不動産売却時の税金はいつ払う?納付タイミングと注意点を解説

本記事では、不動産売却時の税金はいつ支払うのか、それぞれの納付タイミングを紹介します。さらに、実際にかかる不動産売却時の税額、税金を支払う際の注意点も解説。本記事を読み、不動産売却時にどのように税金を支払うか理解しましょう。
記事の目次
不動産売却時の税金はいつ払う?

不動産の売却時にかかる税金の種類と納付のタイミングについて以下の表にまとめました。
税金の種類 | 納付のタイミング |
---|---|
印紙税 | 売買契約締結時 (収入印紙の購入時) |
登録免許税 | 抵当権抹消登記時 (司法書士への報酬支払い時) |
譲渡所得税 | 売却した翌年の確定申告 (原則2月16日~3月15日) |
住民税 | 売却した翌年6月以降の支払い日 |
仲介手数料 | 仲介手数料の支払い時 |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
印紙税:売買契約を締結した日
印紙税は、売買契約書など課税文書を作成する場合に課される国税です。契約金額に応じた印紙を契約書1通ごとに貼付・消印すれば納税が完結します。印紙を貼らずに契約してしまうと、印紙税額と同額または3倍相当の過怠税が追徴されるため注意が必要です。
売買契約締結日に不動産会社立会いのもと、契約書へ印紙を貼って消印すれば、印紙税を納めたことになります。
収入印紙は不動産会社が用意している場合が多いです。しかし、郵便局や法務局で購入できるため、収入印紙の購入日と売買契約締結日が必ずしも一致しない可能性もあります。実質的な支払いタイミングは、収入印紙の費用を負担した時点、実務上では売買契約締結時と理解しておきましょう。
登録免許税:抵当権抹消登記時
登録免許税は、不動産の権利を登記簿に反映する際に課される税金です。登記の種別ごとに税率などの仕組みが異なりますが、不動産の売却で売主が負担するものは抵当権抹消登記です。売却時の所有権移転登記にも登録免許税が発生しますが、負担者は一般的には買主になります。
納付タイミングは抵当権抹消の登記申請時。住宅ローン完済後に手続きをおこなう場合、金融機関から受け取った書類を持って法務局へ申請します。その場で収入印紙を購入・貼付するか、オンライン申請なら即日電子納付して完納です。
ただし、抵当権抹消手続きを司法書士に依頼する場合、登録免許税の支払いもお願いすることが一般的。よって、司法書士の報酬に登録免許税が含まれているため、実質的な納税タイミングは司法書士への報酬支払い時になります。
譲渡所得税:翌年の確定申告
譲渡所得税は、不動産を売って得た利益である譲渡所得に課される税金。売却代金から取得費などの必要経費を差し引いた所得を対象に、一定の税率で課税されます。
納付は売却した翌年の確定申告時であり、原則として2月16日~3月15日の申告期間内です。譲渡所得税に限らず、所得税とともに納付します。
住民税:翌年6月以降の支払い日
譲渡所得は、所得税だけでなく住民税の課税対象です。ただし、譲渡所得税と住民税では課税のタイミングが異なるため、注意しましょう。
住民税は、普通徴収の場合、6月・8月・10月・翌年1月の年4期に分け、自治体から届く納付書で納める仕組みです。給与所得者で特別徴収の場合は、6月以降の給与から自動的に天引きされます。
消費税:仲介手数料の支払い時
事業者ではない個人が売却した不動産の売却代金に、消費税はかかりません。しかし、不動産会社の仲介サービスは課税対象であり、仲介手数料には消費税が課されます。
仲介手数料は成功報酬であるため、支払義務は売買契約成立時点で発生します。よって、仲介手数料を支払うタイミングで手数料と同時に消費税を納める仕組みです。
不動産売却時に払う税金はいくら?

