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マンションを売却したら消費税がかかる?個人と法人で異なる税金の仕組みを徹底解説

マンションを売却したら消費税がかかるのかを解説します
マンションを売却する際、「消費税はかかるの?」「個人でも納税の必要がある?」と疑問を持つ方は多いでしょう。実は、マンション売却時に消費税が課されるかどうかは、売主が「個人」か「事業者」かによって大きく変わります。さらに、仲介手数料やリフォーム費用など、一見見落としがちな部分にも消費税が関係してくるため、正しい知識がないと損をしてしまうケースも少なくありません。
本記事では、マンション売却時の消費税の仕組みや課税対象、納付時期、そして増税による市場への影響までをわかりやすく解説します。マンションの売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

記事の目次

消費税の基本的な仕組み

消費税の基本的な仕組みを解説します
消費税の基本的な仕組みを解説します

まずは、私たちの生活に密接に関わる「消費税」に関して理解しておきましょう。普段の買い物の際、レシートに「消費税○円」と表示されていますが、この税金が直接国に納められているわけではありません。実際には、消費者が支払った消費税は、一度お店や企業が預かる形になっており、これを「預り消費税」と呼びます。

一方で、そのお店や企業も商品を仕入れる際に、仕入先に対して消費税を支払っており、この支払った側の税金を「支払消費税」と言います。最終的に事業者は、「預り消費税」と「支払消費税」の差額分を国に納めることになっています。計算式は以下のとおり。

納める消費税額 = 預り消費税 - 支払消費税

つまり、消費税は消費者が直接国に支払うものではなく、事業者が納税している仕組みです。また、「売上の10%をそのまま国に納める」わけではなく、実際の納税額は預かった消費税と支払った消費税の差額分となります(税率は2025年10月時点で10%)。

この仕組みからもわかるように、消費税は「付加価値税(VAT)」の一種と考えられています。付加価値とは、簡単にいえば「売上から仕入れや経費を引いた利益のような部分」のこと。企業が工夫や努力によって仕入れた商品や原材料を、付加価値のある形で販売した時、その部分に課せられるのが消費税です。日本では「付加価値税」の名称の税制は存在しませんが、仕組み的には近い考え方が採用されています。
例えば、企業が仕入れ価格より高い値段で商品を販売できた場合、その差額がまさに「企業が生み出した付加価値」であり、消費税はこの部分に対して課税される形になっています。したがって、消費税は結果的に「企業がどれだけ価値を生み出したか」に応じて負担する税金といえるでしょう。

マンションの売却で消費税がかかるケースとそうでないケース

マンションの売却で消費税がかかるケースとそうでないケースを解説します
マンションの売却で消費税がかかるケースとそうでないケースを解説します

マンションを売却する際、消費税がかかる場合とかからない場合があるため課税の対象になるのかどうか多くの方が疑問に思うポイントでしょう。実は、不動産の種類や売主の立場によって課税関係が異なります。ここでは、その仕組みをわかりやすく整理して解説します。

不動産の課税関係

まず、売主が誰であるかによって、課税の有無が変わります。表にまとめると、次のようになります。

売主 土地 建物
個人(マイホーム売却) 非課税 非課税
法人または個人の事業者※ 非課税 課税

※ここでいう「個人の事業者」には、税務署へ事業届を提出している個人事業主だけでなく、アパート経営やマンション賃貸などをおこなっている個人も含まれます

上記の表からもわかるように、「土地は非課税」「建物は課税」が基本の考え方ですが、売主の立場や売却目的によって結果が変わることがあります。それでは、実際にマンションの売却で消費税が課税されるケースと、非課税となるケースを順に見ていきましょう。

