公示価格とは?調べ方と活用法、実勢価格や路線価との違いをわかりやすく解説

本記事では、公示価格の調べ方や公示価格以外の指標となる価格、売却時の価格の決め方などを解説します。公示価格の理解を深めたい方や、活用方法について知りたい方はぜひ参考にしてください。
記事の目次
公示価格とは?

公示価格とは、地価公示法に基づいて国土交通省の土地鑑定委員会が公表する、土地の価格のことです。適正な地価の形成に寄与するため、複数の不動産鑑定士が毎年1月1日時点のその正常価格を鑑定し、同年3月下旬に公表されています。公示価格は1平方メートルあたりの価格を示しており、土地本来の価値を示すために建物が建っている状態の土地ではなく、更地としての評価となります。
標準地は全国の都市計画区域内等に設定されており(2024年は26,000地点で実施)、決められた場所の価格が公表されるため地価の変動が明瞭で、土地の売買や資産評価の目安として活用されるのが一般的です。各都道府県においても毎年7月1日時点で同様の調査を実施し、「都道府県基準値標準価格」として公表されています。
「公示地価」と「基準地価」
公示価格は「公示地価」と「基準地価」の2種類です。公示地価と基準地価の特徴や違いは、以下の表を参考にしてください。
公示地価 | 基準地価 | |
---|---|---|
特徴 | 土地取引や金融機関の担保評価などに活用される | 土地取引の指標となる(都市計画区域外も対象) |
調査主体 | 国土交通省 | 都道府県 |
調査地点数 | 26,000地点(2024年) | 21,436地点(2024年) |
調査時点 | 毎年1月1日時点 | 毎年7月1日時点 |
公表時期 | 毎年3月下旬 | 毎年9月下旬 |
価格の決め方 | 1地点につき2名以上の不動産鑑定士が「標準地」を鑑定・評価し決められる | 1地点につき1名以上の不動産鑑定士が「基準地」を鑑定・評価して決められる |
※参照:国土交通省 令和6年地価公示
それぞれ細かい点は異なるものの性質が似ているため、まとめて公示価格と呼ばれます。
なぜ公示価格を定める必要がある?
公示価格を定めることで、あらゆる場面で不動産に関する価格を出すときの基準として役立ちます。公示価格が重要な役割を持つ場面は、主に以下のようなケースです。
- 一般の土地取引価格に対する指標
- 公共事業用地の取得価格算定の基準
- 不動産鑑定の基準
- 土地の相続税評価や固定資産税評価の基準
- 国土利用計画法による土地の価格審査の基準
不動産の売買取引における売買価格は、基本的に売主によって決められます。しかし、土地は立地条件や形状がそれぞれ異なり、また売却する際の売主の経済状況が異なることから適正価格を算出するのは難しいといえます。そこで、参考になるのが公示価格です。公示価格によって土地の相場を知ることができるうえ、適切な価格設定で売買取引ができるでしょう。
公示価格の活用法と役立て方
公示価格を参考にするのは前述のような場面で、主に不動産を売却する際の適正価格かを判断するのに有効です。ただし、公示価格を参考にするうえで、以下の点を理解しておきましょう。
- 公示価格と実際の土地価格は異なる
- 地方では公示価格が参考にならないこともある
地価は常に変動するため、実際取引する時の地価と公示価格は異なります。加えて、対象となる土地のエリアや立地条件、周辺環境などによって価格が左右されます。さらに、公示価格を算出する標準地は都会が多く地方が少ない傾向にあるため、土地の場所によっては参考にならないこともあるかもしれません。
土地を売買する際は、公示価格だけでなく不動産会社の査定価格や、その他の複数の指標と照らし合せて価格を決めるようにしましょう。
近年の公示価格の傾向
2024年の調査によると、全国の地価動向は全用途(住宅地・商業地)平均で3年連続上昇しています。三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)および地方圏(地方四市・その他)も同様に3年連続上昇しており、なかでも地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)は住宅地・商業地・全用途平均でいずれも11年連続上昇、商業地は上昇率が拡大しました。
これは、鉄道新路線等の開業による交通利便性の向上などを受けたことや、インバウンドを含む観光客が回復したことなどが大きな要因の一つです。地域や用途によって差はあるものの、全国的に地価の上昇が継続しており、景気も緩やかに回復しています。低金利が続いているため不動産市場も活況を見せ、今後も公示価格は上昇を続けることが考えられるでしょう。
公示価格の調べ方

公示価格を調べるには、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」を用いる方法があります。不動産情報ライブラリでは、公示価格以外にも不動産の取引価格や防災情報、都市計画情報、周辺施設情報など不動産に関する情報を確認することが可能です。なお、公示価格を調べる手順は以下のとおりです。
- STEP 1「地価の情報をご覧になりたい方へ」のデータ検索をクリック
- STEP 2「地域」や「用途区分」を選択して一覧を表示
ほかにも地図や地域から探すこともできるので、探しやすい方法でおこなうことをおすすめします。
公示価格以外にも「土地の価格」を示す指標がある

