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住宅ローンはパートでも組める?厳しい理由を3つ紹介

住宅ローンはパートでも組めますが一般的に厳しいといわれています
住宅の購入を考えた時、ご自身がパート勤務をしている場合、住宅ローンは組めるのか不安に思う方もいることでしょう。住宅ローンはパートでも組めますが、収入の少なさと安定性の低さから、金融機関の審査を通過しにくいのが実情です。また、組めたとしても返済が難しくなる可能性も高いため、一般的に厳しいといわれています。
本記事では、パート勤務をしている方が住宅ローンを組む方法と注意点を解説し、シミュレーションすることで、現実的に可能であるかを明らかにします。

住宅ローンはパートでも組める?

住宅ローンはパートなどの非正規雇用であっても原則として組めます
住宅ローンはパートなどの非正規雇用であっても原則として組めます

住宅ローンは、パートなどの非正規雇用の立場にある雇用形態の方が組むことを規制する法律はないため、特定の金融機関などで審査条件に雇用形態の指定がある場合を除いて、ルール上はパートでも組むことができます。

しかし、住宅ローンを組めるか最終的に判断するのは、審査を実施する金融機関です。実際に審査を受けると仮定した場合、通過できなければ住宅ローンは組めません。原則として可能であっても、現実として審査に通過ができないのであれば、住宅ローンをパートの方が組むのは難しいといえるでしょう。

住宅ローンをパートで組むことが厳しいといわれる理由

金融機関の審査においてパートの雇用形態で住宅ローンを組むことは難しいです
金融機関の審査においてパートの雇用形態で住宅ローンを組むことは難しいです

住宅ローンをパートの方が組むことが厳しいといわれる理由は3つあります。

  • 正社員と比較して信用性が低い
  • 収入が不足しており安定しないため長期の返済に不安が残る
  • 母子家庭など妻名義で住宅ローンを組む前例が少ない

それぞれ詳しく見ていきましょう。

正社員と比較して信用性が低い

住宅ローンの審査において、正社員とパートを比較した時、パートは信用性が低いことから審査に通過しにくいです。正社員は、長期的な勤続と固定給による安定した収入が期待でき、勤続年数の積み重ねや出世などにより収入の上昇も期待できます。

一方パートは勤務時間に応じた収入が多く、正社員よりも職を失う可能性が高く、安定性に欠けます。パートから正社員への採用などを除いて、出世や収入の上昇を期待しにくいこともマイナスと判断される可能性があります。正社員と比較して審査で不利になりやすいといえるでしょう。

収入が不足しており安定しないため長期の返済に不安が残る

パートは収入が不足しており安定しないため、審査に通過できたとしても長期の返済に不安が残ります。万が一にもケガや体調不良などで働けなくなってしまった場合は、収入が大きく減少し返済が滞るリスクがあります。

また、パート勤務によって得られる平均的な収入自体が、住宅ローンの返済を続けるにあたって適さない問題もあります。厚生労働省の「毎月勤労統計調査」では、パートタイム労働者の平均月収を公開しており、2019年~2023年の1月に発表された確報のデータをまとめました。

年度 平均月収
2019年 9万5,011円
2020年 9万6,592円
2021年 9万5,063円
2022年 9万7,336円
2023年 9万9,163円

2023年のパートの平均月収である9万9,163円を年収に換算すると118万9,956円であり、年収200万円に届いていない状態にあります。現実的な問題として、パートタイム労働者の平均月収では住宅ローンの返済費用を捻出することは難しいといえるでしょう。もちろん、パートであってもフルタイム勤務をしており、平均月収を大きく上回る収入である場合は住宅ローンを組める可能性はあります。

母子家庭など妻名義で住宅ローンを組む前例が少ない

パートの方が住宅ローンを組むケースとしては、男女関係なく独身で組むケース以外にも、母子家庭で夫がいない状態にあり、住宅ローンを組むというケースもあるでしょう。しかし、一般的にパートの女性が住宅ローンを組む前例が非常に少ないため、前例のないケースを金融機関が認めにくい現実があります。

夫婦であれば、パートの妻名義で住宅ローンを組むことは不審であると判断され、夫の信用情報に問題があると考えて調査される場合もあります。近年は、多様性を認める考え方から、家庭の形にもさまざまなケースが生まれていますが、金融機関の審査では返済の安定を考えた前例を重視する判断になりやすいです。

住宅ローンをパートで組む方法

パートでも住宅ローンを組むための方法を紹介します
パートでも住宅ローンを組むための方法を紹介します

パート勤務の方が住宅ローンを組む方法は2つあります。

  • フラット35など雇用形態の制限がない住宅ローンに申し込む
  • ペアローン・収入合算を利用する

それぞれ詳しく解説します。

フラット35など雇用形態の制限がない住宅ローンに申し込む

パート勤務の方が住宅ローンを組むには、雇用形態に制限なく、申し込みを募っている住宅ローンを探す必要があります。例えば、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供する、募集に雇用形態の制限がない最長35年の期間をかけて返済できる全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」などです。

フラット35では年収400万円以下なら30%以下、400万円以上なら35%以下の返済負担率の基準で審査をおこなっています。返済負担率とは、収入に占める返済額の割合のことであり、住宅ローンを審査するうえでの重要な指標です。

