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固定資産税は減税できる?申請方法&条件、軽減措置について解説

家を買うと毎年かかる固定遺産税。減税するためのコツをお教えします
土地や家などを所有していると、毎年固定資産税を支払うことになりますが、その額は決して小さなものではないため、なるべくなら納める税金を抑えたいと考える人も少なくないでしょう。今回は、そんな固定資産税を上手に節約する方法や、その仕組みについてお伝えします。

固定資産税は減税できる?

所有している資産によっては、固定資産税を減税できる場合があります。固定資産税がどのようにして課税されているか、どのような方法で軽減することができるか。その仕組みを知ることで、減税するためにどのような方法があるかを理解することができるでしょう。そこで、固定資産税の計算方法や仕組み、軽減の制度について解説します。

固定資産税の仕組みと課税対象

固定資産税は、毎年1月1日に土地・家屋・償却資産などの固定資産を所有している人が、年税額をその固定資産の所在する自治体に納める税金です。固定資産となる土地や家屋、償却資産は以下となります。

固定資産税の概要

固定資産の種類
土地 田んぼ、畑、住宅地、池沼、山林、鉱泉地(温泉など)、牧場、原野などの土地
家屋 住宅、お店、工場(発電所や変電所を含む)、倉庫などの建物
償却資産 会社等(事業者)が所有する構築物(広告塔やフェンスなど)、飛行機、船、車両や運搬具(鉄道やトロッコなど)、備品(パソコンや工具など)など

固定資産税の種類と例(出典:総務省「固定資産税」

固定資産税は、このような資産を対象として課税されます。土地や建物だけでなく、事業用の不動産なども対象です。

固定資産税の算出方法

続いて、固定資産税の計算方法についてご説明しましょう。自治体によって税率は異なりますが、土地や家屋、償却資産にかかる固定資産税の目安は、以下で算出できます。

・土地
土地の固定資産税の目安は、以下のような計算式で算出できます。なお、固定資産税率は一般的に1.4%が標準となりますが、国や地方自治体によって異なる場合もありますので注意してください。

【計算式】
固定資産税額=固定資産税評価額(課税標準額)×1.4%

例えば、土地の評価額が1,000万円だとすると、固定資産税は以下のように算出されます。

1,000万円×1.4%=14万円

土地の計算は、所有する割合により按分して計算されます。マンションの場合は住宅用地ですから、特例により固定資産税は1/6に軽減されます。例えば、土地の評価が9,000万円であれば1/6にすると1,500万円になり、マンションの場合にはそれぞれの所有する面積で割って計算します。

なお、事業用地であれば1/2に軽減され、空き地にアパートを建設した場合なども固定資産税の軽減になります。つまり土地の固定資産税は、住宅や事業で利用することで軽減することが可能です。ただし、固定資産税の節税のためだけに賃貸経営をおこなうのは危険ですので、十分に注意してください。固定資産税やその他のランニングコストがいくらかかるかも含め、しっかり収益をシミュレーションしたうえでおこないましょう。

また、マンションの場合には、実勢価格と固定資産税評価が大きく差があることもあります。そのため、固定資産税評価額は低くとも相続税、贈与税の計算基準として固定資産税評価額が適用されず、予想していたよりも高い税金を支払うことになる場合もあるでしょう。この点についても、あらかじめ注意が必要です。

・建物
建物の固定資産税は、次のような計算式から算出されます。

【計算式】
固定資産税額=建物の固定資産税評価額(課税標準額)(※)×1.4%

(※)建物の固定資産税評価額=再建築費評点数×経年減点補正率×評点1点あたりの価額

木造の一戸建ては、鉄筋コンクリート造りのマンションに比べて減価償却期間が短くなります。そのため、マンションよりも価値が下がりやすく、固定資産税は下がりやすい傾向にあります。

原則として「課税標準額=固定資産税の評価額」となりますが、特例措置等が適用される場合においては、評価額より低くなります。また、課税標準額の合計が土地は30万円未満、家屋は20万円未満、償却資産150万円未満においては固定資産税が課税されません。

固定資産税の軽減措置にはどんなものがある?

