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不動産投資の返済比率は50%以下がいい?返済比率を下げる方法も解説

不動産投資の返済比率は50%以下がいいのでしょうか
「家賃収入があっても、ほとんどが融資の返済に消えてしまう」
「空室が続き手元に残る利益が少ない」
このように、不動産投資を始めたのに、なかなか思うように利益が得られないと悩んでいる方もいらっしゃると思います。家賃収入でしっかり利益を残すためには、「返済比率」が重要なポイントです。返済比率とは、家賃収入に対する不動産投資ローン返済額の割合のことです。適切な返済比率でなければ、なかなか利益が得られなかったり、経年劣化による原状回復にお金がかかったりなどのトラブルがあった際にうまく対応できなくなってしまいます。本記事では、返済比率とは何なのか、返済比率を下げる方法などを詳しく解説します。

返済比率とは

返済比率とは何かを解説します
返済比率とは何かを解説します

投資物件の経営において、金融機関への返済額と家賃収入のバランスを示す「返済比率」は非常に重要なポイントです。返済比率とは、年間の家賃収入に占める年間の不動産投資ローン返済額の割合を指します。この比率が低いほど、安定した経営がしやすくなります。

物件購入時には、家賃収入と経費の支出からキャッシュフローを算出し、適正な返済比率であるかを確認しなければなりません。単に収支が黒字であればよいわけではなく、余裕のある返済比率を確保することが重要です。

さらに、空室リスクにも考慮しなければなりません。投資物件では常に居住中の状態が続くとは限らず、空室期間が発生する可能性は十分にあります。

そのため、空室リスクを想定した返済比率のシミュレーションをおこない、事前に一定の安全性を確保できるか確かめておきましょう。

返済比率の目安は40〜50%

返済比率は、一般的に40%〜50%が目安とされています。しかし、この数値は単に家賃収入の半分が残るというわけではありません。

投資家は金融機関への返済後、修繕費や管理費などのさまざまな経費も支払わなければなりません。加えて、空室による収入減にも備える必要があるため、返済比率を50%以下に抑えることが望ましいとされています。

ただし、金融機関から借り入れをする際は融資の条件として、返済比率が35%以下を目安にしているところが多くあります。なぜなら、金融機関にとって最も重要なのは「確実な返済」であるからです。家賃収入からの利益よりも、安定した返済能力の有無が融資に大きく影響しています。

返済比率の計算方法

返済比率は以下の計算方法で求められます。

返済比率(%) = (不動産投資ローン年間返済額 ÷ 満室時年間家賃収入額) × 100

例えば、満室時の年間家賃収入額が1,000万円、金融機関への年間返済額が450万円の場合で返済比率を計算してみましょう。このような場合は、

返済比率 = (450万円 ÷ 1,000万円) × 100 = 45%

と計算されます。

ただし、この返済比率は物件が常に居住中の状態であることを前提としているため、実際には空室リスクを考慮する必要があります。物件を購入する際は、空室が発生した場合の家賃収入の減少も想定して返済比率を算出することが大切です。

さらに、不動産投資ローン返済額は金利や返済期間によって変動します。そのため、実際の返済額は各金融機関が提供するローンシミュレーターを活用して計算するとよいでしょう。

物件購入前の計画段階においては、さまざまな条件を想定したうえで、返済比率のシミュレーションをおこなうことが大切です。

不動産投資の返済比率が低い場合の3つのメリット

不動産投資の返済比率が低いとどのようなメリットがあるのでしょうか
不動産投資の返済比率が低いとどのようなメリットがあるのでしょうか

不動産投資の返済比率が低いことで、以下の3つのメリットが得られます。

  • キャッシュフローに余裕が生まれる
  • 空室リスクへの対応力が高まる
  • 投資判断の自由度が増す

それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

キャッシュフローに余裕が生まれる

返済比率が低ければ、家賃収入から借入金の返済に回す割合が少なくなります。そのため、将来的な修繕費用の備えとして資金を蓄積しやすくなるのです。

不動産投資においては、予期せぬトラブルに備える必要があるため、日頃からの貯蓄が大切です。返済比率をできる限り抑えることで、安全な運用を継続できるようになるでしょう。

