住宅ローンにおける「提携ローン」とは?非提携ローンとの違いやメリット・デメリットを解説

記事の目次
住宅ローンにおける提携ローンとは

まず、提携ローンとはどのようなローンなのかを押さえておきましょう。
提携ローンの仕組み
提携ローンとは、金融機関と不動産会社が連携して提供する住宅ローンのこと。通常の住宅ローンでは、借りたい方が金融機関に直接申し込みます。一方、提携ローンは金融機関と借りたい方の間に不動産会社が入ります。そのため、金融機関とのやりとりは不動産会社がメインとなり、手続きの手間が省けます。ただし、不動産会社によって提携している金融機関が異なり、住宅ローンの比較検討ができないケースもあるため注意しましょう。
提携ローンと非提携ローンの違い
提携ローンと非提携ローンの違いを詳しくみていきましょう。下表は違いをまとめたものです。
提携ローン | 非提携ローン | |
---|---|---|
金融機関の種類 | 限定される | 自由に選べる |
金利 | 優遇される場合がある | 比較が必要になる |
手続きの主体 | 不動産会社が行う | 自分で行う |
ローン特約 | あり | なし |
融資の実行 | 引き渡し前に行うことも可能 | 引き渡しと同時に行う |
提携ローンの場合、金融機関が限定されていることが一般的です。しかし、金利が優遇される場合があり、安く借り入れられる可能性があります。また、金融機関との間に入る不動産会社が手続きの主体となるため、手間が省ける点はメリットといえるでしょう。さらに、ローン特約があることも特徴です。ローン特約については、次章で詳しく解説します。
他にも融資が実行されるタイミングでも、提携ローンの場合は融通が利くことも。通常の住宅ローンでは、完成した住宅を担保にするため、引き渡しと同時に融資が実行されます。しかし、提携ローンは不動産会社を仲介しているため、引き渡し前に融資を受けることも可能です。
住宅ローンにおける提携ローンのメリット

不動産会社と金融機関が連携して提供する提携ローンのメリットを4つ解説します。
手続きの手間が省ける
提携ローンのメリットとして、手続きの手間が省けることが挙げられます。提携ローンは申込者が金融機関と直接やりとりをするのではなく、不動産会社が仲介してくれます。住宅ローンの申込時には、売買契約書や工事請負契約書など必要書類も多いため、すべて自力で手続きをおこなうとなると労力や時間がかかります。また、初めてのことで、わからないことも多々あるでしょう。提携ローンを利用することで、不動産会社が必要な書類を準備してくれ、知識もあることからスムーズに進められます。
審査が早い傾向にある
提携ローンのメリットは、審査が早い傾向にあることです。住宅ローンの審査では、申込者の返済能力をはじめ、物件の担保評価もおこなわれます。なぜなら万が一、ローンの返済が滞った場合、金融機関は物件の売却金を債権の回収に充てるためです。
提携ローンの場合、不動産会社から直接金融機関へ住宅の情報が共有されているため、その分審査にかかる時間が短くなります。住宅ローンの本審査にかかる期間は、一般的に1週間程度、長くて2〜3週間程度。結果が出るまでの期間が短くなれば、精神的な負担も軽くなるでしょう。
金利が優遇されることがある
金利が優遇されることも、提携ローンのメリットです。提携ローンは金融機関にとっても、顧客が増える可能性もあるためメリットになるでしょう。そのため、金利の優遇をおこなうことで、申込者に利益を還元しています。
実際に、旭化成ホームズフィナンシャル株式会社が、住信SBIネット銀行と提供している「全疾病保証付き住宅ローン(HEBEL HAUSローン)」では、次のような優遇があります。変動金利タイプの場合、基準金利が3.025%に対し、通期引き下げプランは0.479%。約2.5%も金利が引き下げられています。優遇金利の幅が大きいほど返済負担は軽減されるため、申込者にとってメリットが大きいでしょう。
ローン特約が利用できる
提携ローンは非提携ローンと違い、ローン特約を利用できる点もメリットです。ローン特約とは、住宅ローンの本審査に通らなかった時に、買主が罰則なしで売買契約を解除できる取り決めのこと。もしローン特約がなく、本審査に通らなかった場合、買主の契約違反となり、違約金や仲介手数料を支払わなければなりません。また、契約時に支払った手付金も返却されないため、大きな損失を被ることになります。
住宅ローンの事前審査に通ったからといって、必ずしも本審査に通るとは限りません。例えば、物件の担保価値が低かったり、転職しなければならなかったりなど、事前審査から状況が変化し、本審査に通らない可能性もあります。提携ローンではローン特約を利用できるため、万が一の場合でも安心でしょう。
住宅ローンにおける提携ローンのデメリット

