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うつ病だと住宅ローンは組めない?組めるケースや返済中に発症した時の対処法とは

うつ病だと住宅ローンは組めないのか、理由や組めるケースを解説します
住宅ローンの審査では、ローンの返済能力を確認するのに収入や勤続年数の他、健康状態を重視します。身体の健康状態に加え、精神的な健康状態も住宅ローンの審査に影響します。特にうつ病をはじめとする精神疾患は、休職・離職の原因になったり、身体の健康を害する原因にもなることから、診断を受けると、金融機関はその他のリスクを考慮して融資を敬遠するでしょう。ではうつ病に罹患していたり、罹患歴のある方は、いかなる場合も住宅ローンを組めないのでしょうか。

そこで本記事では、うつ病だと住宅ローンは契約できないのかを解説します。そして、うつ病にかかっても住宅ローンを組めるケースはどのような時か、住宅ローンの契約後にうつ病に罹患するとどうなるかもあわせてご紹介します。

うつ病になると住宅ローンを組めない?

うつ病になると住宅ローンを組めなくなるのはなぜでしょうか
うつ病になると住宅ローンを組めなくなるのはなぜでしょうか

結論からいうと、基本的にはうつ病になると住宅ローンを組めなくなります。これは団体信用生命保険(以下、団信)の加入でおこることです。団信のみならず、生命保険の加入でも、うつ病の既往歴や現在通院中の場合、加入ができなかったり、加入にあたって条件がつく可能性があります。団信とは、死亡や高度障害になった時に住宅ローンの債務がなくなる保険です。なお、3大疾病などの重い病気が支払事由に含まれる団信もあります。

多くの場合、金融機関では債権を回収できなくなるリスクを回避するため、住宅ローンを組む時に団信の加入を必須にしています。特に、団信の加入審査でうつ病は厳しくみられる病気です。そのため、うつ病で告知事項に該当すると団信に加入できなくなるので、住宅ローンが組めなくなります。

団信の加入審査を受ける際に記入する書類には、過去の病歴や投薬歴を告知する項目があります。過去3カ月~3年以内に、通院や入院・手術、投薬がある場合、告知をおこなう必要があります。前述の期間にうつ病で通院や投薬をしていると告知事項に記入しますが、そうなると審査に通過できない可能性が高くなります。

保険会社によって内容は異なりますが、以下が主な告知内容です。


  • 告知日から3カ月以内に医師の診察、治療、検査、指示や指導も含まれるものがあったか 投薬があったか
  • 3年以内に特定の病気(がんや心筋梗塞、脳卒中、精神病など)で、手術や、2週間以上にわたる医師の診察、治療、検査、指示や指導も含まれるものがあったか

うつ病は精神病にあたるため、3年以内に2週間以上の通院や投薬があった場合、告知事項として詳細に申告をしなければなりません。うつ病の場合、数日で治るケースはほとんどなく、数カ月~長期に渡る治療期間が発生する可能性が高いです。また、うつ病は、仕事や日常生活に影響する疾患で、住宅ローンの支払いの力を不安視される要因になるため、住宅ローンの審査では厳しくみられる傾向があります。

うつ病でも住宅ローンが組めるのはどのような時?

うつ病でも住宅ローンが組めるのはどのような時でしょうか
うつ病でも住宅ローンが組めるのはどのような時でしょうか

前章で、うつ病は住宅ローンの審査で厳しくみられる疾患だとご紹介しましたが、罹患歴があっても審査に合格できる可能性はあります。本章では、うつ病でも住宅ローンが組めるケースを紹介します。

告知事項に該当しない時

うつ病の罹患歴があっても、告知事項に該当しなければ、そもそも告知をする必要がなくなります。もし、前章のような告知項目の場合、以下の条件をクリアしていると告知の対象にはならないので、申告する必要はありません。


  • 治療が2週間未満で終了している場合
  • 治療完了から3年以上たっている場合

ただし、告知に該当するにも関わらず、虚偽の申告をして団信に加入するのは違反です。自己の不利益になるので、決してしないようにしましょう。

告知項目が少ない団信を利用する時

団信には、いくつかの種類があります。例えばワイド団信という、保険会社が保険の加入を審査する時の告知内容が少なく、通常よりも幅広い健康状態の方を受け入れている団体信用生命保険が挙げられます。基準は保険会社によってさまざまなので、うつ病の方もワイド団信に加入ができるケースがあります。

