建て替えできない家をどうする?建て替えできない理由や救済措置を解説

万が一、建て替えできないとわかった時、どうすればいいのでしょうか。
本記事では、建て替えできない家の条件や建て替えできない際の対処方法を解説します。また、建て替えできない家を保有するリスクや活用方法も説明するため、ぜひ参考にしてください。
記事の目次
建て替えできない家とは

現在建っている建物を解体しても、新たに家を建てることができない物件のことを、「再建築不可物件」といいます。このような建物が生まれた理由は、1950年に建築基準法が定められたことにあります。
建築基準法では「接道義務」という、原則として幅4m以上の道路に2m以上土地が接していなければ、建物を建てられないルールが定められています。しかし、建築基準法が制定される前に建てられた家は、この接道義務を満たしていないこともあるため、建てられた当時は問題がなくても、現在の建築基準法により建物が建てられないというわけです。
建て替えできない家・土地になる理由

前章のとおり、接道義務を満たしていなければ、建て替えができません。しかし、それ以外にも、建て替えができない家の条件がいくつかあります。本章で詳しく見ていきましょう。
接している道路が建築基準法上の道路でない
土地が接している道路が、建築基準法上の道路でない場合、建て替えができません。建築基準法上では、次の6つが道路として定められています。
- 第42条1項1号道路:道路法による道路(国道、県道などの公道)
- 第42条1項2号道路:都市計画法や都市再開発法などの法による道路(開発道路)
- 第42条1項3号道路:建築基準法が制定される前から存在する道路(既存道路)
- 第42条1項4号道路:道路法や都市計画法などに基づき2年以内に事業がおこなわれ、特定行政庁が指定した道路(計画道路)
- 第42条1項5号道路:特定行政庁から指定を受けた道路(位置指定道路)
- 第42条2項道路:幅員4m未満で特定行政庁から指定を受けた道路(みなし道路)
土地が接している道路がこれらに該当しない場合、建て替えができません。
道路にまったく面していない
土地が道路にまったく面していない家も、建て替えができません。具体的には、袋地(ふくろち)と呼ばれ、他人の土地に囲まれて、道路に接していない土地が挙げられます。また、準袋地といい、池や川などによって道路と隔てられた土地、崖によって道路と大きな高低差がある土地も、建て替えできません。もし、このような土地で火災や地震が発生した時、消防車や救急車などが通れず、被害が大きくなるおそれがあるためです。そのため、道路に面していない土地も建て替えできません。
崖地や法地である
崖地や法地(のりち)も、建て替えできない土地の一つです。崖地とは、傾斜が急で通常の用途に利用できない土地のこと。また、法地とは、人工的に造られた斜面のことです。例えば、このような土地で土砂崩れが発生した場合、建物や住民が被害に遭うおそれがあります。建物の安全性が確保できないことから、建て替えができません。
市街化調整区域にある
土地が市街化調整区域にある場合も、建て替えが難しくなります。市街化調整区域とは、無秩序な市街地の拡大を防ぎ、農地や自然環境を守るために市街化を抑制されている地域のこと。そのため、住宅の新築や増改築が制限されています。
もし建て替えたい場合は、自治体から許可を得なければなりません。ただし、建築物の用途によっては、許可を得る必要がないものも。例えば、愛知県名古屋市では、農家の住宅や小規模な日用品の店舗などを建てる場合、事前相談をした結果、許可が不要になることもあります。自治体によって詳細は異なるため、まずは問い合わせをしてみましょう。
高圧線下地である
上空に送電線が通っている高圧線下地である場合も、建て替えができません。高圧線は、強い電流が流れる危険な設備です。また、鉄塔が近くにあるという圧迫感やテレビやラジオへの電波障害があることなどから、土地の利用制限がされています。
具体的には使用電圧が17万V超か、17万V以下かによって利用制限が異なります。17万Vを超える時は、水平隔離距離3m以内には建物を建てられません。一方、17万V以下の時は、送電線からの直線距離を3m以上確保すれば、建て替えが可能です。ただし、電磁波による健康被害や眺望の阻害なども考えられるため、よく検討しましょう。
擁壁のある土地である
建て替えが難しい土地として、擁壁(ようへき)のある土地が挙げられます。擁壁とは、崖崩れを防ぐために造られる壁のこと。例えば、裏に崖があったり、隣の土地と高低差がある場合に造られます。しかし、擁壁が古くなり、強度が足りない場合、大雨の際に崩壊する可能性があります。
また、現在の建築基準や自治体の条例を満たしていない場合、安全性が確保できないと判断されることも。もし擁壁を造り替える場合、高額な費用が発生します。擁壁のある土地は、安全性が確保できなかったり、高額の費用が発生することから、建て替えが難しくなります。
旗竿地である
旗竿地であることも、建て替えが難しくなる理由の一つです。旗竿地とは、旗の竿の部分にあたる道路に接する細長い通路と、旗の部分にあたる奥に広がる宅地で構成された土地のこと。この竿部分の道路が2m以上接していなければ、接道義務を満たしていないため、建て替えができません。
また、東京都の場合、東京都建築安全条例で路地部分が20mを超える時は、幅が3m以上必要と定められています。このように、自治体によって基準が異なる可能性もあるため、旗竿地で建て替えを検討している場合はよく確認しましょう。
建て替えできない家を保有するリスク

