マンション売却のチラシの信用性は?不動産会社の狙いと対処法を徹底解説
ただし、悪徳業者も紛れ込んでいる可能性があります。悪徳業者と接点を持ってしまうとさまざまなリスクがあるため、チラシを見て相談する場合は、よく考えてから電話するようにしましょう。
本記事では、マンション売却のチラシを信用するべきかどうかを詳しく解説します。本記事を読むことで、チラシを投函する不動産会社の狙いと対処法がわかるようになるでしょう。
記事の目次
マンション売却のチラシの内容例と信用性

不動産会社から届くマンション売却のチラシには、次のようなキャッチコピーがよく見られます。
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- この地域限定でマンション売却物件を探しています
- 至急募集!あなたのマンションをお譲りください
- お客さまより、このマンションの購入希望の声が寄せられています
- 今がチャンス! 高額査定の好機です
これらの文面はいずれも、あなたの所有するマンションに需要があると思わせる内容です。チラシを受け取った所有者は「売るなら今がいいかもしれない」と考えるかもしれません。しかし、上記の文章には不動産の売却を検討するうえで、信用性が気になる典型的な内容が含まれています。それぞれ詳しく見ていきましょう。
例1:この地域限定でマンション売却物件を探しています
不動産会社が、特定の地域に限定したマンション売却の募集をおこなう際のキャッチコピーです。売却希望のマンションを探していることは本当かもしれません。
しかし、「この地域限定」など、「〇〇市限定、〇〇区限定」のように特定のエリアを指定する文面には注意が必要です。実際に再開発などを理由に、特定のエリアでマンションの需要が増加する可能性はありますが、できるだけ多くの物件を扱いたい不動産会社は、他のエリアでも同様のチラシを配布していることも。
そのため、チラシの文面だけで判断して、自分のエリアのマンションが特別に売れやすいと考えることは早計です。
例2:至急募集!あなたのマンションをお譲りください
この文面で特に注意してほしいことは、至急・急募・緊急など、ターゲットに対して売却の判断を急がせる言葉が使用されている点です。これらの言葉は、行動を促す心理的効果があります。実際には特に緊急性がない場合でも、使用されていることがほとんどでしょう。
キャッチコピーの時点で売却を急がせる内容のチラシを投函する不動産会社は、売却の相談をした場合も、同様の手口で契約を締結しようと考える可能性があります。信頼できる不動産会社であれば、売却希望者に対して考える時間を与えてくれます。キャッチコピーに緊急性のある文言が使用されている場合は、警戒したほうがいいでしょう。
例3:お客さまより、このマンションの購入希望の声が寄せられています
マンション売却のチラシのなかには、買い手がすでに存在すると思わせるようなキャッチコピーがあります。マンションを購入したい人がいるとわかれば、早期売却が期待できるため、問い合わせてみようと考えるでしょう。ただし、信用性の観点では、実際に購入希望者がいるとは考えにくいです。
仮に本当に購入希望者が存在する場合、希望価格帯や購入時期などの具体的な条件が提示されていなければ話が進みません。問い合わせのきっかけ作りとして、架空の購入希望者が作られている可能性が高いため、冷静に判断しましょう。
例4:今がチャンス! 高額査定の好機です
このキャッチコピーで注目したい言葉は「高額査定」です。チラシを見て問い合わせると、実際に高額な査定額を提示されることもあるかもしれません。しかし、自社で売却をさせるために相場とはかけ離れた高額な査定額を提示した場合は、物件が売れずに下方修正を繰り返すことになるでしょう。すると、実際に売却が決まった時には、当初の査定額とかけ離れているかもしれません。適正な査定を受ける為にも、チラシの文言に惑わされず、売却するマンションの相場を知ることが重要です。
マンション売却のチラシを作る不動産会社の狙い

