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土地の売却時にかかる税金の種類は?計算方法と利用できる控除を解説

土地を売却した時にかかる税金や利用できる控除を解説します
「土地を売却すると税金がかかる?」「どれくらい税金を支払わなければならない?」土地の売却を検討している方は、税金にまつわる悩みをお持ちではないでしょうか。

この記事では、土地の売却時にかかる税金の種類と計算方法を詳しく解説します。税金の納付時期や利用できる控除・特例についても記載しますので、土地の売却を検討している方は参考にしてくださいね。

土地の売却時にかかる税金の種類

土地の売却時にかかる税金を4つ紹介します

土地を売却する際には、いくつかの税金が発生します。払うべき税金の種類を押さえておかなければ未納になる恐れがあるため、売却前に税金の種類を把握しておきましょう。

譲渡所得税

譲渡所得税は、土地を売却した際に発生する利益に対してかかる税金です。土地を売却すれば、価値に見合った売却額を入手できます。得たお金を譲渡所得といい、金額に応じて税金額も変わります。

譲渡所得税を支払う場合は、一緒に復興特別所得税も納めなければなりません。復興特別所得税は東日本大震災による被害への復興に充てられるお金です。2013年~2037年までの期間、譲渡所得税と一緒に納める必要があります。

住民税

住民税も譲渡所得税同様、譲渡所得にかかる税金です。住民税は、住んでいる地域の自治体に納めるもので、納めたお金は行政サービスの普及や地域社会の費用などに使われています。

住民税は所得額に応じて金額が変わります。譲渡所得によって利益を得た場合は、通常の収入に譲渡所得が加算されるため、住民税の金額も高くなると考えておきましょう。

譲渡所得分を加算した住民税の支払いは、土地を売却した翌年6月から始まるので、支払いの準備をしておきましょう。

印紙税

印紙税は、土地の売買契約書作成時に必要な税金です。売買契約や経済取引など、特定の文書を作成する際は課税されます。課税分は印紙税として支払うため、税務署に足を運んで別途支払う必要はありません。

収入印紙は郵便局や法務局などで購入可能です。購入費用は契約金額に応じて変わるため、事前に確認しておきましょう。

契約金額 税額 軽減後の税額
1万円未満 非課税
1~10万円以下 200円
10~50万円以下 400円 200円
50~100万円以下 1,000円 500円
100~500万円以下 2,000円 1,000円
500~1,000万円以下 1万円 5,000円
1,000~5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円~1億円以下 6万円 3万円
1~5億円以下 10万円 6万円
5~10億円以下 20万円 16万円
10~50億円以下 40万円 32万円
50億円以上 60万円 48万円
契約金額に記載がない 200円

通常の収入印紙代は200円~60万円の範囲内ですが、2014年4月1日~2024年3月31日までに作成された文書は軽減措置が適用されます。軽減措置後は通常よりも収入印紙代が安くなるため、納付額を抑えられるでしょう。

軽減措置は契約金額に記載がない、または契約金額が10万円以下の場合には適用されません。契約金額をしっかりと確認したうえで、購入しましょう。

登録免許税

売却する土地に抵当権が設定されている場合は、登録免許税を支払わなければなりません。抵当権とは、住宅ローンを組んで購入した土地や建物に設定される権利のことです。住宅ローンを組んだ金融機関が一番目の抵当権を持ち、返済が滞った際には、抵当権を設定する建物や土地を競売にかける権利があります。

売却したお金で住宅ローンを完済できる場合は、抵当権の抹消手続きをおこなう必要があります。手続きをおこなう際に必要なのが登録免許税です。

住宅ローンを組まずに購入した場合は抵当権が設定されていないため、土地売却時に登録免許税を支払わずに済みます。

土地売却時にかかる税金の計算方法

土地の売却時にかかる税金の計算方法を解説します

土地売却時にかかる税金額は次の計算式で算出できます。

譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額
課税譲渡所得金額×税率=税額

それぞれの項目の詳細をまとめました。

  • 譲渡価額:土地や建物の売却金
  • 取得費:売却する土地や建物の購入費用
  • 譲渡費用:仲介手数料や土地売却時にかかった諸費用
  • 特別控除額:控除が適用されるケースのみ

