今人気の居抜きオフィスとは?メリット・デメリットや注意すべきポイントを解説!

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居抜きオフィスとは?

居抜きオフィスとは、前の入居者が設置・使用していた家具類や照明器具、あるいは内装などがそのまま残された状態で借りるオフィス物件です。つまり、前の入居者が退去した際、基本的には原状回復がおこなわれていません。
居抜きオフィス・セットアップオフィス・スケルトン物件の違い
居抜きオフィスと混同されがちなものに、「セットアップオフィス」や「スケルトン物件」があります。それぞれの特徴などを以下図にまとめましたので、違いを比較してみましょう。
居抜きオフィス | セットアップオフィス | スケルトン物件 | |
---|---|---|---|
内装工事 | 必要分のみ | ほぼ不要 | 工事必須 |
機能性・デザイン性 | 物件次第 | 機能性・デザイン性が高い物件が多い | 自由に設計できる |
設備・什器 | 前の入居者のまま(中古) | オーナーが用意(新品) | なし |
賃料の傾向 | 標準(割高の物件もある) | 割高 | 標準 |
物件数 | 少ない | 少ない | 多い |
居抜き物件は退去時に原状回復がおこなわれていないので、内装が前の入居者が残したままの状態です。そのため、デザイン・機能は物件により異なりますが、自分たちに必要な工事さえ施せばそのまま使用できます。家具類をはじめとした設備なども引き継げますが、中古である点に注意しましょう。また、物件数はあまり多くないため、探すのに時間がかかるかもしれません。
これに対し、セットアップオフィスは物件オーナーが内装を施した状態で貸し出されます。そのため、基本的には内装工事が不要です。借り手が見つかりやすいよう、デザインや機能にもこだわっているケースが多いのが特徴です。さらに、家具類などの備品も、オーナーが新品を用意してくれます。ただし、居抜きオフィスやスケルトン物件と比べると、賃料は割高な傾向にあります。また、物件数も全体的に多くありません。
一方、スケルトン物件は内装や設備などすべてなくした状態になっているので、ゼロから内装工事をおこなう必要があります。自分たちで自由に設計できますが、工事費用がかかる点に注意してください。家具類などの備品もないので、必要なものは購入しなくてはいけません。居抜き物件やセットアップオフィスと比べて、初期費用はもっとも多くかかります。ただし、物件数は多いので探すのは難しくないでしょう。
いま居抜きオフィスが人気の理由
では今、なぜ居抜きオフィスが人気を集めているのでしょうか。その背景には、多くの企業でテレワークが導入されるなど、オフィスの縮小化が進んでいることが挙げられます。これにともない、事務所を移転する企業が増加傾向にあるのです。また、スタートアップやベンチャー企業も増えており、大きな初期コストをかけず事業を開始できる、居抜きオフィスが多く選ばれています。こうした企業は事業規模の拡大などによって引越しも多く発生しやすく、居抜きオフィスがマッチしやすいのでしょう。
さらに、コロナ禍によって多くの飲食店が閉店したことも、居抜き物件が増えている一つの要因といえるでしょう。個人経営の店舗だけでなく、大手チェーンでも店舗を閉鎖したケースは少なくありません。昨今はコロナ禍から回復傾向にあり、あらためて好条件の居抜き物件を探す企業も増えています。
居抜きオフィスのメリット