空室リスクへの対応力が高まる

長期にわたり空室が発生すると、一時的に家賃を値下げして入居者の確保を図るケースがあります。しかし、一度家賃を下げてしまうと、元の水準に戻すのが難しくなります。また、一棟貸しの場合では、既存の入居者にも家賃の引き下げを適用せざるを得なくなり、キャッシュフローに大きな影響が出てしまうかもしれません。

返済比率を低く抑えておけば、キャッシュフローに余裕ができるため、無理に入居者を募集しなくても不動産投資を続けられます。需要が増える時期まで待てるので、適正な家賃設定が可能になり、経営の安定性も高まるでしょう。

投資判断の自由度が増す

返済比率が低ければ、収支における余裕ができるため、投資に対する精神的な余裕も生まれます。収入の多くを不動産投資ローン返済に回す必要がなくなり、新たに投資チャンスが訪れた際にも積極的な判断ができるようになるでしょう。

不動産投資の返済比率が高い場合の3つのデメリット

不動産投資の返済比率が高い場合のデメリットを解説します
不動産投資の返済比率が高い場合のデメリットを解説します

不動産投資の返済比率が高いと、以下の3つのデメリットがあります。

  • 急な出費に対応しづらくなる
  • 長期間の空室に対応しにくい
  • 金利上昇リスクに備えるのが難しい

それぞれのデメリットを、以下で詳しく解説します。

急な出費に対応しづらくなる

不動産経営において、物件の経年劣化にともなう修繕や災害による被害など、さまざまな理由で突発的な出費が発生することがあります。また、入居者募集の広告費や入れ替わりにともなうクリーニング費用など、定期的な支出もあります。

返済比率が高い状態では、キャッシュフローに余裕がないため、予期せぬ出費に適切に対応することは難しいでしょう。物件の維持管理がおろそかになれば、物件の魅力が低下し、空室リスクが高まるなどさらなる悪化を招きかねません。

長期間の空室に対応しにくい

入居者の確保は不動産経営の要です。長期にわたって空室が続く場合は、収入がどんどん減ってしまうかもしれません。

物件の状況や立地条件によっては、一定期間は空室が避けられない場合もあります。そのようなケースで返済比率が高ければ、キャッシュフローへの影響は一層大きくなっていくでしょう。

金利上昇リスクに備えるのが難しい

現在は低金利の環境が続いていますが、今後の景気動向によっては、金利が上昇するリスクがあります。変動金利の不動産投資ローンを利用している場合、金利が上昇すれば返済額は増加します。

返済比率が高い状態では、わずかな金利上昇でも返済負担が大きくなり、得られる利益が減少してしまうでしょう。基本的に変動金利のほうが、全期間固定金利に比べ低い設定となっていますが、景気動向によっては、変動金利が固定金利を上回る可能性があることも考慮しなければなりません。

返済比率を下げる5つの方法

返済比率を下げる5つの方法を解説します
返済比率を下げる5つの方法を解説します

返済比率を下げる方法としては、以下の5つが挙げられます。

  • 購入時の諸費用を抑える
  • 自己資金を増額する
  • 融資期間を長くする
  • 金利を低くする
  • 繰り上げ返済を検討する

それぞれの方法を以下で詳しく解説します。

購入時の諸費用を抑える

返済比率を低くする方法の一つは、購入時の諸費用を抑えることです。諸費用は借入金の一部として組み込まれる場合が多いため、金額が増えれば借入金額も増加し、返済比率が高くなってしまいます。

諸費用には、不動産取得税や登録免許税などの税金や、仲介手数料などの手数料が挙げられます。税金は法定の金額であるため、購入先を選んでも変わりません。一方で仲介手数料は、不動産仲介会社を介さずに購入することで発生を避けることが可能です。

ただし、個人で売買をおこなう場合は、物件の不備をしっかり把握できず、のちのちトラブルが起きたり、不動産投資ローンの利用が難しくなったりなどのリスクがあります。トラブルを避け、適正な価格で物件を購入するためにも、不動産仲介会社を挟んだほうがいいでしょう。

また、金融機関の提携ローンを利用することで、諸費用を割引してくれるケースもあります。

不要な諸費用をカットすることにより、借入金額を低く抑えられる可能性が高まります。借入金額を抑えられれば、その分返済額も減少し、結果として返済比率を引き下げられるのです。

