相続した土地の売却と税金の完全ガイド|節税対策から手続きの流れまで

この記事では、相続した土地の売却にかかる税金の種類や計算方法、節税に活用できる特例、売却までの具体的な流れを初心者の方にもわかりやすく解説します。相続した土地の売却を検討している方は、ぜひこの記事を参考にして、正しい知識と準備で安心して売却を進めてください。
記事の目次
相続した土地を売却した場合にかかる税金

相続によって取得した土地を売却する際には、いくつかの税金が発生します。まずはどのような税金がかかるのかを知っておくことが大切です。それぞれどのような税金なのかを詳しく解説します。
登録免許税
最初に発生する税金が登録免許税です。これは、相続によって名義変更をおこなう際に必要な税金で、法務局で登記手続きをする際に支払います。
土地を相続した場合は、名義を自分の名義に変更しなければなりません。この時、以下の計算式で登録免許税が算出されます。
登録免許税 = 固定資産税評価額 × 0.4%
上記の「固定資産税評価額」とは、毎年市区町村から送付される固定資産税納税通知書に記載されている「価格」のことを指します。相続を理由とした所有権移転登記の場合、税率は0.4%に定められています。
例えば、固定資産税評価額が1,000万円だった場合の登録免許税は、以下のとおり。
1,000万円 × 0.4% = 4万円
このように、土地を売却する前段階で、まずは登録免許税が必要になる点を押さえておきましょう。
印紙税
土地を売却する段階では、売買契約書の作成が必要です。この契約書に対してかかる税金が印紙税です。売買契約書は「課税文書」に該当するため、法律で定められた金額の収入印紙を貼付しなければなりません。印紙税の金額は、売買契約書に記載される売買代金の金額によって異なります。
以下に、売買金額ごとの印紙税額を表にまとめます。なお、2027年3月31日までは軽減措置が適用されます。(2025年6月時点)
売買金額 | 通常税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
50万円超100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
金額の記載がない場合 | 200円 | 200円 |
例えば、3,000万円で土地を売却する場合、印紙税は2万円となります。印紙税は、売主と買主がそれぞれの負担割合を取り決めることもありますが、売主側が用意するケースが一般的です。
譲渡所得に対する所得税・復興特別所得税・住民税
土地の売却によって利益(譲渡所得)が発生した場合にも、以下の3種類の税金が課されます。
- 所得税
- 復興特別所得税
- 住民税
「譲渡所得」とは、売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いた利益のことです。この利益部分に対して、税金が課せられる仕組み。なお、所得税および復興特別所得税・住民税に関する計算方法はやや複雑で、適用される税率も土地の保有期間やその他の条件によって異なります。
例えば、土地の保有期間が5年以下の短期譲渡所得と、5年超の長期譲渡所得では税率が異なります。さらに、相続の場合は取得費加算の特例などの制度も活用できる場合も。詳しい計算方法や税率に関しては、次章で詳しくご紹介します。
相続した土地を売却した際の譲渡所得税|計算方法とポイント解説

相続した土地を売却する際に発生する譲渡所得税は、以下の計算式で求めます。
課税譲渡所得金額 = 収入金額 -(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額
譲渡所得税額 = 課税譲渡所得金額 × 税率
それでは、各項目の内容を詳しく見ていきましょう。
収入金額とは
収入金額とは、土地の売却によって買主から受け取る金額のことです。売却代金が現金で支払われる場合は、その金額がそのまま収入金額となります。もし、金銭以外の物品や権利と引き換えに土地を譲渡した場合は、それらの時価相当額が収入金額として扱われます。
取得費とは
取得費は、売却した土地を取得するためにかかった費用のことを指します。取得費としては、次のような支出が該当します。
- 購入時の土地代金や手数料
- 土地の購入時または相続時に納付した登録免許税・登記費用・不動産取得税・印紙税など
- 借地権付き土地や建物付き土地の購入時に支払った立退料
- 土地の埋立てや土盛り、整地などの造成費用
- 土地の取得時の測量費用
- 所有権確保のための訴訟費用
(※相続争いに関連する訴訟費用は除く) - 建物付き土地購入後、建物を解体する予定で購入した場合の建物取得費用+解体費用
- 土地購入資金の借入れにともなう借入利子の一部
- 他の購入契約解除にともなう違約金
