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退職金で住宅ローンを返済できる?もらえる金額平均と退職金を使う時の注意点を調査!

退職金で住宅ローンを返済できるのでしょうか
定年後も返済が続く住宅ローンを組んでいる方のなかには、リタイア後に収入が減るのを考えると住宅ローンを早く返したいと思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな時、頼りにしたいのは退職金。退職金を使って住宅ローンを完済し、老後は気持ちを楽にして過ごせたらいいですよね。しかし、住宅ローンの一括返済ができるほど、退職金はもらえるのでしょうか?また、退職金を使ってしまってもその後の生活は大丈夫なのでしょうか?

そこで本記事では、そもそも退職金はどのくらいもらえるのか、住宅ローンの返済に退職金を使用するメリットや一括返済を実行する時の注意点を解説します。退職金で住宅ローンの返済を計画している人は必見です。

退職金はいくらくらいもらえる?

住宅ローンを返済できるほど退職金はもらえるのでしょうか
住宅ローンを返済できるほど退職金はもらえるのでしょうか

住宅ローンの返済で退職金を頼りにしたいと考えている方は多くいらっしゃると思います。実際のところ、退職金はいくらくらいもらえるのか、退職金の相場をみていきましょう。

以下は、大企業と中小企業で定年まで勤めた方の平均退職金額です。

大企業※
学歴 平均退職金額
大学卒 2,230万4,000円
高校卒 2,017万6,000円

資料:中央労働委員会「令和3年退職金、年金および定年制事情調査」より
※調査対象の資本金5億円以上、労働者1,000人以上(介護事業所以外)の企業を大企業と分類。

中小企業※
学歴 平均退職金額
大学卒 1,091万8,000円
高校卒 994万円

資料: 東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」より
※東京都内にあり従業員が10人~299人の企業を中小企業と分類。

調査結果のように、企業の規模によって、受け取れる退職金の金額には大きな差が出ることがわかりました。また、企業によっては退職金制度がない場合もあります。もし、上記の金額が本当にもらえるなら、住宅ローンの返済に大きく役立つでしょう。しかし、定年退職が数十年先となる方が、上記の金額を満額受け取れるかは不確実です。

住宅ローンの返済に退職金を使いたいと思っている方は、ご自身が勤める会社では退職金制度がどのようになっているか、必ず確認しておきましょう。

住宅ローンの返済に退職金を使うメリットは?

住宅ローンの返済に退職金を使うとどのようなメリットがあるのでしょうか
住宅ローンの返済に退職金を使うとどのようなメリットがあるのでしょうか

住宅ローンの返済で退職金を使用するとどのような点がよいのでしょうか。この章では、住宅ローンの返済に退職金を使うメリットを説明します。

金額によっては一括返済できる

退職金が住宅ローン残高より多い場合は、残りの住宅ローンを一気に支払うことができます。そうすれば、将来の返済期間にわたる利息の支払いがなくなり、総返済額が大幅に削減されます。

長期間にわたる住宅ローンの返済による金利負担を軽減できるため、家計に余裕が生まれます。毎月の返済義務がなくなり、生活費や趣味に使える余裕ができます。退職後の新たな生活を楽しむためにお金を使えるようになるのは大きなメリットです。

普段の生活に影響しない

退職金は、会社が用意してくれるものや、自分で積立先を選択して運用していく退職金もあります。
退職するまでの間、毎月もらえる給与とは関係なく積み立てされていくので、可処分所得の中から捻出して積み立てていく個人の貯金とは異なります。退職金はボーナスのように給与とは別にもらえるお金なので、仮に使用しても、日常生活の収支に変化はありません。

住宅ローンの返済に退職金を使う時の注意点は?