家や土地の評価額が大きいほど、高くなる固定資産税。負担を少しでも減らしたいと思う人も多いはずです
家や土地の評価額が大きいほど、高くなる固定資産税。負担を少しでも減らしたいと思う人も多いはずです

所有する土地や建物には、住宅や事業のために使用するなどの条件によって固定資産税の軽減措置を受けられる場合があります。どのようなケースで軽減措置を受けることができるのか、こちらで詳しくご説明していきましょう。

住宅用地に対する軽減措置

固定資産税は住宅用地に対して、下記のような軽減措置があります。

住宅用地区分 固定資産税の特例課税標準額 都市計画税の特例課税標準額
小規模住宅用地 200平方メートル以下の部分
評価額×6分の1
評価額×3分の1
一般住宅用地 200平方メートル超の部分
評価額×3分の1
評価額×3分の2

用途によりますが、小規模住宅用地の場合には1/6が軽減されます。また、都市計画税も固定資産税と同様に、減税になることがあります。都市計画税は都市計画事業や、土地区画整理事業に要する費用に充てるために市町村が課税するものです。固定資産税と同じく、毎年1月1日時点で所有している不動産に対して課せられます。

対象となるのは、原則として市街化区域内の不動産です。固定資産税の評価額に対し税率を乗じて計算され、税率は各自治体によって異なりますが、最大で0.3%と定められています。

新築住宅・長期優良住宅に対する軽減措置

新築住宅については、一戸建てならば3年間、マンションならば5年間において固定資産税の軽減を受けることができます。ただし、長期優良住宅や認定低炭素住宅といった認定を受けた住宅は、軽減が一戸建てで5年間、マンションでは7年間に延長されます。新築の際にこのような軽減措置を受けることができる点も、あらかじめ覚えておきましょう。

住宅種別 減額措置の条件 減額期間
減額割合
一般の新築住宅 マンション 床面積:50平方メートル以上280平方メートル以下
減額の範囲:120平方メートルまで
3階建以上の準耐火構造及び耐火構造住宅
新築後5年間
2分の1に減額
戸建て住宅 床面積:50平方メートル以上280平方メートル以下
減額の範囲:120平方メートルまで
店舗併用住宅の場合は居住部分が2分の1以上
新築後3年間
2分の1に減額
新築の
認定長期優良住宅
マンション 床面積:50平方メートル以上280平方メートル以下
減額の範囲:120平方メートルまで
3階建以上の準耐火構造及び耐火構造住宅
新築後7年間
2分の1に減額
戸建て住宅 床面積:50平方メートル以上280平方メートル以下
減額の範囲:120平方メートルまで
店舗併用住宅の場合は居住部分が2分の1以上
新築後5年間
2分の1に減額

例えば、課税評価額3,500万円の新築マンション(120平方メートル以下)の場合では、下記のようになります。

<通常の固定資産税>
3,500万円×1.4%=49万円

一方、一般の新築マンションの場合だと5年間、下記の優遇を受けることができます。

49万円×1/2=24.5万円

また、認定長期優良住宅の場合には、これが7年間に延長されます。
  
このように、新築住宅は固定資産税の軽減を受けることができます。また、認定長期優良住宅は大きな優遇を受けることが可能です。これらの住宅を建築、または購入する際のコストは、一般的な住宅に比べ高額になるでしょう。しかし、このような優遇があるほか、またフラット35などの住宅ローン金利の優遇を受けることもでき、資産価値が高くなるため、結果的には支出を抑えられて価値が下がりにくい物件といえます。こういったメリットも踏まえ、コストや認定を受けるための条件と比較しながら検討してみましょう。

リフォームに対する減額措置

リフォームすることで床面積が広くなり、固定資産税が高くなる場合があります。また、大規模なリフォームやリノベーションをおこなった際にも、固定資産税が増加するかもしれません。反対に、下記リフォームをおこなった場合には翌年の固定資産税が安くなる場合もあります。これらは「令和4年度税制改正大綱」で利用できる期間が2024年3月31日まで延長されました。

耐震リフォーム

建築基準法が改正する前の1982年1月1日以前から建っている住宅で、現在の耐震基準に適合する耐震改修工事をおこなった場合には、120平方メートルに相当する分の固定資産税が翌年1年間半額になります。この際、条件は下記の通りです。

減額の条件

  • 耐震改修工事費用が50万円超
  • 1982年1月1日以前から所在する物件
  • 現行の耐震基準に適合する耐震改修工事
  • 店舗併用住宅の場合、居住用部分が1/2以上

バリアフリーリフォーム

バリアフリー化をおこなったリフォームについても減額措置があります。翌年1年分の固定資産税が、100平方メートルに相当する分まで1/3減額されるというものです。

減額の条件

  • 新築されてから10年以上を経過した住宅
  • 改修後の床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下
  • 65歳以上の人、要介護要支援認定を受けている人、障害がある人が住む住宅
  • 店舗併用住宅の場合、居住用部分が1/2以上
  • バリアフリー改修工事費用が50万円超
  • 一定のバリアフリー改修工事に該当