また、相続した土地の場合、被相続人が支払った取得費を引き継いでの計算が可能です。もし、取得費に関する資料が残っておらず、金額が不明な場合は、「収入金額×5%」の簡易計算方式を適用することも認められています。
譲渡費用とは
譲渡費用とは、土地を売却するために直接かかった費用のことです。主な例は以下のとおりです。
- 土地売却時の仲介手数料
- 売却に関する印紙税
- 土地売却のために建物を取り壊した場合の解体費用および建物の損失額
- すでに契約済みの資産をより有利な条件で売却するための違約金
一方、以下のような費用は譲渡費用には含められません。
- 固定資産税などの維持管理費
- 売却代金の回収費用
これらは直接的に土地の譲渡のために要した費用とはみなされないため、注意が必要です。
特別控除額とは
譲渡所得税の計算では、さまざまな特別控除が適用される場合があります。特別控除とは、要件を満たすことで実際の支出がなくても譲渡所得から差し引ける控除額のことです。相続した土地の売却に際して利用できる主な特別控除には、以下のものがあります。
- 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除
- 被相続人の居住用財産(空き家)売却時の3,000万円特別控除
- 農地保有の合理化などのために譲渡した場合の800万円特別控除
- 低未利用土地等を譲渡した場合の100万円特別控除(長期譲渡所得対象)
それぞれの特例には細かな要件が設けられているため、適用できるかどうかは税理士などの専門家に確認するようにしましょう。
譲渡所得税の税率
最後に、譲渡所得税の税率を解説します。税率は土地の所有期間によって「短期」と「長期」の2段階に分けられており、所有期間の判定は、売却した年の1月1日時点での保有期間に基づきます。
相続した土地の場合、被相続人の所有期間を引き継ぐことが認められているため、相続直後に売却しても被相続人の保有年数が5年超であれば長期譲渡所得扱いが可能です。
所有期間 | 所得税 | 復興特別 所得税 |
住民税 | 合計税率 |
---|---|---|---|---|
5年超(長期譲渡所得) | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
5年以下(短期譲渡所得) | 30% | 0.63% | 9% | 39.63% |
※復興特別所得税は2037年12月31日まで課されます。
相続した土地を長期譲渡所得として扱えれば、税率が大幅に下がり、税負担を抑えられるメリットがあります。
確定申告は必要なのか?
相続した土地の売却後には、確定申告が必要になるケースがあります。確定申告をしなければ、税金の申告漏れなどのトラブルにつながりかねないため、正しい知識を持っておきましょう。
相続した土地の売却にともなう確定申告は、売却した翌年の2月16日から3月15日までの間におこないます。ただし、年度によって申告期間が若干変わることがあるため、国税庁のホームページなどで最新情報を確認しましょう。
また、以下のような場合には、確定申告が必須です。
- 譲渡所得が発生し、税金が発生する場合
- 各種特例を利用する場合(税金がゼロになる場合でも申告は必要)
仮に節税の特例(例えば3,000万円特別控除など)を利用して最終的に納税額がゼロになった場合でも、申告は必須です。特例の適用は確定申告で正式におこなう必要があるため、申告を忘れると特例が使えません。
一方で、譲渡所得がゼロ、またはマイナスとなった場合は税金が発生しません。この場合は、確定申告自体が不要となります。仮に赤字の場合でも、税務署に何かを届け出る必要は特にないため、そのままで問題ありません。
相続した土地の売却時に活用できる3年以内の節税特例

相続した土地を売却したものの、「今からでも節税対策ができないだろうか」と考えている方は少なくありません。特に相続後の土地売却に関しては、期限付きの特例制度を活用することで、税負担を軽減できる場合があります。ここからは、相続から3年以内に適用できる代表的な節税特例を詳しくご紹介します。
空き家を解体して売却する場合の「3,000万円特別控除」
1つ目は、相続した空き家の売却時に利用できる 3,000万円特別控除 です。これは空き家を解体したうえで土地を売却した場合に適用できる特例で、譲渡所得から3,000万円を控除できる大きなメリットがあります。
「3,000万円特別控除」の適用を受ける場合、譲渡所得は次のように計算します。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 3,000万円
3,000万円特別控除が適用できる土地は、被相続人が生前に住んでいた家屋の敷地で、かつ、一定の要件を満たしていなければなりません。解体前の家屋は、以下の要件すべてを満たしている必要があります。
