マンションの売却でハウスクリーニングは必要?メリット・デメリットを紹介

本記事では、マンションの売却でハウスクリーニングは必要であるか、メリット・デメリットも含めて詳しく解説します。
記事の目次
マンションの売却でハウスクリーニングは必要?

マンションの売却でハウスクリーニングが必要であるかは、次の2つの観点から考えられるでしょう。法律・規則の観点で必須であるか、売却価格を上昇させる観点で必須であるかです。それぞれの観点を詳しく解説します。
売主側に義務はない
マンションの売却で、売主にハウスクリーニングをする法律上の義務はありません。汚れや経年劣化があっても、物件を売ることは可能です。しかし、ハウスクリーニングを実施して汚れを落として売却すれば、売却しやすくなることが期待されます。
ただし、雨漏りや設備の不具合など、致命的な問題を買主に告知しなかった場合は、契約不適合責任に問われることがあります。この場合も不具合を必ずしも回復させる必要はなく、重要事項説明書を作成して買主に告知していれば問題ありません。汚れや不具合があることによって売れなくなる可能性はありますが、マンション売却時にハウスクリーニングを実施しないことを、法律によってとがめられることはないでしょう。
「実施すれば必ず売却価格が上昇する」は誤り
「ハウスクリーニングを実施すれば必ず売却価格は上昇する」考えを前提に、ハウスクリーニングを実施する判断は誤りです。ハウスクリーニングを実施しても、マンションの売却価格が上昇するとは限りません。
ハウスクリーニングには数万円~数十万円程度の費用がかかりますが、投資すれば必ず回収できる費用ではないからです。ハウスクリーニングを実施する物件や実施する箇所によって、売却価格に対する影響は異なるでしょう。高く売るために必須ではないため、ケースによってはハウスクリーニングを実施しない判断も十分に考えられます。
マンションの売却でハウスクリーニングをするメリット

マンションの売却でハウスクリーニングをするメリットについて見ていきましょう。
自分で掃除して落ちない汚れを落とせる
築年数の経ったマンションでは、自分で実施できる日常的な掃除では落としきれない汚れが存在します。プロのハウスクリーニング会社に依頼すれば、専用の薬剤や高圧洗浄機、専門工具を使用して徹底的に汚れを落とすことが可能です。掃除の手間を減らすだけでなく、質を高められるため、必要な部分はハウスクリーニング会社に依頼するほうが効率的になります。
内覧の印象がよくなる
マンションの売却で、内覧は成約に直結する重要なイベントです。内覧時に物件に対して不潔な印象を与えてしまうと、購入の判断に悪く作用することも。ハウスクリーニングを実施して内覧の印象をよくすれば、早期の成約を期待できるでしょう。
特に築年数が古く、汚れが目立つ物件であるほど、ハウスクリーニングの実施による内覧の印象は向上しやすくなります。内覧希望者が内覧時にどこまで気にするかは、人によって異なります。しかし、部屋全体が清潔であることは、内覧希望者が購入判断をするうえで重要な要素になるでしょう。
汚れによる値引き交渉を防げる
現在のマンション売却では値引き交渉が前提であり、室内の落としにくい汚れやキズは交渉の材料になりえます。マンションは高額な買い物であるため、汚れ一つであっても値引き額が大きくなることも。
内覧時までにハウスクリーニングを実施して、汚れを落としておけば、値引き交渉の材料を減らすことが可能です。汚れによる値引き交渉の余地をなくすことで、希望価格で売却しやすくなるでしょう。
マンションの売却でハウスクリーニングをするデメリット