省エネリフォーム

省エネリフォームについては、120平方メートルに相当する部分まで1/3減額されます。

減税の条件

  • 改修後の床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下
  • 断熱改修部位が2016年省エネ基準に適合
  • 店舗併用住宅の場合、居住用部分が1/2以上
  • 省エネ改修工事費用が60万円超
  • 一定の省エネ改修工事に該当(窓の断熱改修工事は必須)

政府は化石燃料の消費量の抑制と、CO2排出量の抑制のために住宅の省エネ化に力を入れています。そのため、断熱性の向上やエネルギー効率の高い給湯機器、冷暖房機器の交換などのための省エネリフォームに補助金も出しています。こうした補助金についても、固定資産税の軽減と併せて活用してみるとよいでしょう。

長期優良住宅化リフォーム

長期優良住宅化リフォームは、住宅の寿命を延ばすためのリフォームのことをいいます。先に述べた耐震性や省エネ性、耐劣化性の向上する工事をおこない、リフォーム前に長期優良住宅化リフォーム計画書を市町村等に提出し、認定を受けたリフォームをおこなった場合に固定資産税が1/3に軽減されるというものです。

減税の条件

  • 一定の耐震改修工事・省エネ改修工事(窓の断熱改修工事は必須)に該当
  • 改修後の床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下
  • 店舗併用住宅の場合、居住用部分が1/2以上
  • 認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づく改修工事
  • 耐震改修工事費用は50万円超、省エネ改修工事費用は60万円超

日本の住宅は欧米と比較すると短命といわれ、木造住宅は30年程度が寿命ともされています。そんな住宅のうち、寿命を延ばすための性能を備えた長期優良住宅に対しては以前より補助金が出されてきました。また、新築については固定資産税の軽減措置の延長、フラット35の金利優遇など、一般住宅よりもお得な制度を創設してきています。この制度もその一環として、また、空き家の増加が問題視されているなかで中古住宅を活用するための施策としておこなわれているものです。

住宅を建て替え中の際でも減税できる?

住宅用地の特例は、土地に建物が建っていることが条件となりますので、1月1日時点で建物がない更地の状態の場合、本来であれば特例措置を受けられません。しかし、要件を満たせば特例措置を受けることが可能です。

  • 前年1月1日時点で宅地用地であること
  • 該当年度の1月1日時点で建て替え工事が着工されており、
    翌年の1月1日までに完成すること
  • 建て替え前と同一の敷地で建て替えがおこなわれていること
  • 当該年度と前年度において、土地の所有者が同一であること
  • 当該年度と前年度において、建物の所有者が同一であること

自治体によっては、異なるケースもありますのでお住まいの自治体で確認ください。

固定資産税の減額申請の方法は?

固定資産税の減額の申請は、各地自体におこないます。申請書は自治体のホームページにアップされていますので、必要事項を記載し提出してください。

申請に必要なものは?

各自治体にある固定資産税減額申告書と、各工事に合わせ証明書が必要になります。詳しい必要書類は、それぞれの自治体に問い合わせて確認しましょう。

すべてのリフォームに必要となる書類

  • 固定資産税減額申告書
  • 登記事項証明書
  • 工事請負契約書
  • 増改築等工事証明書
  • 補助金支給決定通知書等(利用する場合)

リフォームの内容によって必要となる書類

  • 耐震リフォーム「住宅耐震改修証明書」
  • バリアフリーリフォーム「介護保険の被保険者証の写し」
  • 長期優良住宅化リフォーム「長期優良住宅の認定通知書の写し」

いつまでに申請すればいい?

固定資産税の減税申告は、工事が完了した日から3カ月以内に申告書の提出が必要です。余裕を持って用意し、忘れずに申請しましょう。

固定資産税の減税に関するQ&A

固定資産税の減税について、よくある質問をまとめました。以下を参考にしてください。

申請しないと減税は受けられない?

固定資産税を減税するには手続きをおこなう必要があり、申請しないと減税を受けることはできません。

店舗の2階を住居用にリフォームする場合、減税申請できる?

減税申請が可能な場合もありますので、各自治体に確認しましょう。また、店舗兼住宅に住んでいたが廃業し店舗を住居にリフォームした際には、土地にかかる固定資産税を抑えることができるので、早めに住宅用地の申告手続きをおこないましょう。

転勤で持ち家が空き家になった場合、固定資産税は上がる?

空き家になったからといって、固定資産税が上がるわけではありません。空き家がメンテナンスされずに放置され、周囲に危険がおよぶ場合や景観を損なうような場合には上がることもあります。そうならないよう、定期的にメンテナンスをおこないましょう。もう住む予定がなく、賃貸したり資産として活用したりする予定もないようであれば、早い段階で第三者に譲渡するとよいでしょう。

二拠点生活で新築マンションを購入する場合、減税対象になる?

