不動産投資における理想の利回りは?計算方法や確認する時の注意点を詳しく解説

そこで本記事では、不動産投資の理想の利回りを紹介し、利回りの種類や計算方法を解説します。また、利回りを確認する際の注意点も紹介していきます。利回りは、不動産投資を成功させたい方に重要な要素になるため、確認しておきましょう。
記事の目次
不動産投資の利回りとは?

不動産投資でいう「利回り」とは、物件の価格に対する収益の割合を指します。不動産投資用の物件を選ぶ際に確認すべきポイントの1つで、重要な指数です。利回りとよく似た言葉で「利率」があります。利率とは、元本に対する利息の割合を指しており、多くは預金や債券の利息の割合を示す時に使用されます。
ここで、利回りと利率の違いを理解するために、投資での収益の考えかたを押さえておきましょう。投資での収益は大きく2つあります。1つ目は利息で、債券などを購入すると初めから決まった金額が受け取れることが決まっています。2つ目が、債券などを買った時と売却した時に得られる差額の収益です。1つ目の利息が、利率にあたります。そして、2つ目の収益が利回りにあたります。不動産投資でいうと、始めに不動産を購入した時の価格に対して、賃料収入や投資用不動産を売却して得た総合的な利益がどのくらいあったかの割合が、利回りです。
不動産投資の利回りの計算方法は?

不動産投資の利回りは、大きく4種類に分けられます。
- 表面利回り
- 実質利回り
- 想定利回り
- 現行利回り
本章では、各利回りの定義と計算方法を解説していきます。
表面利回り(グロス)
表面利回り(グロス)とは、物件の年間の賃料収入を、物件の購入価格で割った割合を指します。
表面利回り(%)=(年間の不動産投資の利益÷物件価格)×100
例えば、賃料収入が279万円、物件価格が4,500万円の投資用物件だった場合は次のとおりです。
(279万円÷4,500万円)×100=6.2%
表面利回りは6.2%となります。
実質利回り(ネット)
実質利回り(ネット)とは、物件の年間の賃料収入から、諸経費を差し引いた実質の利回り率です。具体的には、年間の賃料収入から管理費、修繕費、税金などの諸経費を差し引いた金額を、物件の購入価格で割って計算します。これは、投資家が物件の収益性をより正確に把握するための指標です。
実質利回り={(物件の年間の賃料収入-不動産投資でかかった諸経費)÷物件価格}×100
例えば、賃料収入が279万円、物件価格が4,500万円、諸経費が35万円かかった場合は次のようになります。
{(279万円-35万円)÷4,500万円}×100=5.42%
この場合、実質利回りは5.42%となります。
想定利回り
想定利回りは不動産投資において、将来の利回りを予測するために用いられる指標です。物件の購入価格に対して、満室時の賃料収入やその他の収益を考慮して算出されます。
想定利回り=(満室と仮定した賃料収入÷物件価格)×100
物件価格が6,300万円、1部屋あたりの年間賃料収入が78万円、6部屋あるアパートで満室になっていると仮定した場合。
想定利回りは、{(78万円×6部屋)÷6,300万円}×100=7.42%になります。
なお、想定利回りで示される数値は、満室になった時の賃料収入を仮定しています。そのため、空室が発生すると利回りは下がる点に注意が必要です。
現行利回り
現行利回りは、現時点での物件の収益性を表し、年間の実質賃料収入を物件の購入価格や市場価格で割って算出します。
現行利回り=(実質賃料収入÷物件価格)×100
物件価格が6,300万円、1部屋あたりの年間賃料収入が78万円、6部屋あるうち1部屋が空室だった場合の現行利回りは、次の計算式となります。
{(78万円×5部屋)÷6,300万円}×100=6.19%
不動産投資の実質利回りは何%が理想なのか?

不動産投資で理想の実質利回りを一律に決めるのは困難でしょう。それは、物件の種類や条件によって理想となる利回りが異なるためです。また、投資の目的や資産状況、個人のリスク許容度によっても、理想や最低ラインの基準が異なります。そこで本章では理想の利回りを目的にわけて確認していきます。
低リスクで安定収入を得たい場合
不動産投資で大きな収益を出したい場合、高利回りの物件を運用していくと、その分のリスクを負うことになります。大きなリスクは背負いたくない、副業のような感覚で不動産収入を得たい、将来に向けて少しでも収入源を増やしておきたい方には3~4%の実質利回りが期待できる物件が合っているでしょう。
一見利回りが低く見える物件でも、条件がよく空室リスクを防げると、安定的な収益が見込めます。小さくてもコツコツと収益を積み重ねていきたい投資家から見ると、理想の実質利回りです。
やや高いリスクでも不動産投資で収益を上げたい場合
本業で不動産投資に取り組もうと考えるなら、実質利回りは7~8%以上あると理想です。利回りが高い不動産を所有して空室なく運用できれば、不動産所得だけで生計を立てていくことも可能になります。
ただし、利回りが高い物件にはそれに応じたリスクを考慮しなければなりません。実質利回りが8%を超える物件は、地方にあったり、築年数が経っていて物件価格が低いために高利回りになっている可能性があります。高利回りの物件はさらに慎重に条件を考慮しなければならないため、本業で不動産投資をする方に合っているでしょう。
不動産投資の利回りの相場は?

