不動産の売却で知っておきたい相談先一覧!相談が必要な理由を解説

本記事では、相談内容に応じた相談先と相談する際のポイントを紹介します。記事を読むことで、現在抱えている不動産の売却に関する不安を取り除くことができるでしょう。
記事の目次
不動産の売却で相談が必要な理由

不動産の売却は基本的にご自身の力だけでは完結できません。不動産の売却では複数の専門家への相談が前提になります。その理由を以下にまとめました。それぞれ詳しく見ていきましょう。
適正な価格を設定してスムーズに売却できる
不動産を売却したいと考えても、適切な相場がわからなければ損をしてしまうかもしれません。不動産の売却において適切な価格設定をおこない、買い手を見つけることで、スムーズな売却を仲介してくれるところが不動産会社です。
そのため、不動産の売却を検討している場合、まずは不動産会社に相談しましょう。すでに買い手が見つかっており、金額の交渉まで済んでいるなどのケースを除いて、不動産会社への相談は必須です。
法的要件の理解と複雑な手続きが必要である
不動産売却にはさまざまな法的な手続きがあるため、正しくおこなうには法的要件の理解が必要です。具体的には、抵当権抹消などの登記手続きが必要であり、司法書士に相談して代行してもらうことが一般的になります。
登記手続きは自身でおこなうこともできますが、知識不足から内容が適切でない場合や、書類に不備がある場合は再提出になることも。手続きには、時間と手間がかかるため、司法書士に依頼することをおすすめします。
また、確定申告は自分でおこなうことも可能ですが、税理士に相談することで、節税に利用できる特例についても教えてもらえます。納税による出費を減らすことで、結果的に手元に残るお金を増やせるでしょう。
不動産の売却手続きにおいて専門家のサポートを受けることで、効率的に手続きを進められます。結果的に一人で手続きした場合と比較して、必要のない支払いを防止し、手間を省けることが期待できるでしょう。
想定されるさまざまなトラブルの防止に役立つ
不動産売却では、さまざまなトラブルの発生が予想されます。例えば、土地売却では境界線がわからないことが原因で契約が進まないことも。測量や境界確定を土地家屋調査士に依頼すれば、このようなトラブルを防ぐことが可能です。
権利関係で法的な争いへの発展が予想できる場合は、事前に弁護士に相談しておきましょう。不動産の売却は、専門家への相談が効率的であるため、必要に応じて複数の専門家に相談することが重要になります。
不動産の売却で知っておきたい相談先一覧

不動産売却の相談内容にあわせて、適した相談先を以下の表にまとめました。
相談内容 | 相談先 |
---|---|
売却に関する相談全般 | 不動産会社 |
不動産の価値に関する相談 | 不動産鑑定士 |
ローンの相談 | 金融機関 |
不動産登記に関する相談 (抵当権抹消など) |
司法書士・法務局 |
確定申告などの税務相談 | 税理士・税務署 |
空き家の売却に関する相談 | 市区町村の役所・役場 |
農地売却に関する相談 | 行政書士 |
不動産の境界・ 測量に関する相談 |
土地家屋調査士 |
法的なトラブルに関する相談 | 弁護士・消費生活センター |
売却後のライフプラン に関する相談 |
ファイナンシャルプランナー |
それぞれの相談内容と相談先を詳しく解説します。
売却に関する相談全般:不動産会社
不動産会社は、相場調査から広告、条件交渉、契約書作成、引渡しまで、不動産の売却に必要な手続きを代行する総合窓口です。不動産会社への相談は無料であることが一般的なため、まずは気軽に相談するとよいでしょう。
「不動産を売却したくても、何をすればいいのかわからない」などの初歩的な疑問、「専門知識が必要であることはわかっても、どこに相談すればいいのかわからない」などの相談先がわからないケースもあるかもしれません。何がわからないのか理解していない場合を含めて、不動産売却に関する相談を全般的にできる相談先が不動産会社です。
また、不動産会社は都市部なら集客力があり、買い手を見つけやすく、地方なら地元の市場動向やニーズに詳しい強みを発揮しやすいです。売却する不動産に適した不動産会社に相談することが重要になります。
不動産の価値に関する相談:不動産鑑定士
不動産鑑定士は、土地や建物の適正な価値を専門的に評価する国家資格者です。特に相続や贈与、企業間取引、訴訟などで不動産の正確な評価が求められる場合に利用されます。鑑定士は、さまざまな手法を用いて不動産の評価をおこない、鑑定評価書を作成します。
報酬は鑑定対象価額によって異なりますが、一般的には数十万円程度であり、作業期間は1〜2カ月程度です。不動産の客観性のある正確な価値を知りたい場合は、不動産鑑定士に相談しましょう。