セカンドハウスやビジネスの拠点として購入した物件など、普段居住していなくても条件により対象になる場合もあります。

  • 居住用の家屋であること
  • 特定の人の利用であること
  • 年間を通じて毎月1泊2日以上の利用があること

優遇措置を受けるには以下のような手続きが必要です。

  • 取得後60日以内に所在地の都道府県税事務所へ申請
  • 毎月1泊2日以上の滞在を市区町村役場に提出

また、申請内容や提出書類は自治体によって異なるため、購入する際に確認しましょう。

固定資産税額は本当に正しいの?もし間違っていたら還付される?

原則としては、正しいものと考えていいでしょう。しかし、まれに固定資産税の評価額の計算間違いで過大に徴収することもあるようです。とはいえ、専門知識が必要かつ難解なため、ご自身では気が付かないことも多いでしょう。なお、住宅の形状などによって、評価額が下がることもあります。
もしも、金額がおかしいなと思ったら、固定資産評価審査委員会に「審査の申出」をすることができます。

固定資産税を払い忘れた!滞納したらどうなる?

万が一、固定資産税を支払わず滞納した場合には、延滞金を支払う必要があります。延滞料は期限の翌日から1カ月までは年率7.3%、1カ月以上が経過すると年率14.5%です。支払いを忘れてしまった場合には、すぐに自治体に連絡して相談しましょう。
期限内に納付をせずに督促状が届き、支払う意思を表示しない場合には、給与や預貯金を差し押さえられることもあります。もちろん、いきなり差し押さえさえるようなことはありません。しかし、期限を過ぎてしまいそうなときにはできるだけ早めに相談し、しっかり支払う意思を見せることが大切です。

督促されても、自治体に何の相談もなく税金が支払われない場合には、自宅建物などの資産を競売にかけられる可能性もあります。競売になると市場価格よりも大幅に安い金額で売ることになりますので、そのような状況になる前に必ず支払うようにしましょう。万が一、支払うことができずお金を用立てられないなら、競売になる前に資産を処分するようにしてください。支払えないからとすぐに競売にかけられるわけではありませんが、誠実に対応する姿勢を見せないとこのような可能性もあります。

まとめ

固定資産税の減税について、詳しく解説してきました。このように、固定資産税には軽減措置があり、政府も方針として空き家や中古住宅の活用を推奨し、さまざまな税制の優遇をおこなっています。固定資産税の減税措置も、その一環として設けられているものです。特にリフォームやリノベーションをおこなう際には、優遇を受けられる可能性があるので確認してみましょう。

また、土地の固定資産税は分筆することによって節約できる場合があったり、土地を再度測量してもらうことで評価額が安くなったりすることもあります。空き地の場合には、アパートなど賃貸物件を建設することで固定資産税の軽減が可能です。また、相続税、贈与税の評価額としても、小規模宅地の特例を受けることで軽減することができます。こうしたことから、節税のために空き地に賃貸物件を建設することも少なくありません。
しかし、固定資産税もさほど高くない、また、相続税もかからない人がアパート建設を勧められて建設する事例もあります。初期投資に見合った収益を得られず、後に収支も苦しくなっていくような事例も散見されますので、節税目的のアパート建設には要注意です。賃貸経営は節税ではなく、長期的に収益を得られるかをしっかりシミュレーションして判断してください。本記事を参考にして固定資産税の計算の仕組を知り、どのようにすると軽減できるのか、軽減のためにどのような制度があるのかを知っておきましょう。

なお、昨今はクレジットカードや電子マネーでの支払いも可能になってきました。これらを用いて税金を支払うことで、お得にポイントを貯めたり、特典を利用したりすることもできます。上手く活用することで、固定資産税の負担軽減につながるでしょう。

小川洋平

執筆者

小川洋平

合同会社clientsbenefit代表、CFP1級ファイナンシャル・プランニング技能士。

25歳でお金の知識・営業経験ゼロから保険営業の世界に飛び込み、6年半従事。2年目に将来の資産形成のため金融知識が必要なことに気が付き、FPの勉強を始めて金融・経済の知識を学ぶ。その後、保険に限らずあらゆるお金の面でクライアントにとってベストな提案をしたいという想いで、商品販売ではなく相談業務を開始。住宅ローン相談も得意とし、自身が自宅の新築時に学んだ知識や、工務店のネットワークを活かし住宅購入のアドバイス等もおこなっている。

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