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不動産売却の詐欺の手口は?対策方法と相談先を含めて紹介

不動産売却の詐欺の手口は複数あります
不動産売却には、複数の詐欺事例が存在しています。国民生活センターによると、2023年度の賃貸アパート・マンションに関する相談件数は3万件を超えており、全体で3番目に多い相談内容でした。不動産を取引する際に、詐欺・トラブルに巻き込まれる可能性は十分にあり、誰にとっても他人事ではありません。

本記事では不動産売却の詐欺の手口を紹介し、詐欺を防ぐ対策と、被害に遭ってしまった場合の相談先を解説します。記事を読むことで、不動産売却で詐欺の手口への理解が深まり、詐欺被害を未然に防ぎやすくなるでしょう。

不動産売却の詐欺の手口

不動産売却の詐欺の手口を紹介します
不動産売却の詐欺の手口を紹介します

不動産売却の代表的な詐欺の手口は、売主の不安や知識不足を巧みに突くものばかりです。基本的には悪質な不動産会社から仕向けられるケースが多いですが、買主・売主が持ちかけるケースもあります。詐欺被害を防ぐためには、事前に有名な手口を知っておくことが有効です。代表的な不動産売却の詐欺の手口を以下にまとめました。それぞれ詳しく見ていきましょう。

売却価格の過大評価後の価格引き下げ

悪質な不動産会社のなかには、媒介契約を締結するために、市場価格を大幅に上回る査定額を提示することがあります。知識のない売主は、売却価格を高く評価した不動産会社と判断して、契約を結ぶかもしれません。

しかし、不動産会社が高価格を提示したとしても、市場価格を大幅に上回るのであれば、買い手は見つかりません。実際には売れる見込みのない価格を提示したことになります。最終的には売れなかったことを理由に、売却価格を下げるように提案してくるでしょう。

これは、媒介契約の件数を増やしたい不動産会社がおこなう手口です。より悪質な場合は、売れないことを説明したうえで、相場よりも安い価格で不動産を買い取る提案をされるかもしれません。売主が売却価格の相場を理解していなければ、悪質な不動産会社の手口にかかる可能性が高くなります。

不当な手数料の請求

不動産の売却の仲介を依頼する際に、請求される費用が仲介手数料です。仲介手数料は次の計算式によって法定上限が定められています。

売却価格の3%+6万円 +消費税

悪質な不動産会社の場合は、仲介手数料以外にも不当な形でさまざまな手数料を請求することも。例えば、広告の作成・掲載をして買主を募集した際にかかった費用を特別広告手数料、交通など不動産の仲介業務で必要になった費用全般を諸経費手数料の名目で、仲介手数料とは別に徴収されることが考えられます。そもそも売主が負担する必要がない仲介業務と直接関係のない事務作業などの手数料を請求されるケースも。

仲介業務をおこなうにあたって発生した費用は、通常の仲介業務を大きく逸脱しない限りは仲介手数料に含まれます。仲介手数料に含まれるべき費用を合計し、法定上限を超える場合は不当な請求といえるでしょう。理由をつけてさまざまな名目で手数料を請求する不動産会社には、注意が必要です。

囲い込み詐欺

囲い込み詐欺は、専任媒介契約を結んだ不動産会社が意図的に不動産を他社に紹介せず、自社内で買主を囲い込み売却を進める手法です。不動産会社は売主・買主の両方から、仲介手数料を受け取る両手取引を狙えます。

なかには相場よりも極端に低い価格で、自社グループ会社に買い取りを斡旋するケースも。囲い込みは詐欺にあたりますが、囲い込みを引き起こす原因となる両手取引は、日本では禁止されていません。そのため、囲い込みの規制は現行の法律では難しく、売主自身が気を付けて対処する必要があります。

手付金の持ち逃げ

手付金は売買契約時に買主が支払います。しかし、悪質な不動産会社は、買主から手付金を受け取ったあとに連絡を絶つことも。その後の連絡が一切取れなくなり、手付金を取り戻せなくなります。

所在地や連絡先が公開されている正規の不動産会社に依頼した場合は、同様の被害に遭うことは考えにくいです。しかし、行政庁から宅建業免許を取得しておらず、公開している所在地も嘘である不動産会社は、悪質な詐欺をおこなう可能性が非常に高いでしょう。

買主による小切手詐欺

小切手詐欺は代金を支払う買主が、無効な小切手で代金支払いをおこなう詐欺です。詐欺師は小切手を現金化する前に姿をくらますため、無効であるとわかった段階では、売却代金を回収できなくなることも。売主は売却代金を回収できずに、不動産の所有権も失い、大きな損失を被ります。

不動産売却の詐欺被害を防ぐ対策方法

不動産売却の詐欺被害を防ぐ対策方法を紹介します
不動産売却の詐欺被害を防ぐ対策方法を紹介します

手口を踏まえたうえで、不動産売却の詐欺被害を防ぐ対策方法を5つ紹介します。詳しく見ていきましょう。

売却価格の相場を事前に把握する

提示された売却価格が市場の相場とかけ離れている場合は、売却価格の相場を事前に把握すれば見破れるでしょう。不動産会社を利用せずに、不動産の売却価格の相場を知る方法は、国土交通省が公開する「不動産情報ライブラリ」を利用する方法が挙げられます。

不動産情報ライブラリでは、不動産の取引価格・地価公示などの価格情報を調べられるため、客観的な数値から相場を把握できるでしょう。不動産会社の査定価格から相場を把握する場合は、一括査定を利用して複数の不動産会社の査定価格を比較すれば、平均的な売り出し価格がわかります。

