このページの一番上へ

住宅ローンは生命保険の代わりになる? 保険を見直す3つのポイントを紹介

住宅ローンを組む際には、多くの金融機関で団信(団体信用生命保険)への加入が義務付けられます。団信では加入者が条件を満たした場合、保険会社が支払う保険金により住宅ローンの返済を保障してくれます。生命保険の保障と重なる部分があることから、住宅ローンを組むことが生命保険の代わりになるか、団信があれば生命保険は不要と考える方もいるかもしれません。今回は、住宅ローンは生命保険の代わりになるかを団信の性質を含めて解説し、保険を見直すポイントも紹介します。

住宅ローンは生命保険の代わりになる?

生命保険と団信はご自身と家族の生活を守ります

生命保険は死亡、病気やケガなどのリスクに備えるために加入する保険で、ご自身と家族の生活を守ることを目的に加入します。加入者が一家の収入を支えている場合、収入が得られなくなる状態に陥れば、家族の生活を含めて大きな影響を及ぼします。

生命保険にはさまざまな種類があり、保険適用の条件、保障内容は保険の種類によっても異なります。そのなかでも住宅ローンの返済を保障する保険が団信です。
住宅ローンの返済をおこなっている加入者に万が一のことがあった場合、返済が困難な状況に陥る可能性もあることでしょう。団信はご自身と家族が、住宅ローンの返済を理由に生活に困ることがないように返済を保障するため、すでに加入している生命保険と保障内容が被る場合、住宅ローンの団信が生命保険の代わりになるといわれることがあります。

住宅ローンで加入する団信(団体信用生命保険)とは

住宅ローンの団信は加入者が返済不能になるリスクを保障します

住宅ローン契約時に加入する団信(団体信用生命保険)は、住宅ローンの返済期間中に発生した加入者の死亡や高度障害などの、返済に関わるリスクを保障する保険です。団信が生命保険の代わりになるか判断するために、団信に関する3つのポイントを紹介します。

  • 完済までの返済不能リスクを保障する
  • 特約をつけることで保障の範囲が広がる
  • 金融機関によっては加入が義務付けられている

完済までの返済不能リスクを保障する

住宅ローンの返済期間は10年程度に設定する場合もあれば、30年以上の長期に渡って返済することもあり、返済期間が長いほど先のことを見通すことは難しいといえるでしょう。加入当初の住宅ローン残高も数千万円以上になることが多いため、加入者の収入から生活費の支払いと返済をおこなっている場合は、保険がなければ生活が厳しくなります。

長期間続くローンの返済には、家族を守るためにも万が一の場合に備えた保障が必要です。そのため完済までに返済不能になるリスクを団信が保障します。また、住宅ローンを完済するとこの保障も終了します。

特約をつけることで保障の範囲が広がる

団信が保障するのは、死亡や高度障害などの保険の適用条件を満たす場合です。生活に支障をきたす疾病や保険の適用条件を満たさない就業不能の状況では、保障されません。

さまざまな状況を想定してリスクを回避するために、団信に特約をつけて保障の範囲を広げれば適用条件を満たしやすくなり保障が受けられます。ただし、団信に特約をつけると保険料が上がるため注意が必要です。

金融機関によっては加入が義務付けられている

金融機関から借り入れをおこない、返済が不可能になった場合、金融機関は資金を回収できません。団信に加入していれば保険会社が住宅ローンの残高を返済します。そのため、多くの金融機関では貸し付けをおこなった資金を確実に回収するために、団信の加入を義務付けています。

また、団信に加入することで、必ずしも返済を保障する連帯保証人を立てる必要がなく、団信の保証を理由に借り入れが可能です。ただし、団信は健康状態を理由に加入できないケースも。保険料を引き上げる代わりに加入の条件が緩和されるワイド団信があるため、健康状態に不安がある場合はワイド団信に加入することで保障が受けられます。

また、住宅金融支援機構のフラット35では団信への加入が任意となっているため、住宅ローンの加入に団信が必須ではありません。

住宅ローンの団信があれば生命保険は不要?

住宅ローンの団信だけでは保障が十分でない場合もあります

団信に加入していれば生命保険は不要でしょうか。結論から申し上げれば、住宅ローンの団信に加入していても生命保険は必要になる場合が多いです。なぜなら、団信はローン返済を保障する保険であるため、加入者とその家族の生活費までは保障されないからです。

そのため、加入者に万が一のことがあった場合は、生活するための保障額を得るため、生命保険に別途加入する必要があります。あわせて、生命保険の保障内容を見直したほうがいいケースも出てきます。団信への加入を機会に生命保険の保障内容についても確認しましょう。

住宅ローンの団信と生命保険を見直すポイント

団信に加入することで契約中の生命保険のプランを見直すきっかけになります

住宅ローンを組むために新たに加入する団信と、すでに加入している生命保険を見直すポイントを2つ紹介します。

  • 生活に必要な保障額を把握する
  • 団信と生命保険で保障が被る点を探す

それぞれ詳しく見ていきましょう。

生活に必要な保障額を把握する

保険の保障内容を考えるうえで必要になるのは、生活に必要な保障額を把握することです。もし、加入者が死亡・働けなくなった場合でも、家族が生活に困らない保障内容を考える必要があります。

そのため、住宅ローンを契約しているなら団信によって返済不能となるリスクを軽減するか、健康状態を理由に団信に加入できない場合は、生命保険で住宅ローンの返済額を補うことも考える必要があるでしょう。団信を含めて必要な保障と保障額を満たしているのか把握することで、保険が見直せるようになります。

