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サラリーマンが不動産投資で節税する仕組みは?物件の種類と条件や注意点を解説

サラリーマンが不動産投資で節税する仕組みと節税に有利な物件や注意点を解説します
サラリーマンの方のなかには、働きながら得る収入の一部が税金として引かれることに複雑な思いを抱いている方も多いのではないでしょうか。現在、不労所得として不動産投資が注目を集めています。それは不動産投資で賃貸収入を得ながら、所得税や住民税の負担を軽減できるためです。

そこで本記事では、サラリーマンが不動産投資によって節税できる仕組みを解説します。不動産投資をおこなうと、どのような節税効果が生まれるのか、節税が特に効果的なサラリーマンの特徴も知っておきましょう。さらに、節税効果を最大限に引き出すための、節税効果が高い物件の選び方を紹介します。最後に、節税の注意点も解説します。
この記事を読めば、サラリーマンが不動産投資を通じて効果的に節税し、経済的な自由を手に入れるための具体的な方法がわかるでしょう。

サラリーマンが不動産投資で節税できる仕組みは?

サラリーマンが不動産投資で節税できるのはどのような仕組みからでしょうか
サラリーマンが不動産投資で節税できるのはどのような仕組みからでしょうか

不動産投資で、サラリーマンは所得税や住民税、相続税に加え法人化でも節税ができます。それぞれどのような仕組みになっているか、以下で解説します。

所得税・住民税

所得税や住民税に関しては、「減価償却」や「損益通算」をおこなうと、課税対象の所得額を少なく申告でき、毎年の納税額を抑える効果が期待できます。

減価償却を利用する

「減価償却」とは、経年劣化をともなう建物や設備などを一気に経費とするのでなく、耐用年数(利用に耐えうる年数)に応じて経費に算入していくこと。不動産投資のための物件購入費用は必要経費となり、所得税や住民税の納税額は、収入金額から必要経費を差し引いた金額をもとに計算されます。減価償却により、購入時に支払った費用を次年度以降少しずつ経費計上し、不動産購入時から耐用年数が経過するまでの間、所得が少なく申告されるため、所得税と住民税を一定期間にわたって軽減できます。

必要経費には、購入費用の減価償却に加え、固定資産税、損害保険料、修繕費などが含まれます。

損益通算を利用する

「損益通算」とは、不動産投資が赤字の場合、その損失を給与所得やその他の収入から引くことで、所得税額や住民税額を算出する仕組みをいいます。不動産投資以外の収入から差し引く赤字額は、家賃収入から必要経費を差し引いた金額です。

例えば、1年間の家賃収入が400万円で、購入費用の減価償却費が600万円、そのほかの必要経費が200万円だとします。この場合、不動産投資の収支は以下のとおりです。

400万円 - 600万円 - 200万円= -400万円

このケースだと赤字額は400万円です。年収が1,000万円の人がこの金額を損益通算すると仮定すると以下の計算になります。

1,000万円 - 400万円 = 600万円

赤字分を損益通算できるため、課税所得が減り、所得税と住民税を軽減できます。サラリーマンが不動産投資で、住民税と所得税を節税できるのは、減価償却と損益通算を利用するためです。

相続税

サラリーマンが不動産投資すると、相続税の節税にも効果があります。不動産は相続時、同じ価格の現金を所有するよりも低い評価額で計算されるためです。一般的に、不動産の相続税評価額は時価(実際の売買価格)の約80%とされています。例えば、6,000万円相当の現金を持っている場合、そのままの金額が課税対象です。しかし、6,000万円の不動産を所有している場合、その評価額は約4,800万円となり、相続税の負担が軽減されます。

賃貸用物件の場合(土地)

さらに、贈与や相続の対象となる不動産が賃貸用物件の場合、評価額はさらに低くなります。賃貸用物件の場合、土地と建物の評価額が減少し、相続税評価額も低いです。賃貸マンションやアパートが建っている土地は「貸家建付地」として評価され、以下のように計算されます。

【貸家建付地の相続税評価額】
路線価 × 土地面積 ×(1- 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

「路線価」は道路に面する宅地の平方メートルあたりの価格で、地域ごとの設定です。「借地権割合」は地域ごとに異なり、30%から90%の範囲で決まっています。「借家権割合」は全国一律で30%です。「賃貸割合」は、建物全体の床面積のうち賃貸部分の割合を示します。

では例として、路線価が40万円で土地面積が100平方メートルのケースで計算をしてみましょう。この場合の相続税評価額は、単純計算だと以下のとおりです。

40万円 × 100平方メートル = 4,000万円

しかし、借地権割合が70%、賃貸割合が100%の貸家建付地の場合は次のとおりです。

40万円 × 100平方メートル ×(1- 70%× 30%× 100%)= 3,160万円

評価額が低くなる分、相続税も抑えられます。

賃貸用物件の場合(建物)

