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オーナーチェンジ物件はなぜ売れない?売却しづらい理由や売れない時の対処法を解説

オーナーチェンジ物件が売れない理由や売れない時の対処法を解説します
さまざまな理由から、所有している収益物件を売りたいと考えているオーナーのなかには、「オーナーチェンジ物件は売れない」と聞いて不安に思っている方もいるのではないでしょうか。
しかし、オーナーチェンジ物件の購入希望者からすれば「なぜ売るのか」理由を知りたいと考えるのが当然です。本記事では問題なく売却できる場合、売りにくい場合のそれぞれの理由や、売れない時の対処法を解説します。ご自身がどのパターンに当てはまるのかを考え、最適な方法を選択しましょう。

オーナーチェンジ物件とは

オーナーチェンジ物件とは入居者がいる状態で売買される収益物件のことです
オーナーチェンジ物件とは入居者がいる状態で売買される収益物件のことです

まずオーナーチェンジ物件とは何か、押さえておきましょう。オーナーチェンジ物件とは、入居者がいる状態で売買される収益物件のこと。買主は収益物件だけでなく、入居者との賃貸借契約も引き継ぎます。買主のメリットとして、すでに入居者がいるため、すぐに家賃収入を得られることが挙げられます。また、空室率が低い収益物件であれば、安定した家賃収入を期待できます。

オーナーチェンジ物件として売却する際に問題になる・ならない理由とは

オーナーチェンジ物件として売却する理由によっては買主が敬遠する可能性もあります
オーナーチェンジ物件として売却する理由によっては買主が敬遠する可能性もあります

購入希望者からすると、「なぜオーナーチェンジ物件として売るのか」気になるところです。売買する際に、聞かれることもあるかもしれません。理由によっては、購入をためらわれることもあるでしょう。本章では、売却するにあたり問題にならない場合と、問題となる場合のそれぞれの理由について解説します。

売却するにあたり問題にならない理由

まずは収益物件を売却するにあたり、問題にならない理由を解説します。

利益を確定させるため

所有する収益物件が十分な利益を上げている場合、オーナーチェンジ物件として売却しやすいでしょう。近年、不動産価格が高騰しています。購入時よりも大幅に上がっている場合、売却することで収益が見込めます。売却益で新たな収益物件を購入することもできるでしょう。ただし、売却益が出た場合には、譲渡所得税がかかります。売却する前には、不動産会社やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するといいでしょう。

相続税対策のため

相続税対策のために、収益物件の売却を考える方もいるでしょう。相続人が多い場合や現物不動産の場合、遺産分割が難しいため相続時にトラブルになる恐れがあります。収益物件を売却してあらかじめ現金化しておくことで、分割しやすくなります。オーナーチェンジ物件の購入希望者も、売却する理由として納得しやすいでしょう。

売却するにあたり問題となる場合の理由

次に収益物件を売却するにあたり、問題となる理由を解説します。これらの理由は購入希望者にとってもリスクがあることから、なかなか売却できない可能性があります。

損切りのため

築年数が経ち、競合物件が増えたことで競争力が低下し、赤字経営となっているために売却する場合は、なかなか売却できないでしょう。入居者がいる状態でリノベーションすることは難しいため、抜本的な空室対策ができません。赤字が続く可能性が高いことから、購入希望者の購入のハードルは高いでしょう。

入居者や近隣とのトラブルがあったため

入居者や近隣とのトラブルが原因で売却する場合も、なかなか売れない可能性があります。例えば、家賃滞納やマナー違反などの場合。オーナーチェンジ物件は、入居者はそのままであるため、同様のトラブルが起きる可能性があります。購入希望者からすると、入居者や近隣とのトラブルは避けたいため、売却が難しくなるでしょう。

大規模修繕が近いため

大規模修繕が近く、高額な修繕費がかかる前に売却したい時も、売却が難しくなる恐れがあります。修繕工事の内容としては、外壁の塗装や屋根・床の防水など。国土交通省の「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によると、大規模修繕工事1回目の工事金額は4,000万円〜6,000万円の割合が高くなっています。高額な修繕費がかかることをわかっているため、購入希望者は少なくなるでしょう。場合によっては、高額な修繕費を踏まえ、希望する売却価格で売れない可能性もあります。

入居者の賃貸借契約が満期を迎えるため

入居者の賃貸借契約が満期を迎える際も、オーナーチェンジ物件として売却しづらくなります。なぜなら満期を迎えると同時に、入居者が退去する可能性があるからです。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会「第27回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』2022年4月〜2023年3月」によると、平均居住期間は単身者で約3年、ファミリーが約5年となっています。入居者が退去し空室になると、家賃収入が減少したり、新たな入居者を探す手間がかかるため、購入希望者の負担となることから敬遠されるでしょう。

オーナーチェンジ物件はなぜ売れない?

