マンションの遮音等級とは?種類や調べ方、物件選びのポイントを解説
この記事では、遮音等級の意味や種類、調べ方や遮音性を高めるポイントを解説します。マンションの騒音に悩まされずに暮らしたい方は、ぜひ参考にしてください。
記事の目次
遮音等級とは

遮音等級とは、住宅の壁や床、窓などの建築部材が音をどれだけ遮れるかを示す性能指標です。マンションでは、隣室や上下階から響く生活音をどの程度抑えられるかを判断する目安になります。
遮音等級は、場所ごとに以下の3つの指標に分けられます。
- Dr値:壁やドアが音をどれだけ遮るかを示す値
- T 値:窓やサッシから漏れる音の抑え具合を示す値
- L 値:上階の足音など、床の衝撃音の伝わりにくさを示す値
いずれの等級もJIS(日本産業規格)に基づいて区分されており、住宅の静かさを表す基準として活用されています。一般的には、壁はDr-50前後、床はLL-45程度がマンションで快適に暮らす目安とされています。
Dr値・T値は数字が大きいほど高性能ですが、L値は数字が小さいほど遮音性能が高くなります。
遮音と防音・吸音の違い

遮音とよく混同されるのが、防音と吸音です。ここでは、それぞれの意味の違いを整理します。
遮音と防音の違い
防音は、室内外へ音が伝わるのを抑える対策全般を指す言葉で、その防音対策のなかの具体的な方法のひとつが遮音です。遮音は、壁や床で音を跳ね返し、反対側へ通しにくくする対策です。
具体的には、外からの車の音を室内に入れない、室内の話し声を外へ漏らさないなどの対策が遮音の役割になります。防音の目的を達成するために遮音や吸音などの手段がある、と考えると全体像が掴みやすいでしょう。
遮音と吸音の違い
遮音と吸音は、「音を通さない」か「音を吸い取る」かの違いです。遮音は音を跳ね返して壁の向こう側へ伝えない働きを指し、吸音は音を取り込んで室内の反響を抑える働きを指します。
遮音にはコンクリートや石膏ボードなど密度の高い素材、吸音にはグラスウールやウレタンフォームなど、細かな穴が多い素材が使われます。
ただし、遮音だけでは室内で音が反射して響いてしまい、吸音だけでは音漏れを止められません。そのため、両者を組み合わせることで、外に音を漏らさず、室内も静かな空間にできます。
遮音等級の種類