住宅ローンの返済で退職金を使う時に注意すべき点は何でしょうか
住宅ローンの返済で退職金を使う時に注意すべき点は何でしょうか

手元から大きなお金がなくなる

住宅ローンの返済に退職金を使う時の注意点は、「手元から大きなお金がなくなる」点です。退職後に収入が減ることから、退職金を生活費の一部に充てようと思っている場合、手元の大金を住宅ローンの返済にあててしまうと、日常の生活費や趣味にかける資金が制約されます。生活の質が低下し、ストレスの要因になる可能性も。

また、突発的な緊急事態に備える資金が不足する可能性もあります。例えば、急な医療費、車の修理、自然災害による家の修繕費などの出費があった場合、まとまったお金がないと困ります。

退職後に収入が少なくなる可能性が高い方は特に、手元から大きなお金が無くなった時に経済状況がどうなるかを事前にシミュレーションしたうえで、退職金を使用するのか検討する必要があります。

退職金をあてにし過ぎていないか

定年まで勤めれば確実に退職金が受け取れる場合、住宅ローンの返済計画に退職金での支払いを含めているのは自然なことです。しかし、退職金をあてにし過ぎた返済計画を立てている場合は要注意。退職金が受け取れるとはいえ、このご時世、勤めた会社が退職するまで続くかはわかりません。存続しても、数十年後の退職金が決まった金額で受け取れるとは限りません。もし、思ったよりも退職金が少なかった場合、住宅ローンの返済計画がくるってしまいます。

余裕を持った返済計画になっているか注意し、退職金だけを頼りに住宅ローンを組まないようにしましょう。

運用の機会損失

資金に余裕がある場合でも、退職金のすべてを住宅ローンに使ってしまうのはもったいないかもしれません。

仮に、退職金が1,000万円で住宅ローン残高が1,000万円なら、一括返済で住宅ローンを完済できます。退職金を住宅ローン返済にあてると、ローンのない住宅は手に入りますが手元の自由資金が無くなってしまい、投資して資金を増やす機会を失います。もし退職金を適切に運用できれば、投資などの資産運用で利益を生む可能性があります。将来の資産増加が期待でき、増えた資産をもとにさらなる投資もできるかもしれません。
退職金が現金として手元にあれば、その形をさまざまに変えることができます。

一方で、退職金を全額住宅ローンにあてると、住宅という単一の資産になってしまうため、手元で自由に使用することもできなければ他に形を変えることもできません。

住宅ローンの返済にあてることが必ずしも悪いわけではありませんが、退職金の使い道はバランス分散できると理想的です。例えば、一部は住宅ローンの返済に、一部は運用に回すなどすれば、将来の経済的な安定感を高められます。ただし、投資をしたからといって必ずプラスになる保障はありません。

退職金で住宅ローンを返済する前に確認すべきことは?

退職金で住宅ローンを返済する前に確認すべきことはどのようなことでしょうか
退職金で住宅ローンを返済する前に確認すべきことはどのようなことでしょうか

退職金を使っても生活費が十分にあるか

退職金を住宅ローンの返済にあてる前に確認すべき事柄の一つは、「退職金を住宅ローン返済にあてても、生活費が十分にあるか」です。

これまでと同じような生活をするのでぎりぎり足りる、公的年金もあるから大丈夫、と思っている方は要注意。退職後の生活はこれまでどおりとはいきません。年齢を重ねるだけ、健康を崩す可能性も増えます。ケガや病気でかかる医療費だけでなく、住まいをバリアフリーにリフォームするなどが必要になる可能性もあります。

さらに、一戸建ての場合は、屋根や外壁の修理、設備の更新などの定期メンテナンスも必要になります。災害も増えている昨今、予測不可能な出費が発生するのは珍しくありません。急な出費に備えるためにも、緊急予備資金を十分に用意しておくべきです。

また、現役を退職した翌年には、収入が少なくなったとしても、前年の収入額に応じて住民税などの支払いが待っています。お金がかかる場面は多いので、十分考慮しておきましょう。

一般社団法人全国銀行協会によれば、夫婦2人が老後生活するために必要な資金は2,500万円が目安になっています。住宅ローンを返済する前に、退職金を使って返済をしても必要な資金が手元に残るのかを十分に確認しましょう。

住宅ローンを完済する場合のデメリットに対応できるか

退職金を使って住宅ローンを完済できれば、返済がなくなりありがたいと思う人は多いかもしれません。しかし、住宅ローンの返済のために加入できた団体信用生命保険(団信)や、住民税の一部が控除される「住宅ローン控除」が無くなる点にも目を向ける必要があります。