オーナーチェンジ物件は一般的な不動産と比較して売却しづらい理由があります
オーナーチェンジ物件は一般的な不動産と比較して売却しづらい理由があります

オーナーチェンジ物件として売却する場合、理由によっては購入希望者の負担となることから、敬遠される可能性があります。そもそもオーナーチェンジ物件は、一般的な不動産と比較して売却しづらくなります。なぜ売れないといわれているのか、理由を見ていきましょう。

購入希望者が投資家に限られる

オーナーチェンジ物件が売れない理由の一つとして、購入希望者が投資家に限られる点が挙げられます。
一般的な不動産では、自分が住むことを目的とするため、購入希望者も集まりやすくなるでしょう。一方、オーナーチェンジ物件は投資目的で購入するため、購入希望者が投資家に限られます。さらに、購入後に収益を上げられる物件なのか、厳しくチェックされます。いい条件である収益物件でなければ、売却しにくいでしょう。

内覧ができない

オーナーチェンジ物件が売れない理由に、入居者がいるため内覧ができないことが挙げられます。購入希望者からすると、収益物件の状態を直接確認できないため、購入判断が難しくなります。写真や資料だけでは、物件の細かい部分や全体の雰囲気を把握できないため、デメリットとなるでしょう。

不動産投資ローンが組めないため

購入希望者が不動産投資ローンを組めないことも、オーナーチェンジ物件が売れない理由の一つです。オーナーチェンジ物件は投資用の物件であるため、通常の住宅ローンでは購入できません。そのため、不動産投資ローンを組むか、現金で一括購入するかの二択となります。不動産投資ローンは高金利であり、収益が見込めなければ赤字となる可能性も。購入希望者が不動産投資ローンを組める属性の高い投資家や、資産のある投資家に限られるため、なかなか売却しにくいといえます。

入居者を選べないため

オーナーチェンジ物件が売れない理由に、入居者を選べないことも挙げられます。新築した場合は、入居者を一から募集するため、審査が可能です。しかし、オーナーチェンジ物件はすでに入居者がいるため、審査ができません。家賃の滞納履歴やクレームなどがあった場合でも、購入希望者からするとわからないため、経営のリスクが高くなります。入居者を選べないことも売却しづらい原因となるでしょう。

オーナーチェンジ物件の売却価格の決め方

オーナーチェンジ物件における売却価格の決め方を解説します
オーナーチェンジ物件における売却価格の決め方を解説します

オーナーチェンジ物件の売却を成功させるためには、適切な売却価格の設定が重要です。適切な売却価格を設定すれば、売却活動がスムーズに進むでしょう。本章では、売却価格の決め方を2つ解説します。

直接還元法

直接還元法とは、1年間で得られる純収益を、還元利回りで割り戻す算出方法です。還元利回りとは、収益物件から得られる純利益を物件価格で割った数字のこと。計算式は次のとおりです。

収益物件の価格 = 1年間で得られる純収益 ÷ 還元利回り

例えば、1年間の収益が200万円、還元利回りが5%の場合の収益物件の価格を計算してみましょう。

200万円 ÷ 5% = 4,000万円

この場合、4,000万円が収益物件の価格となります。

DCF法

DCF法とは、「ディスカウント・キャッシュフロー法」の略称で、収益物件から得られると期待される純利益を、現在の価値に割り引いて計算するものです。例えば、100万円を金利1%の預金に預けた場合、1年後には101万円です。言い換えると1年後の100万円は、現在の価値に直すと100万円未満になります。つまり、DCF法は現在の価値と将来の価値が異なるという考え方を考慮した計算方法。計算式は次のとおりです。なお、nは物件の保有年数です。

保有期間における純利益 = 年間収益 ÷(1 + 割引率)+ 年間収益 ÷(1 + 割引率)の2乗 + …… 年間収益 ÷(1 + 割引率)のn乗
保有期間満了時点での収益物件の価格(復帰価格)= 売却価格 ÷(1 + 割引率)のn乗

上記の2つを足したものが、収益物件の価格となります。割引率は、対象となる物件と類似不動産の取引事例から求めたり、債券など他の金融資産の利回りなどをもとにします。一般的に3〜5%が目安。計算が複雑ですが、直接還元法よりも高い精度で収益物件の評価が可能です。

オーナーチェンジ物件を売却する際の流れ

オーナーチェンジ物件を売却する際の手順を解説します
オーナーチェンジ物件を売却する際の手順を解説します

これまで見てきたように、オーナーチェンジ物件は、一般的な不動産と比べて売却しづらくなります。スムーズに売却できるよう、流れを押さえておきましょう。

  • STEP 1売却価格の査定を依頼する
  • STEP 2不動産会社と媒介契約を締結する
  • STEP 3レントロールで賃貸状況を開示する
  • STEP 4買主と売買契約を締結する
  • STEP 5入居者にオーナーが変わったことを通知する