自己資金を増額する

返済比率を下げる方法には、自己資金の投入額を増やす方法も挙げられます。借入金額を抑えれば、返済額を低く抑えられるため、返済比率も引き下げられます。

不動産投資における融資では、必ずしも自己資金を多く用意する必要はありません。しかし、返済比率を下げたいのであれば、借入金額を抑える必要があるため、一定の自己資金が貯まったうえで融資を利用するといいでしょう。

ただし、貯蓄を全額頭金に回してしまうと、投資後の生活費や緊急時への備えが難しくなる可能性があります。不動産購入時には頭金以外にも、登記費用や仲介手数料など、さまざまな初期費用が発生します。さらに、運用開始後も修繕費用などの支出に備える必要があるため、ある程度の資金を残しておくことが重要です。

融資期間を長くする

返済比率を低く抑えるための方法として、返済期間を長期に設定することも挙げられます。返済期間を長くすればその分割賦額が減少するため、月々の返済負担が軽減され、結果的に返済比率を引き下げられるのです。

ただし、希望する融資期間が認められない場合があります。投資物件には法定耐用年数や金融機関による評価があり、それに基づいて返済期間の上限が設定されています。あらかじめ融資期間の上限を確認しておきましょう。

運用開始後に返済期間の見直しを検討する場合は、借り換えも候補の一つとして考えておくとよいでしょう。借り換えで返済条件を変更すれば、返済比率を下げられる可能性があります。ただし借り換えには手数料がかかるため、メリットとデメリットを事前に確認したうえで決めることが大切です。

金利を低くする

金利の引き下げ交渉も方法の一つに挙げられます。金利が低ければ、その分返済額が減少するため、返済比率の低減につながります。

すでに不動産投資ローンを組んでいる場合、現在の金融機関に対して金利の引き下げ交渉が可能です。特に長期にわたって返済を続けている顧客は、交渉がうまくいく可能性が高いです。

具体的には、他行への借り換えを検討していることを伝え、今の金利よりも有利な条件を提案してみましょう。金融機関側も優良顧客を失うリスクを回避したいため、金利の引き下げに応じてくれるケースがあります。

ただし、借り換え時には手数料が発生する可能性があるため、諸費用が高くなる点を考慮しておかなければなりません。金利交渉による返済額の減少メリットと、借り換えにかかるコストを事前に確認し、総合的に判断することが大切です。

繰り上げ返済を検討する

返済比率を下げるための有効な手段の一つが、繰り上げ返済です。繰り上げ返済とは、毎月の返済額に一定の上乗せ金額を加えて支払うことで、返済期間を短縮する、もしくは将来の返済額を軽減する制度のことです。

繰り上げ返済には、「返済期間短縮型」と「返済額軽減型」の2種類があります。返済比率を下げる目的であれば、返済期間は変えずに月々の返済額を軽減する「返済額軽減型」がおすすめです。一定額を繰り上げて返済することで、総返済額が減少するため、返済比率を引き下げられるでしょう。

ただし、繰り上げ返済をおこなう際には、金融機関に対して手数料の支払いが発生する場合があるため、注意が必要です。どのくらいの手数料がかかるのか事前に確認しておきましょう。

繰り上げ返済は、運用を始めてから一定期間が経過し、キャッシュフローに余裕がでできた段階で検討するのがベターです。投資直後から返済額を削減したい場合は、最初から借入金額を抑え、自己資金を増やしたほうがよいでしょう。

まとめ

今回は、不動産投資の返済比率を詳しく解説しました。不動産投資の適切な返済比率としては、一般的に40〜50%程度とされています。

返済比率が低くなるほど返済負担が下がるため、頭金を増やしたり、金融機関と相談したりなど対策をとることが大切です。安定した不動産投資をおこなうためにも、返済比率は欠かせない重要な要素の一つです。

融資期間の延長や金利の交渉は思いどおりにならないこともありますが、承諾される場合もあるので積極的に行動していきましょう。

返済比率が理解できない場合や疑問点がある場合は、物件を購入する前に金融機関などで相談してみましょう。

民辻伸也

執筆者

民辻伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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