家を売るか貸すかどちらを選ぶべき?それぞれのメリット・デメリットを解説

本記事では、家を売るか貸すかでよく悩むポイントを紹介したうえで、それぞれのメリット・デメリットを解説します。また、判断に役立つポイントと判断時の注意点を紹介。記事を読むことで、家を売るべきか、貸すべきか、根拠をもって判断できるようになるでしょう。
記事の目次
家を売るか貸すかで悩むポイント

まず、家を売るか貸すかを考えるにあたって、考えるべきポイントを明確にしましょう。具体的に悩みやすい内容である以下の項目を紹介します。
- 期待される収益の性質
- 負担する費用・税金
- 想定されるリスク
- 家が手元に残るかどうか
- どのような手間がかかるか
それぞれ詳しく見ていきましょう。
期待される収益の性質
家を売る時の収益はキャピタルゲインであり、一回の取引でまとまった利益を得られます。一方で、家を貸す時の収益はインカムゲインであり、毎月安定的に家賃収入を得られるようになります。家を売る時と貸す時では収益の性質が異なるため、単純に金額を比較するだけでなく、どのように利益を受け取りたいかによっても判断は変わってくるでしょう。
負担する費用・税金
家を売る時と貸す時で負担する主な費用・税金を、以下にまとめました。
家を売る時に負担する費用・ 税金 |
家を貸す時に負担する費用・ 税金 |
---|---|
仲介手数料 | 賃貸経費(修繕費用含む) |
印紙税 | 固定資産税・都市計画税 |
譲渡所得税・住民税 | 所得税・住民税 |
家を売る時に負担する税金・費用は、一度支払ってしまえば、それ以降は負担する必要がありません。一方で、家を貸す時に負担する税金・費用は継続して発生する違いがあります。家を貸す場合は収益だけでなく、費用・税金も継続的に発生することを理解しておきましょう。
想定されるリスク
家の売却で想定されるリスクは、売却タイミングによって損をする可能性があることです。将来的に価値が高まる物件を保有しているなら、賃貸に出して所有者であり続けるほうがメリットは大きいでしょう。
しかし、賃貸では運用状況によっては思うように収益を得られないリスクがあり、運営に必要なコストの負担によって損をすることも。売却以外にも賃貸を選べる状況では、複数のリスクが想定されるため、決定しにくいと考えられます。
家が手元に残るかどうか
家を売却すれば、完全に手元から離れてしまい、再びその家に住むことはできなくなります。賃貸に出せば所有権は維持されたまま、将来的には自分や子・親族が住むことも可能です。
ただし、家を残し続けるなら固定資産税・都市計画税などの税金が継続してかかります。賃貸に出しても収益を見込めない家であれば、手元に残すことがマイナスになることも考えられるでしょう。ただし、対象となる家に思い入れがあるかどうかによっても、家を手元に残すべきか判断が分かれると考えられます。
どのような手間がかかるか
家を売却するには、売却活動をおこなう必要があります。買主を見つけて契約が成立するまで一時的にまとまった時間を取られることが予想されますが、不動産会社に依頼すれば売却活動にかかる時間を軽減できるでしょう。
一方で、賃貸経営を自分でおこなう場合は、広告や内覧手配、契約締結、入居・退去対応から日々のトラブル対応が継続して発生します。ただし、不動産管理会社に賃貸経営を委託すると、大きな手間はかかりません。どちらも専門家に任せることで時間を節約しやすくなるでしょう。
家を売るメリット・デメリット