不動産売却時に支払う税金は譲渡所得税・住民税を除いて、それぞれ異なる方法で確定し、大きく分けて4つあります。それぞれの税金の確定方法から、具体例を示して不動産売却時に支払う税金はいくらになるのかを確認しましょう。
印紙税は契約書に記載される金額をもとに課税される
印紙税は契約金額に応じた印紙を貼付・消印します。また、2027年3月31日までは、不動産売買契約書の印紙税の軽減措置が適用されます。契約金額に応じた印紙税の税額を確認しましょう。
契約金額 | 印紙税(軽減措置適用) |
---|---|
50万円以下 | 200円 |
50万円超~100万円以下 | 500円 |
100万円超~500万円以下 | 1,000円 |
500万円超~1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超~5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円超~1億円以下 | 3万円 |
1億円超~5億円以下 | 6万円 |
5億円超~10億円以下 | 16万円 |
10億円超~50億円以下 | 32万円 |
50億円超 | 48万円 |
例えば、契約金額が3,000万円の場合は、軽減措置を適用した印紙税が1万円です。印紙税は契約金額に応じて税額が高くなる仕組みです。
また、売買契約書は売主・買主それぞれ1枚作成しますが、印紙税を売主・買主のどちらが負担するかは交渉次第。売主と買主で折半するケース、または売主が全額を負担するケースがあります。
登録免許税は定額である
抵当権抹消登記にかかる登録免許税の税額は、土地や建物に対して1,000円です。土地と建物は別々に計算するため、それぞれに抵当権が設定されている場合は、合計で2,000円の登録免許税がかかります。
抵当権抹消登記は司法書士に代行してもらう場合、登録免許税を含めて一般的に10万円程度の報酬を支払うことになります。そのため、実際に支払う際には登録免許税自体の税額よりも、司法書士に対する報酬の支払額のほうが重要になるでしょう。
譲渡所得税・住民税は保有期間が5年を超えると優遇される
譲渡所得税と住民税は、同じ計算方法によって算出されます。課税の基準となる譲渡所得は、次の計算式で求められます。
売却代金 -(取得費 + 譲渡費用)
譲渡所得にかかる税金は、譲渡所得税(所得税 + 復興特別所得税)と住民税です。復興特別所得税は2037年12月31日まで所得税額の2.1%を乗じた金額が徴収されます。
さらに、譲渡所得は不動産の保有期間に応じて、短期譲渡所得と長期譲渡所得の2種類の課税基準があります。所有期間が5年を超えると長期譲渡所得で課税され、短期譲渡所得と比較すると税率が優遇される仕組み。譲渡所得税・住民税の税率を以下にまとめました。
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | |
---|---|---|
所得税率 | 30% | 15% |
住民税率 | 9% | 5% |
復興特別所得税率 | 0.63% | 0.315% |
合計 | 39.63% | 20.315% |
短期譲渡所得と長期譲渡所得で税率が大きく異なることから、不動産の保有期間で税額が変化します。例えば、不動産の売却で得られた譲渡所得が1,500万円と仮定しましょう。1,500万円の譲渡所得に対して、短期譲渡所得・長期譲渡所得で税率を計算すると、以下の額面になりました。
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | |
---|---|---|
所得税 | 450万円 | 225万円 |
住民税 | 135万円 | 75万円 |
復興特別所得税 | 9万4,500円 | 4万7,250円 |
合計 | 594万4,500円 | 304万7,250円 |
短期譲渡所得と長期譲渡所得の税額の差は289万7,250円です。このように、保有期間が5年を超えると長期譲渡所得が適用され、優遇されます。
消費税は仲介手数料に現在の消費税率をかける
消費税は、仲介手数料に対して消費税率10%が課されます。また、消費税が課される仲介手数料の上限は、次の計算式で算出できます。
(売買価格 × 3% + 6万円)× 消費税
例えば、売買価格が2,000万円の物件の場合は、66万円が仲介手数料の上限であり、支払う消費税の上限額は6万6,000円になります。
不動産を売却して税金を払わないとどうなる?

不動産の税金はその場で支払うものだけでなく、譲渡所得税・住民税のように確定申告をして、あとから支払う税金もあります。不動産の売却で確定申告を怠り、税金を支払わなかった場合、2つの問題が発生します。詳しく見ていきましょう。
延滞税・加算税が発生する
不動産を売却して生じた譲渡所得税や住民税を期限までに申告・納付しなかった場合、延滞税と各種加算税のペナルティが科されます。延滞税は、本税を支払わなかった日数によって1日単位で利息のように増加する税金です。納税が遅れた場合に発生する税金といえるでしょう。
一方で、加算税は、申告を怠ったことに対する罰金に近い性質を持ちます。確定申告を忘れた場合は無申告加算税が科されます。わざと支払わなかったなど、悪質と判断された場合は、重加算税が科されることも。不動産の売却益に対して科されるため、売却益が大きいほど徴収される税金も増える仕組みです。
不動産を売却して税金を支払わなければ、あとから税務署の調査で発覚します。確定申告で支払った場合と比較して、ペナルティが科されるため手元にお金が残らなくなるでしょう。
督促状や差し押さえのリスクがある
税務署から延滞税・加算税を請求されても支払わなかった場合は、行政執行で徴収されます。最初に届くものが督促状です。
督促状は、国税の納付期限から50日以内に送付することが定められています。督促状を発送した日から10日が経過しても納税されない場合、滞納者の財産を差し押さえることが可能になります。
督促状は単なる催促ではなく、税金の滞納に対する警告を受けている状況です。不動産の売却で税金を支払わずに放置を続けると、資産の差し押さえまで事態が進むことがあるため、必ず納めるようにしましょう。
不動産売却時の税金を払う際の注意点

