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地震があったら住宅ローンはどうなる?減免する方法5つを解説

地震があったら利用している住宅ローンはどうなるのでしょうか
日本は地震大国ともいわれ、大きさに関わらず地震が起きることは珍しくありません。家を購入する際や購入したあとも、地震に遭った時に住宅ローンがどうなるのか気になるところでしょう。もし住宅ローンが残っている家が倒壊して住めなくなっても、住宅ローンは払わなければならないのでしょうか。

本記事では、地震があったら住宅ローンはどうなるのかを解説します。また、ローンの返済を減免する方法も解説するため、ぜひご参考ください。

地震があったら住宅ローンはどうなる?

被災して家に住めなくなっても住宅ローンの返済義務は残ります
被災して家に住めなくなっても住宅ローンの返済義務は残ります

結論として、住宅ローンが残っている家が地震で倒壊して住めなくなっても、住宅ローンは支払わなければなりません。なぜなら、住宅ローンは家を購入する際に、金融機関から借りたお金だからです。契約者が災害で家を失っても、金融機関は貸し付けたお金を回収する権利を持っています。そのため、住宅ローンの返済義務は残ります。

しかし、被災した住宅が使えなくなり、売却もできないため、住宅ローンの返済負担はかなり大きいものに感じるでしょう。生活するのも困難な状況では、少しでも負担を減らしたいと思うのは当然です。次章からは住宅ローンの返済負担を減らす方法をご紹介します。

地震保険を活用する

地震保険を活用すると住宅ローンの負担を減らすことができるでしょう
地震保険を活用すると住宅ローンの負担を減らすことができるでしょう

被災して家に住めない状況では、住宅ローンの残債がなくなれば……と思うのは当然の心理でしょう。しかし残念ながら、住宅ローンの残債をなくす方法はありません。ただし、負担を少しでも減らす方法はいくつか存在します。そのうちの一つは、地震保険を利用することです。

地震保険の概要

地震保険は、地震や地震による関連災害によって生じた損害を補償する保険です。一般的に、火災保険は災害に対する保険として知られていますが、地震による損害は補償されません。地震保険は単独での申し込みはできないため、火災保険とセットで加入する必要があります。地震保険は国が関与しており、保障内容や割引などの基本ルールはすべての保険会社で共通しています。

地震保険の保障内容

地震保険に加入すると、被災した時にどれくらいの保険金が受け取れるのでしょうか。地震保険で受け取れる保険金は、建物の損壊状況によって変わります。具体的には以下のとおりです。

損害の状態 支払われる保険金の割合
全損 100%
大半損 60%
小半損 30%
一部損 5%

地震保険は、建物と家財の両方を補償するか、建物のみを補償するか、どちらかを選択します。保険金は主契約である火災保険金額の30%~50%までの設定です。限度額は建物で5,000万円まで、家財で1,000万円までになります。ただ、地震保険は火災保険の保険金より低い金額の設定になるため、住宅ローン残債の返済と新しい家を用意する金額には足りないかもしれません。

なお、地震保険は1年から5年までの契約になります。契約を更新したい場合は再度手続きをしなければなりませんが、その場合、これまで契約していた保険料より上がる可能性も。ここ数年災害が多くなってきており、保険会社の支払いも増えているため、地震保険の価格は年々上昇傾向にあります。

参考:財務省「地震保険制度の概要

住宅ローンの特約を活用する

住宅ローンの特約にも自然災害時に返済が減免されるものがあります
住宅ローンの特約にも自然災害時に返済が減免されるものがあります

住宅ローンの特約のなかには、地震や噴火などの自然災害時に返済が一部免除されるものがあります。基本的に特約は契約時にしか付帯することができないため、住宅ローンを検討する際には、特約も含めよく検討しましょう。すでに住宅ローンを組んでいる方は、特約がついているか、特約の契約内容がどうなっているかを今一度確認しましょう。本章では、自然災害に関する特約を扱っている金融機関をご紹介します。

三井住友銀行の場合

三井住友銀行の住宅ローンには、自然災害にあった際、住宅ローンの返済を一部免除してくれる特約があります。この特約は2つの種類があります。

約定返済保障型

毎月のローン返済に適用金利の0.1%をプラスして支払うと、地震や豪雨、落雷、津波や噴火など含めた9つの災害にあった時、罹災(りさい)の程度に応じて一定期間の返済が免除されます。なお、全壊(全焼・全焼質を含む)で24回分、大規模半壊で12回分、半壊で6回分が免除されます。

