ネット銀行の住宅ローンで失敗した5つの事例とは?ネット銀行のメリット・デメリットを正しく理解しておこう

記事の目次
ネット銀行と一般的な銀行の基本的な違い

ネット銀行と一般的な銀行の間には、手続きの方法やサポート体制、商品数などで明確な違いがあります。ネット銀行は原則として非対面で手続きがおこなわれ、すべてオンラインで完結することが大半です。一方で、一般的な銀行は主に対面形式での手続きを採用しています。以下でより詳しく違いを見ていきましょう。
店舗の有無
ネット銀行には、基本的に対面型の店舗がありません。一部のネット銀行では対面サポートが提供されるケースもありますが、電話やチャットを通したサポートが主流です。対して、一般的な銀行は都市部や地方に店舗を持ち、必要に応じて直接訪れることができます。
金利水準
ネット銀行は、住宅ローンの金利が低いことが大きな特徴です。変動金利では0.4%台が相場で、低金利の商品の提供に力を入れています。これに対し、一般的な銀行ではやや高めの金利設定が一般的ですが、最近ではネット銀行に匹敵する低金利で住宅ローンを提供する都市銀行も増えてきました。
ローン商品の選択肢
ネット銀行は商品数が比較的少なく、特に住宅ローンに関しては変動金利と固定期間選択型が中心です。一方、一般的な銀行は多様なローン商品を揃えています。例えば、つなぎ融資や分割融資、諸費用ローンなど、幅広い商品を提供しています。
手続き・サポート
ネット銀行では、申し込みから契約まで基本的にオンラインで完結します。これにより、忙しい方や平日に時間が取れない方でも、自宅から手続きを進められる点がメリット。その反面、一般的な銀行では、店舗での対面によるサポートを受けながら手続きを進められるため、初めて住宅ローンを契約する方にとっては安心感があります。
諸費用
ネット銀行の住宅ローンでは、保証料が不要ですが、その分事務手数料が高めに設定されています。また、一部繰上返済手数料がかからない点もネット銀行の特徴です。一般的な銀行では保証料がかかるケースが多いですが、一括で保証料を支払い、全額繰り上げ返済をおこなった時には、保証料の一部が戻ってきます。
審査の速さと柔軟性
ネット銀行は審査の速度が遅めで、柔軟性に欠けるとされます。審査はシステム化されており、画一的な基準でおこなわれるため、特異な案件やイレギュラーな状況に対しては対応が難しいことがあります。これに対して、一般的な銀行は対面での対応が可能なため、個別の事情に応じて柔軟に審査を進められる点が特徴です。
ネット銀行の住宅ローンで失敗する5つの理由