建て替えできない家をそのまま放置すると、さまざまなリスクがあります。本章ではどのようなリスクがあるのか、詳しく解説します。
維持費用がかかる
建て替えできない家を保有している間は、維持費用が発生します。例えば、土地や建物を所有していると課せられる固定資産税や都市計画税などがあります。また、空き家の場合、放置していると空き巣にあったり、放火にあったりと犯罪の温床となることもあります。そのため、防犯や不法投棄への対策も必要になるでしょう。もし空き家の管理を外部に委託する場合は、委託費が発生します。
地震や老朽化により倒壊する可能性がある
建て替えできない家を放置し続けると、地震や老朽化によって倒壊する可能性があります。もし倒壊して、隣家や通行人に損害を与えた場合、多額の賠償責任を負わなければならないかもしれません。
また、空き家でない場合でも、家が倒壊しても新たに家を建築できないため、家を突然失うことになりかねません。
リフォームやリノベーションの費用が高くなる
建て替えができない家を、リフォームやリノベーションしようとしても費用が高くなります。例えば、1981年以前に建てられた建物は、現在の耐震基準を満たしていません。そのため、現在の耐震基準を満たすようにリノベーションをする場合、大規模な工事が必要になります。また、道路が狭い場合、重機が入りにくく、資材の搬入が難しくなることから、工期が延びて費用が高くなります。
他にも、柱や梁といった構造躯体が腐食していたり、シロアリ被害に遭っていたりすると、追加で工事が必要となり、費用が跳ね上がることも。このように建て替えできないことを理由に、リフォームやリノベーションをして住み続けようとすると、工事費用が高くなる可能性があります。
売却しにくい
建て替えできない家や土地は、売却しにくいというリスクがあります。買い手からすると、新築できないため、建て替えできない土地をわざわざ購入する理由がありません。また、担保評価が低いことから、住宅ローンを組みにくい点も購入するハードルが上がる理由の一つです。
このように、一般的な家や土地と比較して、建て替えできない家や土地は、買い手が限られることから、売却しにくくなります。
建て替えできない家の救済措置