マンション売却のチラシは、不動産会社の営業活動の一環として作成されています。単なる宣伝にとどまらず、売却を検討している見込み客と接点を持つ狙いがあります。マンション売却のチラシを作る不動産会社の狙いを以下にまとめました。
売却物件の情報を獲得して仕入れる
不動産の売買を仲介する不動産会社にとって、売却物件は商品になります。取り扱う商品が多いほど、購入希望者の条件に合う物件を紹介しやすくなるでしょう。そのため、不動産会社は買い手を探している物件情報の仕入れをチラシによっておこなっています。
査定に興味を持たせる
チラシをきっかけに媒介契約を結ぶことが理想ですが、その前の段階にある査定に興味を持たせることも、チラシの重要な役割です。マンションの所有者は具体的に売却を考えていなくても、所有しているマンションを売却するといくらになるのか関心がある人も多いでしょう。
積極的に売却したいと考えていなくても、査定だけであればと考えて、問い合わせにつながる可能性があります。チラシを通じて相場を知りたいニーズに応えることで、マンションの所有者に対して有益な情報提供ができるため、査定を通じてマンションの所有者と接点を持つことは、長期的に考えれば不動産会社にとってプラスになります。
認知度の向上によって長期的な顧客を獲得する
不動産会社はチラシの投函によって、地域での認知度を高めることで、長期的な顧客の獲得につなげたいと考えています。チラシの投函で短期的には媒介契約にいたるケースは少なくても、長期で考えれば多くの顧客を獲得できる可能性があります。チラシの投函直後には直接の接点はなくても、継続してチラシが投函されていれば、認知するきっかけになるでしょう。売却を考える時期が来た時に、候補の一つとして検討されることを狙いとしています。
マンション売却のチラシの対処方法

実際にマンション売却のチラシが投函されていた場合、少しでも売却に興味があるなら以下の内容を確認して適切に対処しましょう。チラシを投函する不動産会社のなかには、悪徳業者が存在する可能性があるため、個人情報をむやみに伝えないよう注意が必要です。マンション売却のチラシの対処方法を詳しく見ていきましょう。
すぐに連絡せず内容を冷静に確認する
マンション売却のチラシが届いた場合、すぐに書かれている連絡先に電話することは避けましょう。連絡をするかどうかを判断するにはチラシの内容が重要になりますが、キャッチコピーを含めて内容が信用できるかを確認します。内容に違和感がない場合は、連絡先である不動産会社の情報を調べましょう。
インターネットで社名を検索するだけでなく、国土交通省が公開する「ネガティブ情報等検索サイト」で過去の行政処分歴を確認します。チラシの内容を確認するだけでなく、インターネット上の情報を含めて調べれば、悪徳業者に売却の相談をしてしまう可能性は下げられます。
禁止用語の使用状況をチェックする
不動産広告には、誤認をまねく表現を避けるためのルールがあります。業界団体の表示規約や関連法令の考え方に基づいて、禁止される言い回しが定められています。具体的な内容は以下のとおりです。
| 内容 | 禁止用語の例 |
|---|---|
| まったく欠点がないことや、手落ちがないことを示す用語 | 完璧、絶対 |
| 競争事業者よりも優位に立つことを意味する用語 | 日本一、当社のみ |
| 一定の基準により選別されたことを意味する用語 | 特選、厳選 |
| 最上級を意味する用語 | 最高、この上なく |
上記の禁止用語をチラシに書いている不動産会社は、法令を守らない悪質な会社である可能性が高いです。禁止用語が記載されている時点で、チラシの不動産会社には連絡しないようにしましょう。
強い表現の使用に注視する
禁止用語でなくても、内容として強い表現が使用されているチラシの不動産会社にも連絡しないほうが無難です。具体的には、「確実に高く売れる」、「高額査定を保証」など、マンションの所有者にメリットの大きい表現が断定的に使用されていることが挙げられます。
マンションの売却と価格査定は、物件の需要と市場の相場に大きく左右されるため、結果に責任を持つ不動産会社は断定表現を避けます。保証できないものを確実に保証するような内容を記載する不動産会社は、注意が必要です。
マンション売却をチラシの不動産会社に相談するメリット