マンションの売却で消費税が課されるケース

まずは、消費税が課されるマンションの売却を見ていきましょう。

不動産会社が売主となる場合

不動産会社がマンションを売却するケースでは、事業として取引をおこなうことから「建物部分」に消費税が発生します。これは、事業者が対価を得て、資産を譲渡しているとみなされるためです。例えば新築マンションを販売する不動産会社の売却益には、必ず消費税が課されます。中古マンションでも、不動産会社が買い取ってリフォームし、再販売するような場合でも同じく課税対象となるため、注意しましょう。

事業用物件を売却する場合

次に、オフィスビルや店舗、工場、倉庫、ホテルなどの事業用不動産を売却する場合です。これらは明確に「事業として利用される資産」に該当します。したがって、事業者が事業として売却するため、建物部分に消費税が課せられます。土地自体には課税されませんが、建物に含まれる設備や構造物などは対象となるため、覚えておきましょう。

賃貸マンションを売却する場合

個人・法人を問わず、賃貸経営をおこなっている場合は「事業者」とみなされます。そのため、賃貸マンションやアパートを売却する際は、建物部分に消費税が発生します。
賃貸マンションを売却する時は、事業者とは法人だけを指すわけではなく、個人で賃貸事業をおこなっている方も含まれるため、注意してください。例えば、個人名義でマンションを所有し、複数の部屋を貸して賃料を得ている場合も、事業活動にあたるため、売却時に建物部分に消費税が課されます。

個人が投資用マンションを売却する場合

個人が投資目的で購入したマンションを売る場合も、建物に消費税がかかります。投資用マンションは、賃料収入などを得る目的で保有されているため、事業として扱われます。たとえ法人格を持たない個人であっても、「事業として対価を得ている」点で課税対象となります。

消費税がかからないマンション売却

それでは、次に消費税が発生しないケースを見ていきましょう。実は、多くの一般的な売却はこの「非課税」に該当します。

土地を売却する場合

土地の売却に関しては、売主が個人であっても法人であっても、原則として消費税はかかりません。また、マイホームや事業用物件など、用途の違いに関係なく土地は非課税です。非課税となる理由は、消費税が「付加価値」に対して課税される税金だからです。付加価値とは、人の活動によって新たに生み出された価値のこと。

一方で、土地は自然に存在しているものであり、人が創造した資産ではありません。つまり、売買によって土地の価値そのものが生まれるわけではなく、「付加価値がない」と考えられています。そのため、土地に対して消費税を課すことは、税の性格上ふさわしくないとされ、売買の際にも非課税となっています。

個人がマイホームを売却する場合

個人が自宅として住んでいたマンションや一戸建てを売却する場合も、建物・土地ともに非課税となります。これは、個人が生活のために所有していた資産を売却するものであり、事業としての取引ではないためです。また、セカンドハウスの売却も同様に扱われます。ここでいうセカンドハウスとは、別荘とは異なり、「週末に居住するために郊外に所有する住宅」や「遠距離通勤者が平日滞在するために職場の近くに持つ住宅」のこと。
このような住宅も、生活を目的として使用されているものであるため、消費税は課されません。また、弁護士や税理士などの個人事業主が自宅マンションを売却する場合でも、「事業の資産」ではなく「個人の住居」として扱われるため、消費税はかかりません。

免税事業者とは

免税事業者とは何かを解説します
免税事業者とは何かを解説します

ここまで不動産売却時の消費税について「課税」「非課税」の観点で説明してきましたが、実際に税金を納める義務があるかどうかは、別のルールで決まります。この仕組みを理解するために、「課税事業者」と「免税事業者」の違いを押さえておきましょう。

法人の場合

法人の場合、前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超えると、課税事業者となります。つまり、消費税を国に納める義務が発生します。反対に、売上高が1,000万円以下であれば免税事業者となり、消費税を納める必要はありません。

なお、新しく設立された法人(新設法人)は、前々事業年度が存在しないため、原則として設立後2年間は免税事業者として扱われます。ただし、資本金や人員規模など一定の条件を満たす場合は、初年度から課税事業者になるケースがあります。