建て替えできない家をそのまま保有し続けると、倒壊する可能性があったり、売却しにくいといった、さまざまなリスクがあります。そのような状況でも建て替えができるようにするためには、具体的にどうすればよいのでしょうか。本章では具体的な対処法を解説します。
隣接地の一部を買い取る・借りる
隣接地の一部を「買い取る」、もしくは「借りる」と、建て替えできる可能性があります。建て替えできない理由の一つとして、接道義務を満たしていないことが挙げられます。そのため、隣接地の一部を取得することで接道義務の条件を満たす方法です。
しかし、この方法は隣接地の所有者と交渉しなければなりません。所有者の許可を得られてできる方法であることを理解しておきましょう。
土地の等価交換をする
土地の等価交換をすると、建て替えできる可能性があります。等価交換とは、価値が等しくなるようにお互いの土地を交換することです。例えば、旗竿地で間口が狭く、接道義務を満たしていない場合。奥地の一部を隣接地の所有者に譲り、間口部分の土地を譲ってもらうことで、接道部分が2m以上になるようにします。これにより、接道義務を満たせ、建て替えできる可能性があります。
セットバックをおこなう
セットバックをおこなうことも、建て替えられる可能性がある方法の一つです。セットバックとは、所有している土地の一部を道路として行政に提供すること。前途のとおり、接道義務を満たすためには、幅員4m以上の道路に、土地が2m以上接していなければなりません。
しかし、なかには幅員が4mに満たない道路も存在します。この場合、道路の中心線から2m下がった線を道路の境界とみなすというルール。例えば、幅員3mの道路の場合、もとの道路から0.5m下がった線を道路とします。セットバックをおこなえば、建て替えられる可能性があります。ただし、セットバック部分には建設できず、工事費用は基本的に自己負担となるためよく検討しましょう。
位置指定道路の申請をする
位置指定道路の申請をして、土地に接している道路を建築基準法上の道路として認めてもらうことで、建て替えできる可能性もあります。位置指定道路とは、特定行政庁が建築基準法上の道路として指定した私道のこと。
ただし、私道の所有者が複数人いる場合、原則としてすべての所有者から同意を得なければ申請できません。また、申請するにあたって、現地調査や審査、工事などさまざまな工程があります。手間や時間がかかり専門知識も必要なことから、行政書士などの専門家のサポートが必要になるでしょう。
但し書き道路の申請をする
但し書き道路とは、接道義務を満たしていない土地でも、建築審査会の許可を得て、例外的に許可を受ける道路のこと。建築基準法の第43条では、次に該当する建築物については、接道義務を適用しないと定められています。
- 幅員4m以上の道路で2m以上接する建物のうち、特定行政庁が交通上、安全上、防火上および衛生上支障がないと認めるもの
- 土地の周囲に広い空き地を有する建物、国土交通省が定めた基準に適合する建物で、建築審査会の同意を得たもの
開発許可を得る
所有している土地が市街化調整区域にあり、建て替えできない場合でも、開発許可を得ることで、建て替えできる可能性があります。例えば、兵庫県神戸市の公式ホームページには、次のような記載があります。
“Q2-4:既存の建築物の建替や増改築はできますか?
既存の建築物が都市計画法に基づいた適法な建築物であって、従前の敷地設定や用途を変更しないなど一定の要件を満たす場合は、許可不要で建替や増改築ができます。
※都市計画法の許可が不要の場合でも、建築確認申請時に都市計画法に適合していることを証明する書類(60条証明)として添付する「事前確認書」の交付手続きは必要です。
なお、既存の建築物の用途と異なる建替については、調整区域で建築できる用途であれば許可を受けて建てることができます。”
出典:神戸市「市街化調整区域での開発(建築)許可に関するよくある質問」
市街化調整区域であっても、建築物の種類によっては許可なく建築できるものもあります。しかし、許可は不要でも申請が必要なため、事前に自治体の窓口に問い合わせましょう。
建て替えできない家の活用方法