居抜きオフィスには、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、具体的に4つ取り上げてご紹介します。
初期費用が抑えられる
居抜きオフィスは内装や設備などが備わっているため、初期費用が抑えられます。例えば10人規模(20~30坪)のオフィス移転をおこなう場合、通常であれば以下のような費用が発生するでしょう。
- 引っ越し費用:30万円程度
- 原状回復工事費:60~90万円程度
- レイアウト設計・管理費:30~90万円程度
- 内装工事費:100~500万円程度
- インフラ工事費:200~400万円程度
居抜き物件であれば、このうち引越し費用と原状回復工事費以外はほぼ不要です。これだけで、大きなコストカットになります。なお、上記のほかに通常なら備品・家具類などの購入費も掛かりますが、これも居抜き物件に残されたものを使えば発生しません。そのため、最低限の費用のみでオフィスを利用できます。
オフィス移転の手間が少ない
通常、オフィス移転には退去時の手続きや原状回復だけでなく、新しいオフィスのレイアウト設計や設備手配、内装やインフラ周りの工事などさまざまな手間がかかります。しかし、居抜きオフィスの場合、移転先に仕事で使用する備品や家具などが備わっています。また、内装やインフラ整備も施されているため、移転の手間が少なくて済むでしょう。書類のやり取りをおこない、足りない備品を購入してインターネット等の契約を済ませれば、それだけで仕事が始められます。多くの時間を移転作業に割かなくていいため、日々の業務にもさほど影響が及びません。
短期間で入居できる
オフィス移転にかかる時間は、一般的に6カ月程度といわれています。通常は物件を借りて入居したあとに、レイアウト設計や内装工事、インフラ工事などをおこなわなければなりません。しかし、居抜き物件はこうした作業が不要なため、入居すればすぐにでも業務を開始できます。また、これまでのオフィスと新しいオフィスとで、二重に賃料を支払わなければならないなどの事態も回避しやすいでしょう。移転までの予定も組みやすいはずです。
セットアップオフィスに比べて賃料が安い
セットアップオフィスはオーナー側が内装や設備の一部を用意し貸し出す形態なので、移転の手間や短期入居というメリットは、セットアップオフィスでも同様のメリットが得られます。しかし、セットアップオフィスは、内装工事や設備にかかるコストが賃料に反映されているため、周辺相場よりも賃料設定が高い傾向にあります。セットアップオフィスと比べると、居抜き物件の方が賃料は安く抑えられるでしょう。特にコストを抑えたいスタートアップやベンチャー、移転の多い企業などにとって、これは大きなメリットとなります。
居抜きオフィスのデメリット

いくつものメリットがある居抜きオフィスですが、一方で以下のようなデメリットもあります。
予定よりもコストがかかる場合がある
居抜き物件は、前の入居者が使用していたまま、設備なども引き継いで使用します。そのため、設備などに経年劣化がある場合、追加工事やクリーニングが必要になったり、利用途中の故障によって修理しなくてはならなくなったりする可能性があるでしょう。内装やレイアウトも自社用ではないため、使いにくさがあれば費用をかけて工事をおこなう必要があります。
こうしたコストの発生を抑えるには、入居前に仕事をするシーンをイメージして内装やレイアウトを確認すると共に、各設備の使用年数をチェックしておくと安心です。早い段階で修理が必要になる場合、その費用を準備しておくとよいでしょう。
希望のレイアウトに合う物件が少ない
そもそも、居抜き物件は全体的に数が少ないです。そのため、物件を探すのに手間取るかもしれません。また、見つかったとしても、いざ使ってみるとレイアウトに使いにくさを感じる可能性もあります。レイアウトを変更できればいいですが、変更できない物件もありますので注意しましょう。
希望に合った物件を見つけるには、何度か内見し、実務を想定して使いにくさがないか十分に確認してください。また、入居後のレイアウト変更ができるか否かも、事前に不動産会社やオーナーに聞いておくと安心です。居抜き物件は数が少ないですが、ある程度の期間を持って探すと希望に合った物件が見つかるかもしれません。
居抜きオフィスを選ぶときに注意すべきポイント

居抜きオフィスを選ぶ際には、入居後に後悔しないよう以下の点に注意しましょう。
間取りや内装が自社に適しているかを考える
物件の間取りや内装など、自社で使用するのに問題がないか検討しましょう。例えば会議室や収納、受付などの有無、そしてセキュリティ対策などもチェックしてください。また、使いにくい部分があった場合に、造作工事ができるかも確認しておくと安心です。造作工事ができないと、いざ入居して自社に合っていなくても、そのまま使い続けなくてはいけません。
設備の状態や残置物を確認する
物件内に残されているモノや設備など、数や種類と共に状態を確認しておきましょう。LANや電話回線などの配線がどうなっているのか、エアコンや給湯器などの有無や劣化状態がどうなのかは、追加で必要となる費用を左右する大きなポイント。もし修繕が必要になる部分があれば、費用など事前に想定したうえで入居することが大切です。
追加で発生する費用負担を算出しておく
追加工事やオフィス家具・備品の購入、クリーニング、残置物の処分など、入居したあとに発生する費用があれば事前に算出しておきましょう。あらかじめ予算を決めておき、これに収まるように検討するのもよいかもしれません。
退去する際の原状回復義務について明確にする
居抜き物件だからといって、自分たちも居抜き退去できるとは限りません。退去する際に原状回復が必要か否かは、必ず入居する時点で確認しておきましょう。原状回復が必要であれば、居抜き退去と比べて退去時の費用は大きく増えますので注意が必要です。
居抜きオフィスへの入居の流れ