理想の実質利回りを解説しましたが、実際の不動産投資では何%くらいの利回りを見込めるのでしょうか。本章では、実際の利回りを日本不動産研究所と健美家のデータで確認してみます。なお、調査対象地域が異なり、実質利回りと期待利回りのデータであるため、完全に比較はできない点にご注意ください。
地域別、物件種別の実質利回り
まず、健美家の収益物件市場動向マンスリーレポート(2024年3月期)を参考に、地域ごとの区分マンション、一棟アパート、一棟マンションの実質利回りを見ていきます。データは以下のとおりです。
地域 | 区分 マンション |
一棟 アパート |
一棟 マンション |
---|---|---|---|
首都圏 | 6.41% | 7.50% | 6.77% |
北海道 | 11.27% | 11.28% | 8.77% |
東海 | 9.87% | 9.59% | 9.35% |
関西 | 7.03% | 8.83% | 8.18% |
中国・四国 | 12.62% | 11.40% | 11.47% |
九州・沖縄 | 9.60% | 9.21% | 8.48% |
この結果を見ると、首都圏の利回りが低く、投資用物件としては向いていないのではないかと考える方もいらっしゃるでしょう。たしかに、首都圏の物件は他の地域に比べて利回りが低い傾向にありますが、これだけを見て「首都圏は不動産投資に向いていない」と結論づけていいものなのでしょうか。
実際のところ、東京は地方からの移住者が絶えず増えており、人気と賃貸需要が高い地域です。そのため、空室リスクが低く、不動産投資にはメリットがあります。利回りだけでなく、最新の市場動向や立地調査なども総合的に判断しなければ、選択を誤るかもしれません。
主要都市別、ワンルームタイプとファミリータイプ一棟の期待利回り
続いて、日本不動産研究会の不動産投資家調査(2023年10月)を参考に主要都市(東京都、名古屋、大阪など)別の、ワンルームタイプ一棟とファミリータイプ一棟の、期待利回りを見ていきます。日本不動産研究会とは国内最大級の不動産の鑑定評価などをおこなっている団体です。データは以下のとおりです。
都市 | ワンルーム タイプ一棟 |
ファミリー タイプ一棟 |
---|---|---|
東京(城南地区※) | 3.8% | 3.8% |
札幌 | 5.0% | 5.0% |
名古屋 | 4.5% | 4.6% |
大阪 | 4.4% | 4.4% |
広島 | 5.2% | 5.2% |
福岡 | 4.6% | 4.6% |
出典:日本不動産研究所ホームページ 不動産投資家調査(2023年10月)PDF p14より
※東京(城南地区):大田区、品川区、港区、目黒区4区をグループ化したエリア
こちらの調査でも、東京(城南地区)で、ワンルームマンションの期待利回りが3.8%台で、他都市よりも利回りが低い水準になりました。東京(城南地区)の不動産は賃貸需要があり、将来的にも価値が落ちにくい魅力はありますが、利回りの数値では低めの水準です。こちらの調査でも不動産投資では、利回りだけでなく立地や需要、市場の動向などを総合的に判断する必要があることがわかります。
不動産投資の利回りを確認する時の注意点は?

