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無理のない住宅ローン返済比率は何%?計算方法と返済のコツを解説

無理のない住宅ローン返済比率は何%でしょうか
住宅購入は一つの夢を実現させる大きな転機ですが、多くの人にとって住宅ローンの返済が心配事になります。住宅ローンとは長期間付き合っていくので、返済負担が過大にならないようにしなければなりません。では、返済負担が過大にならないようにするには、何を基準に考えるとよいのでしょうか。

そこで本記事では、住宅ローン返済比率の概要や計算方法を通じて、無理のない住宅ローン返済比率の見極め方をご紹介します。また、理想的な返済比率と、返済比率に加えて注視すべき点もあわせて紹介していきます。住宅ローン借り入れにあたって無理のない返済比率を知りたい人は必見です。

無理のない住宅ローンの返済比率はどのように計算する?

無理のない住宅ローン返済比率はどのようにしてわかるのでしょうか

返済比率とは

住宅ローンの返済比率とは、住宅ローン返済額が年収に占める割合を示します。住宅ローンの審査では、年齢や勤続年数と同じくらい返済比率を重要としている金融機関も多くあります。国土交通省が民間の金融機関を対象におこなった「民間住宅ローンの実態に関する調査(令和4年度)」をみると、返済比率は93.0%となっており、9割以上の機関が融資をおこなう際に審査項目としてあげています。

審査では他に、完済時年齢や健康状態などさまざまな項目を見て融資を決めていることがわかりますが、調査の結果から返済比率も重視される項目なのがわかります。

返済比率が高すぎると、家計に与える財政的な負担が大きくなり、住宅ローンを完済するのが難しくなる可能性が高まります。適切な返済比率を維持するのは、住宅ローンを無理なく返すために重要です。

返済比率の計算

返済比率は、「年間の住宅ローン返済額÷額面年収×100」で計算できます。

例えば、年収450万円の人が年間90万円を返済する時の返済比率は何%でしょうか。計算式に当てはめると、以下のようになります。

90万円(年間返済額)÷450万円(年収)×100=20%(返済比率)

ただし、上記の計算では住宅ローン以外に借り入れが何もない場合を想定しています。もし、住宅ローン以外の借り入れがある場合には、すべてを計算に入れて算出しましょう。ちなみに、他の借り入れには以下のようなものがあります。

  • スマートフォン本体購入時の分割払い
  • クレジットカードのリボ払い
  • 車のローン
  • 奨学金

当然ながら、住宅ローン以外でも借り入れをしており、トータルで返済比率が上がってしまうと、返済に支障があるとみられやすくなってしまいます。住宅ローン借入を検討する際、返済比率が上がってしまうようであれば、他の借り入れを早めに返済し返済比率を下げるようにしましょう。

無理のない住宅ローンの返済比率は何%?

無理のない住宅ローンの返済比率は何%でしょうか

返済比率が重要なのはわかりましたが、無理がない返済比率は具体的に何%なのでしょうか。

金融機関の審査基準は30~35%以下

金融機関が住宅ローン審査で用いる基準は、明確に示されていない場合もありますが、おおむね30~35%以下と考えておくとよいでしょう。

例えば、金融支援機構が提供しているフラット35では、返済比率を明確に示しています。フラット35の審査基準では、年収400万円未満なら返済比率が30%以下、年収400万円以上なら返済比率が35%以下としています。

住宅ローンの審査では、基準となる返済比率を超過する場合には、審査に落ちたり融資額が減額になったりします。

ゆとりがあるのは20%以下

金融機関が定める基準を超えなければ融資が実行されますが、年収400万円未満で返済比率が30%以上の融資を受けるとなると負担は軽くはありません。収入に対して大きい額の返済をしているとなると、急な出費や収入減に対応できなくなるおそれがあります。返済にはゆとりをもてるのが理想的です。では、ゆとりのある返済負担率はどれくらいでしょうか。