マンションの売却でハウスクリーニングをおこなうとさまざまなメリットがある一方、デメリットも存在します。
費用対効果が低い場合がある
ハウスクリーニングによって、必ずしも支払った費用に見合う効果が得られるとは限りません。例えば、15万円かけてハウスクリーニングを実施した場合、売却価格が15万円以上上昇しなければ元が取れないでしょう。
また、不動産売却に対する深い知識がなければ、コストに対するリターンを判断できない可能性も。ハウスクリーニングの実施によって、内覧希望者によい印象を与えることができてもハウスクリーニング費用を大きく上回るほどの売却価格の上昇を期待しにくいため、費用対効果が低くなるリスクがあります。
クリーニングの範囲を見極めなければ効率が悪い
ハウスクリーニングでは、全面クリーニングと部分クリーニングを選べます。しかし、なにも考えずに全面クリーニングを実施しても、売却価格に直結しない場所であれば効率が悪くなります。一般的に内覧時にチェックされやすい場所は、キッチン・浴室・トイレなどの水回りです。
水回りのカビや水垢は、通常の掃除では落としきれない汚れが蓄積していることも。よって、水回りを集中して部分クリーニングすれば、自分では落とせない汚れを効率的に落としたうえで、売却価格によい影響を与える可能性はあります。しかし、クリーニングする部分によっては、売却価格にほとんど影響を及ぼさないかもしれません。
掃除により物件が損傷するリスクがある
ハウスクリーニング会社によるプロの作業であっても、ミスがあれば物件を損傷させる可能性があります。ハウスクリーニング会社を利用した結果、売却価格に悪影響を与えることも。
信頼できるハウスクリーニング会社であれば、賠償責任保険に加入していることから補償を受けられます。しかし、補償内容を確認せずに依頼してしまうと、十分な補償を受けられないかもしれません。ハウスクリーニングの会社を選ぶ際には、費用やサービス内容だけなく、補償の有無についても確認しておきましょう。
ハウスクリーニングにかかる費用目安
ハウスクリーニングにかかる費用の目安をマンションの間取りとハウスクリーニングをおこなう場所の2つの項目に分けて以下にまとめました。
マンションの間取り別の費用目安
ハウスクリーニングの費用はマンションの間取りが影響します。具体的な費用は、ハウスクリーニングを依頼する会社によって異なりますが、おおよその相場は以下のとおりです。
間取り | 費用 |
---|---|
ワンルーム・1K | 1万5,000円~2万5,000円 |
1LDK・1DK | 2万5,000円~4万5,000円 |
2LDK・2DK | 4万5,000円~6万円 |
3LDK・3DK | 5万5,000円~8万円 |
4LDK・4DK | 7万円~10万円 |
入居中か空室かでも費用は変化します。一般的には入居中のほうが、ハウスクリーニングの相場は高くなりやすいです。また、部屋の作りが特殊である場合や、汚れ具合によっても費用が変化する可能性があります。
しかし、どのようなケースであっても、ワンルーム・1Kのハウスクリーニングの費用の見積もりが10万円を超えるなど、明らかに相場を逸脱した価格が提示されることはほとんどありません。相場よりも高い場合は業者に費用の内訳を質問したうえで、納得できない場合は他のハウスクリーニング会社への依頼を検討しましょう。
ハウスクリーニングをおこなう場所別の費用目安
部分クリーニングによって、気になる場所を集中的に掃除できます。内覧時にチェックされやすい水回りを中心とした部分クリーニングを選択した場合、場所別の費用の目安は以下のとおりです。
場所 | 費用 |
---|---|
浴室 | 1万2,000円~1万8,000円 |
トイレ | 6,000円~9,000円 |
キッチン | 1万2,000円~2万円 |
洗面所 | 8,000円~1万2,000円 |
換気扇・レンジフード | 8,000円~1万3,000円 |
エアコン | 9,000円~1万6,000円 |
水回りパック(3セット) | 1万5,000円~4万円 |
水回りパック(5セット) | 3万円~7万5,000円 |
必要な場所だけ清掃をしたい場合は、部分クリーニングをおこなうほうが全面クリーニングよりも安く済む可能性もあるでしょう。また、水回りを複数箇所依頼したい場合は、水回りパックのようなプランを利用すれば、部分クリーニングを複数依頼するよりも安くなります。
マンションの売却でハウスクリーニングをする際のポイント

