住みタイム 東京都多摩市

最初にやってきたのは、京王線の聖蹟桜ヶ丘駅。駅周辺は大型商業施設や高層マンションが建ち並んでいますが、少し離れると閑静な住宅街が広がっています。建物の背丈もぐっと低くなり、空が広く感じられます。ふと住宅街の一角に目をやると、石造りの大きな鳥居が見えてきました。広々とした境内の先には、朝の光を浴びて朱色に輝く拝殿。せっかくなのでお参りしてみましょう。

この神社の名は、「武蔵国一之宮 小野神社」。一之宮とは国内における神格の格付けで、“国内第一の鎮守”を意味するそうです。創建は紀元前と伝えられ、数千年もの間、この地の移り変わりを見守ってきました。祭神を拝みながら手を合わせれば、悠久の時に包まれ、背筋がしゃんと伸びてきます。ちなみに、例年9月に行われる例大祭は、神輿や山車が街を練り歩き、街中に活気がみなぎるそう。街の表情が新しくなる一方で、小野神社はいつまでも変わらない“住民の交流の場”として愛されているようです。

東京都多摩市のもうひとつの交流の場として、ワークショップや公開講座を行っている「多摩美術大学美術館」を訪ねてみましょう。多彩な才能を輩出している多摩美術大学の付属施設として開設されたこの美術館では、絵画や彫刻をはじめ、ドローイング、グラフィック、染織品など、さまざまなジャンルの展覧会を開催。海外のアートにもフォーカスするなど、独自の活動を行っています。また、展覧会に合わせて公演やワークショップも実施。市民がものづくりの楽しさを知る機会を提供しています。

ところで、駅名にもなっている“聖蹟”とは何を意味するのでしょうか？ 実は、聖蹟とは天皇が行幸（外出）した土地のこと。東京都多摩市連光寺一帯が明治天皇の御狩場だったことに由来します。かつて多くの動物が生息した自然環境は今に受け継がれ、桜ヶ丘公園として市民に親しまれています。早速、自然散策に向かってみましょう。

丘陵と谷間からなる桜ヶ丘公園は、高低差が10m以上と起伏に富み、適度な運動にぴったり。草花に触れながら散策していると、自然と額に汗がにじんできます。おや、木々が生い茂る小道の先に、クリーム色の壁をした建物が見えてきました。円筒状の建物にはガラス窓がついた扉が6つ。さらに、建物をぐるりと囲むように円柱が建ち並んでいます。この独特の建物は、「旧多摩聖蹟記念館」。明治天皇の行幸を記念して、1930年に建設された歴史的建造物です。

館内に足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは高さ約3mの明治天皇騎馬像。今にも馬のいななきが聞こえてきそうな迫力に圧倒されてしまいます。その他、明治時代に活躍した人々の書画や、東京都多摩市周辺の植物の写真も展示。東京都多摩市が育んできた歴史と自然を同時に体感することができます。