ゆとりのある理想的な返済負担率は、手取りの20%程度といわれます。額面年収では税金や社会保険料が引かれておらず、実際に手元で自由に使える金額ではありません。ローンは毎月の生活費の一部と考えると、自由に使える手取り分からゆとりが持てる割合を考えるほうが確実です。

例えば、毎月の額面収入が30万円で手取り収入が25万円の人を例に、返済比率を比較します。

金融機関の審査基準:額面の30%~35%以下
9万~10.5万円 残りの生活費 14.5万円~16万円

手取りの20%
5万円 残りの生活費20万円

生活費がどれくらいあれば余裕が持てるかは人それぞれですが、住宅費を抜いたお金が20万円あれば急な出費に対応でき、ある程度余裕を持った生活ができそうです。

実際に借りた人の返済比率の平均は23.1%

では、実際に住宅ローンを借りた人の返済比率は何%位なのでしょうか。住宅金融支援機構の「2022年度 フラット35利用者調査」によると、フラット35では返済負担率の全体平均が23.1%でした。ちなみに物件別では、もっとも低いのは中古マンションで19.7%、もっとも高いのは土地付き注文住宅で25.6%でした。

この調査結果から、フラット35で住宅ローンを借りた人の返済負担率平均は、20%~25%の範囲となっていることがわかりました。ゆとりを持つなら20%以下、多いと25%くらいを目安にするのが現実的のようです。

住宅ローンで無理のない返済比率にするための方法は?

住宅ローンで無理のない返済比率にするために何ができるのでしょうか

無理のない住宅ローンの返済比率は20%までとわかりましたが、もし理想の範囲内になっていない場合の対処法はあるのでしょうか。この章では、返済比率を下げるための方法を紹介します。

できるだけ頭金を増やす

頭金を多く支払えば、借入額が減り毎月の返済額を抑えることができます。頭金を増やすために普段から、貯蓄を積極的におこない不要な支出をしない習慣づけが重要です。頭金を用意できれば、金利条件も有利に交渉できる場合もあるので、長期的な負担軽減に効果的です。

住宅ローン以外の借り入れをなくす

もし住宅ローン以外の借り入れがある場合には、積極的に返済をしておきましょう。複数の借り入れがあると、月々の返済負担が増加し、返済比率が高まります。できるだけ既存の借り入れを整理し、返済が住宅ローンだけになっていると理想的です。必要なら、借り入れを一本化するリファイナンスも検討しましょう。住宅ローン以外の借り入れをなくせば、返済比率の改善が期待できます。

返済期間を長めに設定して年間返済額を抑える

返済比率を下げるには、返済期間を長めに設定するのも検討してみましょう。長い期間で返済すると、年間の返済額を低く抑えられ、無理なく生活費を捻出できます。ただし、総返済額は増加するので留意が必要です。

無理のない住宅ローンの返済比率を考える時の注意点は?

無理のない住宅ローン返済比率かを考える時の注意点はどのようなところでしょうか

無理のない住宅ローンの返済比率は20%から25%位までとわかりましたが、その割合を守っていれば、必ずしも余裕が持てるとは限りません。この章では、返済比率を考える時に注意すべき点を紹介します。

家庭独自のライフスタイルや返済プランを考慮する

返済比率だけが、住宅ローン設定の指標ではありません。それぞれの家庭独自のライフスタイルや返済プランをよく考慮しましょう。家族構成やライフスタイルによって、毎月の支出は大きく変動します。さらに、住宅ローン以外にも借入がある場合もあります。

将来の支出にも目を向けましょう。予期しない出費や将来の収入変動、病気やけがによる収入減少のリスクも考えられます。返済計画を立てる時は、長期的なライフプランを立て、それに基づいて構築しましょう。単に返済比率だけに焦点を当てず、自身の生活状況に合わせた無理のない返済金額を見極めるよう努めましょう。

住宅ローン以外にかかる維持費も考慮する

不動産を購入すると、住宅ローン以外にも毎月かかる維持費があります。例えば、固定資産税や火災保険料、マンションの場合には管理費と修繕積立金なども必要になります。

住宅購入前は、住宅ローンの支払いに焦点があたりがちですが、無理のない返済をしていくには購入後の返済計画が重要です。前述の費用は定期的に発生するので、初めから予算に組み込む必要があります。計画的に維持費を考慮して、無理のない住宅ローン設定をおこないましょう。

