住宅ローンの事前審査と本審査の違いは?審査の流れや必要書類を解説

記事の目次
住宅ローン審査の概要

住宅ローンを契約するためには、事前審査を受けた後に本審査を受けることになります。本章では、それぞれの審査がどういったものなのかを解説します。
住宅ローンの事前審査とは
住宅ローンの事前審査とは、申込者の返済能力を簡易的に調べるものです。主に返済負担率の妥当性と個人信用情報が確認されます。返済負担率とは、収入に占める返済額の割合のことで、一般的に20%以下が無理のない数字とされていますが、住宅金融支援機構の「フラット35」では、この返済負担率が次のように公表されています。
年収 | 返済負担率の基準 |
---|---|
400万円未満 | 30%以下 |
400万円以上 | 35%以下 |
なお、この返済負担率は住宅ローンだけではなく、教育ローンやマイカーローンなど、他の借り入れも含めた数字です。他の金融機関においては、独自の審査基準が設けられているため、申し込んでみなければわかりません。
個人信用情報とは、クレジットカードの返済状況やローンの契約内容などの情報が記録されているものです。61日以上、もしくは3カ月以上の延滞があると「異動」と記録されます。異動があると、返済能力に問題があると判断されてしまいます。
住宅ローンの本審査とは
本審査は、金融機関が住宅ローンを融資するか最終的に判断するための審査です。物件の売買契約締結後におこなわれます。事前審査よりもさまざまな視点から審査がおこなわれ、厳しいものになります。また、金融機関だけではなく、保証会社による審査もおこなわれます。本審査では大きく次の3つの観点から審査されます。
個人属性に関する審査
※故意または過失により違法に他人に損害を与えた行為
返済計画に関する審査
2つ目は、返済計画に無理がないかを審査されます。例えば、借入時の年齢と完済時の年齢、収入の安定性、返済負担率、他の借り入れ状況などです。
物件に関する審査
3つ目は、物件に関する審査です。建築基準法に違反していない物件か、権利関係に問題がないかなど、必要な要件を満たしているか審査されます。また、万が一住宅ローンの返済が滞った場合、物件を売却して債権を回収することになります。そのため、売却がしやすいか、物件価値も評価されます。
手続の流れ
住宅ローン審査の流れを確認していきましょう。
- STEP 1事前審査の申し込み
- STEP 2審査承認の連絡
- STEP 3売買契約
- STEP 4借り入れ条件の調整
- STEP 5融資申し込み
- STEP 6本審査
- STEP 7融資契約
まずは事前審査に申し込みます。金融機関によって審査にかかる期間は異なりますが、ネット銀行は審査期間が早い傾向にあります。承認がおりると金融機関から連絡がきます。場合によっては不動産会社やハウスメーカーから連絡が来ることもあります。売買契約を結んだら、金融機関からの指摘を反映して借り入れ条件を調整し、融資を申し込みます。この時に本審査がおこなわれ、無事承認されると融資契約を結びます。
事前審査と本審査に必要な書類
住宅ローンの事前審査と本審査に必要な書類をまとめてみました。
事前審査 | 本審査 | |
---|---|---|
本人 確認書類 |
・免許証、パスポート、マイナンバーカードのいずれか ・健康保険証 |
住民票の写し |
収入 確認書類 |
源泉徴収票か確定申告書 |
・住民税課税証明書、特別徴収税の決定通知書、納税通知書
・職務経歴書、給与明細書、給与証明書
|
土地の 確認書類 |
販売チラシでも可能 |
・不動産売買契約書、重要事項説明書
・謄本、公図、地積測量図、住宅地図
|
物件の 確認書類 |
間取り図でも可能 |
・工事請負契約書、見積書 ・平面図、配置図 |
※金融機関によって異なります
書類によっては、発行後何カ月以内のものが有効か指定されているものがあります。事前に確認するようにしましょう。また、住民票の写しには本籍地やマイナンバーの記載は不要です。あると書類不備となってしまうため、気をつけましょう。
事前審査と本審査の違い
事前審査と本審査の違いを簡単な表にまとめてみました。
事前審査 | 本審査 | |
---|---|---|
審査内容 | ・返済負担率の妥当性 ・個人信用情報 |
・個人属性に関すること ・返済計画に関すること ・物件に関すること |
審査を おこなう機関 |
金融機関 | 金融機関・保証会社 |
審査に かかる期間 |
即日〜2週間程度 | 2週間〜1カ月程度 |
住宅ローンの融資は高額なため、きちんと返済できるか審査するために2回審査がおこなわれます。金融機関によって、審査内容や期間は異なりますが、本審査は必要となる書類も多くなり、審査にかかる時間も長くなります。事前に準備するものは、不備のないようにしましょう。
事前審査に落ちた時に考えられる原因