ネット銀行で住宅ローンを利用する際、思わぬ落とし穴に気付かず、後悔することがあります。ここでは、ネット銀行で住宅ローンを利用した際のよくある失敗例をご紹介します。
変動金利が自身に適していなかった
ネット銀行の住宅ローンは、変動金利が都市銀行や地方銀行に比べて低い傾向にあります。そのため、低金利に惹かれて変動金利を選ぶ方が多いですが、これが思わぬ失敗につながることがあります。
変動金利は金利の動向により、将来的に上昇する可能性があるため、金利が上がれば月々の返済額も増え、総返済額が予想以上に膨らんでしまうことがあるのです。また、金利の低さから多額の借り入れをしてしまい、結果的に返済に困るケースも。
変動金利を選ぶ場合には、金利が上昇した際のシミュレーションをしっかりおこない、余裕を持った返済計画を立てることが大切です。住宅ローンの契約時だけでなく、将来のリスクも考慮することが、後悔しないためのポイントとなります。
団体信用生命保険への加入を怠った
住宅ローンを組む際、多くの銀行では団体信用生命保険(以降、団信)への加入が義務付けられています。団信に加入することで、万が一、借主が死亡したり高度障害となった場合、残りの住宅ローンが保険でカバーされるため、家族に経済的な負担を残さずに済みます。
しかし、ネット銀行では一部のプランで団信への加入が任意となっていることも。保険料を節約するために団信に加入しなかった場合、万が一の事態が発生した時、残された家族は住宅ローンの返済に追われることになります。このような状況を避けるためにも、団信への加入はしっかり検討すべきです。
返済計画が甘かった
ネット銀行を利用する場合、窓口での対面相談がなく、すべての手続きをオンラインで進めるため、返済計画も自分で立てることになります。プロのアドバイスを受けずに進めた結果、楽観的な見通しで計画を立ててしまい、返済中に予期せぬトラブルに見舞われることも。
例えば、ボーナスが減る可能性や、突発的な大きな出費など、予期せぬ状況を想定しないままに返済計画を立てると、失敗してしまう可能性が高いです。頭金を多く支払うことで金利を抑えようとする方もいますが、返済計画の甘さにより日々の生活が苦しくなるケースも少なくありません。
適切な返済計画を立てるためには、将来の収入や支出の変動も視野に入れた、現実的な計画を立てることが必要です。また、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することで、より堅実な返済計画を作成できるでしょう。
事前審査に通ったものの本審査で落ちた
ネット銀行では、事前審査がオンラインで簡単に受けられ、迅速に結果が出ることが魅力の一つです。しかし、事前審査が通ったからといって、必ずしも本審査も通るとは限りません。ネット銀行の本審査は、一般的な銀行に比べて厳格であり、審査結果が出るまでに時間がかかることも。
事前審査に通ったことで安心し、他の選択肢を検討せずに本審査を受けると、落ちてしまった際にスケジュールが狂い、焦ってしまうケースが多々あります。ネット銀行で住宅ローンを組む場合は、事前審査が通った段階で安心せず、本審査に通るまでは油断しないようにしましょう。
住宅ローン減税の手続きを忘れた
住宅ローン減税(住宅ローン控除)は、借入額や住宅の性能に応じて、税金の一部を控除できる制度です。しかし、この控除を受けるには、住宅ローンを借りた翌年に確定申告をおこなう必要があります。
ネット銀行の場合、手続きがすべてオンラインでおこなわれるため、通常よりも複雑な面が出てくるかもしれません。一般的な銀行の場合、対面で手続きがおこなわれるため、住宅ローン減税について質問がある場合には、すぐに疑問を解決できます。親切心から、具体的に確定申告をどのようにすればいいか、教えてくれることもあるでしょう。しかし、ネット銀行の場合、オンラインで手続きがおこなわれるため、質問をできる場がなく、自ら積極的に情報を収集しなければなりません。そのため、確定申告の手続き自体を忘れてしまったり、後回しにして忘れてしまうケースが多く見られます。
住宅ローン減税を受けることができれば、大きな節税効果が得られるため、手続きを忘れず、正確におこなうことが重要です。確定申告に不安がある場合は、税理士や銀行のサポートを利用することをおすすめします。
ネット銀行で住宅ローンを選ぶメリット

ここからは、ネット銀行で住宅ローンを選ぶメリットをご紹介します。
金利が低い
ネット銀行における住宅ローンの大きな魅力は、やはり金利の低さです。2024年10月時点では、変動金利が0.4%台〜と低水準の商品が多く、常に他の銀行と競争しながら金利を引き下げる動きが見られます。一方で、一般的な銀行でも、最近はネット銀行と同等の低金利プランが増えつつありますが、それでもまだネット銀行のほうが金利は低い傾向にあるでしょう。
団体信用生命保険の保障内容が充実している
ネット銀行は、住宅ローンに付随する団信の保障内容が充実しています。一般団信に加え、がん保障や全疾病保障などの特約が付けられる場合が多く、しかも上乗せ金利なしで利用できる商品が多い点が特徴。
一般的な銀行では、疾病保障を付けると追加の金利が発生することが多いですが、ネット銀行ではこのような上乗せがない商品が一般的です。
手続きがオンラインで完結する
ネット銀行では、パソコンやスマートフォンさえあれば、自宅から申し込み・手続きをおこなうことが可能です。時間がなかなか取れない方でも、店舗に行く手間が省け、スピーディーに手続きを完了できます。契約後の登記手続きは司法書士との面談が必要ですが、それ以外は完全にオンラインで済ませられます。
ネット銀行で住宅ローンを借り入れるデメリット

