終の棲家とは?どこがいいか選ぶポイントや考え出すタイミングを解説

この記事では、終の棲家とは何かをご説明します。さらに、注目される理由から、終の棲家を探すタイミングや選ぶポイント、終の棲家として考えられる住まいのメリット・デメリットまでわかりやすく解説します。
記事の目次
終の棲家とは

「終の棲家(ついのすみか)」とは、生涯を終える時まで生活する場所のことです。自分が亡くなるまで過ごす、人生で最後の住まいを指します。
終の棲家として選ぶ場所は人によってさまざまです。一戸建てやマンションなど自宅の場合もあれば、サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームなどの高齢者施設の場合もあります。
自分のライフスタイルや介護を受けたい場所などを考えて、納得のいく場所を選ぶのがよいでしょう。
近年「終の棲家」が注目されている理由

最近では終の棲家をどこにするか考える人が増えています。なぜ終の棲家が多くの人に注目されるようになったのでしょうか。その理由を見ていきましょう。
高齢化社会の進行
日本では、年々平均寿命が延び続けています。特に2025年は団塊世代の人がすべて75歳以上になりました。5人に1人が後期高齢者(75歳以上)となり、反対に出生率は年々低下しているため、今後の日本は高齢化がますます進行するでしょう。このように平均寿命が延び、人生100年時代が現実化していることで、終の棲家を考える人が増えています。
在宅医療や介護の需要増加
生まれてから亡くなるまでの期間である平均寿命と同じように注目したいのが「健康寿命」です。
健康寿命とは、健康の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことで、健康寿命と平均寿命の差が少なければ、健康に過ごせる期間が長いことを表しています。
しかし、平均寿命と健康寿命には差が生じているのが現状です。2022年の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳のところ、健康寿命は男性が72.57歳、女性が75.45歳でした。
平均寿命と健康寿命には、男性は8.49歳、女性は11.63歳も差が生じています。つまり、人生の終盤10年前後は病気の治療または介護が必要になります。いずれは在宅医療や介護の必要性が高まることが明白です。このことから、治療や介護を考慮した生活ができるように終の棲家を考える人が増えています。
参考:平均寿命と健康寿命 | e-ヘルスネット(厚生労働省)
地方移住や二拠点生活への注目
最近、定年退職後を見据え、地方移住や二拠点生活に興味を持つ人が増えています。セカンドライフをより快適に過ごすため、自然豊かな環境のよい地方の街に終の棲家を持つことを考えている人も少なくありません。
都市部とは違い、地方は比較的物価が安く、住居費を抑えられます。また、移住支援をおこなう自治体もあります。よりよい住環境と暮らしやすさを考え、地方移住や二拠点生活をきっかけに終の棲家を考える人が増えているのでしょう。
いつから終の棲家を探すべき?最適な年齢・タイミング

終の棲家を探すタイミングは人それぞれですが、定年退職が近づくとセカンドライフを考えはじめる人も少なくありません。老後はどのような生活をしたいのか、どこに住みたいのかを考えることで、終の棲家の方向性が見えてくるでしょう。
ただし、高齢になると体力が落ち、体の機能が衰えていきます。また、病気や要介護になるリスクが高まることから、終の棲家の準備は元気なうちにはじめることをおすすめします。
できれば経済的にも余裕があり、体力的にも行動しやすい50歳後半から60歳前半くらいから終の棲家の準備をはじめるとよいでしょう。
理想的な終の棲家の条件

