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シングルマザーでも住宅ローンは組める?審査を通りやすくするためのポイントや使える制度は?

シングルマザーでも住宅ローンを組んで家を購入できます
やむを得ずだったり、子どものことを想ってなど、シングルマザーになった理由は人それぞれです。さまざまな不安もあるなか、特にお金関係は相談しづらいことの一つでしょう。
そこで今回はシングルマザーの住宅ローンについて解説します。結論からいうと、シングルマザーの方が住宅ローンを組んで住宅を購入することは可能で、実例もあります。この記事では、審査を通りやすくするためのポイント、住宅を購入するにあたっての援助制度についてもご紹介します。

シングルマザーでも住宅ローンを組める?

シングルマザーであることが住宅ローンの審査で不利に働くことはありません
シングルマザーであることが住宅ローンの審査で不利に働くことはありません

シングルマザーの方でも住宅ローンを組んで住宅を購入することは可能です。本章では、実際にどれくらい購入している方がいるのか、審査で重視される項目について解説します。

シングルマザーの住宅所有率

厚生労働省の「令和3年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、「母本人の名義の持ち家」に居住している世帯は15.9%となっています。ちなみに、父子世帯で「父本人の名義の持ち家」に居住している世帯は48.3%となっており、父子家庭と比べると少ないですが、一定数いることがわかります。

住宅ローン審査で重視される項目

シングルマザーの方が住宅ローンを組むにあたって心配なところが「審査に通るか」という点でしょう。国土交通省「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」によると、金融機関が審査で重視する項目は下記のとおりです。

  • 完済時年齢:98.7%
  • 健康状態:97.9%
  • 借入時年齢:97.2%
  • 担保評価:98.1%
  • 勤続年数:93.2%
  • 連帯保証:93.1%
  • 返済負担率:92.9%
  • 金融機関の営業エリア:90.7%
  • 国籍:73.3%
  • 雇用形態:71.6%

なお、家族構成の項目は29.9%となっており、「シングルマザーだから通らない」ということはありません。大切なのは「住宅ローンを返済する能力があるか」「どう返済していくか」といった返済能力や返済計画です。

シングルマザーが住宅ローンを組むために必要な年収

住宅ローンを安定的に返済していくためにも、収入がどれくらいあるかは重要なポイントです。一般的に、200〜300万円が年収の最低ラインといわれています。メガバンクなどの大手銀行は、審査が厳しい傾向にあるため、400万円以上ないと難しいでしょう。

しかし、金融機関のなかには年収100万円台でも組めるローンを提供しているところもあり、低収入の場合も住宅ローンを組むことは可能。大切なのは、収入に見合った借入額を設定することです。そのため、最初から金融機関を1つに絞るのではなく、複数の金融機関を検討し選択肢を多く持つようにしましょう。

シングルマザーが住宅ローンを組むための雇用形態

シングルマザーの方が住宅ローンを組む際にあたって、理想の雇用形態は正社員です。正社員であれば、返済能力が高いと判断され、審査も通りやすい傾向にあります。一方、アルバイトやパート、派遣社員など、収入が不安定な雇用形態の場合、審査が厳しくなる傾向にあります。

しかし、絶対に組めないわけではありません。借入額を少なくしたり、過去の納税証明書や確定申告書のコピーを提出するなどして、自分の返済能力を客観的に証明するようにしましょう。

住宅ローンを組むための健康状態

金融機関が審査する際に重視する項目でも2位にあるように、健康状態も重視されます。もし病気やケガで返済が困難になると、金融機関にとって貸し倒れのリスクがあるからです。しかし、健康であれば働き続けることができ、安定した返済ができると判断されるため、健康状態は重視されます。

また、住宅ローンを組む際には、一般的に団体信用生命保険(以下、団信)の加入が前提となります。団信とは、住宅ローンの契約者に万一のことがあった場合、ローンの残債相当額を保障する保険です。加入する際には、健康状態を告知する必要があります。団信なしで契約できる住宅ローンもありますが、シングルマザーであれば何かあった場合、子どもだけ残されてしまう可能性もあるため、加入するほうが安心でしょう。

シングルマザーが住宅ローンの審査を通りやすくするポイント

シングルマザーが住宅ローン審査に通りやすくするためのポイントを解説します
シングルマザーが住宅ローン審査に通りやすくするためのポイントを解説します

一馬力で返済しなければならないシングルマザーは、住宅ローン審査がより厳しくなる傾向にあります。本章では、審査に通りやすくするためのポイントをご紹介します。

  • 無理のない返済計画を立てる
  • 返済負担率を手取り年収の20%以内に収める
  • 他の借り入れがあれば返済する
  • 余裕を持って自己資金を用意する
  • 親子リレーローンや両親との収入合算を検討する
  • 女性にやさしい住宅ローンを検討する
  • 勤続年数が短い場合はフラット35を利用する