相場を把握した時点で、極端に高い価格を提示している悪質な不動産会社がわかるため、契約する前に見破ることができるでしょう。

レインズなどのデータベースを確認する

レインズは、不動産会社のみが登録・閲覧できる業界共通データベースです。売却依頼した物件がレインズに登録されているかどうかは、不動産会社に相談すれば確認できます。レインズのスクリーンショットの提示を求めるなど、証拠を用意してもらうことで、囲い込みのための情報隠しをおこなっていないことを確認できるでしょう。

また、悪質な不動産会社を見極めたい場合は、国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」を利用します。不動産会社の過去の行政処分歴を検索できるため、詐欺行為を働く悪質な取引先と契約するリスクを減らせるでしょう。

専門家とともに契約書を確認する

不動産売却の詐欺を防ぐには、契約書の内容の精査が重要です。しかし、専門知識のない方が問題のある契約を見破ることは難しいかもしれません。弁護士などの法律の専門家にリーガルチェックを依頼すれば、不当な契約を結ぶことを防げます。契約書の内容に少しでも違和感を覚えた場合は、必ず専門家の意見を聞いてから契約するようにしましょう。

代金の支払い方法とタイミングを確認する

小切手詐欺を防ぐなら、代金の支払いを現金・銀行振込にすることを推奨します。銀行に相談すれば、現金を取引するためのスペースを提供してもらえるため、大金を取引する場合でも安全でしょう。

また、不動産登記は代金支払いと同時におこなうことが、詐欺を防ぐことにつながります。なぜなら売主が先に登記をおこない、買主が代金を支払わないことを防げるからです。代金の支払い方法とタイミングを適切なものにすれば、買主側の詐欺行為を防ぐことができるでしょう。

一般媒介契約を利用する

囲い込みは、不動産の媒介契約の方法によってリスクが異なります。媒介契約の方法の種類は以下のとおりです。

契約形態 複数社への依頼 自己発見取引 活動報告義務
一般媒介契約 任意
専任媒介契約 × 2週間に
1回以上
専属専任媒介契約 × × 1週間に
1回以上

専任媒介契約・専属専任媒介契約は、複数社に仲介を依頼できない契約であるため、囲い込みが起きやすいです。しかし、一般媒介契約であれば複数社に依頼できるため、囲い込みのリスクは減少します。

ただし、活動報告義務が任意になるため、依頼する不動産会社に定期的に連絡を取り、仲介業務の現状を確認する必要があるでしょう。他の契約方法と比較して、一般媒介契約が必ずしも優れているわけではありません。しかし、囲い込みを防ぐことを重視するなら効果的です。

不動産売却の詐欺被害に遭った場合の相談先

不動産売却の詐欺被害に遭った場合の相談先を紹介します
不動産売却の詐欺被害に遭った場合の相談先を紹介します

万が一、不動産売却で詐欺被害に遭った場合、候補となる相談先・連絡先・受付時間を以下にまとめました。

相談先 連絡先 受付時間
国民生活センター・
消費生活センター
共通ダイヤル
「188」
9:00~17:00
(月~金)
宅地建物取引業協会 都道府県ごとに
異なる
都道府県ごとに
異なる
法テラス 0570-078374 9:00~21:00
(月~金)
9:00~17:00
(土)
警察相談専用電話 「#9110」 各都道府県警察の
運用状況による

それぞれ詳しく見ていきましょう。

国民生活センター・消費生活センター

国民生活センターは、消費者庁が所管する独立行政法人です。消費生活センターと連携しながら消費者トラブル全般の相談を受け付けており、不動産売却に関わる詐欺全般の相談にも対応。例えば、架空業者と契約してしまい、手付金を持ち逃げされた場合は国民生活センターに相談しましょう。

相談方法は、全国の消費生活センターに直接相談するか、全国共通ダイヤル「188」で最寄りの窓口につながります。

宅地建物取引業協会

宅地建物取引業協会は、不動産会社が加入する公益社団法人の全国組織です。不動産取引に関する苦情や相談を取り扱います。仲介を依頼した不動産会社とトラブルに発展した場合や、不正を疑われる行為を確認した場合は、宅地建物取引業協会に相談しましょう。

各都道府県にある宅地建物取引業協会の窓口への訪問、または電話にて相談します。受付時間は各都道府県で異なり、昼の時間帯は受け付けていないケースも。事前に調べておきましょう。

法テラス

法テラスは、法的トラブル全般に関して無料相談を実施し、必要があれば弁護士・司法書士の紹介をおこなう公的機関です。不動産の売却で損害賠償請求を検討している場合や、訴訟を相談したい場合は、法テラスへの相談が適切になります。

法テラスは各都道府県に複数の窓口を持ち、電話でも無料相談を受けられます。平日は21時まで受け付けているため、遅い時間帯にも相談しやすいでしょう。

警察相談専用電話(#9110)

警察相談専用電話の「#9110」は、詐欺被害や不審商法に関する専門窓口として設置されています。不動産売却の詐欺被害を警察に相談したい場合は、適切な相談窓口になるでしょう。

全国どこでも「#9110」でダイヤルすればつながります。ただし、不動産売却の詐欺から緊急を要する犯罪被害に巻き込まれた場合は、#9110ではなく110番を利用しましょう。

まとめ

不動産売却における代表的な詐欺の手口を紹介しました。個人を標的とする詐欺の多くは、売主の知識不足を突くものです。そのため、十分な対策を講じれば、多くの詐欺を未然に防げるでしょう。

万が一、詐欺被害に遭ってしまった場合は、適切な相談先に早めに相談することを心がけましょう。対応が早いほど、事態を悪化させることを防ぎやすくなります。詐欺被害を未然に防ぐ方法を理解し、適切な相談先を知ることで、安心して不動産を売却できるでしょう。

長谷川 賢努

執筆者

長谷川 賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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