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自己破産後に住宅ローンは組めない?審査に通過しやすくなるためのポイントを5つ解説

自己破産後に住宅ローンを組むためにはどうしたらよいのでしょうか
帝国データバンクの「国企業倒産集計2023年報」によると、2023年に倒産した会社はバブル崩壊後でもっとも高く、前年に比べ33.3%増えたことがわかりました。
会社の倒産等で自己破産したあとでも住宅ローンは組めるのでしょうか。結論からいうと、一定期間組むことはできませんが、その後は組めるようになります。本記事では自己破産後、どういった理由で、どれくらいの期間住宅ローンを組めないのかを解説します。また、住宅ローン審査に通過しやすくなるためのポイントもご紹介します。条件を満たしていれば、金融機関は融資してくれるため、ポイントを押さえておきましょう。

自己破産後に住宅ローンを組めないのはなぜ?

自己破産後に住宅ローンを組めなくなる理由を解説します
自己破産後に住宅ローンを組めなくなる理由を解説します

自己破産をすると、一定期間住宅ローンを組めなくなってしまいます。住宅ローンに限らず、クレジットカードを作ったり、スマホの本体代金を分割契約したりするのも難しくなるでしょう。その理由について解説します。

自己破産とは

まず、自己破産とはどういう状況なのかを確認しておきましょう。自己破産とは、債務を返済できなくなった債務者が、裁判所に申し立てをおこなうことで開始される破産手続きのことです。裁判所から返済ができないと認められ、免責が許可されると、税金を除くすべての債務の返済義務がなくなります。ただし、返済できなくなった原因がギャンブルや浪費の場合は、免責が認められません。

信用情報機関に事故情報が登録される

自己破産をすると住宅ローンが組めなくなるのは、信用情報機関に「事故情報」が登録されるからです。信用情報機関とは、ローンやクレジットカードの利用に関する情報を管理している機関のこと。信用情報機関は次の3つあり、会員となっている会社がそれぞれ異なっています。

信用情報機関名 会員会社
株式会社シー・アイ・シー
(CIC)
主にクレジットカード会社や
信販会社
株式会社日本信用情報機構
(JICC)
主に消費者金融や信販会社
全国銀行個人信用情報センター
(KSC)
主に銀行と銀行系カード会社

自己破産をすると、問題があったと事故情報として登録されてしまいます。住宅ローンに申し込んだ際、金融機関は返済能力があるかを確認するために、信用情報機関に照会をおこないます。そこで事故情報が登録されていると、返済能力がないとみなされ審査に通りません。

自己破産が事故情報として登録される期間

信用情報機関によって、自己破産による事故情報が登録される期間は違います。具体的には下表のとおりです。

信用情報機関 CIC
(株式会社シー・アイ・シー)
JICC
(株式会社日本信用情報機構)
KSC
(全国銀行個人信用情報センター)
登録期間 契約中および契約終了から5年間 契約継続中および契約終了後5年以内 破産手続開始決定の日から7年を超えない期間

最低でも5年、KSC(全国銀行個人信用情報センター)においては、破産手続開始決定の日から7年を超えない期間となっています。長く感じるかもしれませんが、自己破産をするということは、それだけ信用力を失うということです。

また、 CICでは2009年(平成21年)4月1日から官報情報を収集・保有を中止しており、現在は保有していません。しかし、3つの信用情報機関では情報が共有されています。会員会社によるコメントが登録された日を起算点にして、契約中および契約終了から5年間保有されます。