マンション売却のチラシは不動産会社の営業活動の一環のため、すべてが悪質とは限りません。チラシが投函された理由も、その地域で実際に購入希望者がいる場合や、専門的に活動している担当者が直接アプローチしているケースもあります。不動産市場で注目されている物件であるからこそ、チラシが投函されたとも考えられるでしょう。
よって、売却の意思がある場合は、チラシを投函した不動産会社に相談するメリットもあります。それぞれの内容を詳しく紹介します。
早期に買主が見つかる可能性がある
特定の地域を中心にチラシを投函している不動産会社は、その地域のマンションの購入希望者を多く抱えている可能性があります。よって、チラシを見て売却を相談すると、早期に買主が見つかるケースも考えられるでしょう。
不動産会が社抱える顧客のなかに、条件にマッチしたマンションの購入希望者がいた場合、すぐにマッチングが成立することも。通常の売却活動では、広告を掲載して問い合わせを待つ必要があります。
しかし、不動産会社側で買い手に心あたりがあるなら、売却期間を短縮できるかもしれません。自分で不動産会社を探して売却するよりも、早く買主を見つけられる可能性があるでしょう。
エリアに特化した担当者が見つかる
特定の地域に絞り込んで営業活動をおこなう不動産会社からチラシの投函を受けた場合は、適切に売却活動を進められる担当者と接点を持てる可能性があります。エリアに特化した担当者は独自のネットワークを構築している場合も多く、他の不動産会社では探し出せない顧客を見つけられる力を持っていることも。
そのため、チラシによって信頼できる担当者と出会える可能性があります。実際に相談をして誠実な対応と納得のできる説明を受けられたのであれば、売却活動を任せることを検討してもいいでしょう。
マンション売却のチラシに関する注意点

マンション売却のチラシに関する注意点を詳しく解説します。
連絡しても即決で契約しない
これはチラシを介さない場合でも同じことがいえますが、不動産会社に売却の相談をする際、即決で契約しないようにしましょう。勢いで契約すると、悪い条件で売却活動が進む可能性があり、後悔するリスクが高まります。
悪質な不動産会社の場合は、売主に考える時間を与えずに契約を急かすことがありますが、流されて契約しないことが重要です。即決を避けて契約内容を十分に理解してから売却を進める、慎重な姿勢が必要になります。
売却前に情報収集を怠らない
マンションを適切に売却するには、十分な情報収集が求められます。売却を検討するきっかけがチラシであっても、不動産の売却に必要なことは変わりません。査定価格が相場にあっているかどうかを判断できるようにするために、不動産ポータルサイトを利用して同条件のマンションの売り出し価格を調べます。国土交通省が公開する公的なデータの「不動産情報ライブラリ」も正確な相場の把握に役立つでしょう。
情報収集を怠れば、チラシの不動産会社で売却するケースでも、自分で不動産会社を探して売却するケースでも、提示された条件が妥当かどうかを判断できません。知識不足が売却で失敗する原因になります。
複数の不動産会社と比較して検討する
マンションの売却活動を進める不動産会社を選ぶ際、チラシを投函した不動産会社はあくまで契約先の候補の一つと認識しましょう。最低でも3社以上の複数の不動産会社を比較して選ぶことで、最終的に信頼できる不動産会社と契約できる可能性が高まります。
査定価格は高額であることよりも、相場に沿った価格であること、査定価格に対して納得のいく説明を受けられることを重視しましょう。誠実な不動産会社は他社と比較されることを恐れないため、契約を急かすことなく、売主に対して比較検討する時間を与えてくれます。
マンション売却のチラシに関するよくある質問
マンション売却のチラシに関するよくある質問をまとめました。
マンション売却のチラシは信頼できる?
マンション売却のチラシは、不動産会社の営業活動の一環として投函されているケースがほとんどです。すべてのチラシが信頼できないわけではありませんが、会社が実在するかどうか、宅建業免許番号が明記されているかを確認し、不審な点がある場合は慎重に対応しましょう。
マンション売却のチラシの内容は本当?
「購入希望者がいます」などの文言は、問い合わせにつなげるためのキャッチコピーであることが多く、事実とは限りません。チラシの内容が誇張されているか、嘘である場合も考えられるため、精査して見極めるようにしましょう。
マンション売却のチラシの不動産会社に連絡していい?
悪質な不動産会社に連絡すると、売却を断ってもしつこく連絡が来る可能性があります。そのため、インターネットなどを利用して、悪評や行政処分歴などの問題がないか、調べてから連絡をするようにしましょう。また、連絡してもその場で契約はせず、複数社と比較してから判断するようにしてください。
まとめ
マンション売却のチラシは、魅力的な文言にまどわされず、内容の根拠を確認し、冷静に判断することが大切です。売却を検討している場合や査定に興味がある場合は、チラシの発行元の信頼性を確認してから連絡するようにしましょう。
マンションの売却を適切に進めるには、チラシの不動産会社も判断材料の一つとして認識し、自ら相場を調べて慎重に比較・検討する姿勢が重要です。チラシに限らず誰かに任せきりにしないことで、安心してマンションを売却できるでしょう。
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執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
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