相続した不動産の評価額の調べ方は?建物と土地別の計算方法をわかりやすく解説

この記事では、相続した不動産の評価額を算出すべき理由と計算方法を解説します。また、土地評価額を下げられる特例も紹介します。記事を読めば、相続税の納税額や支払い負担を抑える方法まで把握できるため、ぜひご一読ください。
記事の目次
相続した不動産の評価額を計算しなければならない理由

相続した不動産の相続税を支払う前に、「不動産の評価額」を計算しなければならないのはなぜでしょうか?評価額と相続税の関係がわかれば、計算が必要かを判断できます。ここではまず、不動産の評価額を計算しなければならない理由を解説します。
相続した不動産の価値を知るため
相続した不動産の価値を知れば、不動産を売却するか、賃貸に出すかなどを判断できます。不動産の価値は年々変化します。建物は築年数が古くなるにつれて価値が下がるため、何年も放置する前に売却したほうが、利益が得られる可能性が高くなります。また、建物が非常に古い場合などは、更地にした方が高く売れるケースも。相続した不動産を売却しようと考えている場合は、事前に不動産の価値を調べたうえで対応を検討するとよいでしょう。
一方、不動産を賃貸に出した方が大きなメリットとなる場合もあります。家賃収入が得られるだけでなく、固定資産税などの節税対策としても有効です。不動産に思わぬ価値が潜んでいる可能性もあるため、今後の使い道を決めるためにも、不動産の価値を知ることが大切です。
建物や土地評価によって相続税が発生するかを自分で把握するため
不動産の価値によっては「相続税」が発生します。不動産の評価額を把握しておき、相続税がどのくらいかかるのかを事前に確認しておけば、納税の準備をすることができるでしょう。相続税は、相続した財産に課せられる税金です。相続税には基礎控除があり、控除額が相続財産を上回る場合は税金の申告もせずに済みます。
基礎控除は3,000万円+(法定相続人の数×600万円)から算出される額です。法定相続人が多いほど基礎控除額も増えるため、場合によっては相続税を支払わずに、被相続人(亡くなった人)の遺産を受け取れるでしょう。
ただし、基礎控除額が多いからといって、不動産の評価額の計算もせずに放置してはいけません。あまり価値がないと思っていた財産が、基礎控除額を上回る価値を持っている可能性もあるからです。価値の高い財産を相続したにも関わらず、無申告のままだとペナルティが課されるため、注意しましょう。
評価額を算出しておけば、相続税の有無を把握できます。納税を遅らせずに済むため、何らかの遺産を受け取ったのであれば、評価額を計算しておきましょう。
貸家の場合は評価額が減額される可能性が高い
相続する建物を貸家として使用していた場合、被相続人の居住用に比べて評価額が下がります。貸家は借地権や借家権などの権利関係が発生し、相続税評価額から3割ほど減額されるからです。
ただし、貸家だからといってすべてが減額されるわけではありません。土地を駐車場として経営していた、またはお金をもらわずに知人に貸していた場合は減額対象から外れるため、評価額が下がらず、通常の評価額が課税対象になります。
なお、評価額が減額されることは、相続したあとに売却する予定の方にとっては大きなデメリットになるでしょう。評価額が減額された状態だと、売値も通常より下がってしまいます。約3割分が減額された売値だと利益の多くを失ってしまうため、被相続人がどのように使っていたかを必ず確認しましょう。
被相続人の利用方法に応じて、相続した土地を活用するか売却するかを慎重に判断することがおすすめです。
建物の相続税評価額の計算方法

では、相続した不動産の評価額はどのように確認すればよいのでしょうか?まず、建物の評価額の確認方法から説明します。建物の相続税評価額の確認方法はとても簡単です。誰でもすぐに調べられるため、実際に調べてみてくださいね。
建物の相続税評価額の確認方法
建物の相続税評価額は、固定資産税の納付書に記載されています。毎年5月か、4期に分割して支払う固定資産税は、行政が算出する「固定資産税評価額」に基づいて税額が決まります。固定資産税評価額が相続税評価額となるため、納付書に記載されている金額を確認すれば、建物の評価額を把握できるでしょう。
一点注意したいのが、固定資産税評価額は3年に一度見直しがおこなわれる点です。3年以上前の納付書だと、見直しがおこなわれて価格が変わっている可能性があるため、一番新しい納付書をチェックしましょう。
なお、建物の固定資産税評価額は、建築費の50~60%とされています。建築費を調べて算出する必要はないですが、予備知識として覚えておくことがおすすめです。
土地の相続税評価額の計算方法

