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派遣社員は住宅ローンを組めない?審査に影響する要因と突破するための対策とは

派遣社員の場合は住宅ローンを組めないのでしょうか
多くの人にとってマイホームの購入は、長い人生のなかでも大きな決断です。特に、派遣社員として働く方々のなかには、住宅ローンの申し込みはハードルが高いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。住宅購入に向けて住宅ローンを利用したくても、できないのではないかと諦めてしまう方もいるでしょう。

本記事では、派遣社員の方々は住宅ローンを組めるのか、どのような点が審査に影響するのか、そして、審査を通過する対策を解説します。派遣社員で住宅ローンの申請を考えている方は必見です。

派遣社員は住宅ローンを組めないのか?

派遣社員だと住宅ローンは組めないのでしょうか
派遣社員だと住宅ローンは組めないのでしょうか

結論として、派遣社員でも住宅ローンは組めます。というのも、住宅ローンの審査は返済能力を確かめるものなので、多くの金融機関で雇用形態は不問となっているからです。
ただし、利用する金融機関によっては、雇用形態も審査基準に含まれることも。その場合は、派遣社員は正社員と比べると審査が厳しくなります。

派遣社員が住宅ローンを組んだ時のイメージ

住宅ローンの審査は、返済能力をみられます。返済能力を確かめる指標の一つに、「返済比率」があります。一般的に、返済が負担になりすぎない住宅ローンの返済比率は、年収の20%以下といわれています。

そこで、以下のモデルケースをもとに、派遣社員が住宅ローンを組んだ時の返済イメージを具体的な数字であらわしてみます。

【派遣社員Aさんの場合】
時給:1,600円
年間休日:120日
収入:8時間労働×年間245日=313万6,000円(年間)月収換算は約26万円
貯金:約200万円

Aさんが、2,000万円を借り、30年返済の住宅ローンを組んでマンションを購入する場合、返済額は以下のようになります。

借入金額:2,000万円
金利:0.5%(30年変動がないと仮定)
返済期間:30年
毎月の返済額:5万3,854円
年間の返済額:64万6,248円

モデルケースの場合、年収313万6,000円に対し返済金額が64万6,248円なので返済比率は20%です。収入と返済のバランスとしては、住宅ローンを組んでも返済が負担になりにくい割合になっています。このようなケースだと、他に問題がなければ住宅ローンが組めそうです。

派遣社員が住宅ローンを申し込む際に審査に影響する事項は?

派遣社員が住宅ローンを申し込む際に審査に影響する事項をご紹介します
派遣社員が住宅ローンを申し込む際に審査に影響する事項をご紹介します

住宅ローンを申し込む時に確認されることは、誰が申し込む場合でも基準は同じです。職種に関わらず、条件を満たせばローン審査に合格する可能性が高まり、条件を満たさなければどの職業の方でも審査に不合格となります。

ここでは、派遣社員が住宅ローンを申し込む際に審査に影響する5つの事項に焦点を当てます。

年齢

住宅ローン審査で借入者の年齢は重要。多くの金融機関で上限年齢や返済完了時の年齢に制約があります。これらの制限をクリアしなければ住宅ローンの審査に通過できません。

派遣社員は、通常の正社員とは異なる定年規定の場合があり、特に留意が必要です。定年規定によっては、返済プランを決める際に年齢が制約要因となる可能性があります。

また、年齢は収入や健康状態にも影響を及ぼす要素であり、返済能力の評価にも関連してきます。今の自分の年齢と完済時の年齢や雇用形態を考慮して返済計画を立てるようにしましょう。

年収

住宅ローンの返済能力を審査するうえで、年収は重要な確認事項の一つです。各金融機関は、返済額が年収に占める割合である「返済負担率」の上限を設けています。
例えば、年収400万円未満の場合は30%以下、年収400万円以上の場合は35%以下などが一般的です。なお、年収の対象期間は通常、過去1~3年間です。

特に派遣社員の場合、契約の更新や業績に応じた収入の変動があるため、安定した年収を証明するよう求められます。高額な住宅ローンの借り入れを希望する場合、安定かつ高い収入が必要とされるケースが多いです。