最後に、マンションの売却でハウスクリーニングをする際のポイントをまとめました。
- 不動産会社に相談してからおこなう
- 内覧前に完了する
- 汚れがひどい場合は優先度が高くなる
- 早期売却を重視するなら必要になりやすい
- 予算を設定して追加料金を確認する
- パックプランが充実している会社を選ぶ
- 口コミも参考に会社を選ぶ
それぞれ詳しく見ていきましょう。
不動産会社に相談してからおこなう
マンションの売却でハウスクリーニングを検討する場合は、媒介契約を結んでいる不動産会社への相談が重要です。不動産会社は過去の取引データから、ハウスクリーニングの実施が売却価格の上昇に有効であるかを判断できます。「キレイにすれば高く売れるはず」と自己判断をするのではなく、プロの意見を聞くことが重要です。
ハウスクリーニングが売却戦略の一部として有効であるか、客観的なデータをもとに答えてくれるため、安心して実施できるでしょう。また、不動産会社によっては提携しているハウスクリーニング会社を紹介してくれる場合もあります。
内覧前に完了する
ハウスクリーニングは初回の内覧開始前にすべて完了させるようにしましょう。売却活動が始まると、内覧希望者がいつ現れるかわかりません。ハウスクリーニングを実施する前に内覧が始まれば、部屋が汚れていることを理由に買い手を逃してしまう可能性があります。
また、不動産会社と媒介契約を結んでから内覧前におこなうハウスクリーニングは、費用が譲渡費用として認められやすいです。ハウスクリーニングの費用を譲渡費用に算入できれば、売却にかかる税金を安くできます。
汚れがひどい場合は優先度が高くなる
一般的に、マンション売却時のハウスクリーニングの必要性は、物件の汚れ具合に左右されます。「汚れがひどい」と感じる状態であれば、ハウスクリーニングの優先度は高くなります。
仮に購入希望者が現れても、汚れのひどさを理由に数十万円単位の値下げを要求されることも。高額な値下げに応じる前に、10万円程度のハウスクリーニングで汚れを落としきれるなら、値下げ交渉を含めた費用対効果は高いでしょう。物件の第一印象を下げるほどの汚れがある場合は、値引き交渉の対策として効果的です。
早期売却を重視するなら必要になりやすい
マンションを高く売ることよりも、早く売ることを特に優先する場合は、費用対効果を無視して、早期売却を目指すためにハウスクリーニングをおこなう選択肢もあります。清潔に整えられた物件は内覧者の印象がよくなり、成約につながる可能性が高まるからです。
購入希望者を一人でも早く見つけるには、この第一印象が欠かせません。一日でも早く売却したいと考えるのであれば、不動産会社と相談のうえでハウスクリーニングの実施を検討しましょう。
予算を設定して追加料金を確認する
ハウスクリーニングを依頼する場合は、基本料金だけでなく、追加料金も確認するようにしましょう。ハウスクリーニング会社によっては、汚れの度合いによって発生するオプション作業に料金が請求されます。公式サイトなどに掲載されている料金表には、基本料金以外は載っていないことも。
そのため、見積もりの時点で追加料金の有無を確認することをおすすめします。ハウスクリーニング全体の予算をあらかじめ設定して、追加料金が発生した場合を含めて、予算を超えないようにハウスクリーニング会社を選びましょう。
パックプランが充実している会社を選ぶ
ハウスクリーニング会社を選ぶ場合は、売却を意識したパックプランが充実している会社を選ぶことが重要です。部分クリーニングを依頼する場合は、個別に依頼するよりも、パックプランでまとめて依頼するほうが、費用を抑えやすくなります。必要な場所を効率的に掃除できるパックプランを提供しているハウスクリーニング会社を選ぶことが、費用の節約につながります。
口コミも参考に会社を選ぶ
ハウスクリーニングを依頼する際には、どの会社を選ぶかが重要です。費用やプラン内容のみで判断すると、思うような仕上がりにならないケースや、不当に追加料金が発生するケースも。インターネット上で口コミを調べて、実際に利用した人の満足度や対応の良し悪しを把握しましょう。仕上がりに不満がある書き込み、当初の見積もりにない費用を請求されたなどの悪評が多い場合、依頼は避けたほうがいいでしょう。
また、口コミを確認するだけでなく、実際に電話・メールなどで問い合わせることも大切です。やり取りを通じて、担当者の対応が誠実であるか、質問に丁寧に答えてくれるかを確認できます。問い合わせ段階から丁寧に対応をしてくれる会社は、現場でも安心して任せられる可能性が高いでしょう。
口コミや問い合わせ対応も参考にすることで、信頼して任せられるハウスクリーニング会社を選びやすくなります。
まとめ
マンション売却時のハウスクリーニングは、売主に法律上の義務はありません。また、ハウスクリーニングをおこなったからといって必ずしも売却価格を上げられるわけではなく、費用対効果が低くなる場合もあります。しかし、汚れを落としてきれいな状態にしておくことで内覧時の印象をよくする効果を期待できます。
重要なことは、物件の状態や売却戦略に応じて、ハウスクリーニングの実施を判断することです。しかし、マンション売却の知識がなければ判断は難しいため、プロである不動産会社と相談したうえで決定する必要があるでしょう。

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