注文住宅の予算の決め方は?注意点と年収別予算の目安を解説!

記事の目次
注文住宅を建てる際の予算の重要性

注文住宅を建てるなら、最初に予算を決めましょう。予算を決めておくと、無理なく実現できるプランが明確になるため、家づくりがスムーズに進みます。また、土地代や建築費用だけでなく、引越し費用や仲介手数料なども含めた総額を考えておきましょう。後悔のない家づくりを実現するためにも、希望や優先順位を整理し、必要な部分に費用をかけながら適切な予算設定をすることが大切です。
注文住宅は予算オーバーしやすい傾向がある
注文住宅は自由度が高いため、理想を詰め込むうちに予算オーバーしやすい傾向があります。間取りやデザイン、設備などを自由に選べる一方、こだわるほど追加費用が発生しやすく、当初の計画を超えてしまうケースが少なくありません。設備や資材のグレードアップ、予想外の工事費用、土地に関する諸費用など、計画外の出費が重なることもあります。そのため、家づくりを始める前に全体の予算を明確にし、優先順位をはっきりさせておくことが大切です。
注文住宅における予算の決め方のポイント

注文住宅の予算を決める時は、現在手元にある資金と住宅ローンで借り入れるお金のバランスが大切です。年収やローンの負担率を確認して、無理のない返済計画を立てましょう。
注文住宅の予算の決め方は、以下の5つの手順で進めていくことがおすすめです。
- STEP 1頭金をいくら出すかを決める
- STEP 2住宅ローンの借入金額を決める
- STEP 3 注文住宅にかける合計費用を決める
- STEP 4土地と建築費の予算配分を決める
- STEP 5諸費用がどれくらいかかるかを確認する
では、注文住宅の予算の決め方を順番に見ていきましょう。
STEP1. 頭金をいくら出すかを決める
まずは、注文住宅の予算を決める最初のステップとして、頭金の金額を決めましょう。頭金は住宅ローンの借入金額を抑えるための自己資金です。
住宅金融支援機構の「2023年度フラット35利用者調査」によると、注文住宅の頭金の平均額は次のとおりです。
物件の種類 | 手持金(頭金) | 融資金 |
---|---|---|
注文住宅 | 699万円 | 3,040.1万円 |
頭金を多く用意できれば、借入金額が減るため、月々の返済負担や総利息の支払いを軽減できます。しかし、必ずしも平均どおりに頭金を出さなければならない決まりはありません。無理に高額な頭金を用意すると、手元資金が不足して家計に負担がかかる恐れがあるため注意しましょう。
STEP2. 住宅ローンの借入金額を決める
頭金をどれくらい出すかを考えたら、次に住宅ローンの借入金額を決めましょう。頭金でまかないきれない費用を補うために、無理のない範囲で住宅ローンを計画していきましょう。一般的に住宅ローンの返済負担率は、手取り年収の20%程度に収めることが理想。返済負担率とは、年収に対する住宅ローンの返済額の割合のことです。返済負担率を無理のない範囲内に収めることで、将来の生活費や教育費、老後資金に余裕を持てます。
ただし、金融機関の審査基準では年収の30~35%以下と、やや借入金額が高額になっても審査に通る可能性があります。限度額いっぱいまで借り入れてしまうと返済負担が重くなるため、注意しましょう。現在の収入だけではなく、将来の出費なども考えて借入金額を決める必要があります。
STEP3. 注文住宅にかける合計費用を決める
次に、頭金と住宅ローンの借入金額を踏まえ、注文住宅にかける合計費用を決めましょう。
住宅金融支援機構の「2023年度フラット35利用者調査」によると、注文住宅の平均額は次のとおりです。
物件の種類 | 物件の平均価格 |
---|---|
注文住宅 | 4,903万円 |
建売住宅 | 3,603万円 |
建売住宅と比較しても、平均価格が高額であることがわかります。そのため、予備費用まで含めながら、コストを調整しなければなりません。必要な部分にはしっかり予算を割き、妥協できる部分ではコストを抑え、理想と現実のバランスを取るようにしましょう。
STEP4. 土地と建築費の予算配分を決める
注文住宅は、土地から購入するケースが多いです。そのため、土地と建築費用の予算配分を決める必要があります。一般的には、総予算のうち土地代に約30〜40%、建築費用に約60〜70%を割り当てると、バランスがよいとされています。
ただし、地域や土地の条件によっては割合が変わる場合もあるため、柔軟に調整が必要です。土地に多くの予算を割けば、理想の立地を選べますが、その分建築費用に制約がかかります。一方、建築費用に重点を置けば、間取りやデザイン、設備にこだわることが可能です。自分たちの希望やライフスタイルを考えながら、何を優先するかを家族で話し合い、バランスよく予算配分を決めましょう。
STEP5. 諸費用がどれくらいかかるかを確認する
注文住宅の予算を決める際、最後に確認すべきポイントは諸費用です。諸費用は、登記費用や印紙税、不動産取得税などの税金、火災保険料、仲介手数料などがあります。
諸費用は現金で支払う必要があるため、頭金に自己資金をかけすぎてしまうと、諸費用が支払えなくなってしまう可能性も。諸費用は、注文住宅の土地代と建築費用の総額の10%が相場です。例えば、合計で5,000万円の注文住宅を考えている場合、500万円は諸費用のために現金で残しておく必要があります。予算内で計画を進めるためにも、事前に準備しておきましょう。
【年収別】注文住宅の予算の目安