個人事業主の場合

個人事業主に関しても基本は同じです。前々年の課税売上が1,000万円を超えると課税事業者となり、消費税を納める義務が生じる一方で、1,000万円以下であれば免税事業者として扱われます。ここで注意すべき点は、個人事業主が開業届を提出している人だけを指すわけではないこと。例えば、アパート経営やマンションの賃貸経営をおこなっている個人も、実質的に事業者に該当します。

したがって、投資用マンションの保有・売却をおこなう場合は、個人であっても消費税の課税対象となることがあるため、注意しておきましょう。

マンションを売却する際に消費税がかかる項目〜個人編

個人のマンションを売却する際に消費税がかかる項目を解説します
個人のマンションを売却する際に消費税がかかる項目を解説します

マンションを売却する時、「どの費用に消費税がかかるのか」は意外と見落としがちなポイントです。ここでは、個人の売主が支払う費用のなかで、消費税の対象となる主な項目をわかりやすく解説します。

仲介手数料

不動産会社に支払う仲介手数料には、消費税が課されます。理由は、仲介業務は不動産会社が提供するサービスにあたるため。仲介手数料の上限額は宅建業法で定められており、計算式は以下のとおりです。

取引額 仲介手数料(別途消費税)
200万円以下 取引額 × 5%
200万円超~400万円以下 取引額 × 4% + 2万円
400万円超 取引額 × 3% + 6万円

上記の金額に別途10%の消費税が加算されます。

住宅ローンの繰上返済手数料

住宅ローン残債のあるマンションを売却する際には、売却代金で住宅ローンを一括返済するケースが多く見られます。その時に金融機関へ支払う「繰上返済手数料」も、消費税が課される費用の一つです。銀行などの金融機関は事業者であり、この手数料も業務の対価にあたるため、課税対象となります。都市銀行の場合、窓口での手続きなら3万円程度が手数料の目安になるでしょう。

司法書士に支払う手数料

住宅ローン残債があるマンションを売却する場合、抵当権抹消登記をおこなう必要があります。その際、手続きを依頼する司法書士へ支払う報酬にも消費税がかかります。司法書士も専門サービスを提供する事業者であるため、手数料は課税対象です。相場は1.5万円~2万円前後が一般的。また、登録免許税などの税金自体には消費税はかからないため、混同しないよう注意しましょう。

【事業者編】マンション売却での消費税の計算方法

事業者のマンション売却での消費税の計算方法を解説します
事業者のマンション売却での消費税の計算方法を解説します

続いて、個人ではなく事業として不動産を扱う場合の消費税の計算方法を解説します。この場合は建物と土地を明確に分けること、そして課税方式を選択することが重要です。

建物と土地を分けて価格を算出する

消費税は建物部分のみに課され、土地にはかかりません。そのため、売却価格の内訳が不明な場合は、土地と建物を区分して金額を算出する必要があります。国税庁では、建物と土地の区分方法として次の3つを例示しています。

  1. 譲渡時点の土地と建物の時価比率による按分
  2. 相続税評価額や固定資産税評価額に基づく按分
  3. 取得費・造成費・販売費・支払利息などを含む原価による按分

このなかでも一般的なのが、固定資産税評価額を基準にする方法です。評価額は、固定資産税納税通知書や登記簿謄本に記載された敷地権割合から確認できます。

簡易課税と原則課税のどちらかを選ぶ

事業者がマンションを売却した際の消費税の納付方法には、「簡易課税」と「原則課税」の2種類があります。

簡易課税制度 預かった消費税に対して一定の割合(みなし仕入れ率)を掛け、納税額を計算する方法。
原則課税制度 預かった消費税から支払った消費税を差し引いて、納税額を求める方法。

なお、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者は、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出すれば簡易課税を選択できます。