前章では救済措置を解説しましたが、交渉や手続きが必要になり、手間や時間がかかります。また、必ずしも建て替えできる保証はありません。本章では、建て替えできない家の活用方法をご紹介します。
更地にする
建て替えできない家の活用方法として、更地にすることが挙げられます。これまで見てきたように、建て替えできない家を保有し続けると、さまざまなリスクがあります。例えば、家を解体すれば、地震や台風などによる倒壊の心配もなくなり、隣家や通行人への被害も防げるでしょう。
また、古い家がある状態よりも更地のほうが、買い手が見つかる可能性が高まります。家がある状態では解体費用がかかりますが、なければ購入費用を抑えられるためです。家を解体して更地にすることで、土地としての利用方法の幅が広がり、売却もしやすくなるでしょう。
駐車場にする
建て替えできない家がある場合、駐車場にして貸し出す方法もあります。例えば、市街化調整区域の場合、建て替えには許可が必要になる可能性があります。しかし、駐車場は建築物ではないため、原則として建設が可能。ただし、計画について行政庁に確認が必要なため、事前に問い合わせるようにしましょう。
また、立地や土地の形状によっては、駐車場にしても収益が見込めないかもしれません。例えば、駅や商業施設に近い場合は、高い収益が見込めるでしょう。他にも、旗竿地で道路に接している間口が狭い場合、入出庫がしにくいことから、駐車場には向いていないといえます。立地や土地の形状を踏まえ、需要があるのかを判断したうえで、駐車場にすることを検討しましょう。
専門業者に売却する
建て替えできない家や土地は、専門業者に売却することも一つの方法です。建て替えできない家や土地は、接道義務を満たさなかったり、市街化調整区域にあったりなど、さまざまな制約を抱えている場合が多くあります。そのため、買い手が見つかりにくく、売却できない可能性も。しかし、なかには「訳あり物件」を専門にした不動産会社も存在します。
専門会社に売却することで、建て替えできない家や土地を確実に手放すことができるでしょう。ただし、一般的な売却相場より安くなりやすく、通常の50〜70%程度が相場です。「いろいろ検討したが、どうしようもない」「とにかく早く手放したい」という方にとっては、選択肢の一つとなるでしょう。専門会社もいくつかあるため、最初から一つに絞るのではなく、複数社で比較検討することをおすすめします。
建て替えできない家に関するよくある質問
建て替えできない家に関するよくある質問をまとめました。
建て替えができない家はどうすればいい?
建て替えできない家の対処法は、大きく次の3つあります。
- 建て替えを可能にするための救済措置を講じる
- 建物を解体して土地の活用方法を検討する
- 専門業者に売却する
まずは、ご自身が建て替えたいのか、活用したいのか、手放したいのかをよく考えてみましょう。
家を建てられない土地を活用するにはどうしたらいい?
家を建てられない土地の活用方法には、次のようなものが考えられます。
- 駐車場にする
- トランクルームにする
- 資材置き場にする
- 貸し農園にする
どの活用方法を選択するにしても、立地と需要を見極めることが大切です。地域に密着した不動産会社に相談すると、ニーズや不動産市場の動向を踏まえた適切なアドバイスをもらえるでしょう。
再建築不可物件は2025年からどうなる?
2025年4月に建築基準法が改正されました。従来は現行の建築基準法に適合していない建物をリノベーションする際、現行法に適合させることが難しいことや、手間や費用の負担が大きいことから省エネ改修や耐震改修などのリノベーションを諦めざるをえないケースが多々ありました。
しかし、これを安全性の確保などを前提としたうえで、接道義務などを満たさなくても、一定の改修工事を可能にするというものです。これは今ある建築物の再利用を促進させ、空き家問題や地域の活性化のために盛り込まれました。
まとめ
本記事では、建て替えできない家の救済措置や活用方法などを解説しました。一般的に、建て替えできない家は、建築基準法の道路に接していないことや接道義務を満たしていないことなどが原因です。これを道路として認められるよう申請したり、接道義務を満たすよう隣接地を買ったりすることで、建て替えできる可能性があります。ただし、申請や隣接地の購入には手間がかかり、必ずしも建て替えできるわけではない点に注意しましょう。
また、建て替えできない家を保有し続けていると、維持費用がかかるなどのリスクもあります。更地にしたり、駐車場にするなど、立地や需要を調べたうえで、適切に活用することも一つの方法です。いずれにしても、専門知識が必要なため、不動産会社などの専門家に相談するといいでしょう。
物件を探す
注文住宅を建てる

執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