前途のとおり提携ローンは、金利の優遇が受けられたり、手続きの手間が省けるといったメリットがあります。しかし、メリットばかりではありません。本章では、提携ローンのデメリットを解説します。
選択肢が限られる
提携ローンのデメリットは、選べる商品の種類が限られる点です。不動産会社が提携している金融機関のローンから選ぶことになるため、選択肢が限られます。また、金利タイプや返済方式などが限定されていることも。希望する金融機関や種類の住宅ローンがなかったり、提携ローンが自分に合った住宅ローンではない可能性もあります。提携ローンの契約前には、自分に合ったものなのか、内容をよく確認しましょう。
他の住宅ローンと比較しにくい
他の住宅ローンと比較しにくいことも、提携ローンのデメリットです。提携ローンは、特定の金融機関の商品に限定されるため、比較対象となる商品が少なく、比較そのものが難しくなります。また、意識して他の金融機関の情報を収集しなければ、あとから条件のいい商品を見つけて後悔する可能性も。不動産会社から勧められるままに申し込むのではなく、幅広く情報収集をおこなったうえで、自分に最適な住宅ローンを見つけましょう。
住宅ローンに対する理解がおろそかになりやすい
提携ローンのデメリットとして、住宅ローンに対する理解がおろそかになりやすい点も挙げられます。株式会社MFSの「住宅ローン選びの後悔に関するアンケート」(出典:モゲチェック調べ)では、不動産会社が紹介した金融機関を選んだ人が62.0%に対し、それを後悔している方の割合が45.7%。つまり約2人に1人は、不動産会社が紹介する金融機関を選んだことを後悔しているようです。
さらに、不動産会社が紹介した金融機関を選んだ理由としては、「自分の住宅ローン知識に自信がなかったから」と回答した方が49.0%。このことから、住宅ローンに対する知識の自信のなさから提携ローンを選んだ結果、「本当によかったのかわからない」と感じている方が多いことがわかります。不動産会社が手続きを代行してくれるメリットもありますが、納得のいく選択をするためにも、自分自身でも住宅ローンについて調べましょう。
不動産会社に事務手数料を支払う必要がある
提携ローンを利用する場合、不動産会社に事務手数料を支払う必要がある点もデメリットでしょう。金融機関とのやりとりや書類作成のサポートに対して、事務手数料を支払わなければなりません。相場としては5〜10万円程度ですが、法律で上限が定められていないため、それ以上の金額を請求される可能性もあります。事前に事務手数料についてよく確認し、事務手数料を支払ってでも、提携ローンを利用するメリットがあるかをよく考えましょう。
提携ローンに関するよくある質問
提携ローンに関するよくある質問をまとめました。
提携ローンって何?
住宅ローンにおける提携ローンとは、不動産会社と金融機関が提携して提供する住宅ローンのことです。金融機関との間に不動産会社が入り、手続きの代行やサポートをしてくれます。
提携ローンと非提携ローンの違いは?
提携ローンと非提携ローンは、次の5つの点で大きく違います。
- 金融機関の種類
- 金利
- 手続きの主体
- ローン特約
- 融資が実行されるタイミング
提携ローンは金融機関の種類が限られますが、金利の優遇が受けられたり、ローン特約があるというメリットを持ちます。また、不動産会社が手続きを代行してくれるため、手間が省ける点も特徴。非提携ローンは、完成した住宅の引き渡し時に融資が実行されますが、提携ローンは金融機関によって、引き渡し前に融資を受けることも可能です。
提携ローンのほうが審査に通りやすい?
提携ローンのほうが、審査に通りやすいというわけではありません。住宅ローンの審査では、申込者の収入や職業、他の借入状況などから返済能力の有無が判断されます。また、物件の担保評価もおこなわれます。提携ローンだからといって、審査でも優遇されるわけではありません。しかし、物件に関する情報が共有されていることから、審査スピードは比較的早い傾向にあります。
まとめ
本記事では、住宅ローンにおける提携ローンとは何かを解説しました。提携ローンとは、不動産会社と金融機関が提携して提供する住宅ローンのことです。審査が早かったり、金利の優遇が受けられたりといったメリットがあります。しかし、金融機関との間に不動産会社が入ることで、住宅ローンに対する理解がおろそかになる可能性があります。また、提携している金融機関が限られるため、必ずしも自分に最適な住宅ローンとは限りません。住宅ローンを選ぶ際には提携ローンだけではなく、視野を広げ、幅広い観点から最適なローンを見つけることが重要です。
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執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