- 相続開始直前に被相続人の居住用として使われていた家屋であること
- 1981年5月31日以前に建築された家屋であること
- マンションなど区分所有建築物ではないこと
- 相続開始直前に被相続人以外の方が住んでいなかったこと
- 相続から譲渡までの間に、その家屋が事業用・賃貸用・居住用として使われていないこと
さらに、家屋を取り壊したあとの土地に関しても、次の条件を満たさなければなりません。
- 解体前の家屋が相続から解体までの間に事業用・賃貸用・居住用として使われていないこと
- 土地も相続開始から譲渡時までの間に事業用・賃貸用・居住用として使われていないこと
このように、土地が一時的に事業や賃貸などで使われていた場合(例:駐車場経営など)は、特例の対象外となります。 更地のまま売却することが前提となるため、注意しましょう。3,000万円特別控除が適用されるには、相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却をおこなう必要があります。
例えば、2020年1月2日〜2021年1月1日の間に発生した相続で、2023年12月31日までに売却を完了していれば、この特例が適用可能となります。
また、この特例は法改正により期限が設けられており、2027年12月31日までの売却が対象となっています。今後、制度が変更される可能性もあるため、最新情報は確認しておきましょう。詳しい要件や最新情報は、国税庁のホームページをご確認ください。
相続税の納税者が活用できる「取得費加算の特例」
2つ目は、取得費加算の特例です。相続した土地を売却する際、相続税を納めた方で一定の期間内に売却をおこなうと、この特例を活用できます。取得費加算の特例を利用すると、納めた相続税の一部を取得費に加算できるため、譲渡所得が少なく計算され、その結果、課税される税額が抑えられる仕組みとなっています。
取得費加算の特例を適用した際の譲渡所得を求める計算式は次のとおり。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 取得費に加算する相続税額 - 譲渡費用
なお、取得費に加算できる相続税額は、以下の計算式で求めます。
その者の相続税額 × (譲渡した財産の価額 ÷(課税価格+債務控除額))
また、取得費加算の特例を利用するには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 相続や遺贈によって財産を取得していること
- その相続財産に対して相続税が課税されていること
- 相続開始日の翌日から相続税の申告期限の翌日以降3年以内に不動産を売却していること
さらに、相続税の申告期限は、「相続開始を知った日の翌日から10カ月以内」と定められています。そのため、取得費加算の特例は、相続開始の翌日から 3年10カ月以内に売却を完了すれば利用可能となります。
ただし、相続税を納めていない場合(課税義務がない場合)は利用できません。国税庁の「令和5年分 相続税の申告事績の概要」によると、相続税の課税対象になった方は全体の約9%にとどまるため、約91%の方は対象外となります。適用できる期間が明確に限られているため、早めに売却計画を立てることが重要です。
相続した土地の売却時に活用できる節税方法

ここからは、期限にとらわれず、いつでも取り組める節税策をご紹介します。相続した土地を売却する際にうまく活用すれば、大きな節税効果が得られることもあります。
取得費がわかる資料を集める
相続した土地の売却で税額が高額になってしまう大きな原因は、土地の取得費が不明な場合が多いからです。取得費がわからない場合、収入金額の5%として譲渡所得が大きく計算され、課税額も増えてしまいます。そのため、まずは取得費に関する資料を可能な限り探し出すことが、効果的な節税につながります。
もし、購入当時の売買契約書が手元にない場合でも、取得費が推測できる資料が残っている可能性があるため、以下がわかる書類がないかを確認してみてください。
- 不動産会社や売主から購入時の売買契約書のコピー
- 通帳の入出金履歴(購入額から推測できる)
- 住宅ローンの契約書(当時の借入額から推測できる)
- 抵当権設定額(購入価格を推測できる)
- 市街地価格指数から当時の価格水準(当時の価格水準を参考に推測できる)
これらの資料が入手できた場合は、税務署に個別相談し、取得費として認められるかを事前に確認するとおすすめです。なお、取得費に含めることができるものは購入額そのものだけではありません。特に、相続した土地を売却する場合は、被相続人(元の所有者)の取得費を引き継ぐ形になります。残されている資料をしっかり確認し、漏れなく取得費に計上することで、節税効果を高められます。
譲渡費用を漏れなく計上する
譲渡費用を適切に計上することも、税負担を減らす有効な手段です。譲渡費用として認められる支出は、以下のようなものがあります。