一部の金融機関では、年収を申込条件としている場合もあります。年収は住宅ローンの申し込みで不可欠な要素であり、審査に通過するためには下限ライン以上の年収を証明する必要があります。

現在の借り入れの返済状況

他の借り入れの有無や、借り入れがある場合は返済状況も確認される場合があります。
借り入れには、マイカーローンや教育ローンだけでなく、クレジットカードの分割払いやリボ払いなども含まれます。特に、「総量規制」といって、個人が複数の金融機関から融資を受ける際、合計融資額には上限が設けられているので注意が必要です。

派遣社員の場合、収入の不安定性が考慮され、総量規制の上限割合が厳しくなる場合があります。さらに、既存の借金が総量規制の上限を超えていると、住宅ローンの審査に影響する可能性が高まります。そのため、既存の借り入れがすでに年収の20%以上ある場合は、住宅ローンの申し込みをする前に、借り入れの返済を優先させましょう。

過去の借り入れの返済履歴

過去の借り入れの返済履歴も、入念にチェックが入ります。特に、「金融事故」の有無は極めて重要な審査項目です。
金融事故とは、過去におきた返済遅延や債務不履行などの問題を指します。金融事故があると信用情報機関に記録され、一定期間その情報が残ります。残った情報は、住宅ローンの申し込みや新しいクレジットカードの取得など、個人の金融取引に不利な影響を及ぼす可能性が高まります。

過去の借り入れに関する返済履歴はクリーンなことが望ましく、信用度を高めるためにも今ある返済を遅延させないよう注意が必要です。

勤務年数

勤続年数は、収入の安定性や職場での信用を示す大切な指標です。長期間にわたり同じ職場で働いている場合、金融機関にとっては安定した収入と職業生活を持っている信頼性を示すものとなります。
しかし、派遣社員は法律上、長い間同じ職場で働き続けるのは難しい場合があります。それでも住宅ローン審査では、契約期間や更新頻度が勤続年数の評価に影響する可能性もあるため、状況によっては説明が必要です。

派遣社員が住宅ローン審査を突破する対策は?

派遣社員が住宅ローン審査を通りやすくするための対策は何でしょうか
派遣社員が住宅ローン審査を通りやすくするための対策は何でしょうか

正社員と比較すると、派遣社員は住宅ローン審査の通過に不利になる場合もあるので、審査を受ける前の工夫が求められます。ここからは、住宅ローン審査を通過しやすくする対策を紹介していきます。

住宅ローン借入金額を減らしておく

住宅ローン審査に通過しやすくするために、できるだけ借入金額を抑えるようにしましょう。購入する住宅の価格にもよりますが、借入金額は返済負担率を目安に決めるとよいでしょう。
例えば、住宅金融支援機構フラット35の返済負担率は、以下が目安になっています。

  • 年収が400万円未満の場合は、30%以下
  • 年収が400万円以上の場合は、35%以下

ただし、年収が300万円で返済負担率が30%となると、場合によっては日常生活に支障をきたす可能性があります。

例えば、年収が300万円で返済負担率が30%だと、返済金額は年間で90万円、月間では7.5万円になります。年収が300万円の人の手取りは月間20万円くらいと考えると、生活スタイルによっては少し負担が大きいようにも感じます。年収が300万円前後の場合は、返済負担率を20%以下に調整するのがおすすめ。特に、収入が安定していないなどの不安要素がある場合には、借入金額の割合をできるだけ抑えたほうが賢明です。予算と希望をよく吟味して、無理のない返済計画になっていたほうが、住宅ローン審査にも通過しやすくなります。

頭金を増やす

頭金(自己資金)を増やすのも、住宅ローン審査に通過しやすくなる方法の1つです。頭金を増やせば、住宅ローン借入額が減り、返済負担が軽減できます。さらに、金融機関によっては、頭金の金額割合に応じて金利を引き下げる制度を提供している場合もあります。金融機関が提供している制度を賢く活用して、より有利な条件で借り入れをしましょう。