簡易課税方式の計算例

簡易課税事業者が納める消費税の計算式は次のとおりです。

消費税額 = 課税売上 × 消費税率 -(課税売上 × 消費税率 × みなし仕入れ率)

みなし仕入れ率は業種ごとに設定されており、以下のようになります。

事業区分 該当業種 みなし仕入れ率
第一種事業 卸売業 90%
第二種事業 小売業 80%
第三種事業 農業(飲食料品の譲渡にかかる事業を除く)・建設業・製造業 70%
第四種事業 飲食業 60%
第五種事業 金融・保険・サービス業 50%
第六種事業 不動産業 40%

※出典:国税庁「No.6505 簡易課税制度

<計算例>
●課税売上:3,500万円
●消費税率:10%
●みなし仕入れ率:60%

計算式:(3,500万円 × 10%) -(3,500万円 × 10% × 60%) = 140万円

職種によって、みなし仕入れ率が異なります。基本的に不動産に関する業種は、第六種事業に分類されます。ただし、事業者が自社で使用しているオフィスビルや、賃貸用マンションなどの不動産を売却する場合には、業種を問わず「第四種事業」に区分されます。

そのため、仮に事業者が「第五種事業」の簡易課税制度を利用していたとしても、不動産などの固定資産を売却する際には、「第四種事業」のみなし仕入れ率である60%が適用される点に注意が必要です。

原則課税方式の計算例

一方、原則課税では以下の計算式で納税額を求めます。

消費税額 = 預かり消費税 - 支払い消費税

預かり消費税とは、商品やサービスを提供した際に顧客から受け取る消費税のことです。支払い消費税とは、仕入れや経費支払い時に他の事業者へ支払う消費税を指します。

<計算例>
●預かり消費税:300万円
●支払い消費税:100万円
計算式:300万円 - 100万円 = 200万円

【事業者編】マンション売却時の消費税納付方法

事業者のマンション売却時の消費税納付方法を解説します
事業者のマンション売却時の消費税納付方法を解説します

ここでは、事業主がマンションを売却した際の消費税の納付手続きに関して詳しく解説します。個人事業主と法人では手続きや期限が異なるため、それぞれの流れを正しく理解しておきましょう。簡単な流れは次のとおりです。

  • STEP 1確定申告をおこなう
  • STEP 2消費税の納付方法を選択して支払う

それぞれ詳しく解説します。

ステップ1.確定申告をおこなう

マンションの売却で発生した消費税を納めるためには、まず確定申告が必要です。申告をおこなうことで納付額が確定し、正式に税務署へ報告します。個人事業主の場合、確定申告の期間は原則売却した翌年の1月1日から3月31日までです。
一方、法人の場合は、事業年度の終了日の翌日から2カ月以内に申告・納付をおこなわなければなりません。なお、確定申告の際には、マンションの譲渡に関する書類(売買契約書や領収書など)を準備しておくと、手続きがスムーズになるためおすすめです。

ステップ2.消費税の納付方法を選択して支払う

確定申告によって納税額が決まったら、次は納付方法の選択です。消費税はさまざまな手段で支払うことができ、自分の状況に合わせて選べます。以下が代表的な納付方法です。

納付方法 概要
振替納税
(個人のみ)
指定した金融機関の口座から自動的に引き落とされる方法。手続き後は自分で納付に行く必要がありません。
電子納税 インターネットバンキングやe-Taxを利用してオンラインで納税する方法。24時間手続き可能です。
クレジットカード納付 国税庁の専用サイトを利用してカード決済で支払う方法。手軽ですが決済手数料が発生します。
コンビニ納付 納付書を持参し、全国のコンビニエンスストアで支払う方法。少額の税金にも対応しています。
現金納付 税務署や金融機関の窓口で現金を直接支払う方法。領収書をその場で受け取れます。