自己破産以外に信用情報機関に登録される情報

信用情報機関に登録される情報は、自己破産だけではありません。他にもどういった情報が登録されるのかを確認しておきましょう。

信用情報
機関
CIC
(株式会社シー・アイ・シー)
JICC
(株式会社日本信用情報機構)
KSC
(全国銀行個人信用情報センター)
契約日(成約日)または
貸付日(実行日)
契約日または貸付日が2019年9月30日以前の登録期間 契約日または貸付日が2019年10月1日以降の登録期間 成約日または実行日が2006年10月以前 成約日または実行日が2006年10月以降
延滞解消 契約期間中および契約終了後5年以内 延滞解消後1年以内 契約継続中の期間および契約終了後5年以内 返済区分発生日から5年経過後 延滞解消日から5年経過後
債務整理 契約期間中および契約終了後5年以内 発生日から5年以内 契約継続中の期間および契約終了後5年以内 破産・民事再生手続き開始決定の日から7年
代位弁済 契約期間中および契約終了後5年以内 発生日から5年以内 契約継続中の期間および契約終了後5年以内 完了区分発生日から5年後

よくあるのが、クレジットカードの支払いやローンの返済を延滞してしまい、事故情報が登録されてしまうケースです。延滞も数日であれば大きな問題にはなりません。しかし、何回も繰り返したり、長期間延滞したりすると、登録されてしまいます。日頃から信用情報機関に事故情報が登録されないよう、気をつけましょう。

住宅ローン審査で見られる3つの項目

住宅ローン審査で見られる項目を押さえておきましょう
住宅ローン審査で見られる項目を押さえておきましょう

住宅ローン審査で見られる項目は、大きく3つあります。信用情報はそのなかの一部でしかありません。金融機関に「この人なら安心して融資できる」と信頼を得るためにも、どういった項目を審査されるのか把握しておきましょう。

個人属性

住宅ローンの審査で見られる項目の1つに「個人属性」があります。個人属性とは、申込者の経済的・社会的な背景のことです。住宅ローンは金融機関にとっても高額な融資です。問題なく完済できるのかを慎重に判断しなければなりません。個人属性を評価し、融資条件を満たす人物であるかを判断します。具体的な項目としては、次のようなものがあります。

  • 信用情報
  • 勤務先
  • 勤務年数
  • 収入
  • 健康状態

安定した収入があるか、お金の管理に問題がないかといったことを見ます。また、社会的勢力や犯罪に関わりがないかといったことも調べられます。

返済計画

返済計画も重要な審査項目の1つです。住宅ローンは30年など、長期に渡って返済が続くものです。そのため、計画に無理がないか、完済できるかなどを見られます。具体的な指標としては、次のようなものがあります。

  • 借入時年齢
  • 完済時年齢
  • 返済負担率
  • 他の借り入れ状況

金融機関によっても異なりますが、完済時年齢は80歳未満としているところが一般的です。しかし、定年後は収入が減ってしまう方が大半のため、定年までに返せるかが大きなポイントとなります。返済負担率とは、収入に対して住宅ローンの返済額が占める割合のことです。他の借り入れがあると、返済負担率が上がってしまうことから、住宅ローンの返済額は慎重に決めましょう。

物件

物件も住宅ローンの審査でポイントとなる項目です。なぜなら、住宅ローンを組む際、土地や物件を担保にして抵当権を設定するからです。抵当権とは、契約者が万一住宅ローンを返済できなくなった際、金融機関が土地や物件を売却して、ローンの残債を回収する権利のことです。担保の価値が低かった場合、ローンの残債を回収できない恐れがあるため、審査に通らない可能性があります。特に中古物件の場合、新築と比べて評価が下がる傾向にあるため、注意しましょう。

自己破産後に住宅ローン審査に通過しやすくするための5つのポイント

自己破産後に住宅ローン審査に通りやすくするためのポイントを解説します
自己破産後に住宅ローン審査に通りやすくするためのポイントを解説します

自己破産をしても、事故情報が削除されれば、住宅ローン審査に通る可能性はあります。本章では、少しでも審査に通りやすくするためのポイントを5つ解説します。

申し込む前に事故情報が消えているかを確認する

まず、住宅ローン審査に申し込む前に、信用情報機関から事故情報が消えているかを確認しましょう。先述したように、信用情報機関によって、登録されている期間は異なります。また、自己破産による事故情報が消えていても、他で事故情報が登録されているかもしれません。1つでも事故情報が登録されていれば、返済能力がないと判断されてしまうため、審査に通ることは難しいでしょう。情報開示をすると、ご自身の情報がどうなっているかを確認できるため、必ず確認しましょう。