公示地価と基準地価の2種類の地価を表す公示価格以外にも、土地の価格を示す指標がいくつかあります。公示価格以外に毎年公表される土地の価格は、以下のとおりです。
- 実勢価格
- 路線価
- 固定資産税評価額
評価機関や評価対象など、それぞれの違いは以下の表を参考にしてください。
公示価格 | 実 勢 地 価 |
路 線 価 |
固定資産税評価額 | ||
---|---|---|---|---|---|
公示地価 | 基準地価 | ||||
評 価 機 関 |
国土交通省 | 都道府県 | - | 国税庁 | 市町村 (東京23区は都) |
評 価 対 象 |
都市計画区域内、その他不動産の取引が行われると予想される土地 | 都市計画区域内・外 | 全国の土地・家屋 | 全国の標準宅地 | 全国の土地・家屋 |
基 準 と な る 日 |
毎年1月1日 | 毎年7月1日 | - | 毎年1月1日 | 1月1日 ※3年ごとに見直し |
発 表 日 |
毎年3月下旬 | 毎年9月下旬 | - | 毎年7月1日 | 毎年3月下旬~4月 |
活 用 法 |
土地取引、金融機関の担保評価など | 土地取引 | 不動産取引 | 相続税・贈与税の算出や土地取引 | 固定資産税・都市計画税、不動産取得税などの算出や不動産取引 |
実勢価格との違い
実勢価格とは、実際に市場で売買取引される価格のことです。国土交通省では毎年土地取引の指標として公示地価を発表していますが、公示地価は不動産の特徴を反映しておらず、売り出す際にそのまま販売価格となるわけではありません。不動産は土地の形状やエリア、周辺環境など特徴があり、加えて所有者の事情などによって販売価格が異なります。
また、販売価格に価格交渉が入り、販売価格と実際に取引が成立する価格が異なることもあるでしょう。売主と買主の間で最終的に売買が成立した価格が、実勢価格となります。実勢価格の目安は公示価格の1.1~1.2倍程度です。
不動産売買において、近隣にある条件が近い土地の実勢価格を調べて販売価格を決める場合や、相場を知る場合などに活用できるでしょう。
路線価との違い
路線価は道路に面する標準的な土地の1平方メートルあたりの価格で、主に相続税や贈与税の計算で使用されます。公示価格は調査地点の土地そのものの価格を判定しますが、路線価は路線(道路)に対して価格をつけるのが特徴です。対象となる土地が接する道路の路線価に面積を掛けることで算出され、公示価格の80%程度が目安となります。なお、地域によっては路線価が定められていないことがありますが、その際は市区町村の評価倍率表を確認すれば算出可能です。
路線価を用いることで相続税や贈与税の計算ができるほか、土地の売買価格を決める際には一つの指標にもなるでしょう。
固定資産税評価額との違い
固定資産税評価額とは、固定資産税台帳に記載された固定資産税の課税の基準となる土地・家屋の評価額です。土地や建物の所有者は毎年固定資産税を納付する必要があり、その税額を計算する際に固定資産税評価額が用いられます。なお、固定資産税評価額は、不動産の個別性を反映した価格となっています。3年に1回評価替えが実施され、公示価格の70%程度が目安です。固定資産税評価額を知るには、市町村等から送付される納税通知書に付いている課税明細書や、固定資産税評価証明書で確認できます。
固定資産税の計算に用いる固定資産税評価額は、不動産を売却する際の相場を把握できるほか、購入する前に固定資産税を調べる方法としても有効です。
土地を売却する場合、価格はどう決めればいい?

土地の売却価格は、所有者である売主が自由に決めることができます。しかし、価格設定を間違えてしまうと売れるまでに時間がかかったり、損をしてしまったりする可能性があるため、慎重に価格を決めることが重要です。
土地の価格を決める際の基準となるのが公示価格、実勢価格、路線価、固定資産税評価額ですが、不動産には定価がなく特徴や売主の事情も異なります。そのため、1つの指標のみを参考にするだけで、相場を把握するのは難しいでしょう。例えば、公示価格と実勢価格を照らし合わせて調整する、路線価と実勢価格で調整するなどして組み合わせることで、適正価格を出しやすくなります。
特に、実際に取引が成立となった実勢価格を取り入れるのがポイントです。不動産会社は、実勢価格も調査したうえで査定価格を出すのが基本となります。そのため、不動産会社への査定依頼に加えて、自分で公示価格や路線価などを調べておくようにしましょう。
公示価格に関するよくある質問

最後に、公示価格に関するよくある質問について回答していきます。以下に重要なポイントをまとめているので、ぜひ参考にしてください。
公示価格はどのように決定される?
公示価格は、土地鑑定委員会が2人以上の不動産鑑定士に調査対象となる「標準地」を鑑定・評価させ、必要な調整を行い決定します。不動産鑑定士の評価は専門家としての1つの意見とし、公平性を確保するために1地点につき2人以上の不動産鑑定士が評価することとなっています。標準地の価格は、「取引事例比較法」と「収益還元法」の2つを用いて求められるのが一般的です。
なお、基準地価の場合は1地点につき1人以上の不動産鑑定士が評価します。
公示価格はいつ発表される?
公示地価の場合、毎年1月1日時点における標準地の正常な価格が3月下旬に発表されます。2024年は3月27日に公表されました。基準地価は、毎年7月1日時点の基準地の標準価格を9月下旬に発表します。2024年の公表日は9月17日です。
公示価格はどんな時に参考になる?
公示価格は土地の価格を出すときの指標の一つです。一般の土地取引価格に対する指標となるほか、公共事業用地の取得価格算定や不動産鑑定、相続税評価・固定資産税評価の基準にもなります。土地を売却する際の販売価格の参考にしたり、購入する前に周辺の土地の相場を調べたりするのに役立つでしょう。また公示価格を把握することで、固定資産税を算出するための固定資産税評価額や、相続税・贈与税を算出するための路線価のおおまかな価格も出しやすくなります。
まとめ
今回は公示価格とはどんな価格のことなのか、公示価格以外の他の指標となる価格、活用方法などについて解説しました。一般的に不動産売買において、公示価格を把握することで妥当な取引を成立させることが可能です。ただし、公示価格や実勢価格などはあくまで価格を決める指標の一つであり、実際の取引価格と異なる点には注意しましょう。他の指標とあわせて活用することで、不動産売買に最大限役立てられるはずです。わからないことがあれば、専門家や不動産会社に相談しながら価格を決めるようにしましょう。
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