900万円)=300万円

この場合、利益は300万円になり、これに対して税金がかかります。ただし、居住用財産に対する3,000万円の特別控除や、10年超所有している建物に対して税率を軽減してくれる特例などを適用すると節税できます。特例を適用して節税した場合は、住宅ローン控除を活用できなくなります。詳しくは次章で説明します。

住宅ローン控除を売却した年に受けるために必要な条件は?

売却した年に住宅ローン控除を受けるにはどのような条件が必要なのでしょうか
売却した年に住宅ローン控除を受けるにはどのような条件が必要なのでしょうか

売却で損失が出ると、売却した年に住宅ローン控除を受けられますが、以下の条件を満たす必要があります。

一定期間居住していること

売却した年に住宅ローン控除を受けるにはまず、家の引き渡しから6カ月以内に新居に住み始めていることが前提です。そして、控除を受けたい年の12月31日まで住んでいる必要があります。引越しをした場合は、住民票を期間内に移しておきましょう。両方の要件を満たさなければ住宅ローン控除の適用は認められません。また当然ながら、適用される住居は自分が居住するための住宅でなければなりません。

50平方メートル(条件によっては40平方メートル)以上の床面積

住宅の床面積にも条件があります。あまりにも小さい住宅には住宅ローン控除が適用できません。床面積が50平方メートル以上が条件です。ただし、年収が1,000万円以下の場合は、40平方メートル以上の床面積があれば住宅ローン控除が適用できるようになりました。

耐震基準と築年数の条件をクリアしている

住宅ローン控除の規定には、耐震基準と築年数の条件もあります。1981年に制定された新耐震基準をもとにしており、大規模地震(震度6から7)に耐えうる住宅でなければなりません。そのため、旧耐震基準を満たす住宅なら耐震補強工事などをして新耐震基準に対応しておく必要があります。新築の場合、現行の耐震基準がもとになりますが、中古物件の場合は特に確認が必要です。

古い建物は、条件を満たさない可能性があるため、確認しておきましょう。耐火建築物(鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造)なら築25年以内、それ以外(木造など)は築20年以内の条件があります。制度を適用するには、条件をすべて満たす必要があります。新築であれば明確ですが、中古の場合は耐震基準の証明書や建築確認証などで築年数や耐火・耐震基準などを確認しておきましょう。

特例を併用していない

以下のような、住宅ローン控除と併用できない特例を受けていないかの確認が必要です。

  • 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
  • 所有期間10年超のマイホームを売った時の軽減税率の特例
  • 特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例

これらが、住宅ローン控除を適用したい住居に住み始める前の3年間に利用していないのが条件です。さらに、居住年の翌年以降3年以内にも、上記3つの特例を適用しないのも条件に含まれます。

住宅ローン控除と併用できる特別控除とは?

住宅ローン控除と併用できる特別控除にはどのようなものがあるのでしょうか
住宅ローン控除と併用できる特別控除にはどのようなものがあるのでしょうか

不動産売買の特例のうち前章で紹介したものは住宅ローン控除との併用ができませんが、以下で説明する2つの特例は住宅ローン控除と併用できます。

居住用財産の買換えによる譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

現在の自宅を売却してマイホームを買い替えた時に、譲渡損失が発生したら、損益通算や繰越控除を受けられる特例です。売却によって発生した譲渡損失を所得から差し引いて控除してもらえます。

例えば譲渡損失が1,000万円で年収が400万円の場合、最初の年は400万円分の損失が所得から差し引かれ控除が受けられます。最初の年で控除しきれなかった600万円分の損失は翌年にも引き継がれます。すると翌年の控除も400万円分、残りは200万円になります。この場合はその次の年に引き継がれます。結果として繰越は合計で3年間可能です。なお、繰越控除は、合計所得金額が3,000万円以上になる方には適用されません。

この特例を適用するには、売却した住居を5年以上所有しているのが条件です。ただし、売却した年の1月1日時点で所有期間を考えるため、注意しましょう。例えば、2024年5月に売却する住宅なら、2019 年1月1日時点には所有していなければなりません。所有が2019年3月からになると、売却時点では5年経っていても本件の規定では認められません。利用する場合は、規定を満たすかよく確認しておきましょう。

居住用財産に関わる譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例

住んでいる住宅を売却した時はそのあと買い替えをしなくても、損益通算および繰越控除の特例が利用できます。控除の考え方は、前項と同様です。

ただし、買い替えを伴わない場合の損益通算上限は、借り入れた住宅ローンの金額から売却価格を差し引いたものになります。前項のように、譲渡損失がすべて適用されるわけではありません。さらに、所有期間も前項同様、売却した年の1月1日での所有期間で計算する点を覚えておかなければなりません。

なお、それぞれの特例を適用するには、確定申告が必要です。期限は売却した年の翌年2月16日から3月15日までです。その他の特例などと同様、自動的には適用されないので、自分で期限内に申請をしましょう。

住宅ローン控除を売却した年に受ける時の注意点は?