次に、土地の評価額の計算方法を説明します。
土地の評価額を算出する方法には、「路線価方式」と「倍率方式」があります。日本全国の土地には、1平方メートルあたりの価額が定められている場所と、定められていない場所があります。定められている場所は路線価方式で、定められていない場所は倍率方式で評価額を算出することが可能です。
それぞれの方式を詳しく解説します。
路線価方式による計算方法
路線価方式は、国が定めた道路の価額に土地の面積をかけて評価額を算出する方法です。路線価は、「国税庁のホームページ」で確認できます。住んでいる場所を検索すると、土地に面している道路に数字が記載されているため、数字をチェックしておきましょう。
例えば「180」と書かれていれば道路に面する土地の路線価は18万円、「200」と書かれていれば道路に面する土地の路線価は20万円になります。数字は1,000円単位で記載されているため、金額を間違えないよう注意しましょう。
路線価方式で計算する際に必要な情報は以下のとおりです。
情報名 | 掲載先 |
---|---|
土地の所有面積 | 固定資産税の納税通知書 |
土地の持分割合 | 登記簿謄本 |
路線価 | 国税庁のサイト |
前述したように、路線価は国税庁のホームページから自身で調べなければなりません。所有する土地に面する道路に路線価が設定されているかを確認し、設定されている場合は価額をメモしておきましょう。
計算に必要な土地の所有面積は、毎年春頃に届く固定資産税の「納税通知書」から確認できます。納税通知書は紛失しても再発行できないため、失くさないよう注意が必要です。
不動産を相続した場合、ほかの相続人と共同で所有しているケースもあるでしょう。ほかの人と共有している土地の評価額を確認するには、自身の持分割合を確認しなければなりません。持分割合は登記簿謄本から確認できるため、法務局で取得しましょう。
必要な情報がそろったら、以下の計算式で評価額を算出します。
土地評価額=土地の所有面積(平方メートル)×持分割合×路線価
土地全体が自身のものである場合は、土地の所有面積×路線価で計算しましょう。
例えば、土地の所有面積が200平方メートルで路線価が20万円だった場合、土地評価額は200×20万円=4,000万円です。
路線価方式では、土地の形状や使いにくさに応じて、補正率を計算式に入れるケースもあります。土地によって異なるため、正方形や長方形でない土地を所有している場合は、専門家に相談することをおすすめします。
倍率方式による計算方法
倍率方式は、固定資産税評価額に土地別の倍率をかけて評価額を算出する方法です。
国税庁のホームページから路線価を確認した際に、所有する土地に面する道路に数字が記載されていない場合は、倍率方式で算出するとよいでしょう。
まず、「国税庁のホームページ」から評価倍率表を取得します。評価倍率表には市区町村別の土地の倍率が記載されているため、数字を確認しておきましょう。
次に「固定資産税評価額」を確認しましょう。固定資産税評価額は固定資産税の納税通知書から確認できます。
必要な情報が揃ったら、以下の計算式で土地評価額を計算してみましょう。
土地評価額=固定資産税評価額×評価倍率
固定資産税評価額が2,000万円、土地の倍率が1.4の例で実際に計算してみると、2,000万円×1.4=2,800万円となり、簡単に土地評価額を算出できます。
路線価方式は路線価に加え、土地面積、補正率まで調べなければならないのに対し、倍率方式は土地の形状込みで計算されている固定資産税評価額を使うため、計算に手間がかかりません。専門家に相談せずとも、自身で評価額を計算できるでしょう。
ただし、路線価方式よりも評価額が安くなる傾向があるため、売却の際には不利になることも。評価額が高くなる路線価方式のほうが高値で売却できることから、どちらの計算方式にもメリット・デメリットがあると考えておきましょう。
評価額に不服がある場合は審査の申し出が可能

