6月期
テーマ:一人暮らし
かさねぐらし
「私、決めました。この部屋に少しずつあなたのためのものを足します。クッションと、座椅子と、面白そうな本を。きちんと悩んで、うんと悩んで選びます。あなたに見せたいものを考えます。たまに私があなたの部屋を訪ねます」
個と個でなければ、重なることは二度とできない。
「あなたは私のために少しずつ部屋の配置を変えてください。私があなたの隣で体育座りできるように、ちゃんと場所を作ってください。まずはそこから――ひとりぐらしをはじめましょう」
もともとはそれぞれ個であった、あなたの笑い声と私の笑い声が重なって一つに聞こえる。
今はまだひとりぐらし、ふたりぐらしに並べて、かさねぐらしのその道中。
隣の部屋から壁を殴るような重い音が聞こえ、私たちは互いに互いの口を塞いだ。
かさねぐらし