残高保障型

毎月のローン返済に適用金利の0.5%をプラスして支払うと、地震や噴火・津波によって全壊の認定を受けた場合、建物ローン残高の50%相当が免除され、二重ローンに備えられます。残高保障型は、上乗せ金利が約定返済保障型よりも高く設定されており、災害内容も前述の3つ(地震・噴火・津波)に限定されていますが、建物ローン残高の50%が免除されるので、負担を大きく減らす効果が期待できます。

参考:三井住友銀行 自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン

りそな銀行の場合

りそな銀行の住宅ローンには、自然災害に遭った時のため、「自然災害サポートオプション」が用意されています。このオプションには2つの種類があります。

返済補償型

毎月のローン返済に適用金利の0.1%をプラスして支払うと、地震や津波、噴火など含めた8つの災害があった時、罹災の程度に応じて一定期間の返済が免除されるのが、返済保証型です。また、補償内容は全壊の場合は24回分、大規模半壊の場合は12回分、半壊の場合は6回分となっています。

残高補償型

残高保証型は毎月のローン返済に適用金利の0.3%に、建物金額割合をかけた金利をプラスして支払うと適用されます。建物金額割合とは住宅ローンの借入金額に占める、建物の借入金額の割合のことです。例えば、住宅ローン2,000万円を借り入れたうち、土地が1,200万円、建物が800万円の場合、建物金額割合は40%。またこの場合、上乗せする金利は0.3%に建物金額割合40%をかけて0.12%となります。地震や津波、噴火による全壊認定で、建物のローン残高の50%相当が免除されます。

参考:りそな銀行 自然災害サポートオプション

SBI新生銀行の場合

SBI新生銀行の住宅ローンには、「自然災害時債務免除特約」が用意されています。この特約は、地震や台風、土砂崩れを含む8つの災害で罹災した場合、住宅ローンの返済の一部が免除されます。住宅ローンの支払いが免除される回数は、住宅の被害状況によって変わり、全壊の場合は24回分、大規模半壊は12回分、半壊の場合は6回分です。

SBI新生銀行の場合は、金利の上乗せがありません。また、この特約を適用するためには、契約時でなく、罹災後に電話をすれば手続き可能です。ただし、あとで罹災証明書の提出が必要となります。他にも、特約を付加できるのは住宅ローンの借り入れ時から10年間だけなので注意が必要です。さらに、特約を付加できるのは1回限りとなる点に気をつけましょう。

参考:SBI新生銀行 自然災害時債務免除特約

フラット35の場合

住宅金融支援機構と金融機関が提携して提供するフラット35の場合、地震、台風、大雨などにより被災された方へ支援をおこなっています。具体的には、災害復興建築物の建設や購入に必要な融資です。ただし、融資を受けるためには、地方公共団体が発行する「り災証明書」の提出が必要などの諸条件があるため、よく確認しましょう。融資の限度額や融資金利は以下のとおりです。なお、全期間固定金利となっています。

【融資限度額】

住宅の建設で土地を取得する場合 5,500万円
住宅の建設で土地を取得しない場合 4,500万円
住宅を購入する場合 5,500万円
被災した住宅を補修する場合 2,500万円

【融資金利】

新機構団体信用生命保険制度 年1.59%
新機構団信信用生命保険制度(デュエット) 年1.77%
新3大疾病付機構団体信用生命保険制度 年1.83%
団体信用生命保険に加入しない場合 年1.39%

新機構団体信用生命保険制度は、契約者が死亡・所定の身体障害状態になった場合に、住宅ローンの返済が不要となる保険です。デュエットは、夫婦で連帯債務者となる場合、どちらか1人、または夫婦2人で加入できます。新3大疾病付機構団体信用生命保険制度は、3大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)が原因で一定の要件に該当した場合にローンの返済が不要となります。

参考:住宅金融支援機構 災害復興住宅融資

被災した時の手続き

各社、実際に被災した時の手続き方法には違いがあります。例えば、住宅ローンの免除手続きをとるのに、はじめからり災証明書がないと手続きができない場合や、電話で連絡をすればよい場合などさまざまです。借り入れている金融機関の手続きの方法を確認しておきましょう。

「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を確認する

自然災害で被害を受けたら被災者の債務整理に関するガイドラインを確認しましょう
自然災害で被害を受けたら被災者の債務整理に関するガイドラインを確認しましょう

住宅ローンを借り入れている個人が多額の負債を抱えてしまうのは、再スタートを妨げる要因になります。そういった被災者支援のため、地震だけでなく自然災害で被害を被った場合のガイドラインが作成されています。「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」というものです。

