【事例あり】吹き抜けとは？メリット・デメリットや後悔しないための対策を解説

吹き抜けとは？

吹き抜けとは、主に複数階のある建物において、上下階ごとの仕切り（床・天井）がない空間を指します。例えば２階建ての住宅なら、上階の一部スペースをくり抜いたような形。この上下階を貫いた空間を吹き抜けといい、ホテルのロビーやショッピングモールなどでも見られる設計方法です。一般住宅でよくあるのは、リビングに階段を設けて、上階の一部を貫くタイプ。または玄関上に当たる上階部分を取り除き、一番上の天井までつながる吹き抜けなども見られます。

吹き抜けのメリット

吹き抜けは、個性的でスタイリッシュな空間デザインだけでなく、機能面でもさまざまなメリットがあります。

開放感があり１階が広く感じる

吹き抜けにすることで、１階から天井までの縦の空間が広がり、圧迫感が少なくなるのも大きなメリットです。天井が高くなる分、開放的な印象になるので、吹き抜けのある１階部分が広々と感じられる空間演出ができます。

採光・風通しがいい

吹き抜けの上部に窓を設置すれば、空に近い高所から採光しやすくなり、日当たりもよくなるのが魅力です。室内への採光量が確保しやすくなるため、例えば周りに高い建物がある・隣の家との距離が近いなど、日当たりが心配な時にも吹き抜けはおすすめ。部屋を明るくするのにも、吹き抜けが役立つでしょう。また吹き抜けにより換気できる窓が増える分、風通しがよくなる利点もあります。

１階と２階のコミュニケーションが取りやすい

特にリビングを吹き抜けにするタイプでは、２階部分をロフトのようなイメージで、１階に付属した形にする例がよく見られます。上下階が一体化したような空間になるので、１階と２階でスペースが分断されにくくなり、家族のふれあいもしやすくなるのがメリット。また、リビング内に階段があれば、上下階の行き来で必ずリビングを通ることになるため、コミュニケーションも取りやすい利点があります。

吹き抜けのデメリットと対策

ここまでに見てきたように、吹き抜けにはよりよい住まいにできるメリットがいくつもありますが、一方で気を付けておきたい部分も。あらかじめ頭に入れておきたい、以下のようなデメリットもあります。

２階が狭くなる

吹き抜けを設けるには、上階の一部の床を取り払うことになります。単純に上階の床面積が小さくなるため、居室にできるスペースが狭くなるのはデメリットかもしれません。吹き抜けがあることで、上階の部屋数が取りにくい一面もあるので、居室の数や広さを確保したい時には注意が必要です。

【対策】将来的に必要になったら増床できる設計にする

ゆくゆくは子ども部屋などを追加する可能性もある場合には、あとから吹き抜け部分に床を貼れる設計にしておくのがおすすめ。例えばはじめから２階部分は４部屋設置する想定の設計にしておき、うち１部屋を吹き抜けにする間取りにすれば、増床のリフォームをする際にも、生活動線や構造なども大きく変えずにリフォームできます。あらかじめ将来のライフプランも考慮しながら、吹き抜けの間取りはどうするのか検討しましょう。

夏は暑く冬は寒い

吹き抜けによって、天井から日光が降り注ぐことになるため、夏場は強い日射しで室温も上がりやすい難点があります。さらに気温が低くなるほど、空気の密度が高まって冷気は下に回るため、冬には１階部分が寒くなりやすい一面も。吹き抜けがあると、気候の変動を受けやすい点にも注意しましょう。

【対策】断熱・気密性を高める

吹き抜けをつくる場合には、壁・屋根・床下・窓など断熱性・気密性に優れた建材を活用し、建物自体を年中快適に過ごしやすい温度にするのがベターです。その他にも、窓に断熱フィルムを貼る・ブラインドで日当たりを調整するなど、季節ごとに対策を加えていく方法もあります。

冷暖房が効きにくい

天井が高くなって縦の広さが生まれる分、一般的な部屋に比べると、冷暖房効率が下がりやすい一面もあります。また暖かい空気は、冷気とは反対にどんどん上に回っていくので、冬場は床に近いほど冷え込みやすくなります。吹き抜けがある場合には、以下のような対策を検討してみましょう。

