栃木県宇都宮市を拠点に、住宅などの建築設計を手掛けている神原浩司さん、敦子さんご夫妻。一昨年、浩司さんが生まれ育った築45年の古家を、住まいと仕事場が一体になった2階建て一軒家に建て替えた。 玄関ドアを開けると、明るく広い大谷石の土間が目の前に広がる。「宇都宮で生まれ育った私は、どこかに地産の大谷石を使いたいと思っていて、まず思い浮かんだのがこの玄関土間でした。大谷石と木の組合せはとてもきれい。そのうえ、石自体の表情も豊かで、柔らかい雰囲気も持っている。その美しさをエントランスで表現したかったんです」(浩司さん)
より印象的な空間に仕上げるために、石の表面をチェーン引きという方法で加工。さらにLDKの一角にある薪ストーブの炉壁にも、大谷石を採用した。 「断熱性や耐火性が高いだけでなく、熱をはね返して空間に放出するんです。だから熱効率がとてもよくなるんですよ」(浩司さん) クリのフローリングやキリの天井材ともマッチし、インテリアのアクセントとしても大谷石が効果的に生きている。
「家づくりでは、いつも人や家族、自然とのつながりを重視している」と話す神原さんご夫妻。自邸では敷地の東側にある県立公園のイチョウ並木を取り込むように大きな開口部を取り、LDKから緑や紅葉が常に眺められるように設計。空とつながるハイサイドライトをふと見上げると、きれいな夕日や月明かりにハッとすることもある。そんな日々の気づきを大切に生活しているという。
気持ち良い風もふんだんに入り、夏でも余程の猛暑日でなければエアコンは使わずに過ごせるそう。自然を楽しむ快適な暮らしは、結果的に省エネルギーにも貢献しているようだ。 間取りは家じゅうどこにいても家族の気配が伝わり、自然とLDKに集まる造りに。「家には家族の拠り所となる場所が必要。家族が関わり合うことで、毎日安心して楽しく暮らすことができるのです」(敦子さん)