遮音等級は、計測する場所によって使われる指標が異なります。ここでは、壁・窓・床それぞれの代表的な等級を紹介します。
Dr値・D値(壁・ドア)
壁やドアの遮音性能は、Dr値(D値)で表します。話し声やテレビ音などを、隣の部屋へどれだけ通さないかを示す等級です。
Dr値は現行のJIS規格の公式な呼び方で、D値は日本建築学会の公式な呼び方です。この2つは実務上、同義で扱われることがほとんどです。なお、現行のJIS A 1419-1ではDr等級、日本建築学会の適用等級ではD値表記が慣用です。
Dr値(D値)は数字が大きいほど遮音性能が高く、例えばDr-50なら隣の会話はほぼ聞こえないとされています。ただし、実際の聞こえ方は間取りや施工状況により異なります。
具体的な指標は次の表をご覧ください。
| 遮音性 | 90デシベル程度 (楽器など) |
75デシベル程度 (会話など) |
|---|---|---|
| Dr-25 | うるさく聞こえる | 内容がそのままわかる |
| Dr-30 | とてもよく聞こえる | 話の中身がわかる |
| Dr-35 | しっかり聞こえる | かなり聞こえる |
| Dr-40 | 曲がはっきりわかる | 小さく聞こえる |
| Dr-45 | かなり聞こえる | かすかに聞こえる |
| Dr-50 | 小さく聞こえる | ほぼ聞こえない |
| Dr-55 | かすかに聞こえる | 普段は聞こえない |
| Dr-60 | ほぼ聞こえない | 聞こえない |
| Dr-65 | 普段は聞こえない | 聞こえない |
出典:株式会社環境技術センター「建築物の遮音性能基準と設計指針[第二版]日本建築学会編 技報堂 p6-p8」
上記のとおり、同じ等級でも音の種類によって聞こえ方は変わります。楽器やステレオのような大きな音は会話やテレビよりも遮りにくい傾向にあるため、遮りたい音に合わせてDr値(D値)を比較しましょう。
T値(窓・サッシ)
窓やサッシの遮音性能は、T値で表します。壁がしっかりしていても、音は窓のすき間などから漏れるため、開口部の等級も確認しておかなければなりません。
T値はJISで定められており、T-1からT-4まで4段階あります。数字が大きいほど遮音性能は高く、T-4はレコーディングスタジオなど、高い遮音性能が求められる施設で採用されることがあり、T-1は一般的な住宅向けの目安とされています。
| 遮音等級 | 想定される使い方の例 |
|---|---|
| T-4 | レコーディングスタジオ・放送スタジオなど |
| T-3 | ピアノ教室・劇場・映画館など |
| T-2 | 会議室・カラオケルームなど |
| T-1 | 一般的な住宅・居室など |
出典:一般社団法人 日本サッシ協会「窓の性能とJIS基準について」
住宅で外の音が気になる場合は、T値に合わせて窓を二重サッシや複層ガラスに変えることで騒音を抑えられる可能性があります。
LL値・LH値・ΔL等級(床)
床の遮音性能は、LL値・LH値とΔL等級で示されます。上階から下階へ伝わる足音などの衝撃音が対象で、L値の数字が小さいほど高性能です。軽い音(スプーンなどを落とす音など)はLL値、重い音(子どもが跳びはねる音など)はLH値で表します。
LL値・LH値の等級は以下の表を参考にしてください。
| 適用される 等級 |
等級軽い音 (LL・スプーンを落とす音など) |
重い音 (LH・子どもが跳ねる音など) |
|---|---|---|
| 特級 | LL-40 | LH-45 |
| 1級 | LL-45 | LH-50 |
| 2級 | LL-55 | LH-55 |
| 3級 | LL-60 | LH-60 |
出典:株式会社環境技術センター「日本建築学会による建物・室用途別性能基準」
日本建築学会は、集合住宅で1級以上、つまりLL-45・LH-50以上の水準を勧めています。
また、ΔL等級は床材が音を軽減する力を表し、こちらは値が大きいほど高性能になります。ΔL等級の違いは次のとおりです。
| 新遮音等級 (ΔL) |
一般的な比較 イメージ(LL値) |
軽い衝撃音の聞こえ方 | 上の階の暮らしの感じ方 |
|---|---|---|---|
| ΔLL(Ⅰ)-3 | LL-50 | イスを動かす音などが伝わる | 上の階の暮らしぶりが少し伝わる |
| ΔLL(Ⅰ)-4 | LL-45 | 気にせず暮らせる程度 | 聞こえるが、あまり気にならない |
| ΔLL(Ⅰ)-5 | LL-40 | ほとんど聞こえない | 気配はときどき感じる |
| ΔLL(Ⅰ)-6 | LL-35 | 普段はまず聞こえない | 上の階の気配をほとんど感じない |
特に、足音が気になる小さなお子さんがいる家庭ほど、LL値・LH値・ΔL等級を意識しておくと安心です。
なお、ΔL等級は床材単体を実験室で測定した値であり、実際の建物での聞こえ方はスラブ厚や工法によって変わります。上表のLL値はあくまで目安で、両者は厳密に対応するものではありません。また、-6は-5を超える高性能品に例外的に用いられる表記です。
遮音等級の調べ方

