【実例あり】縁側とは?種類や活用方法、注意点を詳しく解説

記事の目次
縁側はどのようなスペース?

縁側とは、日本家屋の住宅によく見られる、屋内と屋外をつなぐ板張りのスペースを指します。一般的に屋外に接する建物の周縁に設けられることが多いです。
また、縁側は“ご縁を結ぶ場所”ともいわれます。外部と内部の中間のような立ち位置だからこそ、その家の住人はもちろんお客さんがくつろげる場所としても機能し、人と人のご縁を結んでいると考えられていたのでしょう。
縁側の役割とは?
縁側の役割は、屋内と屋外を行き来するだけの空間ではありません。先述したとおり、コミュニケーションの場となる他、通常、縁側に隣接する位置には大きな掃き出し窓が設けられるため、開放感をもたらしてくれます。また、窓を開ければ、隣接している居室空間を広く感じさせる機能も果たしてくれるでしょう。さらに、夏の暑さや冬の寒さを和らげ省エネにつながったり、通風性を向上させる役割もあります。
縁側と廊下の違い
縁側が複数の部屋をつないでいると、廊下のようにも使われます。そのため、縁側と廊下の違いがわからないという方がいるかもしれません。
廊下とは、建物の内部で部屋と部屋をつなぐ役割を担う、通路のことを指します。一方、部屋と屋外の間の空間が縁側です。そのため、廊下の役割を兼ねる縁側も存在しますが、縁側と廊下では目的が異なります。
縁側とウッドデッキの違い
一般的に、縁側とウッドデッキに明確な違いはなく、どちらも屋内と屋外をつなぐスペースです。
ウッドデッキはリビングやダイニングなどの床と同じ高さで、庭スペースに設けられる木製のテラスを指します。比較的奥行きがあるためバーベキューやガーデニングを楽しむことが多く、庭の延長線のような用途で使われることが多いです。一方、縁側は屋内と屋外の出入りをしやすくしたり、室内の温度を快適に保つ効果なども持ちます。
縁側の種類
縁側は大きく分けて2種類あります。以下でそれぞれ解説していきます。
内縁(くれ縁)

屋内に作られた縁側、つまり窓や雨戸、シャッターの内側にあるものを内縁(うちえん)といいます。雨や風の影響を受けないため、洗濯物を干したり、椅子やテーブルを置いてくつろぎスペースにすることも可能です。
広縁(入側縁)
内縁の種類のなかでも、幅が広いものを広縁(こうえん)と呼びます。厳密な規定はありませんが、120m以上の幅のものを広縁と呼ぶのが一般的です。そのため、床は板張りだけでなくカーペットや畳が敷かれることもあります。
外縁(濡れ縁)
内縁とは逆に、屋外に作られる縁側を外縁(がいえん)といいます。窓や雨戸の外にあるため雨が降ると濡れることから、濡れ縁(ぬれえん)とも呼ばれています。
落ち縁
落ち縁は外縁の一種です。隣接している居室空間の床面や出入り口よりも、少し低く作られているため、部屋から外を見ると風景が一望しやすく、開放的に感じやすいでしょう。また、出入りの際の踏み台としたり、冷気の流れをよくする効果も期待できます。
切れ目縁

切れ目縁も、外縁で使われることが多い種類です。基本的に外縁は、出入り口の敷居に対して部材を並行に並べます。これに対して、垂直に配置されているタイプが切れ目縁です。切れ目縁にすると雨水が下に流れやすく、水捌けがよくなるという利点も持ちます。
縁側のメリット

それでは、縁側を作るとどのようなメリットがあるのでしょうか。縁側のメリットは、主に6つあります。
部屋が広く見え開放感が得られる
縁側は外部と屋内の中間の立ち位置であるため、屋内にいると外とつながっているような開放感を感じられるでしょう。内縁であれば、仕切りを開け放つと居室と縁側の一体感が生まれ広々とした感覚に。また、外縁であれば掃き出し窓を開けると、居室が外へ伸びたような感覚になります。
暑さ寒さに対して調整がしやすい
内縁の場合、縁側と居室の間の間仕切りを閉めることで、居室が外気の影響を受けにくくなります。窓があるため風通しをよくしやすかったり、夏場の直射日光を避けたり、冬は日差しを取り込めることから、暑さ寒さをやわらげ冷暖房コストの削減も期待できるでしょう。
風通しがよくなる
縁側には大きな窓が設けられるため、通風性を高めてくれるメリットがあります。多くの空気を取り込めると室内に湿気がたまりにくく、住空間の快適性が高まります。
直射日光を避けつつ日差しを取り込める
縁側があると、直射日光を避けつつ日差しを取り込みやすくなります。夏は直射日光が居室内へ届きにくくなり、逆に冬は大きい窓が設置されているため暖かい陽光が室内へ入りやすくなるでしょう。十分な日当たりを確保できることからサンルームとしての活用も可能です。
家族や知人、近所の人とのコミュニケーションの場になる
縁側には、コミュニケーションの場になるというメリットも。知人や近所の人も、玄関から入るとかしこまった感じになるでしょう。しかし、縁側は気軽に腰をかけておしゃべりするような使い方も可能です。また、庭でバーベキューをする際には縁側を椅子として使えるため、大人数にも対応しやすくコミュニケーションの幅が広がります。
景色を楽しめる
縁側があると、より景色を楽しみやすくなります。内縁の場合は、部屋との間仕切りを開け放つだけで、屋内にいても大きな窓から外の景色を眺められます。外縁も、そよ風を感じながらくつろぎたい時にぴったりです。強い日差しを避けながらゆったりと景色を眺めることで、リラックスできるでしょう。
縁側のデメリット