家を売るべきか貸すべきか判断するには、それぞれのメリット・デメリットを詳しく知ることが重要です。まずは、家を売るメリット・デメリットを見ていきましょう。
家を売るメリット
家を売るメリットは以下のとおりです。
- まとまった現金がすぐに得られる
- 維持費・管理のコストから解放される
- 総合的にかかる手間が少ない
それぞれ詳しく解説します。
まとまった現金がすぐに得られる
家を売却するメリットは、まとまった現金をすぐに得られる点にあります。住むことのない実家や、住み替え予定の家であれば、売却によって得た収益を新たな住居の購入資金にできます。万が一の場合、急な出費や生活資金の確保にも柔軟に対応できるでしょう。
維持費・管理のコストから解放される
家を所有している間は、毎年の固定資産税や都市計画税、定期的な修繕費用がかかります。しかし、家を売却すれば維持費・管理のコストから解放されるため、家の所有による継続した支出を削減可能です。
総合的にかかる手間が少ない
家を貸す場合と比較して、売るほうが総合的にかかる手間は少なくなります。売却が終わったあとには負担がゼロとなり、それ以降の手間が一切発生しないからです。
家を売るデメリット
一方で、家を売るデメリットは2つあります。
- 家を手放さなければならない
- 住宅ローンの完済をする必要がある
それぞれ詳しく解説します。
家を手放さなければならない
家を売却すると、その物件の所有権が完全に手元から離れるため、将来的に戻る選択肢がなくなります。親と同居していた実家で愛着がある場合は、売却をためらう理由になるでしょう。仮にあとから買い戻したいと考えても、手放した物件を再び得ることはハードルが高くなる可能性が高いです。
住宅ローンの完済をする必要がある
住宅ローンが残っている状態では、家を売却できないため完済する必要があります。売却価格が住宅ローンの残債を上回るアンダーローンの場合は、引き渡しと同時に残債を一括返済して抵当権を抹消すれば売却可能です。しかし、売却額が住宅ローンの残債を下回るオーバーローンでは、住宅ローンを完済できないため家の売却が難しくなります。
家を貸すメリット・デメリット

続いて、家を貸す場合のメリット・デメリットを把握しましょう。家を売る場合のメリット・デメリットと比較することで、どちらのほうが自分に合っているかわかるようになります。
家を貸すメリット
家を貸すメリットは3つあります。
- 安定した収益が得られる
- 人が住むことで建物を維持できる
- 将来自分で住む選択肢を残せる
それぞれ詳しく解説します。
安定した収益が得られる
家を貸す最大のメリットは、毎月安定した家賃収入を得られることにあります。長期的に継続するインカムゲインは、将来にわたって家計の安定への貢献が期待できるでしょう。生活費などの毎月かかるまとまった支出の補填、老後の安定した収入源として貸した家が役に立ちます。
人が住むことで建物を維持できる
人が住まなくなった空き家を放置すると建物が劣化して、資産価値が大きく減少することがあります。また、空き家として放置すれば、自治体から特定空き家に指定され、固定資産税の負担が重くなるデメリットも。賃貸に出して人が住むことで、建物の資産価値を維持しながら税金の負担を減らす効果も期待できるでしょう。
将来自分で住む選択肢を残せる
家を貸す選択肢を選ぶ場合は、所有権を維持しながら収益化するため、将来的には再び自分で住む選択肢を残せます。例えば、転勤や長期出張などで一時的に家を空けるのであれば、定期借家契約を利用して契約期間を定めることで、スムーズに再入居できるでしょう。将来的に、子どもや親族に住まわせる選択肢もとることができます。
家を貸すデメリット
一方で、家を貸すデメリットは以下のとおりです。
- 収支が赤字になるリスクがある
- 貸主として義務や手間が発生する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
収支が赤字になるリスクがある
賃貸経営で失敗すると家賃収入が維持費を下回り、損をしてしまうリスクがあります。長く住んだ家であれば修繕が必要になる可能性も高く、修繕費の支払いで収支が一時的に赤字になることも。家を賃貸に出して維持費を上回る家賃収入を得なければ、負債を抱える可能性があります。
貸主として義務や手間が発生する
家を貸す場合は、貸主としてさまざまな義務や手間が継続的に発生します。建物の劣化や設備故障があれば、速やかに修繕しなければなりません。不動産管理会社に委託して管理の手間を減らすことはできます。しかし、所有する家を貸し続ける限りは、管理会社にコストである管理委託費を支払い続けることになります。
家を売るか貸すかで悩む場合に判断に役立つポイント

