リビングから見渡す広大な平野、背後には雄大な岩手山。山歩きや山菜採りが趣味のTさんご夫妻は、自宅がある盛岡市内からよく通っていた十和田八幡平国立公園網張の麓にセカンドハウスを建てた。 「もともと土地を買うつもりはなかったのですが、山歩きの帰りに『温泉付き分譲地』の看板を見て立ち寄ったら、数年後に定年を控えていた主人が『趣味を満喫できる第二の人生の拠点を構えたい』と購入を即決。設計は、岩手県産の木材にこだわった家づくりをしている工務店にお願いしました」(奥さま)
工務店は、「敷地内の木をなるべく切らずに、木とともに暮らしたい」というご夫妻の要望に応え、灌木をほぼそのまま残して設計。家屋は基本的には夫婦で使える平屋のプランながら、すでに独立した3人のお子さんたちも含めた家族それぞれが趣味を楽しめる工夫が随所に盛り込まれた。アイデアのほとんどは、奥さまの発案だ。
「市内の自宅ではできなかった野菜づくりを始めたいという主人の要望にあわせ、土で汚れたままでも入れるトイレを室内とは別に設けました。 工務店には『このサイズの山の家にトイレを2つ作るなんて初めてです』と驚かれましたが(笑)」(奥さま) 他にも、子どもたちが孫を連れて遊びに来た際に寝室として使えるよう、リビングの一角に障子で仕切れる和室を設け、ロフトも2箇所設置。浴室は、子どもと孫と一緒でもゆったり入れるよう洗い場を広く確保した。カウンターキッチンに立ち、家族や孫の様子をぐるりと見渡すのが、奥さまのいちばんのお気に入りだという。
「子どもや孫たちが遊びに来たときに料理をふるまうのは、まだまだ私の領域。家族が部屋でくつろいだり、長男家族が庭先でテントを張ってアウトドアを楽しんだり、次女が近所をジョギングしていたり。料理を作りながら、そんな家族の様子が一度に分かるのが嬉しいですね」と奥さま。 市内からは車で約40分。季節を問わず、ほぼ毎週末をここで過ごしてきたそうだが、鉄道の敷設に長年従事してきたご主人が、昨年末でめでたく退職し、本格的に第二の人生のスタートとなった。春からは野菜づくりや山歩きに一層熱が入る予定だ。