ただし、ワイド団信は健康状態の基準が通常の団信に比べて緩いため、その分リスクが上がるのを考慮し、保険料が高く設定されています。保険料は、住宅ローンの金利に上乗せされますが、初期設定より0.2%〜0.5%くらい高くなります。例えば、3,000万円の住宅ローンを借り入れたとして、35年のローンの金利が0.4%だったとします。ワイド団信の保険料が住宅ローン金利に0.3%の上乗せになる場合、最終的に金利は0.7%で、返済総額は約170万円プラスになります。

ワイド団信を検討する場合は、上乗せ金利のシミュレーションをしたうえで、返済可能か確認しましょう。

団信の加入が不要の住宅ローンを利用する時

告知事項に該当して通常の団信が利用できなかったり、ワイド団信も利用できない場合は、フラット35を利用する方法もあります。フラット35とは、住宅金融支援機構が民間の金融機関と協力して提供する住宅ローンです。フラット35は、団信に加入しなくても利用できるため、うつ病の方が住宅ローンを利用する時の選択肢になります。フラット35は、加入の条件が優しいのも特徴なので、自営業や転職してすぐの勤続年数が短い方も利用しやすくなっています。さらに、全期間固定金利なので、返済期間中の金利変動を気にする必要もありません。

しかし、団信に加入しないでフラット35を利用する場合、仮に住宅ローンの債務者が亡くなっても、住宅ローンの残債はなくなりません。この場合、遺族が住宅ローンを引き継いで返済をしていかなければならないので注意が必要です。もし、フラット35を団信なしで利用するなら、死亡時の保障を用意しておくべきでしょう。また、残債が残っても遺族が返済できるなど、債務者が亡くなっても返済に困らないようにしておくことが肝要です。

住宅ローンの契約後にうつ病になったら?

住宅ローンの契約後にうつ病にかかったら住宅ローンは免除になるのでしょうか
住宅ローンの契約後にうつ病にかかったら住宅ローンは免除になるのでしょうか

住宅ローンの契約後にうつ病にかかっても、住宅ローンの支払いは免除されません。団信には精神疾患による支払い不能の保障はないからです。では、住宅ローンの契約後にうつ病になったらどうすればよいのでしょうか。

公的な保障を利用する

うつ病にかかり通院している程度では何の保障もありませんが、疾患が原因で長期間働けなくなってしまい、生活費や治療費が工面できなくなると、国からの公的助成を受けられます。受けられる保障は、主に以下の4つです。


  • 傷病手当金
  • 労災保険
  • 自立支援医療(精神通院医療)
  • 重度心身障がい者医療費助成制度

傷病手当金

会社員や公務員の方が、病気やけがで働けなくなった時に支給される給付金が「傷病手当金」です。
連続して3日休んだうえで、4日目以降で休んだ日数に対して支給されます。なお、休んだ期間に給与報酬がなかった方が対象です。1日あたりの金額は、支給開始までの1年間の標準報酬月額の3分の2相当です。また、この給付金は健康保険に加入している方が対象のため、国民健康保険加入者の自営業の方は対象外です。

参考:全国健康保険協会公式ホームページ 傷病手当金

労災保険

労災保険は会社員や公務員の方が、通勤中または勤務時間中に病気やけがをした時の公的保障です。うつ病が労災と認定されるためには以下の要件を満たす必要があります。


  • 認定基準の対象となる精神障害を発病している
  • 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6カ月の間に、業務による強い心理的負荷が認められる
  • 業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

参考:厚生労働省「精神障害の労災認定」[PDF]

これらの基準を満たすようであれば、労災保険からの給付が受けられる可能性があります。

自立支援医療(精神通院医療)

心身の障害を治療したり、軽減するための医療でかかる自己負担額を軽減する制度を自立支援医療(精神通院医療)といいます。申請は居住の市町村区や精神保健福祉センターで、許可されると「自立支援医療受給者証」が交付されます。この制度を利用すると、所得に応じた自己負担額が設定され、それを超過しないよう配慮されるとともに、医療費の負担が3割から1割になります。

重度心身障がい者医療費助成制度

重度心身障がい者医療費助成制度とは、心身に重度の障害がある方に対し、医療機関を受診した時の自己負担金を助成する制度です。自治体によって、対象となる障害に違いがあったり、認定方法や助成の内容が異なる場合があります。詳細は、お住まいの市区町村でご確認ください。

民間の保険会社の保障を利用する

民間の保険会社で販売されている、所得補償保険や就業不能保険を利用すると、うつ病にかかった時の治療費や生活費の補てんに充てられます。公的保障だけでは、減ってしまった収入のすべてを補てんするのは難しいため、民間の保険もあわせて準備しておくと心強いでしょう。

民間の保険会社が提供している就業不能保険(所得補償保険)とは、病気やけがで一定期間以上就業ができなくなった場合に、決められた金額が毎月受け取れる保険です。保険金は毎月10万円から15万円程度受け取れ、自分で金額を設定するのが一般的です。単体で加入できる場合もあれば、医療保険の特約で加入する場合もあります。