- 仲介手数料(売却時に不動産会社へ支払った手数料)
- 印紙税(売買契約書に貼付した印紙代)
- 広告費(売却活動をおこなった際の広告費用)
- 測量費用(売却のためにおこなった測量費用)
- 鑑定料(売却に際して不動産鑑定を依頼した際の費用)
- 借家人の立退料(売却のために支払った場合の費用)
- 買主の登記費用を売主が負担した場合の費用
- 建物の取り壊し費用(売却のために土地を更地にした場合の費用)
- 売却のためにおこなった建物の補修費
- 買主との交渉にかかった交通費・通信費
- 借地権売却時に地主に支払った名義書換料など
一方で、以下のような費用は譲渡費用には該当しません。
- 抵当権抹消費用
- 遺産分割協議に関する費用
- 移転先の家の購入費や引越し費用
- 土地の維持管理費
- 通常の引越し代
判断が難しいケースもあるため、不明な場合は税務署で事前に確認することをおすすめします。
平成21年・22年取得土地の1,000万円特別控除
もし相続した土地が2009(平成21)年または2010(平成22)年中に取得されたものであれば、「1,000万円特別控除」を活用できる可能性があります。この特例を利用すると、譲渡所得から1,000万円を控除できます。計算式は以下のとおりです。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 1,000万円
また、主な適用要件は以下のとおり。
- 個人が2009年1月1日~2010年12月31日の間に取得した国内の土地であること
- 売却時点でその土地の所有期間が5年超であること
例えば、2009年に取得した土地は、2015年1月1日以降、2010年に取得した土地は2016年1月1日以降の売却で適用可能となります。この特例は、相続税の納税の有無や譲渡時期の制限がないため、条件に当てはまれば誰でも利用できます。親がたまたまこの期間中に購入していた土地が相続財産に含まれていた場合、大きな節税効果が見込めるでしょう。まずは売買契約書を確認し、購入日が該当するかを確認してみてください。
低未利用土地等の100万円特別控除
土地の売却価格が500万円以下である場合には、「低未利用土地等の100万円特別控除」の制度を利用できる可能性があります。この特例により、譲渡所得から100万円が控除されます。計算式は以下のとおり。
譲渡所得 = 譲渡価額 - 取得費 - 譲渡費用 - 100万円
また、適用条件は以下のとおりです。
- 譲渡した者が個人であること
- 譲渡年の1月1日時点で所有期間が5年超であること
- 譲渡価額の合計が500万円以内であること
- 譲渡対象地が都市計画区域内にあること
- 市区町村長から、その土地が「低未利用土地等」かつ「譲渡後の利用計画が適正」である旨の確認を受けていること
また、相続税の納税義務の有無や、相続後の期間制限なども一切ありません。要件さえ満たせば、誰でも利用できる特例のため、該当する場合は積極的に活用しましょう。
ふるさと納税を活用する
相続した土地の売却で譲渡所得が発生した場合、所得税・住民税の課税対象となります。この場合、ふるさと納税を活用すると節税できるケースがあります。ふるさと納税は、自治体に寄附することで翌年の住民税の控除や所得税の還付が受けられる制度のこと。実質自己負担額は2,000円のみで、寄附した自治体から返礼品も受け取れるため、とても人気があります。
また、ふるさと納税には控除の上限額があり、この上限は所得が高くなるほど拡大します。土地の売却により譲渡所得が発生した年は、この控除上限額が通常よりも高くなるため、より多くの寄附が可能に。普段あまり意識していなかった自治体に寄附をするきっかけにもなるため、売却益が出た年は積極的に検討してみましょう。
相続した土地を売却する手順

相続した土地を売却する場合、基本的な進め方は以下のような流れとなります。
- STEP 1相続登記をおこなう
- STEP 2不動産会社に査定を依頼する
- STEP 3売却依頼する不動産会社を選定する
- STEP 4不動産会社との媒介契約を締結する
- STEP 5土地を売りに出す
- STEP 6売買契約を締結する
- STEP 7土地を引き渡す
- STEP 8確定申告(税金の申告)をする
それぞれの流れを詳しく見ていきましょう。
ステップ1.相続登記をおこなう
土地が故人名義のままでは売却手続きを進められません。まずは相続登記をおこない、所有名義を相続人名義に変更しておく必要があります。相続登記の手続きには、遺産分割協議をはじめとした事前準備が欠かせません。必要書類を収集・作成するなどの工程があるため、スムーズに話し合いがまとまった場合でも、登記完了まで1〜2カ月は見込んでおくとよいでしょう。
ステップ2.不動産会社に査定を依頼する