居抜きオフィスへ入居する際は、おおむね以下のような流れで手続きなどを進めます。
- STEP 1内見・審査・申し込みをする
-
STEP 2契約を交わす
・賃貸借契約
・造作譲渡契約 - STEP 3クリーニングや内装工事をする
- STEP 4什器や備品などを購入する
- STEP 5引っ越し
居抜き物件への入居は、一般的な事業用の賃貸物件を借りる際と大きく変わりません。ただし、居抜き物件には「造作譲渡契約」というものがあります。初めて居抜き物件を検討する方は、あまり聞き慣れない言葉かもしれません。
造作譲渡契約とは、内装や設備、家具などの造作物を、新しく入居する人が買い取るという契約です。買い取りで発生する費用は、それらの耐用年数などによって異なります。必ずしも費用が求められるものではなく、無償貸与という形で譲り受けられることも少なくありません。むしろ居抜きオフィスでは、こちらのケースが多いでしょう。
また、大きな設備などはリース契約となっており、これを転貸によって使用することもあります。この場合、使用にあたってリース料金を負担することになります。造作譲渡については、契約内容や費用など十分に確認してから契約してください。
居抜き物件への入居の流れやスケジュールについてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。併せてご覧ください。

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- 企業が事業を継続するなかで、オフィスを移転する機会は何回か訪れます。オフィスを移転するためには多くの時間と労力
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居抜きオフィスへの入居をスムーズにおこなう秘訣

居抜きオフィスへスムーズに入居したいなら、以下のような点を心がけましょう。
気になる物件があったらすぐに内見する
居抜き物件は、全体的に数が多くありません。特にエリアを限定して探せば、それだけ物件は見つかりにくいものです。そのため、もしも気になる物件があったら、できるだけ早く内見しましょう。そうしないと、いつの間にか他に借り手が見つかってしまうかもしれません。居抜き物件はこまめに物件情報を探しつつ、早めのアクションが大切です。
居抜きオフィスに詳しい不動産会社に相談する
居抜きオフィスは通常の賃貸オフィス・貸事務所と比べて、確認すべきことが多くあります。また、入居後のトラブルも見られるため、できれば居抜きオフィスに詳しい不動産会社に依頼するとよいでしょう。居抜きをはじめ、リノベーションや家具リース、原状回復工事など、さまざまなサービスを提供している不動産会社もあります。何も知らず手探りで手続きするより、安心して居抜きオフィスを探し、場合によって入居後も良き相談相手となってくれるはずです。
まとめ
今人気が高まっている、居抜きオフィスについて詳しくご紹介しました。初期費用を抑えつつ短期間で入居できる居抜き物件ですが、全体的に物件数は多くありません。そのため、気になる物件が見つかった際には、できるだけ早く内見を申し込みましょう。ただし、レイアウトや設備などが自社に合っているかは、慎重に確認することが大切です。追加工事が必要になればコストがかさみますし、レイアウトの変更などをおこなえない物件もあります。
なお、設備などの経年劣化や造作譲渡契約の内容など、通常のオフィス賃貸と比べて確認すべき事項が多くなります。本記事を参考にして事前に認識しておくと共に、不安があれば居抜きオフィスに詳しい不動産会社へ相談するとよいでしょう。
メリットの多い居抜き物件ですが、すべての企業に向いているわけではありません。予算やスケジュールなどに応じ、自社に合った物件の選択が大切です。不動産情報サイト アットホームでは、居抜きとスケルトンそれぞれに特集が設けられているので、物件探しに便利ですよ。
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