セカンドライフを快適に過ごすためにも、終の棲家には安心して老後生活を送れる住まいを選ぶことをおすすめします。ここでは理想的な終の棲家の条件をご紹介します。
バリアフリー設計・ユニバーサルデザインの採用
終の棲家は、体の機能が低下しても問題なく住み続けられる場所であることが重要です。住む人の年齢や体の機能に配慮したバリアフリー設計や、すべての人にとって暮らしやすいユニバーサルデザインを取り入れた住まいがよいでしょう。
医療機関や公共交通機関へのアクセスのよさ
高齢になり体の機能が衰えてくることを考えると、日常生活でよく利用する施設は近くにあるのが理想です。終の棲家は、医療機関やスーパ-マーケットなどの他、電車やバスなどの公共交通機関へのアクセスがよい場所を選びましょう。
地域とのつながり・ネットワークの有無
終の棲家で生涯、安心して暮らすには地域とのつながりが大切です。趣味やイベントなどで地域住民と交流できるような施設やシニア向けコミュニティがある場所がよいでしょう。
また、生活支援や福祉サービスのネットワークが構築されている地域も安心して生活できます。候補となる自治体の介護福祉関連のサービスを確認してみましょう。
地域住民や福祉サービスとのつながりがあれば、体調不良の際や困ったことがあった時などに支援を求めやすくなります。
維持・管理のしやすさ
いつまでも快適に過ごすために、住まいの維持・管理は重要です。候補となる住まいにはどのような維持・管理が必要になるかを確認し、将来的に問題なくメンテナンスを続けられるかどうかを考えたうえで終の棲家を決めるとよいでしょう。
医療・介護サービスの利用のしやすさ
終の棲家は、将来的に介護が必要になることを考えて、医療や介護サービスを利用しやすい場所がよいでしょう。そのためにも、どのようなサービスを受けたいかを具体的に考え、民間企業や自治体が実施する介護福祉サービスをチェックすることも重要です。
終の棲家を決めるポイント

人生の後半を安心して快適に過ごすためにも、終の棲家はどのように選ぶのがよいのでしょうか。ここでは終の棲家を決める際のポイントをご紹介します。
準備しはじめる時期を検討する
終の棲家を考えるなら、まずは準備をはじめる時期を決めましょう。できれば経済的にも余裕があり、定年退職になる前がおすすめです。定年退職前後で経済面にも不安が少なく健康的にも問題が少ない50代後半から60代前半の時期がよいでしょう。
どういった老後を送りたいかビジョンを描く
終の棲家の準備をはじめる時期を決めたら、次はどのような老後生活を送りたいのか、ビジョンを考えてみましょう。住みたい地域や望む環境、どのような人に囲まれた場所がよいか、何を楽しみながら暮らしていきたいか、希望する生活をイメージしながら、考えた案を紙に書き出してみるのもおすすめです。
将来の介護・医療サービスを見据える
終の棲家を決める時は、将来必要になるかもしれない医療や介護を見据えた場所を選ぶことを推奨します。例えば、自宅で介護を受けたいのか、それとも高齢者施設で介護を受けたいのかを考えて、自分に合った終の棲家を考えてみましょう。
同居人数を考える
終の棲家の間取りや住まいの種類を決める際、同居人数から理想の住まいを考えてみましょう。夫婦で暮らすのか、単身で住むのか、子どもたちの家族と同居するのかを考えることで、家族構成に合った最適な間取りや部屋数が決まります。
予算・維持費を考える
終の棲家を決める際、重要な事項のひとつが資金の準備です。住み替え費用やリフォーム費用などを試算してみましょう。また、初期費用だけでなく、住み始めてからのメンテナンス費用や設備などにかかる費用も必要です。さらに、貯蓄状況から自己資金をどれくらい用意できるか確認しましょう。
家族や専門家と相談しながら決める
終の棲家は家族や専門家と相談しながらの検討をおすすめします。家族と同居の場合は家族の希望も聞いたうえで住まいを決めましょう。また、終活に詳しい不動産会社や民間の終活相談窓口、資金計画を相談できるFP(ファイナンシャル・プランナー)、移住支援の相談窓口などで相談できます。さらに、市町村役所でも終活に関するサポートをしているところがあるので、問い合わせてみるとよいでしょう。
終の棲家の種類とメリット・デメリット