ローンの相談:金融機関
ローンが残っている不動産を売却する際は、金融機関への相談が不可欠です。売却代金でローンを完済できるか、差額が生じる場合は対応策を話し合う必要があります。
また、現在の不動産を売却して新しい不動産を所有する場合は、新しいローンを組むための相談ができます。不動産の売却時点でローンが残っており、抵当権が抹消されていない場合は、必ず金融機関に相談してから売却するようにしましょう。
不動産登記に関する相談:司法書士・法務局
不動産の売却には、所有権移転登記や抵当権抹消登記などの登記手続きがともないます。司法書士は、登記手続きを代理でおこなう専門家であり、必要書類の作成や法務局への申請の代行が可能です。
法務局に相談して、申請書式と必要書類を説明してもらい、登記簿謄本の取得や登記内容を確認すればご自身で登記が可能。しかし、手間がかかることから、基本的には司法書士に依頼します。
代行に対して支払う報酬は、一般的に数万円程度です。申請が難しい場合は、最初から司法書士に相談して任せるほうが確実でしょう。
確定申告などの税務相談:税理士・税務署
不動産売却で発生する譲渡所得税は、売却価格から取得費・譲渡費用を差し引いた所得に税率を適用して税額を決定する仕組みです。しかし、売却する不動産が居住用である場合に利用できる「居住用財産の3,000万円控除の特例」など、不動産の売却で利用できる節税制度があります。そのため、実際に支払う譲渡所得税は節税制度の利用で安くなることも。
各種特例を漏れなく適用するには、税理士に申告書作成を依頼すると確実です。税理士報酬は申告書作成で、一般的には10万円前後が相場になりますが、ご自身で申告した場合と比較して、納税額が少なくなりやすいです。税理士に依頼するほうが支払った報酬を差し引いても、手元にお金が残るかもしれません。
自身で申告するケースでは、確定申告でわからないことがある場合、税務署に相談すると無料でアドバイスを受けられます。譲渡所得税を支払うために確定申告が必要になるため、不動産売却の税務相談に関する相談先を把握しておきましょう。
空き家の売却に関する相談:市役所
不動産のなかでも空き家の売却を検討している場合、市役所の空き家対策窓口に相談しましょう。多くの自治体では、空き家バンクなどの相談窓口を設置しています。
空き家は、住宅用地特例が外れる前に売却すると、固定資産税の負担を抑えられます。自治体ごとに用意されている制度の利用を含めて、どのように売却するべきか相談することをおすすめします。市役所で相談した内容を踏まえて、売却戦略を立てるようにしましょう。
農地売却に関する相談:行政書士
農地を売却する際は、農地法に基づく許可や届出が必要です。行政書士は、農地法に則った手続きに精通しており、農地転用許可申請や農業委員会との協議から、必要書類の作成・提出を代行してくれます。
一般的な宅地などの不動産ではなく農地を扱う場合は、手続きが複雑になるため、行政書士のサポートが不可欠です。農地売却は行政書士に相談すれば、スムーズな手続きと法的リスクの回避を期待できるでしょう。
不動産の境界・測量に関する相談:土地家屋調査士
土地を売却するにあたって、境界が不明確な場合は、事前に土地家屋調査士への相談が重要です。土地売却では境界が不明確であることが、取引が停滞する原因となり、のちに法的なトラブルにもつながるからです。
調査士は、現地測量や隣接地所有者との立会いをおこない、正確な境界確定や地積更正登記をサポートしてくれます。売買後の境界トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。また、確定測量図の作成は、買主にとっても安心材料となり、スムーズに取引しやすくなります。
法的なトラブルに関する相談:弁護士・消費生活センター
不動産売却にともなう法的トラブルや、契約上の問題が発生した場合は、弁護士に相談しましょう。弁護士は、契約書の内容確認、トラブル時の交渉、訴訟対応など、法的な側面からサポートしてくれます。
消費生活センターでは、不動産取引に関する苦情や相談を受け付けており、必要に応じて適切な機関への案内や助言をおこなっています。訴訟を前提にしない軽微なトラブルを相談する場合は、弁護士ではなく消費生活センターに相談することも選択肢の一つです。
売却後のライフプランに関する相談:ファイナンシャルプランナー
不動産の売却後、得た資金をどのように活用するかは、将来の生活設計に大きく影響します。例えば、住み替え先になる住宅、または新しい投資物件の購入資金に充てることが考えられるでしょう。ファイナンシャルプランナー(FP)は、住み替えの計画、売却益の運用など、総合的な資金計画をサポートする専門家です。