団信と生命保険で保障が被る点を探す

団信は住宅ローンの返済に対するリスクを保障する保険であるため、生命保険で同等のリスクを保障するよりも保険料が抑えられることが多いです。一方で、すでに加入している生命保険で将来の住宅費用なども考慮して保障額を設定した場合は、団信と生命保険で保障内容が被ることとなります。

住宅に関する保障内容を生命保険で受けられるようにしていた場合は、団信で十分な保障を受けられる状態にしてから、生命保険の住宅に関する保障内容を見直すことで、保険料の減額が期待できます。

団信の保険料の目安

フラット35を例に団信の保険料の目安を紹介します

生命保険と比較するうえで必要になる団信の保険料(特約料)の目安はいくらか考えていきましょう。住宅金融支援機構フラット35では、「機構団信特約制度」を提供しており、3大疾病付機構団信と夫婦連生団信の特約をつけられます。

3大疾病付機構団信では、がん・急性心筋梗塞・脳卒中の3大疾病になった場合にも団信の保障を受けられます。夫婦連生団信は、連帯債務である夫婦のいずれかが死亡、または所定の身体障害状態となる場合に保障が受けられる特約です。

フラット35の機構団信を例に、毎年発生する団信の保険料の目安を以下にシミュレーションしました。

シミュレーションの条件

  • 返済方法:元利均等返済
  • 返済期間:35年
  • 借入金額:5,000万円
  • 借入金利:4%
  • 段階金利:なし
特約なし 3大疾病付機構団信 夫婦連生団信
1年目 17万3,900円 27万3,300円 27万3,300円
5年目 16万4,700円 25万8,700円 25万8,700円
10年目 14万9,500円 23万4,900円 23万4,900円
15年目 13万900円 20万5,700円 20万5,700円
20年目 10万8,200円 17万円 17万円
25年目 8万400円 12万6,300円 12万6,300円
30年目 4万6,500円 7万3,000円 7万3,000円
35年目 5,000円 7,800円 7,800円

2つの特約である3大疾病付機構団信と夫婦連生団信の保険料の目安は変わりません。また、フラット35の機構団信では3大疾病付機構団信と夫婦連生団信の特約の併用はできないので注意しましょう。

特約をつける場合とつけない場合では、上記のように保険料に差が生まれます。住宅ローンの返済を続けるにあたって、団信の保険料は返済額と同様に減少する仕組みです。上記のシミュレーションは目安であるため、明確な返済条件をもとに団信の保険料が知りたい方は、利用する金融機関で試算してもらうことをおすすめします。

住宅ローンの団信に関する注意点

住宅ローンの団信だけでは保障が十分でない場合もあります

最後に、住宅ローンの団信に関する注意点を3つ紹介します。

  • 保険の適用条件によっては返済のリスクを保障できない
  • ペアローンでは加入者の返済のみ保障される
  • 特約をつけるほど保険料は値上がりする

それぞれ詳しく見ていきましょう。

保険の適用条件によっては返済のリスクを保障できない

団信の適用条件にない状況の場合、働いて収入を得られなくなり、返済不能になっても団信の保障を受けられません。

このような状況に陥らないために、団信の特約を増やして保障の適用条件を満たしやすくするか、生命保険をはじめとする団信以外の保険によってリスクを軽減する方法が考えられます。金融機関によって団信の内容や特約も異なるため、団信を重視して住宅ローンを組む金融機関を選ぶのもおすすめです。

ペアローンでは加入者の返済のみ保障される

住宅ローンの団信は、保険の適用条件満たせば保険会社が住宅ローンの残高を返済しますが、住宅ローンの契約形態によっては例外があります。例えば、夫婦でそれぞれ住宅ローンを組み、団信に加入する形式のペアローンです。

仮に、ペアローンを契約している夫が保険の適用条件を満たしたとしても、返済される残高は夫が契約している住宅ローンの残高であるため、妻が契約している住宅ローンの残高は返済されません。ペアローンで保険の適用条件を満たした場合は、加入者の返済のみ保障されるため、注意が必要です。

特約をつけるほど保険料は値上がりする

住宅ローンの団信は、特約をつけるほど保険の適用条件を満たしやすくなりますが、一方で特約をつけるほど保険料は値上がりします。保障を充実させるあまり、返済の負担が必要以上に重くなる可能性もあるため注意しましょう。

団信の住宅に関する保障は、ほかの保険に加入するよりも安い保険料で保障内容が充実しやすくなります。しかし、求めている保障内容によっては団信の特約を増やすだけではなく、ほかの保険に加入するほうが保障内容を充実させたうえで、保険料を抑えられる場合もあります。

団信と生命保険を見直す場合は、全体で必要な保障と保障額を把握したうえで、保険料と保障のバランスを考えましょう。

まとめ

住宅ローンが生命保険の代わりになる条件は、住宅に関する保障が設定されている場合です。生活費などの住宅ローンの返済費用以外の保障は必要になりますが、団信と生命保険で保障内容が被っているなら、団信の加入を契約中の保険を見直す機会にしましょう。万が一のことがあった場合に備えて、生活に必要な保障内容を充実させたうえで、保険料をできる限り抑えられる選択をすることが理想です。

民辻伸也

執筆者

民辻伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
関連する記事を見る
不動産お役立ち記事・ツールTOPへ戻る