注文住宅の予算の決め方がわからない場合は、年収に応じて予算の目安を決めましょう。年収別の目安を知ることで、自分の収入に見合った現実的なプランを立てやすくなります。一般的には、住宅ローンの年間返済額が手取り年収の20%程度に収めることが理想とされています。
また、住宅金融支援機構の「2023年度フラット35利用者調査」によると、土地付き注文住宅の借入金額の平均は年収の7.6倍でした。現実的な返済をするのであれば、借入金額の平均値で物件価格の予算を考えるのがよいでしょう。では、どの程度の予算が妥当なのかを年収ごとに見ていきましょう。
年収500万円の場合
物件価格(年収の7.6倍) | 3,800万円 |
---|---|
諸費用(10%) | 380万円 |
年間の住宅ローンの返済額 (返済負担率20%〜25%) |
100万円〜125万円 |
毎月の住宅ローンの返済額 | 8.3万円〜10.4万円 |
年収500万円の借入可能額の目安は、3,800万円程度です。物件価格に、諸費用約380万円と頭金を加えた総予算が、注文住宅にかけられる費用と考えましょう。
注文住宅の平均価格よりも費用を抑える必要があるため、優先順位を見直しながらコスト調整をすることが大切です。
年収600万円の場合
物件価格(年収の7.6倍) | 4,560万円 |
---|---|
諸費用(10%) | 456万円 |
年間の住宅ローンの返済額 (返済負担率20%〜25%) |
120万円〜150万円 |
毎月の住宅ローンの返済額 | 10万円〜12.5万円 |
年収600万円の借入可能額の目安は、4,560万円程度です。物件価格に、諸費用約456万円と頭金を加えた総予算が、注文住宅にかけられる費用と考えましょう。
年収600万円から、注文住宅の平均程度の家づくりができる可能性があります。ただし、理想を追求しすぎると予算オーバーにつながる恐れがあるため、都度見積もりを確認しながら進めるようにしましょう。
年収800万円の場合
物件価格(年収の7.6倍) | 6,080万円 |
---|---|
諸費用(10%) | 608万円 |
年間の住宅ローンの返済額 (返済負担率20%〜25%) |
160万円〜200万円 |
毎月の住宅ローンの返済額 | 13.3万円〜16.6万円 |
年収800万円の借入可能額の目安は、6,080万円程度です。物件価格に、諸費用約608万円と頭金を加えた総予算が、注文住宅にかけられる費用と考えましょう。注文住宅の平均価格よりも予算をかけられるため、理想の家づくりをできる可能性があります。ただし、子どもの進学や親の介護など、将来のライフプランによっては住宅ローンの返済負担が重く感じる恐れも考えられます。予算を決める時は慎重に判断しましょう。
年収1,000万円の場合
物件価格(年収の7.6倍) | 7,600万円 |
---|---|
諸費用(10%) | 760万円 |
年間の住宅ローンの返済額 (返済負担率20%〜25%) |
200万円〜250万円 |
毎月の住宅ローンの返済額 | 16.6万円〜20.8万円 |
年収1,000万円の借入可能額の目安は、7,600万円程度です。物件価格に、諸費用約760万円と頭金を加えた総予算が、注文住宅にかけられる費用と考えましょう。
国税庁の「令和5年分 民間給与実態統計調査」によると、年収1,000万円以上の給与所得者の割合は5.5%と少数です。一般的な注文住宅よりハイクラスな家づくりを実現できる可能性もあるでしょう。
家づくりにこだわりながら、お金をかけるべき優先順位や将来のライフプランを明確にし、計画的に進めることが大切です。
注文住宅の予算を決める時の注意点