相続した不動産を売却するつもりで評価額を調べたけれど、予想以上に低かったと悩む方もいるでしょう。評価額に不服がある場合は、行政に審査の申し出をおこなうことが可能です。審査を申し出ることを「縦覧制度」といいます。
縦覧制度とは、自身が所有する土地や建物と、他者が所有する土地や建物の評価額を比較する制度です。比較した結果、最寄りの土地や建物との評価額に大きな差があった場合は、行政に審査してもらえます。
自身が所有する土地や建物の評価があまりにも低いと感じたら、まずは自治体に相談してみましょう。周辺の建物や土地よりも大きく評価額が低いことがわかり、不服を申し出れば、現在よりも評価額が上がるかもしれません。
土地の相続税評価額を大幅に下げられる特例

相続や遺贈によって受け取った土地の相続税を支払う際に活用できる特例があります。祖父母や両親などから土地や建物を相続した際は、相続税を納めなければなりません。相続税は受け取った財産の価値に応じて金額が決まるため、財産価値が高いほど支払う納税額も多くなります。
土地は評価額に応じて納税額が決まります。「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例」を利用すれば、算出した評価額を減額できるため、支払う納税額も抑えられるでしょう。
減額される割合は被相続人が事業用として使っていたか、居住用として使っていたかによって異なります。どちらかによって割合が異なるため、事前に確認しておきましょう。減額割合は以下のとおりです。
土地の利用方法 | 限度面積 | 減額割合 |
---|---|---|
貸付事業以外の事業 | 400平方メートル | 80% |
貸付事業以外の事業をおこなう一定の法人への貸付 | 200~400平方メートル | 50~80% |
貸付事業をおこなう一定の法人への貸付 | 200平方メートル | 50% |
被相続人等が貸付事業用宅地として利用 | ||
被相続人等が居住用として利用していた宅地等 | 330平方メートル | 80% |
一定の法人に貸し付けていた、または被相続人が貸付事業用として利用していた土地の減額割合は50~80%です。被相続人が居住用として使っていた土地は限度面積330平方メートル、減額割合は80%と、大幅に評価額が減額されます。
被相続人の使用用途を調べる際には、土地の面積も調べておきましょう。限度面積以内の土地に特例が適用され、評価額を下げて納税負担も抑えられます。
なお、特例を受けるには、必要書類を用意したうえで、相続税の申告時に提出しなければなりません。必要な書類は以下のとおりです。
- マイナンバーを確認できる書類(マイナンバーカード、マイナンバー通知カード、マイナンバー記載の住民票)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、身体障害者手帳、パスポート、在留カード、公的医療保険の被保険者証など)
- 相続税申告書
- 遺言書の写し、または遺産分割協議書の写し
- 相続人全員の印鑑証明書
- 登記事項証明書や借家の賃貸借契約書など
手続きには相続時の書類だけでなく、相続する不動産に関連する書類も必要なので、注意してください。
相続開始から10カ月以内にすべての書類を用意し、税務署に提出しなければならないため、早めに準備を始めましょう。特に遺産分割協議はスムーズに進まないことが多いため、余裕をもっておこなうことがおすすめです。遺産分割協議には相続人全員が参加するため、特例を受ける予定の方は、その場で印鑑証明書も受け取っておけるとよいでしょう。
まとめ
相続した不動産の評価額を調べれば、自身が相続した不動産がどれほどの価値を持っているかがわかります。評価額によって、売却するか、賃貸用や事業用、居住用として活用するかを判断するといいでしょう。
建物と土地によって評価額の調べ方は異なります。土地は路線価方式と倍率方式があるため、まずは路線価を調べ、数字を確認できなければ倍率方式で計算しましょう。評価額が高く、相続税を抑えたい場合は減額できる特例も用意されています。特例を活用して相続税の支払い負担を抑え、建物や土地を有効活用しましょう。
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執筆者
民辻伸也
宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
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