税金額を知る前に、まずは課税譲渡所得金額を算出しなければなりません。売却によって得た金額だけでなく、購入費用や売るためにかかったお金も計算式に当てはめる必要があるため、必要な情報をチェックしておきましょう。

課税譲渡所得金額の算出後、税率をかけて税金額を算出します。税率は売却する土地の所有期間に応じて変わり、売却する年度の1月1日時点で5年以上所有している場合は長期譲渡所得、5年以下は短期譲渡所得の税率をかけます。

住民税 所得税
長期譲渡所得 5% 15%
短期譲渡所得 9% 30%

所有期間によって税率が大きく異なるため、購入日を確認しておきましょう。

土地売却時の税金シミュレーション

土地の売却時にかかる税金を、具体例を基にシミュレーションをします

税金の算出方法がわかっても、具体的な金額がわからないとお困りの方もいるでしょう。1,000万円・2,000万円別の税金シミュレーションを紹介します。シミュレーションの条件は以下のとおりです。

  • 取得費用は500万円
  • 譲渡費用は50万円
  • 特例・控除の適用なし
  • 所有期間は5年以上

同じ条件で、1,000万円・2,000万円の税金シミュレーションを見ていきましょう。

1,000万円で土地を売却した時の税金

1,000万円で土地を売却した場合の課税譲渡所得金額を算出しましょう。計算式は下記のようになります。

1,000万円(譲渡価額)-(500万円(取得費)+50万円(譲渡費用))=450万円

課税譲渡所得金額に長期譲渡所得の税率をかけます。

所得税
8,000万円ー(5,000万円+800万円+700万円)=1,500万円

住民税
450万円×5%=22.5万円

2つの税金をあわせて、90万円の支払いとなります。

2,000万円で土地を売却した時の税金

2,000万円で土地を売却した時の税金の算出方法を見てみましょう。計算式は次のようになります。

2,000万円(譲渡価額)-(500万円(取得費)+50万円(譲渡費用))=1,450万円

この課税譲渡所得金額に長期譲渡所得の税率をかけます。

所得税
1,450万円×15%=217.5万円

住民税
1,450万円×5%=72.5万円

2つの税金をあわせて、290万円の支払いとなります。

各種税金の支払時期と納付方法

土地の売却時にかかる税金の支払い時期と納付方法を解説します

住民税・所得税・印紙税・登録免許税は、それぞれで支払時期と納付方法が異なります。

支払時期 納付方法
住民税 土地を売却した翌年の6月 ・給料からの天引き
・納付書
譲渡所得税 確定申告の期間中 ・口座振替
・ATM
・税務署窓口
・クレジットカード
・QRコード
・スマートフォンアプリ
印紙税 郵便局や法務局などで収入印紙を購入した時 収入印紙の購入時
登録免許税 登記が完了するまで ・口座振込
・法務局窓口
・収入印紙
・インターネットバンキング

住民税

住民税は土地を売却した翌年の6月から支払いが始まります。会社に勤めている方は給料から天引きされるため、6月以降は手取り額が減ると考えておきましょう。納付書を使う場合は、一括と4回払いから選べます。まとまった金額を用意できない場合は、4回払いにすることがおすすめです。

譲渡所得税

土地を売却して利益を得た場合、引き渡した翌年の確定申告で譲渡所得税の申告をおこないます。年末調整は給与が対象、確定申告は売却によって得たお金が対象となるため、手続きを忘れないようにしましょう。

確定申告は毎年2月16日~3月15日までおこなわれています。必要な書類は国税庁のサイトで作成できるため、2月ごろにアクセスし、書類を作っておくことがおすすめです。作成した書類を電子送付すれば、郵送の手間もかかりません。

譲渡所得税は支払方法がいくつも用意されているため、払いやすい方法を選べます。書類を電子送付したあと、クレジットカードやQRコードで支払えば、簡単に納税できます。

印紙税

印紙税は郵便局や法務局で収入印紙を購入する際にお金を払うため、あらためて納税する必要はありません。契約金額に応じて購入すべき収入印紙が異なる点に注意しておきましょう。

登録免許税

登録免許税は土地の登記変更が完了するまでに支払う必要があります。期限に遅れないためにも、登記変更手続きを始めたタイミングで支払っておきましょう。複数の支払い方法が用意されているため、利用しやすい方法で納税できます。