賃貸用物件の建物の相続税評価額は、固定資産税評価額(新築建築費用の50~60%)に、借家権割合を加味したものとなります。例えば、固定資産税評価額が4,000万円、借家権割合が30%の建物の場合は、以下の金額です。
4,000万円 ×(1- 30%)= 2,800万円

このように、現金ではなく賃貸用物件として資産を所有すると、相続税の評価額が低くなり、結果的に相続税の負担が軽減されます。

法人化

サラリーマンが不動産投資で節税を考える時、法人化するとより節税効果が高められる場合があります。具体的には、課税所得が900万円を超える場合は、法人化が節税に効果的です。次章で詳しく説明しますが、その理由は所得税率にあります。

課税所得が900万円を超えるサラリーマンは、所得税率が33%に達します。一方、法人税は一律で上限が23.2%です。この場合、課税所得が900万円を超えるサラリーマンは法人化したほうが税率を抑えられるので、結果として節税効果が得られます。

また、法人化すると、サラリーマンの時には許可されなかったさまざまな経費が計上できるようになります。例えば、事務所の賃料や通信費、車両費用なども経費化が可能です。さらに、法人は、利益を内部留保して事業の拡大や新たな不動産購入に充てられるため、利益の再投資が容易になります。法人化は、設立や維持にともなうコストがかかりますが、これらの費用を上回る節税効果が期待できるなら、一定以上の収入があるサラリーマンにとって有効な節税手段になるでしょう。

不動産投資で節税すべきサラリーマンとは?

不動産投資で節税すべきなのはどのようなサラリーマンでしょうか
不動産投資で節税すべきなのはどのようなサラリーマンでしょうか

前章でもふれましたが、課税所得が900万円を超えるサラリーマンは、不動産投資での節税が有効です。ではなぜ課税所得が900万円を超えると、節税効果となるのでしょうか。それは、所得税の課税率がポイントです。

令和5年4月1日から現在の法令に基づく所得税の税率は、以下のように決められています。累進課税制度といって、所得が高くなるほど、納税金額は大きくなっていきます。

課税所得金額 税率 控除される金額
1,000円~194万9,000円 5% 0円
195万円~329万9,000円 10% 9万7,500円
330万円~694万9,000円 20% 42万7,500円
695万円~899万9,000円 23% 63万6,000円
900万円~1,799万9,000円 33% 153万6,000円
1,800万円~3,999万9,000円 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

※参照:国税庁

不動産投資の利益は、賃貸収入と保有する物件を売却した場合の売却益です。売却益には当然のように税金が課されます。売却益に課される税金は譲渡所得税です。例えば、不動産を購入して5年を超えてから売却した場合、その利益にかかる税率は約20%になります。

課税所得が900万円を超えているサラリーマンの場合、所得税・住民税の税率は33%以上になるため、譲渡所得税率のほうが低く、節税効果が高まります。しかし、課税所得が900万円以下の人は、所得税率が譲渡所得税率とほぼ変わりません。そのため、不動産投資で節税すべきサラリーマンは、課税所得が900万円を超える人になります。

サラリーマンが不動産投資でより高い節税効果を得られる物件は?

サラリーマンが不動産投資でより高い節税効果を上げるにはどのような物件を選ぶべきでしょうか
サラリーマンが不動産投資でより高い節税効果を上げるにはどのような物件を選ぶべきでしょうか

せっかく不動産投資をして節税をするなら、できるだけ効果を高めたいと思うでしょう。では節税効果を高めるには、どのような物件を選ぶべきでしょうか。

節税効果を高めるには、中古で木造の物件を選ぶべきです。理由は以下のとおりです。

  • 耐用年数が短いほうが、1年あたりの減価償却額が高く計上できる。
  • 新築よりは中古物件のほうが、耐用年数が短くなる。
  • 鉄筋コンクリート造よりも木造のほうが、耐用年数が短くなる。

これらの要因から、中古で木造の物件のほうが、節税効果が高いと判断できます。反対に、新築で鉄筋コンクリート造マンションは、節税効果が低いです。

サラリーマンが不動産投資で節税する際の注意点は?

サラリーマンが不動産投資で節税する際に注意すべきなのはどのような点でしょうか
サラリーマンが不動産投資で節税する際に注意すべきなのはどのような点でしょうか

サラリーマンが不動産投資をすると、一定以上の年収がある人には節税効果が期待できる点がわかりましたが、よい事ばかりではありません。そこで本章では、サラリーマンが不動産投資で節税する際に、注意すべき点をまとめました。

青色申告をする

不動産投資で所得を得た場合はもちろん、損益通算で節税するためにも、確定申告はしなければなりません。確定申告には白色申告と青色申告の2つの方式があります。白色申告は簡易的な申告で済むため、選択したい方も多いでしょう。しかし、青色申告のほうが節税効果は高いため、可能であれば利用したい方法です。ただし、青色申告をするためには、税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出する必要があります。サラリーマンの場合、確定申告に不慣れな方も多いので、税務署などにも相談してみましょう。