遺産分割の目処が立った段階で、不動産会社に土地の査定を依頼しましょう。査定では、対象の土地がどのくらいの価格で売れる見込みがあるのかを見積もってもらうことができます。1社のみの査定ではなく、複数の会社へ依頼することがポイント。不動産会社ごとに査定額が異なるケースはよくあるため、比較検討が重要です。また、査定結果をもとに税理士などの専門家に相談し、税金面での試算もあらかじめ把握しておきましょう。
ステップ3.売却依頼する不動産会社を選定する
査定結果を踏まえて、どの不動産会社に売却依頼をするかを決定します。選定時は査定額の高さだけで判断せず、査定根拠の説明内容や担当者の対応、提供されるアドバイスの質などを総合的に考慮することが重要です。査定額は予想価格であり、必ずしもその金額で売却できる保証はありません。
ステップ4.不動産会社との媒介契約を締結する
売却を依頼する不動産会社が決まったら、媒介契約を締結します。媒介契約には以下の3種類があるため、自身の希望に応じて選びましょう。
媒介契約の種類 | 他社への重ね依頼 | 自己発見取引 | レインズ登録義務 | 報告 頻度 |
---|---|---|---|---|
専属専任 媒介契約 |
不可 | 不可 | 5営業日 以内 |
週1回以上 |
専任 媒介契約 |
不可 | 可 | 7営業日 以内 |
2週1回 以上 |
一般 媒介契約 |
可 | 可 | 義務なし | 指定なし |
ステップ5.土地を売りに出す
媒介契約が整ったら、いよいよ土地を市場に出します。販売活動は基本的に依頼した不動産会社が担当し、広告掲載や購入希望者への案内などをおこないます。
ステップ6.売買契約を締結する
買い手が現れ、土地の購入意思が固まったら売買契約を結びます。契約時には通常、手付金が買主から支払われます。手付金の相場は、売買価格の5〜10%程度が一般的です。
ステップ7.土地を引き渡す
決済日に土地の引き渡しをおこないます。引き渡し日には、以下のような手続きがおこなわれることが一般的です。
- 名義変更用書類への署名・押印(売主側)
- 買主のローン実行
- 売買代金(手付金差引後)の受領
引き渡し後は、司法書士が名義変更登記を申請し、正式に土地の所有権が買主へ移転します。
ステップ8.確定申告(税金の申告)をする
相続した土地を売却して利益が発生した場合、その年の翌年2月16日〜3月15日の間に確定申告が必要です。仮に、特別控除の適用などにより税金が発生しない場合でも、確定申告は忘れずにおこないましょう。
相続した土地を売却する際の注意点

相続した土地の売却時には、以下の点にも注意が必要です。
故人名義のままでは売却できない
故人名義の土地は売却手続きをおこなうことができません。まずは相続登記を完了させ、相続人名義への変更を済ませておく必要があります。
小規模宅地等の特例に注意する
小規模宅地等の特例を適用する場合、土地は相続税の申告期限まで保有していることが条件です。申告前に売却してしまうと特例が使えなくなり、結果的に相続税の負担が増えてしまう可能性があります。このようなケースでは、事前に税理士に相談しておくことをおすすめします。
売却を急ぎすぎない
相続税の支払い目的などで急いで売却したい場合もありますが、焦りは禁物です。相続税の申告・納税期限は相続開始を知った翌日から10カ月以内と定められています。遺産分割協議や登記準備に意外と時間がかかるため、売却期間がタイトになりがちです。しかし、急いで売却しようとすると、買い叩かれるリスクも高まるため、余裕のある資金計画を心がけましょう。
売れにくい場合は不動産買取を検討する
土地がなかなか売れない場合は、不動産買取の選択肢もあります。不動産会社に直接買い取ってもらう方法であり、スピーディーに現金化できる点が大きなメリットです。ただし、一般市場での売却価格よりも7〜8割程度の価格になることが多いため、その点は理解しておきましょう。
まとめ
相続した土地の売却は、相続登記・税金申告・売却手続きと複雑な工程が多く、事前にしっかりとした知識と準備が大切です。特に税金面では、小規模宅地等の特例や各種控除を上手に活用することで、納税額を大きく抑えることも可能です。
一方で、スケジュールに追われて焦って売却してしまうと、土地を相場より安く手放してしまったり、余計な税金を支払うリスクもあります。今回ご紹介した流れや注意点を参考に、税理士や不動産会社と連携しながら納得できる形で土地の売却を進めましょう。
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執筆者
民辻 伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
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