納付期限に注意する

消費税の納税期限は、申告期限と同様に定められています。個人事業主は翌年の3月31日まで、法人は事業年度終了日の翌日から2カ月以内に納付を完了しなければなりません。期限を過ぎると延滞税や加算税が課される場合があるため、早めの手続きを心がけましょう。特に年度末は税務署や金融機関が混雑しやすいため、電子納税などのオンライン手続きを利用すると安心です。

マンション売却で気をつけたい消費税のポイント

マンション売却で気をつけたい消費税のポイントを解説します
マンション売却で気をつけたい消費税のポイントを解説します

マンションを売却する際、取引によっては消費税が課されるケースがあります。特に次に挙げるポイントは見落としやすいため注意が必要です。

売却価格の消費税を差し引いておこなう

注意したい点が、仲介手数料の計算方法です。
マンションの売却価格は一般的に「税込み価格」で表示されますが、仲介手数料は税抜き価格で設定されていることが多く、計算を誤りやすいため注意しなければなりません。そもそも、売却価格は「土地代」と「建物代」に分かれており、土地部分は非課税ですが、建物部分には消費税が含まれています。

したがって、仲介手数料を正しく算出するには、まず建物価格から消費税分を差し引き、そのあとで手数料率を掛けて求める必要があります。例えば、不動産会社に支払う仲介手数料を自分で試算する場合には、以下のようになります。

  • STEP 1建物価格(税込み)から消費税分を除く
  • STEP 2税抜きの建物価格に手数料率(上限3%+6万円など)を掛ける
  • STEP 3最後に手数料に消費税を加える

上記の手順で計算すると、誤りを防げます。
もちろん、不動産会社側で正確な金額を算出してくれますが、自身でも概算を把握しておくと安心です。

マンション売却にかかる費用や税金を抑えるコツ

マンション売却にかかる費用や税金を抑える方法を解説します
マンション売却にかかる費用や税金を抑える方法を解説します

マンションを売却する時は、仲介手数料や税金など、さまざまな費用が発生します。ここでは、売却にかかるコストをできるだけ抑えるための考え方や、利用できる制度を詳しく見ていきましょう。

自治体の補助金は「売却」には使えない

まず知っておきたいのは、マンションの売却そのものに対して補助金はない点です。国や自治体の支援制度は、どちらかといえば、購入や新築、リフォームに対して設けられており、売却時には基本的に適用されません。ただし、買い替えを検討している場合は、新たに購入する物件で補助金を受けられる可能性があります。利用できる代表的な補助金には、以下のようなものがあります。

制度名 概要 主な対象者・条件 給付・補助額 申請方法・期限
子育てグリーン住宅支援事業 省エネ性能を有する、床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下の住宅に対する補助制度。
・国交省に採択された工務店に建築を依頼

・一定の省エネ
GX志向型:160万円

長期優良住宅:80万円

ZEH水準住宅:40万円
工務店が申請し、補助金は施主へ還元される。申請手続きは工務店経由でおこなう。
ZEH補助金
(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
太陽光発電などでエネルギーを創り出し、年間消費エネルギー量をゼロに近づける住宅への補助。
・ZEH仕様の新築・購入、または既存住宅をZEHに改修

・断熱性、省エネ性能、再エネ利用などの要件を満たす
ZEH:
55万円/戸

ZEH+:
90万円/戸
所定の登録事業者(ハウスメーカー・工務店)経由で申請。年度ごとの募集期間内に実施。
自治体の補助金制度 各自治体が独自に実施している住宅取得や省エネ住宅への補助制度。内容は地域ごとに異なる。
・自治体ごとの条件により異なる(例:省エネ住宅、移住促進、子育て世帯など)
金額・内容は自治体ごとに異なる 市町村公式サイトまたは「支援制度検索サイト」で確認。申請方法・期間は自治体ごとに異なる。

上記の制度は、主に一戸建て購入時のほうが対象範囲は広く、利用できる選択肢も多くなっています。どの補助金にも申請条件が細かく定められているため、事前に公式情報を確認しておくことが大切です。