土地売却時にかかる税金への控除と特例

土地の売却時にかかる税金の控除と特例を解説します
土地の売却時にかかる税金の控除と特例を解説します

土地売却時には税金が発生するものの、ケースによっては特例や控除を利用できます。この章では、土地売却時にかかる税金への控除と特例について解説します。特例や控除を利用すれば納税額を抑えられるため、ご自身のケースで適用されるか確認しておきましょう。

相続した土地を売却する際にかかる税金の特例

相続した土地を売却する場合、3,000万円の特別控除か取得費加算の特例を利用できます。

被相続人が生前1人で住んでいた家を相続した家を売る時に、3,000万円の特別控除を受けられます。控除額が大きいメリットを持つものの、適用要件が多いため、1つずつ確認することが大切です。

  • 相続開始直前まで被相続人が1人で住んでいた
  • 相続開始から3年以内に売却する
  • 相続~売却までの間に居住・貸付目的で土地を利用していない
  • 売却するのは被相続人から相続した建物を壊している土地である
  • 2016年4月1日~2023年12月31日までに売却する
  • 売却する相手は親や子どもなどの親しい間柄ではない
  • 売却価格が1億円以下である
  • 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や、その他の特別控除などを受けていない

3,000万円の特別控除を受けるには、すべての要件を満たさなければなりません。被相続人が住んでいなかった土地だと控除は適用されませんが、老人ホームに入居していた場合は適用されます。被相続人の生前の居住地も確認しておきましょう。

続いて、取得費加算の特例を解説します。取得費加算の特例は、土地や建物を購入する際にかかった費用に、相続税の一部を加算できる特例です。取得費に加算することで課税譲渡所得金額を抑えられるため、住民税や所得税を節税できます。取得費加算の特例の適用要件を見てみましょう。

  • 相続納税者が、相続開始から3年10カ月以内に売却している
  • 相続や遺贈によって土地を取得している
  • 財産を受け取った人は相続税の課税者である

取得費加算の特例は、3,000万円の特別控除に比べて適用要件が少なくなっています。大きな控除は受けられないものの、節税効果が期待できるため、要件を満たす場合は利用することがおすすめです。

3,000万円の特別控除と取得費加算の特例は併用できません。要件を満たせる控除、または特例を活用しましょう。

居住用の土地を売却する際にかかる税金の控除

居住用の土地を売却する場合、3,000万円の特別控除・軽減税率の特例・買換えの特例を利用できます。3,000万円の特別控除と軽減税率の特例は併用できるため、要件を満たす場合はどちらも活用することがおすすめです。まずは、3,000万円の特別控除の適用要件を見てみましょう。

  • 居住用の土地を売却する
  • 建物を壊している場合、取り壊した日から1年以内に土地の売買契約を締結している
  • 建物を壊していない場合、住まなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売却している
  • 建物を壊したあとに、別の用途で土地を使っていない
  • 災害によって建物を失った場合、住まなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売却している
  • 売却相手が親や子どもなどの親しい間柄ではない
  • 売却した年の前年と前々年にマイホーム買換えや住宅ローンなどの特例・控除を受けていない

すべてを満たす場合は3,000万円の特別控除を受けられます。軽減税率の特例は、土地の所有期間が10年以上である場合に適用されます。上記の要件を満たしており、なおかつ所有から10年以上が経過している場合は、2つの特例と控除を利用しましょう。

買換えの特例は、居住用の土地を売った前年から翌年まで3年間に、新しく居住用の土地や建物を購入した際に適用されます。特例の内容は、譲渡益に対する課税を繰り延べるものです。いつかは支払わなければならないものの、経済的に厳しい場合は大きな助けとなるでしょう。

まとめ

土地を売却する際は、譲渡所得税・住民税・印紙税・登録免許税が発生します。税金によって支払時期や納税方法が異なるため、売却前に確認しておきましょう。会社勤めの方は確定申告をする機会があまりないことから、譲渡所得税の申告を忘れる恐れがあります。申告し忘れると延滞税が加算されるため、忘れずに手続きを済ませることが大切です。

土地の売却にかかる税金は、特例や控除を使って節税できます。適用要件を満たせば3,000万円の特別控除も受けられるため、該当する方は控除を活用し、支払い負担を抑えましょう。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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