不動産売却時の税金を払う際の注意点を以下にまとめました。それぞれ詳しく見ていきましょう。
複数の税金の種類と異なる支払時期を把握する
不動産の売却に関係する主な税金は全部で5つあり、それぞれ支払時期が異なります。よって、税金の種類を把握するだけでなく、税金の支払時期を含めた理解が重要です。
特に支払時期が重要になる税金は、売却した翌年の確定申告期間中に納める譲渡所得税と、翌年の6月以降に納める住民税です。支払いを遅延することなく、正しく税金を納めるために、不動産の売却で発生する税金の種類と支払時期を確認しましょう。
万が一、納付を怠れば延滞税・加算税が発生して、本来支払う必要がない負担が増えてしまいます。
譲渡所得の計算では取得当時の書類を用意する
譲渡所得税・住民税を課税する基準となる譲渡所得を正しく計算するには、取得費と譲渡費用(諸経費)の立証が重要です。そのため、譲渡所得の計算では、不動産を取得した当時の売買契約書、仲介手数料の領収書などの書類を用意する必要があります。
万が一、客観的な書類を用意して取得費を証明できない場合は、概算取得費を売却代金から差し引きます。この場合、取得費は売却価格の5%。売却価格の5%で譲渡所得を計算した場合、正しく取得費を計算した場合と比較して、支払う税金が大きく増加することも。
よって、譲渡所得を計算するにあたっては、必ず取得費と譲渡費用を立証できる書類を用意するようにしましょう。
節税制度を利用して確定申告する
不動産の売却で発生する税金は、制度を利用した節税が可能です。例えば、売却した不動産が居住用の場合は、「居住用財産の3,000万円特別控除」を利用できる場合があります。節税制度を利用すれば、不動産の売却で支払う税金を少なくできるため、利用できる制度を事前に確認しましょう。
確定申告は、節税制度の利用を含めて、準備や申告に手間がかかるかもしれません。申告期間中に準備を開始するのではなく、年明けから始めることを心がけましょう。
譲渡所得税・住民税を支払うための資金を確保する
不動産の売却益に対してかかる税金は、翌年に支払う必要があります。手元の資金をすべて利用してしまうと、翌年の2月~3月の譲渡所得税の確定申告、6月以降の住民税の支払時期に税金が支払えなくなるかもしれません。
譲渡所得税・住民税に相当する資金は使用することなく確保します。節税による控除の適用を受けられる見込みがあっても、実際に控除が適用されるまで、譲渡所得税に相当する金額は動かさないようにしましょう。
万が一、不動産の売却益をすべて使用してしまい、税金を納められない場合は、税務署に分納を相談します。
専門家である税理士への相談も検討する
売却規模が大きく複数物件にまたがっている、また相続や贈与が絡むなど、ご自身で正しく申告することが難しい場合は、専門家である税理士への依頼をおすすめします。税理士は、最新の改正に即した税法にしたがって確定申告を代行してもらうことが可能です。
自身では気付けなかった節税方法を利用して、不動産の売却にかかる税金を最大限に抑える申告をおこなってくれます。確定申告が初めてで自信がない場合も、税理士に依頼すれば、税金を払い過ぎることなく、税法上において正しい申告ができるでしょう。
まとめ
不動産売却にともなう税金は、印紙税や登録免許税のように即時納付が必要なものから、譲渡所得税・住民税のように翌年以降にまとめて申告・納付するものもあります。税金の種類によっていつ支払うかが異なるため、それぞれの税金の納付時期を把握するようにしましょう。
また、譲渡所得税・住民税の確定申告はあらかじめ資金を確保したうえで、期間に余裕をもっておこなうことをおすすめします。必要に応じて税理士に相談して、制度を利用することで、不動産の売却にかかる節税を実践しましょう。
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執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