金利上昇リスクも考慮する

住宅ローンを組む際に見落としてはならないのが金利上昇リスクです。金利タイプの選択は住宅ローン設定に大きな影響を与えます。金利タイプは変動型、固定期間選択型、全期間固定型の3つがあります。

変動型は、金利が下がれば返済額も減少しますが、上昇すると返済負担が増える可能性があります。固定期間選択型は、一定期間金利が固定されますが、期間が終了すると変動型になるため将来の金利動向に注意が必要です。一方、全期間固定型では返済計画が立てやすいですが、金利が下がっても利益がないことがあります。

金利タイプごとにメリットとデメリットがあり、返済負担率に影響を与えます。将来の金利上昇リスクを考慮して、無理のない住宅ローン設定をおこないましょう。

借入可能額でなく、返済可能額を考慮する

住宅ローン設定では、返済比率や借入可能額だけではなく、返済可能額を重視しましょう。住宅ローンを返済できなくなるのは、借入額が返済能力を超えてしまうのも要因です。時には、金融機関の上限に達する借入額に誘惑され、高額な物件に手を出してしまうかもしれません。

しかし、無理なく返済できる金額を見極められるかが、安心して住宅ローンを返済していく秘訣です。借り入れ可能な金額と、自身や家族の生活に合わせた返済可能な金額は異なります。単に借りられる額に固執せず、将来の収入変動や急な支出も見据えて、無理のないローン設定を検討しましょう。

この記事のQ&A

Q:返済比率とは?

A:住宅ローン返済額が年収に占める割合を示します。住宅ローンの審査では、年齢や勤続年数と同じくらい返済比率を重要としている金融機関も多くあります。

Q:返済比率の計算は?

A:返済比率は、「年間の住宅ローン返済額÷額面年収×100」で計算できます。例えば、年収450万円の人が年間90万円を返済する時の返済比率は、以下のようになります。

90万円(年間返済額)÷450万円(年収)×100=20%(返済比率)

Q:無理のない住宅ローンの返済比率は何%?

A:金融機関の審査基準では、額面年収の30~35%以下であれば融資可能となっています。ただし、ゆとりを持って生活ができる水準は、手取り年収の20%以下が理想的です。実際にフラット35で住宅ローンを借りた人の返済比率を調べると、物件の種類にもよりますが20~25%でした。

Q:住宅ローンで無理のない返済比率にするための方法は?

A:返済比率が理想的な水準を超えてしまいそうであれば、次のような方法を実行しましょう。例えば、頭金をできるだけ増やしたり、住宅ローン以外の借り入れをなくす努力をしましょう。また、返済期間を長めに設定して年間返済額を抑える方法もありますが、デメリットもあるので実行する時はよく考えて判断しましょう。

Q:無理のない住宅ローン設定かを見極める返済比率以外の注意点は?

A:ゆとりがある返済比率の目安は、手取り年収の20%以下と述べましたが、返済比率のみにこだわるのは注意です。どのようなライフスタイルや返済プランを想定しているかによっては、家計の支出は大きく変動します。返済設定は、住宅ローン以外にかかる維持費や金利上昇リスクも考慮し、借入可能額でなく返済可能額を見極めて住宅ローンを組みましょう。

まとめ

本記事では、住宅ローン返済比率の概要や計算方法を通じて、無理のない住宅ローン返済比率の見極め方をご紹介しました。また、理想的な返済比率と、返済比率に加えて注視すべき点もあわせて紹介しました。

返済比率は、住宅ローン設定の重要な基準ですが、それだけでは不十分です。住宅ローン設定は、家庭の状況や将来の返済計画、住宅ローンにかかる諸費用や金利の状況などもトータルで考えて決めましょう。
とはいえ、自分だけで判断するのは難しかったり不安に思う方も多いはずです。そんな時は、専門家に相談してみましょう。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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