事前審査は返済負担率の妥当性と個人信用情報を確認するものです。落ちてしまった時に考えられる原因を3つ解説します。
書類に不備があった
書類に不備があると、必要な情報が正確に把握できないため、審査に落ちてしまいます。書類の不備とは、記入漏れや誤りだけでなく、発行日が有効期限内のものでなかったり、記載されている情報が古いものだったりなどがあります。提出をする前に、抜け漏れがないか、有効期限内のものか、最新の情報かを確認しましょう。
個人信用情報に傷がある
個人信用情報に傷がある場合も、事前審査の段階で落ちてしまいます。61日以上、もしくは3カ月以上の延滞があると「異動」と記録され、返済能力に問題があると判断されてしまいます。個人信用情報は、次の3つの機関で管理されています。
全国銀行個人信用情報センター
株式会社シー・アイ・シー
株式会社日本信用情報機構
いずれも、ご自身で情報の開示請求が可能です。不安な場合は、審査に申し込む前に確認してみましょう。
返済負担率が高い
返済負担率が高いと、事前審査で落ちてしまう可能性があります。返済が滞るリスクが高いと判断されるためです。例えば、他の借り入れがあり、すでに月々10万円の返済をしているとします。この方の収入が40万円とすると、月々8万円の住宅ローンを借り入れ、合わせた返済額が18万円になった時の返済負担率は、45%となります。収入の半分近くを返済に回さなければなりません。返済が滞ってしまうリスクがあるため、審査に通るのは難しいでしょう。
事前審査に通っても本審査で落ちた時に考えられる原因

事前審査が通ったら、本審査も確実に通るとは限りません。本審査ではチェックが厳しくなり、さまざまな観点から審査がおこなわれます。本章では、事前審査に通っても本審査が落ちた時に考えられる原因をみていきましょう。
書類に不備がある
事前審査と同様、書類に不備があれば審査に通ることができません。本審査では必要となる書類も多くなります。また、自分が用意するものだけではなく、不動産会社に依頼しなければならないものもあります。何が必要かを金融機関によく確認し、準備しましょう。
事前審査の時と情報が異なっている
事前審査の時と情報が異なっていることも、本審査で落ちてしまう原因となります。住宅ローンの審査は申し込んだ時の状況に基づいておこなわれます。例えば、転職をしたり、新しく借り入れをしたり、状況が変わっていると、事前審査からやり直しになる場合があります。もしくは虚偽申告とみなされてしまうかもしれません。事前審査で申告した内容と、本審査の内容を一致させるようにしましょう。
物件の担保評価が低い
本審査では物件に関する審査もおこなわれます。そのため、物件の担保評価が低いと、審査に落ちる可能性があります。物件は、建物そのものだけでなく、立地条件や周辺環境などからも評価されます。しかし、金融機関によって審査基準が異なるため、別の金融機関なら通るかもしれません。ただし、資産価値が低い物件は、金利が高くなる可能性もあるため、注意しましょう。
住宅ローンの審査落ちを防ぐためのポイント

住宅ローンの審査を受けるにあたり、事前の対策で審査落ちを防ぐこともできます。ここでは、事前に対策できることを2つ解説します。
余裕を持って書類を用意する
事前審査は自分で用意できる書類ばかりですが、本審査で必要な書類は不動産会社などに依頼しなければならないものもあります。また、発行するまでに時間がかかる場合もあります。慌てて用意をすると、抜けや漏れなど不備の原因となります。金融機関によって多少異なる場合があるため、事前に金融機関に確認しておきましょう。
信用情報に傷がつく行為を避ける
審査の前に信用情報に傷がつく行為をしないようにしましょう。特に、事前審査と本審査の間で状況が変わってしまうと、本審査で落とされる可能性が高くなります。例えば、転職をしたり、新しい借り入れをしたりするなど、収入や返済負担率に変化があると、返済計画に影響を与えてしまいます。事前審査からやり直す必要が出てくるため、信用情報に傷をつける行為は避けましょう。
住宅ローンの審査に落ちた時の対策

