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不動産投資にかかる初期費用は?費用を抑えるポイントも解説

不動産投資を始めるのにかかる初期費用について解説します
不動産投資を始める際には、物件購入代金以外にもさまざまな初期費用がかかります。融資の手数料や登記費用、保険料など、把握しておかなければならない初期費用は多岐にわたります。これらの初期費用を見落としてしまうと、計画外の出費となり、投資計画に大きな影響を与えてしまうかもしれません。

本記事では、不動産投資にかかる主な初期費用とその内訳を詳しく解説します。さらに初期費用を節約するためのポイントも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

不動産投資の初期費用は物件価格の15%程度

不動産投資の初期費用はどのくらいかかるのでしょうか
不動産投資の初期費用はどのくらいかかるのでしょうか

不動産投資を始める際は、物件の購入費用以外にもさまざまな初期費用がかかります。
一般的に不動産投資にかかる初期費用は、物件価格の15%程度といわれています。

例えば、物件価格が3,000万円だった場合は、450万円程度の初期費用が必要です。ただし、その人の状況によって初期費用の具体的な金額は異なるため、あくまで参考程度にとどめておきましょう。

初期費用の種類と目安

不動産投資にかかる初期費用の内訳と種類を解説します
不動産投資にかかる初期費用の内訳と種類を解説します

不動産投資にかかる初期費用の種類は、以下のとおりです。

  • 物件の頭金
  • 仲介手数料
  • 印紙代
  • 登録免許税(登記費用)
  • 不動産取得税
  • 融資事務手数料
  • 融資保証料
  • 固定資産税・都市計画税の精算
  • 火災保険料・地震保険料
  • 司法書士への報酬

それぞれどのような費用なのか、詳しく見ていきましょう。

物件の頭金

頭金とは、物件購入時に自己資金で支払う金額のことです。一般的に物件価格の10〜20%程度が目安とされています。

頭金が大きいほど、借入金額が少なくなり金利負担が軽減されます。

仲介手数料

不動産会社に支払う仲介手数料です。宅地建物取引業法で上限額が決まっており、計算式は以下のとおりです。

物件価格 仲介手数料の上限額
200万円以下 物件価格×5%+消費税
200万円超 400万円以下 物件価格×4%+2万円+消費税
400万円超 物件価格×3%+6万円+消費税

例えば、1,000万円の物件を購入した場合、下記の計算で仲介手数料が算出できます。

1,000万×3%+6万円=36万円
36万円+3.6万円(※消費税10%)=39.6万円

また、売り主がデベロッパー(新築マンションの売り主となる不動産会社のこと)の場合には、一般的に仲介手数料はかかりません。不動産会社によって上限額内であれば手数料は異なるため、比較して検討することが大切です。

印紙代

契約書類の作成時には、印紙税法に基づいて納税が義務付けられているため、印紙代が必要です。不動産の売買契約を結ぶ際の「不動産売買契約書」や、不動産投資ローン契約時の「金銭消費貸借契約書」などの書類には、契約金額に応じた税額分の収入印紙を貼付することで、印紙税を納めることになります。

不動産売買契約書の印紙税の税率は、以下のとおり契約金額に応じて定められています。

金額 税額
(本則)
税額 (軽減後)
※2027年 (令和9年) 3月31日まで
100万円超 500万円以下 2,000円 1,000円
500万円超 1,000万円以下 1万円 5,000円
1,000万円超 5,000万円以下 2万円 1万円
5,000万円超 1億円以下 6万円 3万円

登記費用(登録免許税)

登録免許税は、物件の所有権を登記する際に必要な費用です。新築物件の場合は、「所有権保存登記」、中古物件・土地購入の場合は、「所有権移転登記」が必要です。


  • 所有権保存登記の税率 →4%
  • 所有権移転登記の税率 →2%
  • 土地の購入(所有権移転登記)→2%

ひとくちに登記費用といっても、新築・中古・土地で支払う費用の名称や税率も異なるので注意してください。

また、抵当権の設定登記にも税金を支払わなければなりません。抵当権の設定登記は「負債額×0.4%で算出できます。例えば、融資額が3,000万円の場合は、12万円がかかります。

不動産取得税

不動産取得税は土地や建物を購入(取得)した時に一度だけかかる税金で、税率は原則4%です。固定資産税評価額が1,000万円の物件を東京都内で購入した場合、不動産取得税は40万円となります。