もし、被災して住宅ローンの支払いができずにいると、信用情報に傷がついてしまいます。そうなると、そのあとすぐにローンを組んだり、クレジットカードを作成できなくなってしまいます。そこで、このガイドラインを利用して手続きすることで、債務整理の履歴が個人信用情報として登録されないため、以後の借り入れに影響しません。また、義援金に加えて、財産の一部を手元に残せます。さらに、弁護士などの手続き支援を無料で受けられます。

詳しくは住宅ローンを借り入れている金融機関に問い合わせましょう。

被災者生活再建支援法を活用する

自然災害で被害を受けたら被災者生活再建支援法を活用しましょう
自然災害で被害を受けたら被災者生活再建支援法を活用しましょう

自然災害で、生活基盤に大きな損害を受けた方を対象に、都道府県が拠出しているのが被災者生活再建支援法による給付金です。住宅が全壊したり、半壊したり、やむをえず解体した世帯を対象に、住宅の再建や建設購入を目的として最大300万円までの支援を受けられます。
しかし、住宅ローンの返済や、住宅の解体、再建を考えると、費用をカバーするには圧倒的に足りないでしょう。希望どおり認可されないケースもあり、思うように給付を受けられないケースもあるため、他の減免方法と組み合わせて活用しましょう。

参考:内閣府 被災者生活再建支援法

地震後に残ってしまった住宅ローンを減免する方法に関するQ&A

地震のあとに住宅ローンを減免する方法に関する質問をまとめました。

保険で対応できるものはある?

地震保険は、火災保険に付帯して、地震や地震による関連災害によって生じた損害を補償する保険です。補償内容などの基本ルールはすべての保険会社で共通であることを理解しておきましょう。地震保険で受け取れる保険金は、建物の損壊状況によって変わります。例えば、全損の場合は保険金額の100%が受け取れますが、一部損の場合は保険金額の5%になります。
また、保険金は火災保険金額の30%~50%までの設定で、限度額は建物で5,000万円まで、家財で1,000万円までです。地震があった時、地震保険に加入しておくといくらかの保険金を受け取れますが、住宅ローン残債の返済と新しい家を用意する金額には足りない可能性があることを留意しておきましょう。

住宅ローンで地震に対応できるものはある?

例えば、三井住友銀行やりそな銀行では、地震および津波や噴火などの自然災害に遭ったら、住宅ローンの返済を一定期間免除してくれたり、50%免除してくれる特約があります。毎月のローン返済に一定額をプラスして支払うと、罹災の程度に応じて適用されます。

SBI新生銀行の住宅ローンでも、自然災害時債務免除特約が用意されています。保障内容は前述の金融機関とよく似ていますが、SBI新生銀行の場合は、金利の上乗せなく利用できます。ただし、特約を付加できるのは住宅ローンの借り入れから10年間分だけで、回数は1回限りになるため、気をつけましょう。

フラット35では、地震、台風、大雨などにより被災された方に対して災害復興建築物の建設や購入に必要な融資をおこなっています。なお融資を受けるには、地方公共団体が発行する「り災証明書」の提出が必要などの諸条件があります。実際に災害が起こった時の手続き方法には違いがあるので、よく確認しておきましょう。

地震で住宅ローンが支払えなくなったらどうしたらいい?

自然災害で住宅ローンなどの支払いに困ったら、住宅ローンを借り入れている金融機関に「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」の利用を相談しましょう。このガイドラインを利用して手続きすると、利用者にいくつかのメリットがあります。例えば、個人信用情報に債務整理したことが登録されなかったり、弁護士などの専門家に無料で相談できるなど、心強い支援を受けられるでしょう。

地震で被災した時に国の支援はある?

被災者生活再建支援法を活用すると、自然災害によって住宅が全壊や半壊した場合に、300万円までの給付を受けられます。しかし、住宅ローンの返済や、住宅の解体、再建費用には不十分なケースも。さらに、希望どおりに許可が下りない場合もあるため、他の方法と組み合わせて活用しましょう。

まとめ

本記事では、地震があって住宅が倒壊してしまった時の住宅ローンがどのようになるのか、住宅ローンを減免する方法を紹介しました。日本は、世界でも有数の地震大国といわれます。日本に住んでいる限り、地震のリスクは避けられず、地震が起きれば家が壊れてしまう可能性もあります。地震のリスクを0にはできませんが、適切な対策や情報収集を通じてリスクを最小限に抑えることは可能です。
被災時は精神的にも不安を抱えやすく、なるべくお金の心配は減らしておきたいものです。万一の際に、住宅ローンの返済はどうなるのか、どういった方法があるのかを事前に確認しておきましょう。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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