ここでは、終の棲家となる住まいや施設をご紹介し、それらにはどのようなメリット・デメリットがあるのか解説します。
持ち家
持ち家の特徴とメリット・デメリットを説明します。
特徴
持ち家とは、一戸建てやマンションなど自分が所有する住宅のことです。住宅は高額なので、購入時は一般的に住宅ローンを利用します。住宅ローンを完済すれば資産となり、所有し続けられます。
メリット
(※マンションの場合、修繕積立金や管理費は毎月発生します。)
デメリット
持ち家は容易に引越しができなくなります。また、住宅ローンの返済中は生活費を圧迫する場合があります。固定資産税や火災保険料の負担もあり、老朽化が目立ってきた際にはリフォームが必要になるので、修繕費用など維持費を用意しておかなければなりません。
賃貸(一戸建て・マンション)
賃貸(一戸建て・マンション)の特徴とメリット・デメリットを説明します。
特徴
賃貸とは、賃料を支払って住む一戸建てやマンション、アパートなどの物件のことです。賃貸物件を借りて住む時は、賃貸人(貸主)と賃貸借契約を結びます。
メリット
賃貸では、比較的自由に住み替えが可能です。持ち家のような高額な初期費用は必要なく、管理費や共益費は貸主が月々の家賃から捻出する場合が多いので、家賃以外の住居費を抑えられます。
デメリット
賃貸に住んでいる限り家賃の支払いが続きます。それに、バリアフリー化のようなリフォームやカスタマイズには貸主の許可が必要になるため自由度は下がってしまうでしょう。
また、高齢になると低収入や認知症によるトラブル、孤独死のおそれなどが理由で、賃貸物件を借りにくくなる可能性があります。
バリアフリーリフォーム
バリアフリーリフォームの特徴とメリット・デメリットを説明します。
特徴
バリアフリーリフォームとは、だれもが安心・安全に暮らせる家にするための工事です。具体的には手すりやスロープの設置、段差の解消、押し戸から引き戸への変更などが挙げられます。
メリット
現在住んでいる家を老後も暮らせるようにリフォームすれば建て替えよりも費用を抑えられ、愛着のある家に住み続けられます。また、バリアフリーリフォームをおこなうと、固定資産税の減税措置を受けられる場合があります。
デメリット
家屋の構造によっては、間取りに制約が出る場合があります。また、全面的にリフォームをすると高額な費用が必要になるでしょう。費用かかる時はリフォームローンやフリーローンを利用できますが、住宅ローンに比べ金利が高い傾向にあります。
住み替え
住み替えの特徴とメリット・デメリットを説明します。
特徴
住み替えとは、引越しをともなう住まいの変更のことです。ライフステージに合わせた住まいを選ぶことができ、望む住環境に変えられます。
しかし、持ち家の人が住み替え先を購入する場合、売却と購入の2つの段取りが必要です。この場合、「売り先行(住む家を売却してから住み替え先を購入)」と「買い先行(住み替え先を先に購入してから住んでいる家を売却)」の2つの方法があります。
メリット
売り先行の場合、住んでいる家の売却益を利用できるので、住み替え費用を工面しやすく、資金計画も立てやすくなります。また、買い先行の場合は、引越しが1回で済むので、費用を抑えられるでしょう。
デメリット
売り先行の場合、住み替え先を購入するまでは仮住まいが必要になるので、2回引越しをすることになり、費用がかさみます。買い先行の場合、売却価格がわからないので資金計画が立てにくくなります。
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の特徴とメリット・デメリットを説明します。
特徴
サービス付き高齢者向け住宅とは、60歳以上の人、あるいは要支援・要介護の認定を受け自立した生活を送れる人が入居可能なバリアフリーに対応した高齢者向け賃貸住宅のことです。また、配偶者や60歳以上の親族などと2人での入居が可能な点もサ高住の特徴。安否確認や生活相談サービスを提供していますが、介護サービスは自分で外部のサービスを委託する必要があります。
メリット
高齢者でも契約しやすく、バリアフリー構造なので安心して生活できます。また、自由度が高く、有料老人ホームに比べると、利用料が安くなる傾向にあります。
デメリット
生活相談サービスを提供しているので、一般的な賃貸住宅に比べ利用料が高くなり、入居する際は連帯保証人が必要です。また、利用者は自立した人から要介護度が低い人を対象としているため、要介護度が上がった時は退去を求められる場合があります。
有料老人ホーム(介護付き・住宅型・健康型)
有料老人ホーム(介護付き・住宅型・健康型)の特徴とメリット・デメリットを説明します。
特徴
有料老人ホームとは、民間の企業が運営する高齢者施設です。食事や生活支援、介護、健康管理などのサービスを受けられます。