不動産の売却前に相談すれば、不動産を売却したあとのライフプランを計画しやすくなるでしょう。不動産を売却する際は、売却後の資金計画も考えることをおすすめします。
不動産の売却を相談する際のポイント

不動産の売却を相談する際の重要なポイントを5つまとめました。それぞれ詳しく見ていきましょう。
売却目的と希望条件を明確にする
不動産の売却目的と希望条件を明確にすれば、売却に関する基本的な戦略を立てやすくなるでしょう。資金調達を目的にしているなら、現金化のスピードが求められるため、売却金額を妥協してでも迅速に買い手を見つけたいところです。
不動産会社に相談する場合は、売却目的と希望条件を明確にすると、売却条件の優先度がわかり、スムーズに納得のいく形で売却しやすくなります。時間に余裕をもって売却できる場合は、納得のいく金額で売却できるまで買い手を探すこともできるでしょう。
不動産を売却する場合は、売却の目的と、それにともなう希望の条件を明確にするところから始めるようにしてください。
複数社に査定依頼して相場を把握する
不動産会社への相談は1社だけではなく、複数社でおこなうことをおすすめします。特に査定においては、売却価格が実際の相場と比較して妥当であるか判断できないことも。不動産会社ごとに基準となるデータが異なることから、提示額には幅が生まれるため、複数社に依頼して妥当な金額を探ることが重要です。
提示された価格が極端に高い不動産会社は、査定額と実際の相場にギャップがある可能性があることから、売買が成立しにくいため注意が必要です。一括査定サイトを利用すれば、売却価格の目安を効率的に判断できるようになります。しかし、物件によっては各社の査定額に大きな差があり、相場がわからないことも。
正確な査定金額を知るなら訪問査定が有効です。また、複数社の査定依頼は、実際に担当者と話すことで、不動産会社自体の信頼性を判断する材料にもなります。価格説明が論理的であるか、説明を聞いたうえで判断して、適切な不動産会社を選びましょう。
必要な相談内容を理解して相談先を選定する
売却にはさまざまな専門知識が必要になるため、相談内容を整理してから窓口を振り分けると効率的です。不動産の売却に関する総合的な相談先は、不動産会社です。抵当権抹消などの登記手続きは司法書士、確定申告などの税務相談は税理士など、必要な相談内容に対して適切な相談先を設定しましょう。不動産の売却において相談先がわからない場合は、全般的な相談ができる不動産会社が確実です。
確定申告の代行を司法書士に相談するなど、相談内容と相談先がずれていると、ほしい答えを得られません。相談内容に合わせて適切な相談先を選ぶようにしましょう。
相談時には必要な書類を用意する
不動産の売却を相談するなら、必要な書類を忘れずに持参しましょう。具体的には、登記事項証明書・建物の図面・測量図・固定資産税納税通知書などです。相談先から用意するように指定された書類があるなら、あわせて持ち込みましょう。
相談時に必要な書類をすべて提出すると、話がスムーズに進むでしょう。一方で、書類に不備があると相談先が情報不足を理由に、すぐに適切な提案ができずに時間がかかってしまうことも。相談において適切な意見をもらうためには、書類の用意を含めて準備が必要です。
売却後の資金計画と生活設計を考える
不動産を売却したあとの資金計画と生活設計を考えることも重要です。例えば、居住用の不動産を売却する場合は、売却後の居住先を考えなくてはなりません。住み替え先の物件の購入や仮住まい先を含めて検討する必要があります。
投資用の不動産の場合、売却で得た資金の活用方法は広いでしょう。例えば、別の不動産を購入して運用するケースや、ほかの投資方法を検討するケースも考えられます。
売却の相談だけではなく、売却後の未来を考えるならファイナンシャルプランナーに相談するようにしましょう。
まとめ
不動産売却に必要な相談先は数多く存在します。相談内容に応じて適切な相談先を選ぶことで、手間やリスクを最小限に抑えて、納得のいく売却が可能になります。
まずは、ご自身の売却目的と希望条件を明確にしたうえで、不動産会社に相談しましょう。そのうえで、必要に応じて司法書士、税理士など目的にあわせて複数の専門家に相談するようにしてください。
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執筆者
長谷川 賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
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