返済負担率を基準に審査の条件もほかの住宅ローンと比較してもわかりやすく、パートの申し込みも認めているため、正社員以外で住宅ローンを申し込む方には有力な選択肢といえるでしょう。

ペアローン・収入合算を利用する

住宅ローンは単独で組む以外にも、夫婦など2人で住宅ローン組む、ペアローンと収入合算の選択肢があります。ペアローンは、ひとつの物件に対して夫婦でそれぞれ住宅ローンを組んで返済します。収入合算は、夫婦で収入を合算して住宅ローンを組む方法です。

夫の収入だけでは希望した融資が受けられない場合に、妻の収入もあわせて審査し、お互いを連帯保証人または連帯債務者にして返済を進めます。パートで組めるかは収入や勤務状況に依存しますが、一定の返済能力が認められれば夫と協力して返済する形で住宅ローンを組むことが可能です。

住宅ローンをパートで組む際の注意点

一定の収入があるパートの方が住宅ローンを組みたいと考えるなら注意点を理解しましょう
一定の収入があるパートの方が住宅ローンを組みたいと考えるなら注意点を理解しましょう

住宅ローンをパートで組む際の注意点は3つあります。

  • 3年以上の継続した勤務実績が重要
  • 返済負担率を低く設定する
  • 頭金の割合をできる限り大きくする

それぞれ詳しく見ていきましょう。

3年以上の継続した勤務実績が重要

パートは正社員以上に継続した勤務実績が重要になります。例えば、3年以上の継続した勤務実績があり、3年間のすべての収入が一定の水準を超えているのであれば、金融機関も安定した収入を得ていると考える可能性があります。

反対に、現在の職場で継続した勤務実績のないパートが住宅ローンを組むのは審査の通過において非常に難しいといえます。その場合は、3年以上の勤務実績を作ってから住宅ローンの審査を受けるようにすれば、審査に通過する確率を高められるでしょう。

また、パートから正社員の採用が認められている勤務先であれば、正社員への登用を目指して働き、住宅ローンの審査を有利にするのも選択肢のひとつです。

返済負担率を低く設定する

収入が安定しにくいと考えられるパート勤務の方は、審査への通過率を高めるだけでなく、審査に通過したあとに返済を滞らせないためにも、返済負担率をできる限り低くして住宅ローンの審査を受けることをおすすめします。

返済負担率はフラット35で年収によっては最大35%までが認められていますが、パート勤務の場合は20%以下を目安に調整すると、不測の事態が起こった場合も対処しやすくなるでしょう。審査への通過を含めて、返済負担率はできる限り低く抑えたほうが有利になりやすいです。

頭金の割合をできる限り大きくする

住宅の購入において自己資金の割合を高めるほど、返済額も少なくなるため審査にも通過しやすくなります。まとまった資金が用意可能である場合は、購入時に最初に支払う頭金の割合をできる限り大きくしましょう。ただし、すべての貯金を使用することなく、万が一のために生活に必要になる資金は残すことに注意が必要です。

正社員で信用があり、住宅ローンの審査に通過しやすい場合は、支払える場合であっても頭金を必要以上に用意しないケースも考えられます。しかし、パートの場合は頭金の出し惜しみによって、審査に通らない危険性も考えられるため、用意できる資金はできる限り頭金に回すようにしましょう。

住宅ローンをパートで返済する場合のシミュレーション

パートが住宅ローンを返済する場合のシミュレーションをしていきます
パートが住宅ローンを返済する場合のシミュレーションをしていきます

住宅ローンをパートで返済していく場合のシミュレーションを以下の条件で考えていきます。

  • 住宅の購入価格:2,000万円
  • 頭金:500万円
  • 返済期間:35年
  • 金利:1.5%(全期間固定金利)
  • 返済方法:元利均等返済
パートの年収 返済額 月収 返済負担率
150万円 4万5,927円 12万5,000円 36.74%
200万円 4万5,927円 16万6,666円 27.55%
250万円 4万5,927円 20万8,333円 22.04%
300万円 4万5,927円 25万円 18.37%
350万円 4万5,927円 29万1,666円 15.74%
400万円 4万5,927円 33万3,333円 13.77%

年収200万円未満の場合、こちらの条件では住宅ローンの審査の通過が厳しくなっており、年収200万円以上になると審査の通過が可能になる水準となります。年収300万円を超えると返済負担率が20%を下回るため、安心して返済しやすいといえるでしょう。

一方で、頭金をほとんど用意しない場合は返済負担率が高まるだけでなく、フラット35では借入割合によって金利が変化するため、借入割合が90%を超える場合や、頭金を用意しない場合は金利が高くなります。頭金の割合によって金利が変化する場合もあることから、パートで審査を通過し、返済を続けていくには頭金をできる限り用意することが重要です。

勤続実績がない方は、勤続年数を積み重ねると同時に住宅ローンを組む前に貯金を増やせる状態にあると頭金に回せるお金も増えるため、住宅ローンが組みやすくなるといえるでしょう。

まとめ

パート勤務の方が住宅ローンを組むことは、収入や勤続年数にもよりますが厳しいと考えられるケースが多いです。家庭の事情によっては、単独で組むのではなくペアローンや収入合算などの複数人で組む方法の検討もおすすめします。しかし、パートかつ単独で住宅ローンを組みたい場合は、勤続年数と頭金となる貯金を積み重ね、正社員への登用も目指すことで住宅ローンを組める可能性を高められるでしょう。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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