理想の利回りを求めるのは悪いことではありませんが、利回りが高いからといっていい投資用物件になるとは限りません。そこで本章では、不動産投資の利回りを確認する時に注意すべき点を紹介します。
利回りだけでなく条件を必ず確認する
不動産投資用物件を検討する際は、利回りだけでなく条件を必ず確認しましょう。なぜなら、広告や物件資料などには、表面利回りが記載されていることが多いためです。表面利回りは、購入時の諸経費や賃貸経営の諸経費、空室リスクが見込まれていません。
また、物件価格が相場よりも極端に高い場合は、算出条件を確認しましょう。立地が悪い、築年数が古い、耐震性が低いなどの理由で物件価格が安い場合は、利回りが高くなっているケースもあります。さらに、1981年以前に旧耐震基準のもとで確認申請が下りた物件は、金融機関からの融資が受けにくい可能性があるため、注意が必要です。
一棟アパートや一棟マンションの場合、満室時の想定利回りが表示されていることが一般的ですが、実際には空室が目立つケースもあります。そのため、空室を確認して現行利回りを算出するほうが確実です。
不動産投資用物件を検討する際には、可能な範囲で諸経費を含めた実質利回りを計算し、空室リスクなどの要因を考慮しましょう。利回りだけでなく、条件を確認して慎重に判断することが成功するためのポイントです。
利回りの高さだけで判断しない
利回りの高さだけで不動産投資用物件を選ぶのは避けましょう。なぜなら、利回りが高い物件が必ずしも優れた投資対象とは限らないからです。資産価値の高い物件は通常、物件価格が高いことから利回りは低い傾向があります。一方で、賃貸需要が高く空室リスクが低いと考えられる物件は、利回りが高くなくても、優れた投資対象です。
不動産投資用物件を検討する際には、表面利回りだけでなく、空室期間や諸経費を盛り込んだシミュレーションをしましょう。また、可能であれば現地を訪れて、交通利便性や周辺の商業施設の使い勝手なども見ておきましょう。利回りだけでなく、物件の総合的な価値や将来性を考慮し、慎重に判断をすることが成功への近道です。
不動産投資の利回りに関するよくある質問
不動産投資の利回りに関するよくある質問をまとめました。
不動産投資の利回りとは?
不動産投資における利回りとは、物件の価格に対する収益の割合を指します。不動産投資用物件を選ぶ際には必ず確認しておきたいポイントの1つです。
不動産投資の利回りの計算方法は?
不動産投資の利回りには、大きくわけて4種類あります。
- 表面利回り(物件の年間の賃料収入を、物件の購入価格で割った割合)
- 実質利回り(物件の年間の賃料収入から、諸経費を差し引いた実質の利回り率)
- 想定利回り(満室時の賃料収入を、物件の購入価格で割った割合)
- 現行利回り(物件の年間の実質賃料収入を、物件の購入価格や市場価格で割る)
それぞれ不動産投資用物件の収益を考えるために重要な数値となります。
不動産投資の理想の実質利回りは?
理想の実質利回りは一概には決められませんが、低リスクで副業のような収入を得たい人には3~4%の実質利回りの物件が理想です。一方、不動産投資を本業でおこない、大きな収益を得たい人は7~8%以上が理想の実質利回りになります。
不動産投資の実質利回りの相場は?
健美家の収益物件市場動向マンスリーレポート(2024年3月期)では、区分マンションでもっとも利回りが高かったのは中国・四国地方で12.62%、低かったのは首都圏で6.41%でした。また、一棟アパートでもっとも高かったのは北海道で11.40%に対し、首都圏がもっとも低く7.50%となっています。一棟マンションでは再度、中国・四国地方が11.47%と高く、首都圏は6.77%になりました。
この結果を見ると、首都圏の利回りが低く、投資用物件としては向いていないのではないかと考えるかもしれませんが、首都圏、東京は地方からの移住者が絶えず増えており、人気と賃貸需要が高い地域です。そのため、不動産投資にはメリットがあります。実質利回りは1つの目安として、不動産投資用物件選びは立地や需要、市場の動向などを総合的に判断しましょう。
不動産投資の利回りを確認する時の注意点は?
不動産投資用物件を検討する際は、利回りだけでなく条件を必ず確認しましょう。なぜなら、広告や物件資料などには、購入時の諸経費や賃貸経営の諸経費、空室リスクが見込まれていない、表面利回りが掲載されているからです。さらに、一棟アパートや一棟マンションの場合、満室時の想定利回りが表示されている場合があるので、現行利回りを確認する点を注意しましょう。
利回りの高さだけで不動産投資用物件を選ぶのも避けましょう。なぜなら、利回りの高い物件が優れた投資対象とは限らないからです。利回りが高くなくても、賃貸需要が高く空室リスクが低いと考えられる優れた投資用物件があります。不動産投資用物件を検討する際には、表面利回りだけでなく、空室期間や諸経費を盛り込んで、物件の総合的な価値や将来性を考慮し、慎重に判断しましょう。
まとめ
本記事では、不動産投資で理想の実質利回りを紹介し、利回りの種類や計算方法を解説しました。利回りを確認する際は、単純な数値だけで比較しないよう注意しましょう。利回りは、不動産投資を成功させたい方に重要なポイントになります。ぜひ活用してみてください。

執筆者
長谷川賢努
AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士
大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