節税を第一目的にしない

サラリーマンが不動産投資で節税をする場合は、節税を第一の目的としない点に注意すべきです。不動産投資で節税になる主な方法は、減価償却費を計上する点で、それにより給与所得と損益通算が可能になります。

しかし、減価償却は永遠に続くわけではありません。特に初年度は、大きな節税効果が期待できますが、その後は減少していくため、長期的に見れば節税効果は限られている点を理解しておかなければなりません。
さらに、課税所得が高いサラリーマン、例えば課税所得が900万円以上の人にとっては、節税の効果が顕著に現れやすいですが、課税所得が900万円未満の場合、節税効果は思ったほど大きくならない点も考慮が必要です。そのため、節税だけを不動産投資の目的にすることは得策ではありません。

むしろ、安定した賃料収入を目指す点を主目的にし、その過程で可能な範囲で節税を工夫する方法が推奨されます。不動産投資は長期的な視点で収益を上げる手段であり、節税はその一部に過ぎないと自覚し、収益性や物件の価値、将来的な市場動向など多角的に考慮した投資をする意識を持つようにしましょう。

不動産投資のリスクを十分に理解する

サラリーマンが不動産投資で節税を目指すなら、不動産投資のリスクを十分に理解しておかなければなりません。節税効果を狙って不動産投資をはじめる場合、節税対策や将来の資産形成などのメリットに目を奪われがちですが、実際にはリスクが多いです。投資物件の価値が下落したり、賃貸需要が減少して空室が増えるリスクもあり、投資物件の管理やメンテナンスにもコストがかかります。老朽化した建物の修繕費用や、突発的なトラブルに対応するための費用も考慮しなければなりません。

不動産投資には多くのリスクがともなう点を十分に理解し、総合的な収益性を見据えたうえで計画を立てることが、不動産投資の成功への鍵となります。

サラリーマンが不動産投資で節税することに関するよくある質問

不動産投資でサラリーマンが節税できることに関する、よくある質問をまとめました。

サラリーマンが不動産投資で節税できる仕組みは?

サラリーマンは不動産投資によって、所得税や住民税、相続税に加え法人化で節税が可能。不動産投資のための物件購入費用は必要経費として減価償却され、家賃収入から必要経費を差し引いた赤字額は損益通算されます。減価償却と損益通算が、所得税や住民税の減税の鍵です。サラリーマンが不動産投資すると、相続税の節税にも効果が。不動産は相続時、同じ価格の現金を所有するよりも低い評価額で計算されるためです。さらに、法人化するとより節税効果が高められる場合があります。具体的には、課税所得が900万円を超える場合は、法人化が節税に効果的です。

不動産投資が節税になるサラリーマンの特徴は?

課税所得が900万円を超えるサラリーマンは、不動産投資で節税が有効です。課税所得が900万円を超える場合、所得税・住民税の税率は33%以上ですが、物件購入から5年を超える際の譲渡所得税率は約20%となるため節税効果が高まります。一方、課税所得が900万円以下の人は、所得税率が譲渡所得税率とほぼ変わらないため、効果が期待できません。

サラリーマンが不動産投資でより高い節税効果を得られる物件は?

節税効果を高められる物件は、中古で木造の物件になります。理由は、耐用年数が短いほど、1年あたりの減価償却額を高く計上でき、新築より中古物件、鉄筋コンクリート造より木造のほうが耐用年数は短くなるためです。

サラリーマンが不動産投資で節税する際の注意点は?

サラリーマンが不動産投資で節税する際は、節税を第一目的にしない点を注意しましょう。節税の主となる減価償却は永年続くものではなく、節税が効果的なのも課税所得が900万円以上の人で、サラリーマン全員ではありません。不動産投資の目的を明確にし、リスクをよく理解しておく点も留意しましょう。

まとめ

本記事では、サラリーマンが不動産投資で節税できる仕組みを解説しました。また、不動産投資の節税効果や、節税が効果的なサラリーマンの特徴、節税効果が高い物件も解説しました。本記事には、サラリーマンが不動産投資で節税し、将来の不安を減らし安心して生活を送るヒントが詰まっているので、ぜひご参考にしてください。

長谷川賢努

執筆者

長谷川賢努

AFP(日本FP協会認定)、宅地建物取引士

大学を卒業後、不動産会社に7年勤務、管理職を務めたが、ひとつの業界にとどまることなく、視野を拡げるため、生命保険会社に業界を超え転職。しかしながら、もっと多様な角度から金融商品を提案できるよう、再度転職を決意。今までの経験を活かし、生命保険代理業をおこなう不動産会社の企画室という部署の立ち上げに参画し、商品、セミナー、業務内容の改善を担う。現在は、個人の資産形成コンサルティング業務などもおこなっている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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