一方で、縁側を作ることには、以下のようなデメリットもあります。
縁側を設置するスペースが必要
そもそも、縁側を作るにはスペースが必要です。住宅あるいは庭の一部を使うことになるため、その分、他の場所が狭くなることは認識しておきましょう。
建築面積に制限がかかる可能性がある
注文住宅を作る際は、土地ごとに定められた建ぺい率・容積率の範囲内におさめなければなりません。縁側も、この床面積に含まれることがあるので注意してください。内縁は床面積に含まれる対象となり、外縁については以下のように定められています。
- 屋根がある外縁:軒の出が建物から2mまでは建築面積に含まれない
- 屋根があり、かつ左右に壁がある外縁:建築面積に含まれる
- 屋根がない外縁:建築面積に含まれない
床面積に含まれることなく、利便性や快適性を高めるのには工夫が必要です。専門的な知識もいりますので、あらかじめ工務店や施工会社に相談するといいでしょう。
床面積が増えるため建築費用が高くなる
縁側を作るとその分、床面積が増えるため建築費用が多く発生します。縁側がない住宅と比べて建築費用が高くなる可能性も。事前に活用方法やどのような縁側を設置するのか、検討しましょう。
定期的なメンテナンスが必要
縁側は外とつながっていることから、どうしても汚れやすい場所です。そのため、こまめに掃除しなければなりません。また、雨雪や風、直射日光によるダメージを受けて、傷みやすいため定期的なメンテナンスが必要不可欠です。また、縁側を作ると庭の景色が気になりやすく、庭の維持管理も必要になるでしょう。
プライバシーへの配慮や防犯対策が必要
縁側は開放感がある分、プライバシーや防犯面での課題も。外からの見え方次第では視線を遮る対策や防犯性能の高いガラスや特殊なフィルムが使われている窓を選ぶ必要があります。
縁側の活用方法
実際にどのような縁側の活用方法があるのか紹介します。注文住宅を検討する際にぜひ参考にしてください。
アウトドアリビング
縁側の使い方として注目されているのが、アウトドアリビングとしての用途です。自宅にいながらピクニック気分で食事ができたり、内縁にテーブルや椅子を置き朝ごはんを食べると、気持ちがいいのではないでしょうか。外縁を広めに作れば、友人や親戚など大人数でバーベキューをすることも可能です。
コミュニケーションスペース

縁側は、コミュニケーションスペースとして使うのもおすすめ。先述のとおり、知人や近所の人がふらっと訪ねてきた時も、縁側があれば気軽に腰かけられます。そのまま、自然とおしゃべりが弾むことでしょう。靴を履いたまま座れるので、帰る際もスムーズです。また、庭や縁側を活用して、ホームパーティーを催すのも素敵な使い方ではないでしょうか。
ランドリールーム・サンルーム
縁側は日が当たりやすいため、ランドリールームやサンルームとしても活用できます。洗濯物は外よりも屋内に干すほうが花粉や防犯対策にもなりますし、縁側に洗濯物を干していても、居室との間仕切りを閉じればジメジメした湿気が居室空間に流れにくくなります。
子どもの遊び場
子どもがいる家族は、縁側を子どもの遊び場として使うのもいいでしょう。縁側は目の届く範囲でひなたぼっこもできます。
また、庭で泥んこになって遊んでも、縁側があれば着替えの場所として使え、汚れを居室へ持ち込みにくくできるでしょう。
リラックススペース・趣味のスペース

縁側は、リラックススペースや趣味のスペースとして活用するのもおすすめです。朝にストレッチやヨガをする習慣がある人は、縁側でおこなうと深く集中できるでしょう。夜には、縁側で星を眺めながらくつろぐのもすてきですね。観葉植物を育てたり、読書や昼寝をしたり、縁側はそれぞれが思い思いの時間を過ごせる空間になります。
注文住宅に縁側を取り入れる時の注意点