住宅ローンを組む時は、借入者が亡くなったり、病気やケガで働けなくなったりした場合に備えて団信に加入用意するのが一般的です。しかし、住宅ローンを完済すると、団信の保障も終わります。もし、別で生命保険を用意しておらず、生命保険の代わりに団信を利用しようと思っていた場合は、要注意です。

例えば、退職金が500万円だったとして、それをすべて住宅ローン完済に使用した直後に亡くなった場合、住宅は残りますが現金を家族に残すことはできません。一方で、退職金を住宅ローン返済にあてず手元に保有した状態で亡くなった場合、団信の保証により住宅ローンの返済の必要がない住宅に加えて現金500万円も家族に残すことができます。

また、住宅ローンを完済した場合、住宅ローン控除の対象から外れます。住宅ローン控除は、年間のローン利息額に対して税金の優遇措置を受けるもので、返済期間中に税金を節約できる大きなメリットがあります。しかし、完済後は優遇措置が適用されなくなるため、年間の税金負担が増えることがあります。

団信以外に生命保険を用意している人や遺族の保障は必要ない人、住宅ローン控除が無くなってもいい人は心配無用ですが、ご自身の場合どうすればよりメリットが大きいかを事前に確認することをおすすめします。

この記事のQ&A

Q:退職金はいくらくらいもらえる?

A:近年の調査では、大企業の退職金の平均額が、男性では、大学卒で2,230万4千円、高校卒で2,017万6千円でした。なお中小企業の退職金の平均額は、大学卒で1,091万8千円、高校卒で994万円でした。
企業の規模や形態によって金額はさまざまで、退職金を用意しない会社もあります。退職金を住宅ローンの返済に利用したいと思っている方は、自分の会社ではどのような退職金制度になっているかよく確認しておきましょう。

Q:住宅ローンの返済に退職金を使うメリットは?

A:住宅ローンの返済に退職金を使用すると、金額によっては一括返済できるのがメリットです。一括返済すれば、将来の返済期間にわたる利息支払いがなくなり、総返済額が大幅に削減されます。月々の住宅ローンの支払いが無くなるため、家計に余裕も生まれます。

退職金はボーナスのように月々の給与とは別にもらえるお金なので、仮に使用しても、日常生活の収支に変化はありません。通常の生活に影響なく使用できることが、退職金を住宅ローン返済に活用するメリットです。

Q:住宅ローンの返済に退職金を使う時の注意点は? 

A:住宅ローンの返済に退職金を使う時に注意すべきなのは、手元から大きなお金がなくなる点です。自由に使える現金がないと、突発的な緊急事態に備える資金が不足する可能性があります。

また、退職金の金額は変わる可能性があるので、余裕を持った返済計画になっているか確認し、退職金だけを頼りに住宅ローンを組まないようにしましょう。

さらに、資金に余裕があっても、すべてを住宅ローンに使ってしまうのはもったいないかもしれません。投資などをして運用できれば、資産をさらに増やせる可能性も。退職金の使い道は、一部を返済、一部を投資など、バランス分散できると理想的です。

Q:退職金で住宅ローンを返済する前に確認すべきことは?

A:確認すべき事柄の一つは、退職金を住宅ローン返済にあてても、生活費が十分にあるかです。普段の生活費に加えて、ケガや病気、車の維持費や修理代、住宅のメンテナンス費用も十分にあるかなど、緊急予備資金を十分に用意しておきましょう。

また、退職した翌年には、収入が少なくなったとしても、前年の収入額に応じた住民税などの支払い義務があることも、十分考慮しておきましょう。

さらに、住宅ローンが無くなることで、団信の保障や住宅ローン控除を受けられなくなっても大丈夫か、事前に確認しておくことをおすすめします。

まとめ

本記事では、退職金で住宅ローンの返済は可能か、住宅ローンの返済に退職金を使用するメリットや実行する時の注意点を解説しました。

定年後も続く住宅ローンを組んでいると、リタイア後の返済が心配ですよね。住宅ローンは早く返したいけど退職金を使ってしまっても大丈夫なのかと悩むのは当然です。この記事が、退職金で住宅ローンの返済を計画している方のお役に立てたら幸いです。

民辻伸也

執筆者

民辻伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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