住宅ローンの審査に落ちたとしても、対策を取ることで通る可能性があります。本章では落ちた時の対策方法を解説します。
物件を変更する
物件価格が高すぎる、物件の担保価値(※)が低いなどの理由で審査に落ちた場合には、物件を変更するのも一つの方法です。物件価格が高すぎる場合、借入額が高くなり、返済負担率も上がるため、審査に落ちる可能性があります。そこで、価格の低い物件に変更すれば、収入に見合った返済ができると判断されるでしょう。
※担保価値は、固定資産税評価額・路線価・公示地価・法定耐用年数など物件の条件を付加して計算されます
購入時期をずらす
年収が少なかったり、勤続年数が短かったり、返済能力がないと判断された場合には、購入時期をずらすことで審査に通る可能性が高くなります。購入時期を遅らせると、収入が上がり、勤続年数は長くなるため、返済能力が高まったとみられるためです。
また、個人信用情報に傷が付いていて審査に落ちてしまった場合、完済から5年経てば「異動」の記録は削除されます。そうすれば、個人信用情報に傷がない状態になるため、審査に通る可能性は高くなります。ただし、この5年の間に新たに傷を付けないよう、延滞しないように気をつけましょう。
他の借入金を返済する
他の借り入れがあり、返済負担率が高くて審査に落ちてしまった場合、先に借り入れを返済するようにしましょう。返済負担率が下がるため、審査に通る可能性が高くなります。もし返済する余裕がない場合は、親族から援助を受けるのも一つの方法です。しかし、お金のトラブルはのちに厄介なことになるものが多いものです。しっかり話し合い、双方が納得したうえでやり取りするようにしましょう。
頭金を増やす
頭金を増やすのも、審査に落ちてしまった時の対策の一つです。物件価格が収入に対して高いと判断された場合、頭金を入れることで、借入額を減らすことができます。借入額が減れば、返済負担率も下がるため、返済が滞るリスクも軽減されます。また、頭金を増やすことで、返済能力があると判断されるため、審査に通る可能性があります。
住宅ローンの審査に関するよくある質問
審査に落ちた時は別の金融機関に申し込める?
審査に落ちた時に、別の金融機関への申し込みは可能です。金融機関によって、住宅ローンの審査基準が異なるため、別の金融機関では通る可能性があります。また、融資条件も異なるため、有利な条件で借りられる場合もあります。事前審査は2〜3社に申し込んでおくと、スムーズに進むでしょう。
購入する物件によって審査の基準は変わる?
購入する物件によって審査の基準は変わります。物件の担保価値はもちろんのこと、借り入れ希望額と物件価格のバランスをみて、申込者の返済能力に見合ったものかも審査されます。
審査の通りやすさはわかる?
確実ではありませんが、ある程度の目星はつけられるでしょう。例えば、勤続年数は短いよりも長いほうが審査に通りやすくなります。また、個人信用情報については、開示請求が可能です。返済計画については、ファイナンシャルプランナーといった専門家に相談するのも一つでしょう。
まとめ
今回は住宅ローンの事前審査と本審査の違いについて解説しました。説明したとおり、事前審査に通ったからといって、確実に本審査に通るわけではありません。落ちてしまった時は、ご自身の状況を振り返り、何がいけなかったのか原因を探りましょう。
また、事前に対策をとれるものもありますが、個人信用情報に傷がついている場合や勤続年数が短い場合、年単位で待たなければならないものもあります。しかし、借りられないからといって諦める必要はありません。信用情報を高めるために、返済できる借り入れを返済したり、延滞を避けたり、できる限りの誠意を見せるようにしましょう。何が原因かわからない場合は、専門家に相談するのも一つの方法です。できることを少しでも始めることが大切です。
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執筆者
民辻伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
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