それぞれ詳しくみていきましょう。

無理のない返済計画を立てる

シングルマザーの方が住宅ローン審査を通過するためには、無理のない返済計画を立てることが不可欠です。金融機関は返済能力を評価する際に、申込者の返済計画を重視します。無理のない計画を立てることで、信用度が高まり、審査の通過率が上がります。

また、突発的な支出や生活の変化に備えるためにも、無理のない返済計画は重要です。住宅を購入する際にも大きな金額が必要ですが、購入後も固定資産税やリフォーム代などを支払わなければなりません。購入したあとも継続的にかかる費用を踏まえたうえで、無理なく返済できる計画を立てましょう。

返済負担率を手取り年収の20%以内にする

返済負担率を、手取り年収の20%以内に抑えるようにしましょう。返済負担率とは、年収に占める返済額の割合のことで、返済負担率が低いほど返済が安定します。例えば、手取り年収が300万円で返済負担率を20%に収めようとした場合、60万円が年間の返済額となります。

しかし、返済負担率はあくまで目安の1つとして考えましょう。他に借り入れがあったり、支出が多かったりすれば、20%以内でも返済できなくなる可能性があります。返済負担率20%以内かつ手取り月収の5%を貯蓄できるように設定すると、余裕が持てるでしょう。

他の借り入れを返済する

他の借り入れがある場合には、優先的に返済するようにしましょう。住宅ローンの審査では、個人信用情報も確認されます。個人信用情報とは、クレジットカードやローンの契約内容や支払い状況などに関する情報のことです。借り入れを返済することで信用情報が良好に保たれるほか、返済実績があるため返済能力があると判断され、審査が通りやすくなります。

自己資金を多めに用意する

住宅ローンの審査を受ける際に、多めに自己資金を用意し、余裕を持つことも大切です。自己資金が多いと、頭金を入れることができ、借入額を抑えられ、月々の返済額や返済負担率を下げることができます。しかし、万一があった場合の備えも大切です。「頭金を入れすぎて病気やケガに備えられない……」ということがないよう、手元にはある程度の資金を残しておくようにしましょう。

親子リレーローンや両親との収入合算を検討する

シングルマザーの方が住宅ローン審査を通りやすくするためには、親子リレーローンや両親との収入合算を検討するのも一つの方法です。親子リレーローンとは、親が主債務者、子が連帯債務者となり、親子二世代で返済していくローンのことです。はじめに親が返済し、そのあとに子が返済を引き継ぎます。

収入合算とは、契約者の収入と他人、ここでは親の収入を合計して申し込みます。収入を合算することで、借入額を増やすことができます。シングルマザーの収入だけでなく、両親の収入を合わせることで、返済能力が上がり、審査も通過しやすくなります。

しかし、もし団信に子ども(シングルマザー)だけが加入していた場合、親に万一のことがあった場合、残債を引き続くことになります。また、収入合算の場合は、親が病気やケガで働けなくなったときのリスクも考えなければなりません。これらのことを考慮したうえで、検討しましょう。

女性にやさしい住宅ローンを利用する

住宅ローンには、女性にうれしい特典が付いているものもあります。例えば、金利が優遇されていたり、乳がんや子宮がんなど、女性ならではの病気への保険がついているものです。

りそな銀行の女性専用の住宅ローン「凛next」がその一つで、内容は次のとおりです。

  • 保険料無料で就業不能時あんしん保険がつく
    疾病や障害によって30日間を超える就業不能が継続した場合、最長12カ月保険金でローンの返済額をカバー(ボーナス返済額も含む)。地震や津波などの天災事故による入院も補償対象。

  • 金利に年0.15%上乗せで3大疾病保障特約が選べる
    「がん」と診断され、所定の条件に該当した際には、保険金で住宅ローンの完済が可能。急性心筋梗塞や脳卒中で、所定の状態が60日以上継続した場合も保険金で完済ができます。

  • 繰上げ返済手数料が無料
    通常の商品では10万円から手数料が無料のところを、元利金返済額1万円から手数料が無料です。

住宅ローンの商品名に「next」とあるように、女性の新生活を後押ししたいという想いが伺えます。

勤続年数が短い場合はフラット35を利用する

生活を立て直したばかりで、勤続年数が短いシングルマザーの方もいるでしょう。「フラット35」は、申し込み要件に勤続年数がないため、勤続年数が短くても審査に通る可能性があります。「フラット35」では、転職した日から1年未満であっても、転職後の収入を証明する書類を提出すれば、転職後の収入を給与が支給された月数で割り戻し、年収とみなすとしています。