ネット銀行には多くのメリットがありますが、デメリットもあります。メリットとデメリットを把握し、自分に合っているかを見極めましょう。
対面でのサポートがない
ネット銀行では対面でのサポートがないため、手続きに不安がある場合や詳細な相談をしたい場合には、自分で問い合わせる必要があります。一般的な銀行では、行員が手続きのサポートをしてくれるため、対面での安心感が得られます。一方、ネット銀行では店舗がなく、その点が弱みとなることがあります。
つなぎ融資の利用ができない
つなぎ融資とは、住宅ローンを利用する前に必要な費用の融資を受けることです。基本的に住宅ローンは、家が建ったあとに組まれるものですが、注文住宅を建築する際など、引き渡し前に費用が発生するケースも。
一般的な銀行ではつなぎ融資の利用ができますが、ネット銀行の場合はつなぎ融資が利用できないため、注意が必要です。
商品の選択肢が少ない
ネット銀行ではローン商品自体が少ないため、選択肢が限られています。特に長期固定金利の商品や、つなぎ融資、分割融資などの特殊な商品を取り扱っていない場合が多く、柔軟な商品展開を期待することは難しいでしょう。
柔軟性に欠ける
ネット銀行の審査はシステムに基づいておこなわれるため、複雑な案件やイレギュラーな物件の購入に対応することが難しい場合があります。例えば、特殊な形状の土地や、借地などの特殊条件をともなう物件では、ネット銀行のシステム審査では対応が難しく、審査に通りにくいことも。
一般的な銀行では、審査担当者が個別に対応してくれることが多いため、審査の柔軟性の低さは大きなデメリットになりえるでしょう。
事務手数料が高額になる
ネット銀行では、保証料がかからない代わりに事務手数料が高額になるケースが多いです。保証料と事務手数料の合計コストを比較すると、一般的な銀行と大差がない場合もあるため、事前にシミュレーションをおこなうことが重要です。
ネット銀行の住宅ローンに向いている人

ネット銀行の住宅ローンは、メリットとデメリットを理解したうえで、自分に合った商品を選ぶことが重要です。ネット銀行の住宅ローンは基本的に低金利であり、自宅で手続きが完結するなど、忙しい方や金利を重視する方に向いています。
特に、公務員など安定した収入があり、家の買い替えなど複雑な不動産取引をおこなわない方には適しているといえるでしょう。さらに、自ら積極的に情報を集め、手続きを進められる方であれば、ネット銀行の住宅ローンを利用することで、大きなメリットを得られる可能性が高いです。
ネット銀行の住宅ローンで失敗しないための3つのポイント

ネット銀行での住宅ローンは、低金利や手軽さが魅力ですが、これらの要素だけで判断すると失敗につながる可能性があります。そこで、失敗を避けるために重要な3つのポイントを紹介します。
情報収集を徹底する
ネット銀行で住宅ローンを組む際には、手続きや必要書類などを自分で調べる必要があります。特に、手続きがオンラインでおこなわれるため、銀行によって求められる書類や条件が異なることを理解しておくことが重要です。
インターネット上には多くの情報が存在しますが、正確な情報を見極める力も求められます。間違った情報をもとに判断してしまうと、一生後悔するような選択をしてしまう可能性があることも。不動産会社やファイナンシャルプランナーも含めて信頼できる情報源から知識を得るようにしましょう。
複数の銀行を比較する
ネット銀行の金利が低いことは大きなメリットですが、地方銀行や他の銀行でも同様に低金利の住宅ローンを提供している場合があります。また、ネット銀行では特典やサービス内容に違いがあるため、複数の銀行を比較検討することが大切です。
各銀行の諸費用や金利、サービス内容をしっかりと比較し、自分に適した選択肢を見つけることで、住宅ローンの失敗を防げるでしょう。
現実的な返済計画を立てる
住宅ローンは長期間にわたる返済計画が必要です。そのため、現在の収入だけでなく、将来的な収入の変動や突発的な出費も考慮した現実的な計画を立てることが重要。
夢のマイホームを手に入れたい一心で願望に惑わされず、冷静に自分たちの経済状況を分析し、無理のない返済計画を立てることが、後悔しないための秘訣です。
まとめ
ネット銀行の住宅ローンは、低金利や利便性の高いオンライン手続きが大きな強みです。しかし、すべての方にとって最適な選択肢ではなく、特に複雑な物件や融資案件、フリーランスや自営業者の方などは対面で相談できる銀行のほうが安心感が得られるかもしれません。
自分の状況やニーズに合った選択をするためには、ネット銀行とその他の銀行の両方を比較検討し、必要であれば専門家に相談することが重要です。
ネット銀行は手間をかけずに金利の低さを活用したい方にとっては魅力的な選択肢であり、逆に対面でのサポートや柔軟な対応が必要な方には、都市銀行や地方銀行のほうがより適しているかもしれません。それぞれの特徴を理解したうえで、最適な住宅ローンを選びましょう。
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執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