税額は固定資産税評価額に税率を乗じて計算されるため、物件を紹介してもらう際に不動産会社におおむねの費用を計算してもらうとよいでしょう。

融資事務手数料

不動産投資ローンで融資を受ける際に金融機関に支払う手数料で、融資金額に対して1〜3%程度の事務手数料がかかります。手数料率は融資金額が大きいほど低くなる傾向にあり、融資申込時と実行時の2回に分けて支払う場合もあります。

融資保証料

不動産購入時の資金調達では、金融機関からの借入れに対して保証をつけるのが一般的です。投資用不動産の場合、融資金額が高額になるため、専門の保証会社による保証を利用することがあります。

金融機関は保証会社による保証があれば、万が一融資が回収不能になった場合でも、資金の回収が可能になります。ただし、保証会社による保証には融資額の1.1%程度の手数料がかかるので注意してください。

固定資産税・都市計画税の精算

地方自治体が課す不動産関連の税金もあります。主に以下の2種類です。

  • 固定資産税:毎年1月1日時点で土地や建物を所有している場合に課される税金。税率は約1.4%。
  • 都市計画税:市街化区域内に土地や建物を所有している方が対象。税率は固定資産税評価額に対して0.3%程度。

火災保険料・地震保険料

購入した物件には火災保険や地震保険をかけるのが一般的です。融資を受ける金融機関によっては火災保険への加入を義務づけている場合もあるため、事前の確認が必要です。

万が一災害が起きたときに保険に加入していないと、多額の修繕費用がかかってしまうかもしれません。そのような場合に保険に加入しておけば、保険で賄える部分も多いため、被害を最小限に抑えられるでしょう。

また、地震保険は単独で契約できないことが多いので、地震保険への加入を検討している方は火災保険とセットで加入するとよいでしょう。保険料は保険会社によって異なり、建物の評価額や構造、築年数、補償内容によって異なります。

5年程度の保険料をまとめて払う場合もあれば、1年ごとに支払うケースもあります。

司法書士への報酬

物件の所有権移転登記を司法書士や行政書士に依頼する際の報酬で、10〜20万円程度が相場です。司法書士への報酬には「実費」「報酬」の2種類があります。実費費用はどの司法書士事務所に依頼しても同じ設定ですが、報酬に関しては事務所によって金額設定が異なります。同じ業務でも依頼する司法書士によって費用が異なるので、事前に確認しておきましょう。

司法書士や行政書士は専門的な知識を生かして適切な登記手続きをおこなってくれるため、物件取引の権利保全と法的トラブルの防止にもつながります。

中古物件は修繕費がかかることも

中古物件は修繕費がかかることもあります
中古物件は修繕費がかかることもあります

中古物件を購入する際は、建物の状態によっては大規模な修繕が必要となる可能性があります。新築物件に比べ、中古物件は建築から一定の年月が経過しているため、さまざまな箇所で劣化や不具合が生じている可能性があるからです。

中古物件を購入する際は、事前に建物診断をおこない、修繕箇所と概算費用を確認しておくことが重要です。修繕費の見積額によっては、物件を見直す必要もあるかもしれません。中古物件投資では、このような修繕リスクをしっかり考慮しながら検討することが大切です。

不動産投資の初期費用を抑えるポイント

不動産投資の初期費用を抑えるポイントを解説します
不動産投資の初期費用を抑えるポイントを解説します

不動産投資ではさまざまな費用がかかるため、少しでも初期費用を抑えたいと考える方もいるでしょう。ここからは、不動産投資の初期費用を抑えるポイントをご紹介します。具体的なポイントは以下の5つです。

  • 頭金を少なくする
  • 「売主が不動産会社」の物件に投資する
  • 中古の区分マンションに投資する
  • 複数の保険会社を比較する
  • 複数の司法書士事務所で相見積もりを取る

頭金を少なくする

先述したように、頭金は不動産投資の初期費用のなかの一つです。頭金を少なくすることで初期費用を減らせます。ただし、その分借入金額が増え、返済額が大きくなるため、注意が必要です。

例えば、1,000万円の物件を購入する場合、頭金20%だと800万円の借入が必要になります。一方、頭金を30%の300万円とすると、借入金は700万円で済みます。

借入金800万円(頭金20%)の場合、年利1.5%、返済期間35年とすると、毎月の返済額は約2万4,500円となります。一方、借入金700万円(頭金30%)なら、約2万1,500円で済みます。この3,000円の差は決して小さいものではないでしょう。35年間を通せば105万円の差になります。

また、頭金を抑えて借入金を増やすと、利息額も増えてしまいます。800万円の場合、総利息額は約570万円ですが、700万円の場合は500万円で済むため、頭金を増やせば金利負担を抑えられるというメリットがあるのです。