頭金を増やすと初期負担は増えますが、将来の返済額を減らせます。特に派遣社員の場合、収入の不安定性を考えると、頭金を入れておけば将来返済に困るリスクを軽減でき、安心感が得られます。
頭金を上手に活用すれば、住宅ローンの審査を通過しやすくなり、住宅購入を実現する一歩にもなります。

年齢が若いうちに申し込む

年齢が上がると病気や死亡のリスクが高まるため、若い段階で申し込むのは有効な手段です。
住宅ローン審査の対象年齢は一般的に、20歳から65歳までとされていますが、できるだけ若い時に申し込むべきです。若い年齢で申し込めば、将来の成長性を見込んでもらえ、審査通過のチャンスが増えます。若いうちから計画を立て、住宅ローンの申し込みを検討しましょう。

信用情報をクリーンに保つ

派遣社員が住宅ローン審査に通過しやすくなるためには、信用情報をクリーンに保つことが重要です。
クレジットカードや奨学金の滞納、自己破産など、信用情報の事故履歴があると、審査で不利になります。信用情報に登録された事故情報は、重大性に応じて長期間残ります。例えば、支払いの延滞に関する情報は最大5年間、債務整理や破産申立などの情報は長期間に渡って残ります。

大企業に勤める高収入の正社員でも、信用情報に問題がある場合は住宅ローン審査に落ちます。心配な場合は、信用情報機関に自身の情報を請求して確認できます。審査前に自分の信用情報をチェックし、問題があれば解決策を実行しましょう。信用情報をクリーンに保てば、住宅ローン審査で有利なポジションを築けます。

この記事のQ&A

Q:派遣社員で住宅ローンに申し込みできますか?

A:派遣社員でも住宅ローンは組めます。多くの金融機関で、雇用形態は住宅ローンの審査基準で重視しないためです。ただし、利用する金融機関によっては、雇用形態も審査基準に含まれる場合があり、そうなると派遣社員は正社員よりも審査が厳しくなる可能性もあります。

Q:派遣社員が住宅ローンを申し込む際に審査に影響する事項は?

A:住宅ローンを申し込む時に確認される項目は、みんな同じです。ただし、派遣社員が住宅ローンを申し込む際に審査に影響すると想定される項目は次のとおりです。

  • 年齢
  • 年収
  • 現在の借り入れ状況、過去の返済履歴
  • 勤続年数

年齢はできるだけ若いほうが望ましいといえます。年収は安定していることを証明できると理想的。現在の借り入れは少ないほうが望ましく、既存の借り入れの返済額がすでに年収の20%以上ある場合は、借り入れの返済を優先させましょう。
また、過去の借り入れに関する返済履歴はクリーンなことが望ましいです。さらに、勤続年数もできるだけ長いほう有利なことが多いでしょう。

Q:派遣社員が住宅ローン審査を突破する対策は?

A:まずは、年齢が若いうちに申し込むのが賢明です。若いほど、将来性を評価してもらえます。また、頭金を入れられるのであれば入れるべきです。そうすれば、借り入れ金額も減らすことができます。
もし、現在借り入れがある場合は、できるだけ少なくしておきましょう。クレジットカードを利用する際には、信用情報をクリーンに保つのを心がけましょう。過去の信用情報に不安があれば確認し、問題があれば改善に努めましょう。

まとめ

本記事では、派遣社員の方は住宅ローンを組めるのか、そしてどのような点が審査に影響し、審査を通過するにはどのような対策ができるかを紹介しました。
派遣社員だからといって、その雇用形態だけで住宅ローン審査が通らないことはありません。住宅ローンの審査は総合判断で、重視されるのは返済能力の有無です。収入に安定性が見込まれ、借り入れに対して十分返済をしていける年収を確保していれば、住宅ローン審査で好印象をもってもらえるでしょう。

ただ、雇用形態が審査基準に入っている場合は、審査で不利になる可能性が高まります。住宅ローンを検討する際には、まず自分の収入の状況や借入金額を明確にしましょう。そして、金融機関ごとの審査基準も確認して、自分にあった借入先を選ぶようにしましょう。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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