家を売るか貸すかで悩む場合に、判断に役立つポイントは3つあります。
- 現在の市場価格と賃貸相場を調べる
- 期待される収支を計算する
- 税制に関する内容を確認する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
現在の市場価格と賃貸相場を調べる
家を売る場合も貸す場合も、現状の価格水準を正確に把握することが重要です。市場価格と賃貸相場は大手不動産ポータルサイトで類似した物件を調べることで判断できます。同じエリアにあり、立地・間取りなどの条件が近い家を複数探して、市場価格と賃貸相場を比較してみましょう。正確な市場価格と賃貸相場を知りたい場合は、不動産会社に相談して査定を受けることで把握できます。
期待される収支を計算する
次に、期待される収支を具体的に計算します。家を売る場合と貸す場合に期待できる収支の計算方法を以下にまとめました。
- 家を売る場合の収支 = 現在の市場価格 - 売却にかかるコスト
- 家を貸す場合の収支 =(年間の家賃収入 - 年間の維持管理コスト)× 賃貸に出す年数
例えば、不動産会社を通して2,000万円で家を売却し、売却にかかるコストが合計で100万円であった場合。「2,000万円 - 100万円 = 1,900万円」が売却で期待できる収支です。
次に、家を貸すケースで、年間130万円の家賃収入で維持管理コストが30万円と仮定しましょう。10年貸し出した場合、「(130万円 - 30万円)× 10年 = 1,000万円」の家賃収入が合計で見込めます。
より利益が高いほうを選ぶことも選択肢の一つです。しかし、家を貸す場合は貸したあとにも売却を検討することができます。実際に収支を計算して、個々の事情にあわせて魅力を感じた選択肢を選びましょう。
税制に関する内容を確認する
家を売る場合には、節税制度を利用すると税金がかからなくなる場合があります。例えば、居住用財産を売却した場合の3,000万円特別控除を利用すれば、3,000万円までの所得にかかる税金が非課税になります。
また、売却・賃貸を判断するにあたって、家の所有期間が5年を超えるかどうかは重要な基準です。なぜなら、所有期間が5年以下の場合は短期譲渡所得となり、不動産所得に対して税率は約39%。しかし、所有期間が5年を超える場合は、約20%の税率になり税金が優遇されます。
家を売却するか、賃貸に出すか判断するなら、税制的に有利であるかを確認してから判断することをおすすめします。
家を売るか貸すか判断時の注意点

最後に、家を売るか貸すか判断するにあたっての注意点を紹介します。
- ローンが残っている場合は返済条件を確認する
- 基本的に確定申告は必要になる
- 判断が難しい場合は専門家に相談する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ローンが残っている場合は返済条件を確認する
住宅ローン返済中の家を売却する際は、引き渡しまでに抵当権を抹消する必要があり、そのためには残債を一括返済しなければなりません。また、家を貸す場合も住宅ローンの残債があるなら、無断で第三者に貸し出すと契約違反になる可能性があります。なぜなら、住宅ローンは契約者の居住を前提に組むローンであるからです。
どちらの場合も、ローンを借り入れた金融機関へ事前相談をおこないましょう。家を売る理由が住み替えであれば、残債と新居の購入資金をまとめて借り入れる住み替えローンを組むことで、一括返済できない場合も家を売却できるケースがあります。
転勤などやむをえない事情が認められる場合は、定期借家契約などの期間を限定した賃貸借契約であれば、住宅ローンの返済を続けながら賃貸に出す許可が下りることも。認められない場合は、金利の高い投資用ローンに借り換えることになります。ローンが残っている場合は、必ずしも自分の思うような選択肢が取れない可能性があることを理解しておきましょう。
基本的に確定申告は必要になる
どちらの場合でも、基本的に確定申告は必要になります。家の売却では、譲渡所得にかかる譲渡所得税・住民税を納めます。家を賃貸に出した場合は、発生した所得に対して継続的に確定申告が必要です。
所得が赤字になる場合は、納める税金がないため確定申告の義務はありません。しかし、申告することで控除を受けられる可能性があります。例えば、特定のマイホームの譲渡損失の損益通算では、一定の要件を満たす居住用財産を売却して譲渡損失が生じた場合に、その年の給与所得や事業所得など他の所得と合算して控除を受けられる仕組み。
どちらの場合も、共通して確定申告の手間はかかります。節税制度の適切な利用を含めて正しく申告したい場合は、税理士などの専門家に任せることも選択肢の一つです。
判断が難しい場合は専門家に相談する
家を売るか、貸すかについて個人で判断が難しい場合は、専門家に相談することをおすすめします。売却と賃貸でどちらのほうがメリットが大きいかは、複数の要素を総合的に判断する必要があるからです。一人で考えてもわからない場合は、専門的な知識を持つ第三者の客観的な視点を取り入れることで、正しい判断をしやすくなるでしょう。
まとめ
家を売るか、貸すかは一生に一度あるかないかの大きな決断です。売却する場合も賃貸に出す場合もメリット・デメリットがあるため、後悔のない選択をするようにしてください。特に家を売る場合は、手放した家を取り戻すことは難しいため、手放した家に再び住む選択肢はなくなります。
思い入れがある場合は、賃貸に出して所有を続けることも検討しましょう。単純にメリットを比較して判断したい場合は、自身で考えるだけでなく、専門家の意見を聞くことで最適な選択が見えてきます。
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執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
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