「介護付き」「住宅型」「健康型」の3タイプがあり、介護の有無など自分の状況に応じて入居先を選択できます。
介護付きは65歳以上の要介護認定を受けている人、住宅型は60歳以上の自立・要支援・要介護度の低い人が対象となります。健康型は介護が必要ない60歳以上の人であれば入居可能です。さらに、身元保証人・身元引受人がいることが入居条件の施設がほとんど。身近に頼れる人がいない場合は代行をしてくれるサービスもあります。
メリット
レクリエーションやアクティビティが充実しており、他の入居者や職員と交流する機会は多くなるでしょう。また、介護付きの施設では介護の専門スタッフが常駐しているので、いつでも手厚い介護が受けられます。また、医療や看護の体制が充実しているので安心です。
デメリット
有料老人ホームには、要介護度、認知症の有無や安定した収入があるかなど、多くの入居条件があり、入居のハードルが高い場合があります。施設によって対応できる医療体制などが異なるため、入居したい施設に自分に必要な体制が整っているか確認する必要があるでしょう。また、入居一時金と月額利用料が必要で、利用料は高くなる場合があります。住宅型の施設には介護の体制がないため、介護を受ける時は外部サービスを利用しなければなりません。健康型はそもそも健康な人を対象としているため、介護が必要になった時は退去を求められる可能性があります。
グループホーム
グループホームの特徴とメリット・デメリットを説明します。
特徴
グループホームの種類は「ユニット型」、「サテライト型」の2つ。ユニット型では入居者がユニットを組んで共同生活をします。1ユニットあたり5~9人で、1つの施設あたり2ユニットまでが原則です。サテライト型では一人暮らしをおこないながら支援を受けることができます。65歳以上で、要支援2以上または要介護1以上の医師から診断を受けた認知症患者を対象としています。地域密着型サービスになるため、同一地域に住居または住民票がなければ利用できません。
メリット
少人数なのでアットホームな雰囲気の中、慣れ親しんだ地域で生活できます。また、認知症ケアの専門知識を持つ職員から手厚いケアを受けられます。
デメリット
住居または住民票のある地域の施設しか利用できず、定員が少人数なので、空きが少ない傾向にあります。また、医療や看護に対応できるスタッフは常駐していないので、医療ケアは難しくなるでしょう。それに、要介護度が上がると退去を求められる場合があります。
ケアハウス
ケアハウスの特徴とメリット・デメリットを説明します。
特徴
ケアハウスとは軽費老人ホームの1つで、無料または低料金で利用できます。入居に際して所得や資産の条件はなく、60歳以上の人は「一般型(自立型)」、65歳以上で要介護1以上の人は「介護型」に入居可能です。
メリット
比較的費用を安く抑えられます。また、介護型の場合、要介護度が上がっても入居を続けられます。個室なのでプライバシーを確保できるうえに、レクリエーションが充実しているので、他の入居者との交流も図れるでしょう。
デメリット
一般型に入居中で介護が必要になった場合、外部の介護サービスを委託する必要があるので、料金が高くなる場合があります。また、要介護度が上がった時は退去を求められるかもしれません。
終の棲家に関するまとめ
終の棲家の概要と終の棲家を考えるタイミングや決めるポイントをおさらいしておきましょう。
終の棲家とは
終の棲家とは、生涯を終える時まで生活する場所のことです。定年退職後のセカンドライフを過ごす場所になるので、介護などを見据えながら、人生の最後まで安心して快適に過ごせる場所を選びましょう。
終の棲家を考えるタイミングは?
終の棲家を考えるタイミングは、経済的にも余裕があり、体力的にも行動しやすい50歳後半から60歳前半くらいがよいでしょう。高齢になるにつれ体の機能が衰えて準備が難しくなるので、元気なうちにはじめることをおすすめします。
終の棲家を決めるポイントは?
終の棲家を決めるポイントは、同居する家族や終活に関する専門家とともに、どのような老後生活を送りたいかを考えることです。将来必要になるかもしれない医療や介護サービスを受けやすい場所も考慮して選びましょう。
その際、重要なのが資金の準備です。住み替え費用やリフォーム費用の他、設備のメンテナンス費用など維持費も考えましょう。
子どもの独立や定年退職などでセカンドライフを考える時、終の棲家は大事なポイントとなります。まずは終の棲家の概要や種類を確認したうえで、どこでどのように過ごしたいのか、また、いずれ介護が必要になった時はどのような介護を受けたいかを考えて、自分にとって最適な終の棲家を検討してみましょう。
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