テーマ:ご当地物語 / セイタカアワダチ村*架空の町

ここは セイタカアワダチむら

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そんなことをいう人ばかりで、だれも自分で台本を作ろうとはしなかった。私も、作る気なんてさらさらなかった。けれど、みんなが一斉に私を指さした。その場には村長さんも司祭さんもいたから、これはもう村のみんなの総意だった。決定事項だった。私はこんなこと――つまりこうしてだれかに話したりしているから、台本くらい作れるでしょ、ということだった。
村で一番教養があるのは司祭さんだったから、私は教会に籠って台本を作ることにした。文字を書くなんてちょっと偉くなったみたいだ。
ここはふたつ目の村だ。だから、たいしたことはあんまりいわなくていい。いわない方がいい。みんなバカになっておけばいい。

台詞                               
作 宿屋の娘

通行人A――ここは セイタカアワダチむら やくそうが めいぶつの むら
通行人B――さいきん また まものが であるいている ああおそろしい
通行人C――みたか あのそら なにか ふきつなことでも おきたんじゃろか
通行人D――ひっ あんた まもの つれとんのか
通行人E――やくそう あるよ
通行人F――あたらしい やくそう あるよ
通行人G――めずらしい やくそう あるよ
通行人H――あたらしくて めずらしい やくそうは にゅうしゅ こんなん
民家の子どもA――パパが おそとに でちゃいけないって
民家の子どもB――おにいちゃんが つれてるの まもの っていうんでしょ
民家の子どもC――おおきくなったら まおうに なるんだ
農夫A――このむらの やくそうは ぜんこくてきに ゆうめい
村長――きたの むらと れんらくが とれん なにか あったんじゃろか だれか きたの むらに いって ようすを みてきてくれんかのお
老人――ゆうしゃさまは てんのこえを きくことが できるそうだ あたまが ほうけとるんかの
老婆――よるに なると ひがしの やまから ひめいが……
吟遊詩人――……うっ
武器屋兼防具屋兼薬草屋――いらっしゃい。(アイテムが購入されると)〇〇ゴールドになります ※〇〇はアイテムによって変わる
宿屋――いらっしゃい。ひとばん 5ゴールドに なります (勇者が目覚めると)よくおねむりになれましたか。
司祭――なんじの たびじを きろくしますか? (死んだものを蘇らせるとき)〇〇に かみの ごかごがあらんことを ※〇〇は死人の名前

 まあ、こんなものだろう。可もなく不可もないはずだ。あとは、みんなが台詞を覚えてくれればそれでいい。みんなを教会に集めて、台本を配った。紙は高いし、手書きだから、みんなで一枚を回していると、通行人Hが駆け込んできて小声で叫んだ。きたで。きたで。

ここは セイタカアワダチむら

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