ただし、頭金を低く抑えると初期費用は少なくて済みますが、長期的には返済負担が大きくなります。さらに、融資の審査に落ちる可能性が高まったり、希望額の融資が受けられなかったりなどのデメリットもあります。

頭金が少ないと「融資に見合った人ではない」と判断されやすく、重要な審査項目の1つである「返済能力の有無」に影響がでてしまうことも。頭金を少なくすることで初期費用は抑えられますが、審査や融資に関するデメリットが発生することを頭に入れておきましょう。

「売主が不動産会社」の物件に投資する

不動産会社の直販物件なら仲介手数料がかからないため、大幅なコスト削減が可能です。先述したように仲介手数料は、物件価格の3%+消費税相当額で計算されるのが一般的です。例えば1,000万円の物件なら約33万円の仲介手数料がかかりますが、直販物件ならこの手数料を支払う必要がありません。

仲介手数料は不動産会社が仲介や契約時のサポートの対価として徴収されるものですが、直販物件の場合、売主が不動産会社自身なので仲介の必要がないのです。

中古の区分マンションに投資する

1室のみを購入する区分マンション投資であれば、1棟マンションやアパートに投資するより物件価格を抑えられます。特に中古の場合は新築よりも割安な傾向にあるため、初期費用を大幅に抑えられるでしょう。

ただし、中古マンションには大規模修繕費用の負担が発生する可能性があるというデメリットもあります。建物の状態によっては、外壁や設備の修繕で数百万円以上かかることもあり、その場合は、新築物件投資との差がなくなってしまいます。

中古マンションの投資を検討する場合は、新築物件にかかる費用と比較して将来修繕費がどの程度かかるかをシミュレーションしておくとよいでしょう。

複数の保険会社を比較する

不動産投資ローンを借り入れる金融機関によっては、火災保険や地震保険の加入を義務づけているところもあります。保険料は複数社の保険会社を比較して、より安い保険料の商品を選ぶと初期費用を抑えられます。

ただし、保険料を抑えた商品を選ぶと、その分、補償の内容が心もとなく感じることがあるかもしれません。保険料と保険内容は連動しているため、保険料を抑えればその分補償される内容も少なくなってしまいます。

保険料については、十分な補償内容を確保しつつ、金額的にも納得のいく保険会社を選ぶことが重要です。保険料はそれほど高額ではありませんが、複数社を比較すれば節約できる可能性があります。万が一災害やトラブルが起きた際でも、十分に補償を受けられるように慎重に検討することが大切です。

複数の司法書士事務所で相見積もりをとる

物件の所有権移転登記手続きは、司法書士事務所に依頼するのが一般的です。司法書士に依頼すると報酬を支払わなければなりません。司法書士への報酬は依頼先の事務所によって手数料が異なるため、複数の事務所の見積りを取ることで報酬額を抑えられる事務所を見つけられます。

事務所によって報酬の価格には差があり、最大で2倍近く報酬が違うこともあります。

例えば、あるA事務所が手数料4万円だったとします。一方、B事務所は6万円、C事務所は5万3,000円だとすると、A事務所に依頼すれば、最大2万円の節約が可能です。物件価格が高額になるほど、その差額は大きくなります。

ただし、手数料が抑えられるからといって安易に決めるのは注意が必要です。複数事務所の対応や実績、信頼性なども踏まえたうえで、総合的に判断しましょう。

相見積もりを取る際は、単に費用が抑えられることだけでなく、業務内容や質の高さ、事務所の体制なども考慮し、信頼できる事務所を選ぶことが何より大切です。丁寧に比較検討することで、自分に合った司法書士事務所を見つけられるでしょう。

まとめ

不動産投資における初期費用は、物件価格の15%程度を見込む必要があります。それぞれの手数料は少ないかもしれませんが、積み重なると投資計画を立てるうえで無視できない金額となるでしょう。

主な初期費用には、融資関連費用の他、登記費用、仲介手数料、各種税金、保険料などが挙げられます。

ただし、工夫次第では初期費用を抑えることが可能です。中古物件に投資したり、事前に複数の司法書士事務所を比較検討するなどの工夫を取り入れることで、初期費用を節約できる可能性もあります。

とはいえ、過度なコストカットは将来的なリスクにもつながりかねません。保険料を抑えれば万が一の際に十分な補償を受けられない可能性がありますし、頭金を抑えればローンの審査に影響が出る可能性もあります。

不動産投資を検討する際は、きちんと初期費用を計算し、長期的な収支を踏まえバランスの取れた投資計画を立てることが重要です。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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