注文住宅は、途中で予算が足りずに妥協した家づくりになってしまったり、維持費が高額になり住宅ローンの返済が厳しくなったりと失敗するケースも少なくありません。失敗しないためにも、注文住宅の予算を決める際に見落としがちなポイントや注意点を押さえましょう。
住みたい家のイメージを決める
注文住宅の予算を決める際は、最初に住みたい家のイメージを明確にしましょう。例えば、広いリビングや最新のキッチン設備が必要か、収納や間取りを重視するかなど、予算配分を決めておくと不要な出費を抑えられます。また、住みたい家のイメージを決めておくと、建築会社や設計士との打ち合わせもスムーズに進められる点もメリットです。
設備やデザインの優先順位を決める
家づくりは、キッチンやバスルーム、床材、外壁デザインなど、こだわりたいポイントが多いため、すべてに予算を割こうとすると簡単に予算オーバーしてしまいます。そのため、家族のライフスタイルや価値観を話し合い、絶対に譲れない部分と妥協できる部分を整理しましょう。例えば「キッチンの機能性を重視する」「リビングを広く確保する」など、優先順位を決めるとコスト配分が明確になるため、限られた予算のなかで効率的に理想を実現できます。
維持費も考えて予算を決める
建築費用だけでなく、将来的な維持費も考えて予算を決めましょう。家を建てたあとは、固定資産税や火災保険料、修繕費、設備のメンテナンス費用など、さまざまな維持費が発生します。断熱性能や耐久性に優れた設備を選ぶと初期費用は高くなりますが、光熱費や修繕費を抑えられるため、結果的に長期的なコストを削減できる可能性があります。なお、建物の広さや外観の仕様によっても維持費が変動するため、今後の維持費も考えたうえで予算を設定しましょう。
頭金なしで購入する場合はデメリットを理解する
近年、注文住宅を頭金なしで購入するケースも増えています。初期費用を抑えられるメリットは大きいですが、メリットだけでなくデメリットもしっかり理解しておきましょう。頭金を用意しない場合、住宅ローンの借入金額が増えるため、毎月の返済額や総利息の支払いが多くなり、長期的に負担が重くなります。
また、金融機関によっては頭金なしでの借入条件が厳しくなるため、希望の借入金額が実現できない可能性も考えられます。少しでも頭金を用意すれば総支払額を減らせるため、家づくりの計画を延長し、手元資金を増やす方法も検討しましょう。
まとめ
注文住宅の予算を決める際は、家族の希望や将来設計を考えながら、現実的で無理のない資金計画を立てることが大切です。建築費用だけでなく、土地代や諸費用を含めた総予算を明確にし、適切な返済負担率で計画を進めましょう。注意点を押さえながら、優先順位を決めてコストを調整すれば、満足度の高い家づくりが実現します。本記事を参考に、後悔のない家づくりを目指しましょう。
注文住宅を建てる

執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