ここからは、遮音等級の調べ方を見ていきましょう。
設計図書・住宅性能評価書で確認する
もっともわかりやすく遮音等級を確認できる方法は、物件の設計図書や住宅性能評価書から数値を読み取ることです。
住宅性能評価書とは、国土交通省の住宅性能表示制度に基づいて、第三者が客観的に住宅を評価した結果をまとめた資料です。住宅性能評価書や設計図書、設計仕様書などに、遮音等級が数値で記載されている場合があるため、まずは該当欄を確認してみましょう。
また、設計図書やパンフレットの「床のコンクリート厚」や「壁の構造」なども、遮音等級を確認するポイントです。一般的に、床のコンクリートの厚さが200mm以上あったり、壁にグラスウールなどの吸音材が使用されていたりすると、遮音性が高い可能性があります。
書類で遮音等級の記載や構造の項目が見当たらない場合は、不動産会社や管理会社へ問い合わせてみてください。
部位ごとの等級から判断する
遮音等級は部位ごとに分かれるため、設計図書や住宅性能評価書で確認できない場合は、気になる場所の等級を見て判断しましょう。
例えば上階の足音が心配ならL値、隣の話し声やテレビ音なら壁のDr値、外の車や電車の音が気になるなら窓のT値に注目してみてください。自分の暮らしで困りそうな音から逆算すると、確認するべき等級が明確になるでしょう。
第三者機関による現地遮音測定サービスを利用する
上記の方法でも遮音等級がわからない場合は、専門機関の現地遮音測定サービスを使う方法があります。実際に部屋で音を出して計測するため、遮音性能を数値で客観的に把握できます。
現地遮音測定サービスを利用する流れは以下のとおりです。
- STEP 1測定会社へ測定を依頼する
- STEP 2現地で専用機器を使用して計測する
- STEP 3調査結果のレポートを受け取る
費用は部屋数や計測する範囲によって異なるため、事前に見積もりを取っておきましょう。図面の数値と実際の静けさが合っているかを確認したい方や、複数の物件を遮音性で比較したい方にもおすすめです。
遮音等級が高いメリット

ここからは、遮音等級が高い住宅に住むメリット4つを紹介します。
プライバシーを保護できる
遮音性が高いと自分の声や生活音が外に漏れにくいため、プライバシーを守れます。話し声や電話、テレビの音などが左右上下階へ届きにくいため、家での過ごし方を他人に知られにくくなります。
室内で映画や音楽を大きめの音量で楽しんだり、ピアノを弾いたりする方は、遮音等級が高い住宅を選ぶとよいでしょう。さらに、夜勤で日中は寝ていることが多い方や、在宅勤務で家にいる時間が長い方にもおすすめです。
静かで快適な環境になる
遮音性が高い部屋は、外からの音が入りにくいため、室内を静かに保てます。例えば、室外からの以下のような騒音をシャットアウトできます。
- 上階の住民の足音
- 隣室の話し声
- 外を走る車や電車の音
外からの音が届きにくいと、在宅勤務で集中したい時や睡眠の時間でも、雑音に邪魔されにくくなります。
ストレス軽減につながる
遮音性が高いと騒音に関する悩みが減るため、ストレスの軽減につながります。自分が静かに過ごせるだけでなく、「うるさいと思われないか」という不安も減らすことができるでしょう。
例えば、小さなお子さんがいる家庭では足音や泣き声で近所に気を遣う心配が少なくなり、家族で住んでいる場合は極端に小さな声で話す必要がありません。
騒音トラブルは、一度起きると関係を戻すのが難しい場合もあるため、初めからトラブルが起きにくい物件を選ぶことがポイントです。
物件の資産価値が向上する
遮音性の高さは、資産価値の向上にもつながります。静かに生活できる部屋は需要が高いため、遮音性能の高い物件は売却や賃貸で選ばれやすい傾向にあります。
近年は、遮音等級を公開する物件も増え、物件探しで遮音性能がわかりやすくなりました。特に立地や築年数が近い物件を比較する際、遮音性の差が決め手になる場面もあるでしょう。
将来の住み替えや売却まで見据えてマンションを購入するのであれば、遮音性にも注目して物件を選びましょう。
遮音等級が高いデメリット

遮音等級が高い住宅には、メリットだけでなくデメリットもあります。ここでは、代表的な3つのデメリットを紹介します。
建築・工事の費用が高くなる
遮音等級を高めるほど通常より多くの材料や手間がかかるため、建築や工事費用がかさむ傾向にあります。例えば、遮音フローリングを採用すると、一般的な床材よりも価格が上がります。
また、窓を二重サッシに替えたり、壁を厚くしたりする対策も、その分の費用が上乗せされます。遮音性が高い住宅を選ぶ際は、予算とのバランスを見ながら比較検討しましょう。
部屋が狭くなる
遮音等級を高めるためには二重床や二重壁などで厚みを作る必要があり、その結果、部屋が狭くなるおそれがあります。床の遮音のために二重床にすると、床が数cm上がり、その分だけ天井が低く感じられます。
また、壁を厚くして遮音性を上げる場合も、室内の面積が狭くなります。遮音等級を高めるリフォームをする場合は、事前にゆとりのある家具の配置を計画しておきましょう。
湿気がこもりやすくなる
遮音性を高める工事では、窓や壁のすき間をふさいで気密性を上げるため、湿気がこもりやすくなります。湿気が溜まると結露やカビが発生しやすくなり、健康状態にも悪影響を及ぼすかもしれません。
湿気がこもらないようにするには、換気扇をこまめに回したり24時間換気を活用したりする方法がおすすめです。物件を選ぶ際は、遮音性の高さだけでなく、換気のしやすさにも注目しましょう。
マンションの遮音性を考える際のポイント