また、売却前にリフォームを検討する方のなかには、「補助金を活用できないか」と考える方もいます。しかし、補助金の多くは耐震補強や省エネ改修などの社会的目的をもったリフォームに限定されているため、「売却を目的としたリフォーム」には基本的に該当しません。そのため、売却を前提としたリフォームで補助金を利用するのは現実的ではないと考えておきましょう。

譲渡益が出た時に使える「節税特例」

マンションを売却して利益(譲渡益)が出ると、その金額に応じて税金が発生します。譲渡益とは、以下の計算式で求められる譲渡所得がプラスになった場合の金額です。譲渡所得の計算式は以下のとおり。

譲渡所得 = 譲渡価額(売却価格)- 取得費 - 譲渡費用

「取得費」とは、購入時の価格を指しますが、建物の場合は購入額から減価償却費(建物の経年劣化による価値減少分)を差し引いた金額になります。また、「譲渡費用」には、仲介手数料や印紙税など、売却に直接かかった費用が含まれるため、注意してください。この譲渡所得に税率を掛けることで、支払う税金が決まります。

税金 = 譲渡所得 × 税率

税率は、売却した年の1月1日時点での所有期間によって異なります。

区分 所得税 住民税 合計税率
短期譲渡所得
(5年以下)
30% 9% 39%
長期譲渡所得
(5年超)
15% 5% 20%

さらに、いずれの場合も2037(令和19)年3月31日まで復興特別所得税(2.1%)が加算されます。

もし売却したマンションがマイホーム(居住用財産)で、一定の条件を満たす場合には、以下の3つの節税特例が利用できます。

特例の性質 特例名称
譲渡益が生じた時の特例 3,000万円特別控除
所有期間10年超の場合の軽減税率 居住用財産を譲渡した場合の軽減税率特例
買い替え時に利用できる特例 特定の居住用財産の買換え特例

ただし、これらの特例は住宅ローン控除と同時に使うことができません。住宅ローン控除は、新たに自宅を購入した際に所得税を一定期間軽減できる制度で、多くの方がこちらを優先します。な一般的に住宅ローン控除による節税効果のほうが大きいため、売却時の特例は使わずに新居で控除を受けるケースが多いでしょう。

譲渡損失が出た場合の特例

一方、マンションを売却して損が出た場合(譲渡損失)にも、条件を満たせば税制上の優遇措置を受けられます。譲渡損失とは、先ほどの計算式で譲渡所得がマイナスになった場合のことです。売却した物件がマイホームであり、一定の要件を満たすと、次の2つの特例が適用できます。

特例の性質 特例名称
買い替え時に損失を控除できる 居住用財産の買換えに係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
住宅ローンが残っている場合に利用可能 居住用財産に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

上記の特例を使うことで、他の所得と相殺したり、翌年以降に損失を繰り越して税金を軽減したりできます。また、住宅ローン控除と併用できる点も大きなメリットです。マンション売却での費用や税金を抑えるには、まず「どの制度や特例が自分に適用できるか」を正しく理解することが重要なポイント。
売却時点では補助金の対象外でも、買い替え先の住宅で補助制度を利用したり、譲渡益・損失の特例を活用したりすることで、最終的な出費を大きく減らせる可能性があります。

特に、譲渡益が出た場合と損失が出た場合では使える制度が異なるため、事前に税理士や不動産会社に相談し、自分のケースに最適な方法を選ぶようにしましょう。

まとめ

マンション売却の際、消費税はすべての取引にかかるわけではありません。個人が居住用として保有していた物件を売る場合は非課税ですが、事業として不動産を扱っている場合や、仲介手数料などのサービス部分には課税されます。
マンション売却では、税制やタイミングを理解することが成功のカギです。税金の取り扱いを正確に把握し、損をしない賢い売却を目指しましょう。

民辻 伸也

執筆者

民辻 伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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