また、起業した場合であっても、起業した年度中は申し込みできませんが、翌年からは申し込みが可能です。勤続年数が短い場合はフラット35を検討してみましょう。

シングルマザーが受けられる制度

シングルマザーが住宅を購入する際に受けられる制度として母子父子寡婦福祉資金貸付金制度があります
シングルマザーが住宅を購入する際に受けられる制度として母子父子寡婦福祉資金貸付金制度があります

住宅の購入は、人生のなかでも大きな買いものです。特に一馬力のシングルマザーの方にとっては、大きな決断でしょう。本章では、住宅を購入するにあたって受けられる制度、シングルマザーの方が受けられる制度を解説します。

母子父子寡婦福祉資金貸付金制度

住宅を購入するにあたって、お金に不安がある場合は、「母子父子寡婦福祉資金貸付金制度」を利用するのも一つの方法です。住宅を購入する時や改築する時などに、必要な資金を借りることができます。具体的な内容は次のとおりです。

 貸付上限額  150万円
 特別:200万円
 据置期間  6カ月
 償還期間  6年以内
 特別:7年以内
 利率  保証人あり:無利子
 保証人なし:年1.0%

出典:内閣府 男女共同参画局

審査を受ける必要がありますが、保証人がいれば無利子で借りられます。また、「転宅資金」として、引越し費用として最大26万円まで借りることも可能です。詳細は最寄りの地方公共団体の福祉担当窓口に問い合わせてみてください。

シングルマザーが受けられる減税制度

シングルマザーの方が受けられる減税の制度には、ひとり親控除と寡婦控除の2つあります。しかし、この2つの制度は併用できません。ご自身がどちらを利用するか、それぞれの違いを理解しておきましょう。

  ひとり親控除 寡婦控除
控除の金額 35万円 27万円
対象となる人
3つの要件すべてに当てはまる人
(1)事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいないこと
(2)生計を一つにする子どもがいること
※子どもの総所得金額等が48万円以下かつ他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない
(3)合計所得控除金額 500万円以下であること
ひとり親に該当せず、次のいずれかにあてはまる人
(1)夫と離婚したあと婚姻しておらず、扶養親族がいる人で合計所得金額が500万円以下の人
(2)夫と死別したあと婚姻をしていない人、または夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下の人

参考:国税庁「No.1171 ひとり親控除
参考:国税庁「No.1170 寡婦控除

ひとり親控除と寡婦控除の違いは、婚姻関係の有無です。ひとり親控除は未婚の親でも対象となります。しかし、事実婚の場合は対象外となるため注意しましょう。また、養育費を受けとっている場合、元父と子が「生計を一にしている」とみなされるため、子どもを扶養親族にすることができず、ひとり親控除の対象とならないことも理解しておきましょう。

シングルマザーが住宅ローンを組む際によくある疑問

シングルマザーの方が住宅ローンを組むにあたって疑問に思うことをまとめました
シングルマザーの方が住宅ローンを組むにあたって疑問に思うことをまとめました

本章では、シングルマザーの方が住宅ローンを組むにあたって疑問に思うことをまとめました。

住宅を購入しても児童扶養手当は受け取れる?

児童扶養手当は、子どもを育てるひとり親家庭の経済的負担を軽減するための手当です。住宅を購入しても引き続き受け取ることができるのか、気になる方も多いでしょう。受給資格は、両親の離婚や死亡、重度の障害などであり、住宅の有無は条件に入っていません。そのため、住宅を購入しても、継続して児童扶養手当を受け取れます。

しかし、両親や兄弟姉妹と暮らしていて、一人でも収入基準額を超える人がいる場合には支給されないため、購入した住宅に同居する場合は気をつけましょう。

妊娠中でも住宅ローンを組める?

妊娠中でも住宅ローンを組むことは不可能ではありませんが、審査が厳しくなる傾向にあります。なぜなら、妊娠中は特有の病気や流産・早産などのリスクがあるため、団信に加入できない可能性があるからです。また、無事に出産したとしても、産休・育休後に仕事に復帰できるかはわかりません。金融機関は、確実に返済できるか審査しています。妊娠中はリスクが高いため、審査が通りづらいことを覚えておきましょう。

児童手当や児童扶養手当は収入として合算できる?

金融機関によって、児童手当や児童扶養手当を収入として合算できるかは異なります。審査を受ける金融機関に事前に確認しましょう。

まとめ

今回は、シングルマザーの方が住宅ローンを組めるのか、審査に通りやすくするためのポイントなどを解説しました。シングルマザーの方でも、安定して収入を見込め、継続的に返済ができると判断されれば、住宅ローンを組んで住宅を購入することは可能です。

また、貸付時に審査を受ける必要はありますが、国による支援制度もあります。「本当に返していけるだろうか……」など不安になることもあるかと思いますが一人で抱え込まず、専門家のアドバイスを受けながら新生活へ一歩踏み出しましょう。

民辻伸也

執筆者

民辻伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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