頭金を多めに用意する

頭金を多めに用意することも、審査に通過しやすくなるための方法の1つです。頭金を多めに入れることで、返済能力があることをアピールできます。同時に、借り入れ金額を減らせるため、住宅ローンの返済負担を軽減できます。

しかし、頭金を必要以上に入れるのはやめましょう。家電が故障したり、病気で収入が減ったりした時に家計が立ち行かなくなってしまいます。ある程度、手元に資金を残したうえで、頭金を入れましょう。

クレジットヒストリーを積み重ねる

住宅ローン審査に通りやすくするために、クレジットヒストリーを積み重ねましょう。クレジットヒストリーとは、信用情報のことです。自己破産をすると、経済的な信用力はほぼなくなってしまいます。住宅ローンは長期にわたって返済が続き、金額も大きなものです。経済的な信用力がなければ、契約はできません。クレジットカードの支払いを確実におこなう、他の借り入れを返すなどして、クレジットヒストリーを積み重ねていくことが重要です。

自己破産で借金が免責された金融機関を避ける

住宅ローンを申し込む際には、自己破産で借金が免責された金融機関を避けましょう。自己破産をすると、信用情報機関に事故情報が登録されますが、金融機関も独自に情報を管理しています。たとえ信用情報機関から事故情報が削除されていたとしても、金融機関はその情報を保有したままの可能性が高いです。そのため、その金融機関に申し込んだとしても、審査に通過することは難しいでしょう。また、グループ会社でも情報が共有されている可能性があるため、避けるようにしましょう。

申込者をパートナーや親にする

事故情報が消えるまで待てない場合には、申込者をパートナーや親にするのもいいでしょう。しかし、当然パートナーや親も審査を受けなければならないため、返済能力があることが前提です。また収入によっては、借り入れ金額が少なくなる可能性もあります。もし親を申込者にした場合には、返済期間が短くなり、経済的な負担が大きくなるかもしれません。今後のライフプランを見越したうえで慎重に判断しましょう。

自己破産後の住宅ローンに関するよくある質問

自己破産後の住宅ローンに関してよくある質問をまとめました。

自己破産後、どれくらいで住宅ローンに通る?

事故情報が登録される期間が信用情報機関によって異なるため、正確には答えられません。しかし、各信用情報機関が公表している登録期間から考えると、最低でも5〜7年はかかるでしょう。申し込む際には、事前に信用情報機関から事故情報が消えているかを確認しましょう。

自己破産後に住宅ローンを組む際に気をつけることは?

自己破産によって、経済的な信用度がかなり低くなっているため、安定した返済能力があることを証明する必要があります。また、解説したように、住宅ローンの審査では「個人属性」「返済計画」「物件」の3つを見られます。金融機関によって審査基準は異なりますが、満たしていれば融資してもらえます。自己破産後、基準を満たせるよう、改善していきましょう。借金を免責された金融機関は避けるのが無難です。

フラット35は自己破産しても住宅ローンを組める?

フラット35なら、自己破産後でも住宅ローンが組める可能性があります。フラット35とは、民間の金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する住宅ローンのこと。住宅ローンの債権を担保にし、住宅金融支援機構が貸し倒れのリスクを担うため、金融機関からすると、融資のハードルは低くなります。そのため、自己破産していたら融資不可と判断するといった一律の対応はとっていないようです。しかし、金融機関の事前審査があるため、ノンバンクのフラット35に申し込むと、審査に通る可能性は高いでしょう。

まとめ

本記事では、自己破産後に住宅ローンを組めるのかを解説しました。信用情報に事故情報が登録されている間は、住宅ローンを組むのが難しいでしょう。しかし、事故情報が削除されれば、組める可能性があります。住宅ローンを組むためには、金融機関の信頼を得なければなりません。そのため、クレジットヒストリーを積み重ね、頭金を用意するなどして、安定した返済能力があることを証明できるようにしましょう。

民辻伸也

執筆者

民辻伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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