ただし、就業不能保険でうつ病にかかった時の費用補てんを考える場合は、注意点もあります。まず、受け取れる給付金の設定は、加入時の年収から設定されます。そのため、受取事由に該当して給付金を受け取る場合には、加入時の収入以上にもらえるような設定はできません。次に、すべての保険会社が精神病までを保障対象としているわけではない点に留意が必要です。

さらに支払事由に該当した時は、いつまで給付金が受け取れるのかもよく確認しておかなければなりません。例えば、30歳で加入して60歳まで保障がある就業不能保険に加入して35歳で就業不能になった場合、通常の病気やけがであれば35歳から60歳まで給付金が受け取れます。しかし、精神疾患で支払事由になった場合は、多くが2年まで、3年までと、給付期間の制限が設けられています。就業不能保険を検討する際は、支払い事由がどのようになっているのかもよく確認しておきましょう。

どうしても返済不能なら売却を検討する

うつ病で仕事ができなくなったうえ、住宅ローンを支払える見込みがなくなってしまった場合は、住宅の売却を検討せざるを得ません。不動産会社に相談のうえ、売却価格を確認して、手続きをすすめましょう。

この記事のQ&A

うつ病になると住宅ローンを組めない?

基本的にはうつ病にかかると、団信への加入が難しくなるので、団信必須の住宅ローンが組めなくなります。団信の告知では、過去の病歴や投薬歴を告知する項目があります。過去3年以内に2週間以上うつ病で通院や投薬があったら、告知事項として詳細に申告をしなければなりません。うつ病の場合、数日で治るケースはほとんどなく、数カ月~長期に渡る治療期間が発生する可能性が高いです。
うつ病は、仕事や日常生活に影響する疾患で、返済能力を不安視される要因になるため、住宅ローンの審査では厳しくみられる傾向があります。

うつ病でも住宅ローンが組めるのはどのような時?

うつ病は住宅ローンの審査で厳しくみられる疾患ですが、罹患歴があっても住宅ローンを利用できる可能性はあります。例えば、うつ病の治療が2週間未満で終了している場合や治療完了から3年以上たっている場合には、告知が必要ないので、団信の加入が困難になる要因が消えます。

あるいは、告知項目が少ないワイド団信を利用する方法もあります。ワイド団信は審査基準が通常の団信より緩和されているためです。ただし、その分保険料が高く設定されているので、住宅ローンの返済金額が高くなる点に注意しましょう。通常の団信が利用できなかったり、ワイド団信も利用できない場合は、フラット35を利用する方法もあります。

フラット35は、団信に加入しなくても利用できるため、うつ病の方が住宅ローンを利用する時の選択肢になります。しかし、団信に加入しないでフラット35を利用する場合、仮に住宅ローンの債務者が亡くなっても、住宅ローンの残債はなくならないので、残債が残っても遺族が返済できるよう返済が困らないようにしておきましょう。

住宅ローンの契約後にうつ病になったら?

住宅ローンの契約後にうつ病にかかっても、団信には精神疾患の保障がないため、住宅ローンの支払いは免除されません。住宅ローン契約後にうつ病にかかったら、公的な保障を利用するか、民間の保険会社で保障を自分で用意するしかありません。

公的な保障には、傷病手当金をはじめ、主に4つの制度があります。ただし、利用には承認が必要になります。民間の保険会社の保障には、就業不能保険や所得補償保険があります。こちらも利用するには、保険会社所定の基準をクリアする必要があります。どちらも、利用には制限があるので、もしうつ病にかかって完全に働けなくなり、収入が途絶えてしまったら、これまでの収入を100%カバーするのは難しくなります。

もし、住宅ローンを支払える見込みがなくなってしまった場合は売却するなど、住宅購入を諦めなければならない可能性もあります。

まとめ

本記事では、うつ病になると住宅ローンが組めない理由を説明しました。住宅ローンを契約する際、団信への加入が求められるのが一般的です。団信に加入するためには、健康状態を告知しなければなりません。うつ病の場合、この告知事項に該当することが多いため、団信に加入できずに住宅ローンを組めなくなってしまいます。しかし、うつ病に罹患した場合でも、住宅ローンが組めるケースがあります。ただし、金利が上乗せされたり、万一亡くなった場合でも返済義務が残ったり注意点があるため、よく検討しましょう。

どの病気やケガでも、いつ自分の身に起こるかはわかりません。もし起きてしまったらどうなるかを事前に確認しておき、万が一に備えておきましょう。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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