それぞれ詳しく解説します。

step1.売却価格の査定を依頼する

まずは、売却価格の査定を依頼しましょう。前章で売却価格の決め方を解説しましたが、プロに依頼すると、相場がわかります。売却価格は売却の成功に大きく影響を与えるため、適切な価格設定が重要です。複数社に査定を依頼するようにしましょう。不動産会社とのやりとりを通して、相場だけでなく、担当者との相性もわかるでしょう。

step2.不動産会社と媒介契約を締結する

売却を依頼する不動産会社と媒介契約を締結します。媒介契約には、下表の3種類があります。

媒介契約の比較 一般媒介契約 専任媒介契約 専属専任
媒介契約
売主 複数の不動産会社に
依頼する
× ×
自分で取引相手を探す ×
不動産会社 売主への報告義務 なし 2週間に
1回以上
1週間に
1回以上
指定流通機構への
物件登録義務
なし 7日以内
(休業日を除く)
5日以内
(休業日を除く)
契約の有効期間 なし 3カ月以内 3カ月以内

契約の種類によって、他の不動産会社への依頼や自分で取引相手を探すことの可否が異なります。また、専任媒介契約や専属専任媒介契約では、有効期間が3カ月と定められています。契約内容の違いを理解したうえで、媒介契約を選びましょう。

step3.レントロールで賃貸状況を開示する

レントロールとは、不動産の賃貸借条件を一覧表にしたもので、「家賃明細表」とも呼ばれます。購入希望者が物件の収益性を判断するための重要な資料です。部屋ごとの家賃や敷金、礼金、契約日、契約期間などの情報を記載します。

レントロールは、一般的に不動産会社が作成。売却したいがために、嘘をつくのはやめましょう。のちのトラブルを防ぐため、家賃を滞納したり、ルールを守らない入居者がいる場合も正直に打ち明けましょう。

step4.買主と売買契約を締結する

買主(購入希望者)との交渉が済んだら、売買契約を締結します。売買契約書で、売却価格や引き渡し時期などの契約条件を明確にしましょう。書面を作成することで、のちのトラブルを防げます。

売買契約を締結すると、簡単には契約を破棄できません。もし売主側から契約を解除したい場合は、買主に対して手付金の2倍の金額を支払う必要があります。契約内容をよく確認したうえで、契約を結びましょう。

step5.入居者にオーナーが変わったことを通知する

売買契約を締結したら、入居者にオーナーが変わったことを知らせましょう。通知の内容としては、次のとおりです。

  • 新しいオーナー(管理会社)の名前や連絡先
  • 家賃の新しい振込先
  • 賃貸契約条件の確認
  • 修繕依頼の連絡先など

オーナーが変わることで、入居者は不安を感じる場合も。新旧のオーナー連名で通知することで、入居者が新しいオーナーと円滑な関係を築きやすくなるでしょう。

オーナーチェンジ物件として売れない時の対処法

オーナーチェンジ物件として売れない時の対処法を解説します
オーナーチェンジ物件として売れない時の対処法を解説します

購入希望者が限られたり、入居者が選べなかったりなど、オーナーチェンジ物件は売却のハードルが高くなります。しかし、対処することで、売却しやすくなる可能性も。本章では、オーナーチェンジ物件として売れない時の対処法を解説します。

空室状況を改善する

空室があり、収益が低い場合は、空室状況を改善しましょう。空室率が低ければ、物件の収益性が向上し、売却できる可能性も高まります。具体的には、次のような改善方法があります。

  • 家賃の設定を見直す
  • 更新料を無料にする
  • 管理会社を変更する

周辺の相場や物件の状態を考慮して、適切な賃料を設定しましょう。高すぎると入居者が集まらない原因となります。契約満了の時期が近づいている入居者には、更新料を無料にする方法もあります。さらに、管理会社を変更する方法も。管理会社の力不足により入居率が低い場合もあるため、口コミや実績をよく確認し、信頼できる管理会社に変更しましょう。

収益物件をメンテナンスする

収益物件のメンテナンス状態を良好に保つことも売却するためには重要です。きれいな収益物件のほうが、購入希望者にとっても魅力的でしょう。入居者がいる場合、できることは限られますが、コストをかけたほうが、購入希望者が付きやすくなる可能性があります。

不動産会社に買い取ってもらう

購入希望者が見つからない場合は、不動産会社に買い取ってもらうことも一つの方法です。買い取りとは、不動産会社が物件を買い取り、自社の物件として賃貸に出したり、転売したりする方法。手間がかからないため、早期の売却が可能です。ただし、市場での売却と比較して6〜8割程度と下がる点に注意しましょう。

まとめ

本記事では、オーナーチェンジ物件が売れない理由を解説しました。購入希望者からすると、なぜオーナーチェンジ物件として売却されるのかが気になるところです。理由によっては購入後の経営リスクが高くなるため、購入しづらくなります。また、そもそも購入希望者が投資家に限られるため、オーナーチェンジ物件は比較的売却しづらいです。購入希望者にとって購入する魅力が感じられるよう、空室状況を改善するなどして収益性を高める必要があるでしょう。購入希望者が現れない場合は、不動産会社に買い取ってもらうことも検討しましょう。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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