売却した年に住宅ローン控除を受ける時はどのような点に注意が必要でしょうか
売却した年に住宅ローン控除を受ける時はどのような点に注意が必要でしょうか

条件を満たせば住宅を売却した年に住宅ローン控除を受けられますが、適用を受けるのに注意すべき点もあります。本章では、売却した年に住宅ローン控除を受ける時の注意点をまとめます。

確定申告をする

住宅ローン控除の申請は自動的にできるわけではないので、控除を受けたいなら自分で確定申告をしなければなりません。住宅ローン控除のための確定申告をするのは、新居に入居した翌年です。2月16日から始まり、3月15日までが期限です。もし還付金があったら、申請から約1カ月もしくは2カ月で戻ってきます。

2年目以降は、自営業の方は引き続き自分で確定申告をおこないますが、会社員の方は、年末調整で手続きできます。ただし、年収が2,000万円以上の場合は自分で確定申告が必要となります。

もし確定申告の期限を過ぎてしまったら、翌年から5年以内の分であれば確定申告が可能です。冒頭にも述べたとおり、住宅ローン控除は自動的にされないため、申請を忘れないようにしましょう。

併用できない特例に注意する

住宅ローン控除は、売却して利益があった時に使えるような特例とは併用できません。そのため、住宅ローン控除を適用するのがよいのか、特例を利用するのがよいのかは、実際にシミュレーションをして判断してください。どの条件が適切かは、住宅性能や売却時の費用などによって大きく異なります。正確な金額を把握するためにも自己判断だけでなく、不動産会社や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

この記事のまとめ

住宅ローン控除は売却した年に受けられる?

住宅ローン控除は住宅を売却した年にも利用できます。ただし、適用には条件があります。住宅ローン控除が受けられるのは、不動産売却で損失が出た時です。例えば売却価格が2,000万円で、売却にかかった費用が300万円、不動産の取得費が1,900万円の場合は、マイナス200万円の損失になります。この場合は住宅ローン控除が適用できます。

反対に、不動産売却で利益が出た時は住宅ローン控除の適用外です。不動産売却で出た利益に対しては、金額に応じた税金を納める必要があります。ただし、居住用財産に対する3,000万円の特別控除や、10年超所有している建物に対して税率を軽減してくれる特例などを適用すると節税できます。

住宅ローン控除を売却した年に受けるために必要な条件は?

売却した年に住宅ローン控除を受けるためには、家の引き渡しから6カ月以内に新居に住み始め12月31日まで住んでいる必要があります。また当然ながら、自分が居住するための住宅でなければ適用となりません。

住宅の床面積にも条件があります。40平方メートル以上(年収1,000万円以下の場合)の床面積があれば住宅ローン控除が適用できます。さらに、耐震基準と築年数の条件もあります。耐震では、大規模地震(震度6から7)に耐えうるのが条件、築年数では耐火建築物(鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造)なら築25年以内、それ以外(木造など)は築20年以内の条件があります。
また、住宅ローン控除と併用できない特例を、過去3年以内で受けていないことも条件となるためあらかじめ確認が必要です。

住宅ローン控除を売却した年に受ける時の注意点は?

住宅ローン控除は、自分で申請をおこなう必要があります。入居した年の確定申告の時期(2月16日から3月15日)が期限です。忘れないようにしましょう。また、住宅ローン控除は、売却して利益があった時に使えるような特例とは併用できないことにも注意が必要です。住宅ローン控除を適用するのがよいのか、特例を利用するのがよいのかは、実際にシミュレーションをして判断し、自己判断のみでなく専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

本記事では、住宅ローン控除は売却した年にも受けられるのか、控除が受けられるのはどのようなケースかを解説しました。また、住宅ローン控除を受けるのに必要な適用条件や、売却した年に住宅ローン控除を受ける時の注意点もあわせてお伝えしました。

不動産売買では、住宅ローン控除やその他特例などさまざまな制度があります。制度の適用期間はこれまで延長されてきましたが、定期的に見直しがされているので、将来廃止される可能性もあります。マイホームの売買に悩んでいるなら、不動産会社に相談しましょう。そして、制度の内容をよく理解して、節税するなど有益に活用しましょう。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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