注文住宅に縁側を取り入れる際は、どういった点に気をつけるべきでしょうか。ここからは、縁側を作る際に意識したいポイントについて解説します。
縁側の利用目的を明確にする
事前に縁側をどのように使うかを明確にしておきましょう。「いろいろと使えそうだから」と漠然とした状態で縁側を作ったために、結局使わず無駄なスペースになってしまうことも。縁側の活用方法によって、必要な広さや種類も異なります。どのような過ごし方をするのか家族でよく話し合いましょう。
縁側の具体的なイメージを決めておく
利用目的が明らかになったら、どのような縁側にしたいか設置場所や広さを検討しましょう。例えば、ランドリースペースとして利用する可能性があれば、日当たりのいい内縁にして物干しも置けるスペースを確保したり、人が集まるコミュニケーションの場にするなら外縁で外からでも腰かけやすいようにするなど。居心地や使い勝手がよい縁側になるよう、間取りのどこに設置するのか、デザインはどうするのかなどイメージしておくことがポイントです。
縁側の目的やイメージに合わせて屋根を検討する
縁側の活用方法やイメージが明確になったら、次は屋根について検討しましょう。外縁の屋根は、上にひさしを設けることが比較的多いですが、2階のベランダの下に縁側を配置したり、軒(のき)を延長して縁側に屋根を作ることも可能です。しかし、一方で屋根や柱があることによって建築面積に影響することも。また、屋根を大きくするほどコストも上がります。工務店や施工会社に相談して、希望や予算を含めて最適なプランを提案してもらいましょう。
動線を考慮する
縁側単体だけでなく、縁側を含めた家全体のイメージを考えましょう。アウトドアリビングとして使いたいのなら、LDKに隣接させると便利です。一方、ランドリールームとして使うなら、洗濯機からの動線が短いほど便利になります。縁側を設置した際の生活動線、家事動線を考慮し、家全体の間取りを検討してください。
縁側からの眺めを確認する
縁側は外部に開けているため、庭の景色など外の眺めにも意識したいところです。また、庭だけでなく敷地の外にも考慮しましょう。せっかく縁側を作っても、隣の家が見えやすかったり、人通りの多い道路があると、プライバシーが気になり活用しにくくなってしまうかもしれません。場合によっては目隠しとなるようなフェンスや植栽のような外構が必要なケースも。縁側を設置する位置からどのような景色が見えるのか、事前に確認しましょう。
おしゃれな縁側がある住宅の実例5選
どうすれば満足度の高い縁側を作れるのか、ここでは縁側のある住宅の実例を5つ紹介します。注文住宅で縁側を取り入れる際に参考にしてくださいね。
L字の緑側がある平屋

ライトグレーの外壁に、植栽の緑が映える和モダンな平屋です。庭に向かうかたちでL字型の外縁を設置。パブリックスペースとの境界に外壁と同じ色味の塀を設けることで、プライバシーにも配慮しました。家族の憩いの場として機能する縁側が実現しています。
スキップフロアと縁側デッキを愉しむ平屋

リビングと居室それぞれに併設するかたちで、2つの縁側デッキを作った実例です。庭に面した縁側には軒が作られ、強い日差しを逃れながら屋外ならではの開放感を感じるスペースに仕上がりました。また、家族が思い思いの時間を過ごせるようにと、縁側と接するリビングには小上がりの畳スペースやスキップフロアを設けています。
縁側によって開放感のある居室

古民家を、住宅や店舗、事務所を兼ねた複合住宅にリノベーションした実例です。縁側の風情を残しつつ、壁を設けることで耐震性の向上にも工夫し、快適性と安全性の両方が追求されています。
窓を開ければリビングと縁側、テラスが一体となった空間に

こちらも、築60年を超える古民家を改装したお宅です。LDKに沿うかたちで作られた縁側に、テラスを併設しています。障子戸と掃き出し窓を開放すると、3つの空間が一体となる明るく広々とした空間に変化します。テラスには、レースカーテンをつけているのもポイントです。カーテンがあることで、プライバシーが守られるとともに暑い日も快適性が保たれます。
日本家屋の趣感じる縁側

150年もの歴史がある、伝統的建造物をリノベーションした事例です。古い家屋にありがちな「暗さ」問題は、家の中心部に光庭に作ったり、和室と納戸を吹き抜けにしたりすることで解消。趣深い縁側は、天井を新設したものの建具は洗い直すにとどめ、日本家屋ならではのよさが保持されています。
まとめ
縁側には、居室に開放感や明るい印象をもたらしたりするだけでなく、季節に合わせて部屋の温度を保ちやすいなどさまざまなメリットがあります。家族や来訪者とのコミュニケーションスペースとしても使えますし、趣味のスペースやランドリースペースとして活用できるのも、縁側ならではの機能といえるでしょう。
縁側を作るためには広い土地が必要だったり、建築費用が高額になりやすいなどのデメリットもありますが、活用方法を明確にし、事前に工務店や施工会社に相談することで、縁側のある理想の住まいが実現するでしょう。ぜひ、本記事を参考に縁側を検討してみてください。
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