マンションの遮音性は、やみくもに工事すれば高まるものではありません。ここでは、マンションの遮音性に関して、押さえたいポイントを紹介します。
遮音等級の目安を知る
遮音性を考える際は、自分の暮らしに必要な遮音等級の目安を把握しておきましょう。状況によって求められる静かさが違うため、基準があると適切に物件を比較検討できます。
具体的には、集合住宅の床はLL-45(ΔLL(Ⅰ)-4)以下が快適に生活できる目安とされています。壁は、隣の会話が気になりにくいDr-50前後が目安です。
また、ピアノや楽器などの音を出す環境の場合は、さらに高い等級を選ぶと安心です。自分にはどの程度の遮音等級が必要なのかを整理して、それに合った物件やリフォームを選びましょう。
窓・ドア(開口部)の対策をする
窓やドアなどの開口部は、音を通しやすい部分です。壁がしっかりしていてもすき間から音が漏れてしまうため、開口部を対策すると遮音の効果が大きくなります。
窓は、一般的なアルミサッシだと気密性が低いため、複層ガラスや二重サッシに替えるのがおすすめです。ドアは気密性の高い防音タイプを選び、下のすき間をふさぐと音漏れを抑えられます。
マンションは個人で構造部分のリフォームができないため、遮音性を高めたい場合は、開口部のリフォームを優先しておこないましょう。
間取りの工夫・ゾーニングをする
部屋の配置を工夫すれば、リフォームに頼りすぎなくても遮音性を高められます。具体的には、音の出る部屋と静かに過ごしたい部屋を離してみましょう。
例えば、寝室と浴室が壁1枚で接していると、他の家族が入浴する音で目覚めてしまうことがあります。その場合、間に収納などの空間を挟むとそこが緩衝帯となり、静かに過ごせます。
リフォームや構造に頼らず遮音性を高めたい方は、間取り図で音の流れをイメージして物件を選んでみてください。
壁・床・天井を二重構造・多層構造にする
壁や床、天井を多層構造にすると、遮音性を高められます。材料を重ねて質量を増やし、間に空気層や吸音材を挟むと、音が伝わりにくくなります。
壁は石膏ボードに吸音材を組み合わせると遮音性が高まり、床は二重床やクッション材を使用することで、下階への足音を和らげられます。天井は、吸音材や防振の金具を使ってリフォームすれば、上階からの音を受けにくくなります。
ただし、遮音性にこだわりすぎると予算がオーバーしてしまう恐れがあるため、必要な場所にしぼって対策しましょう。
遮音等級に関するよくある質問

遮音等級に関するよくある質問をまとめました。
遮音等級とは?
遮音等級とは、壁・床・窓などが、音をどれだけシャットアウトできるかを数値で表したものです。遮音等級はJISに基づく測定方法や評価方法、日本建築学会などの性能基準により評価されています。どれだけ静かな環境で過ごせるのかを見極める目安として役立ちます。
遮音等級の種類は?
遮音等級は、測る場所によって3種類に分かれます。壁やドアはDr値(D値)、窓やサッシはT値、床はL値(LL値・LH値)です。Dr値とT値は数字が大きいほど、L値は数字が小さいほど遮音性能が高くなります。床材そのものの力を示すΔL等級は、値が大きいほど高性能です。
マンションの遮音性を考える際のポイントは?
マンションの遮音性は、まず暮らしに必要な等級の目安を知り、音を通しやすい窓やドアなどの開口部を対策しましょう。さらに、音の出る部屋と静かな部屋を離すなどの工夫をしたり、壁・床・天井を多層構造にしたりすれば、遮音性が高まります。
遮音等級の正しい知識を知っておけば、住み心地のよいマンションを選ぶ際のヒントになります。気になる物件があれば、遮音等級にも目を向けながら、信頼できる不動産会社に相談してみてはいかがでしょうか。
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