のどかな田園風景が広がる長野県安曇野市にKさんご夫妻が家を建てたのは2012年のこと。結婚後、
約10年間はご主人の職場に近い、市外の賃貸アパートで暮らしてきたが、ご主人が生まれ育った地に家を建てたいと土地探しからスタートさせた。
「初めはどんな家にしたい、という具体的なイメージがほとんどなかったんです。そこで、長野市の設計事務所が主催していた「すまい教室」に参加してみることにしました。そこでは、設備や間取りに目を奪われがちな家づくりではなく、『どう暮らしたいか』を中心に据えた考え方を知って感動しました。3回の教室が終わるときには、この設計事務所にぜひ建ててほしいと思っていました」(奥さま)。
家づくりにあたり、初めに「暮らしの要望」をヒアリングシートに記入していき、それをもとに設計事務所と一緒にプランを考えていった。
「この景色は、実は土地を買った当初はそれほど意識していませんでした。要望は、憧れだった薪ストーブがある暮らしがしたいことと、夫婦で料理が楽しめるキッチンがほしいことぐらい。でも設計者は、最初からこの眺めに重点を置いたプランを考えてくれ、キッチンに立ったときに見える風景を真っ先にデッサンしてくれました。それが本当に心地良さそうでしたし、実際にその通りの眺めになりました」(ご主人)
田園風景をたっぷり取り込むリビングを実現するため、1階はワンルームのLDKとし、寝室や浴室など はすべて2階にまとめてパブリックとプライベートを完全に分けた。開放的であると同時に気密性と断熱性を高めたため、夏は朝の涼しい空気を取り込んだ後に障子を閉めておけば、土蔵のようにひんやりと涼しく、冬の天気の良い日は、陽の光だけでも十分に暖かいという。「いちばん気に入っているのは、やはりこの景色。家の中にいても四季を体感できます。薪割りも最初は重労働かも…と心配していましたが、やってみるととてもおもしろいですよ」(奥さま)。家で過ごす時間こそがいちばんの楽しみ。都心では実現し得ない、郊外ならではの暖かく、のびやかな時間が重ねられていく。