【対策】

シーリングファンを活用して空気を循環させたり、冷暖房設備自体の性能を高めたりすることで、暑さ・寒さ対策ができます。特に冬場は、床付近が寒くなりやすいため、床暖房やホットカーペットがおすすめ。なお全館空調システムとは、家全体の空気を循環させて一定の室温に保つ冷暖システムで、いつでも快適に維持できる設備として注目されています。吹き抜けを検討する際には、空調設備の機能に注意すると快適な住まいをつくることができるでしょう。

音やニオイが２階に伝わりやすい

吹き抜けを通じて、１階で発する物音や料理中のニオイなどが２階に届きやすくなり、意外と気になる場合があります。例えば音問題で考えるなら、「２階の寝室まで生活音が聞こえて睡眠の妨げになる」、反対に「１階まで上からの物音が響いてくつろげない」など。音やニオイに敏感な場合には、せっかくの住まいで居心地が悪く感じてしまうケースも考えられるため、以下のような対策をするのがおすすめです。

【対策】

例えば壁紙・フロアマット・カーペットなどで、防音や消臭の効果があるものもいくつか出ているので、音やニオイが心配な時には便利です。防音なら寝室や子ども部屋、消臭ならキッチンというように、特に気になりやすいスペースに集中して対策すると効率的でしょう。また吹き抜けに換気機能があると、ニオイを逃す対策にできます。

高所のメンテナンスがしづらい

吹き抜けの部分は天井までの高さが高くなるため、電球の交換や照明器具・シーリングファン・窓などの掃除がしにくく、メンテナンスに手間がかかりやすい点にも注意が必要です。脚立で手が届く範囲なら問題ありませんが、自分で対応できない時には、清掃会社などに依頼しなければならないケースも。特に電球の取り換えは自分でできないと困ってしまうので、次のように対策しておきましょう。

【対策】

電球の交換をどうするのかを解決する方法として、使用する照明や設置場所を工夫して、自分で簡単に交換できる対策をしておくと安心です。また、作業用の通路を設置しておけば、電球の交換だけでなく、日常的に掃除をしたい場合にも便利でしょう。高所になると、脚立などを使うのも危ないので、手が届きやすくなるような対策がおすすめです。

吹き抜けをつくる時の注意点

吹き抜けのある家を建てる時、法律関係・耐震性・安全性などは、基本的にハウスメーカーや施工会社などのプロに任せられる部分ではあります。とはいえ専門的な部分はわからなくても、吹き抜けをつくる時に特に意識しておいた方がいいポイントがいくつかあります。また、さまざまな問題から、すべての理想を叶えるのが難しいケースがあることも頭に入れておきましょう。

法規制と建築許可を確認する

どのような建物でも、敷地があれば自由に建てられるわけではなく、法規制や各地域の建築許可に従わなければなりません。吹き抜けなら、設置できる高さ・安全基準・様式など、地域ごとに異なる規定が設けられています。「こんな風にしたい！」との要望があっても、法的なルールから実現できないケースもあるので注意しましょう。

耐震性を意識する　

吹き抜けにすると、建物の構造として大きな空洞ができることになり、水平方向（横）からの負荷に弱くなりやすい一面もあります。設計の際には、例えば地震の横揺れなどにも耐えられるような、耐震性も十分に考慮してもらうことが重要です。

安全面に配慮する

小さなお子さんやペットがいる場合、設計次第では、上階からの転落の危険性も想定されます。壁や柵の高さ・設置方法などにもしっかりと配慮し、設計段階で事故防止ができるような工夫をしておきましょう。

吹き抜けと相性がいいのは？おすすめの照明　

吹き抜けにすると、天井とフロアの距離が離れるため、一般的なシーリングライトでは照明として不十分なケースも。部屋の設計や明るさ、メンテナンス面など、さまざまな観点から自宅の吹き抜けに合った照明を選ぶ必要があります。吹き抜けとの相性がいい照明として、以下にいくつかの例を挙げていくので、ぜひ参考にしてみてください。

ペンダントライト

ペンダントライトは、天井から吊り下げるタイプの照明です。ペンダントライトのアーム部分は、一般的には調整できるようになっているものが多く、高さは自由に設定できます。ペンダントライトのような吊り下げ型なら、吹き抜けで天井が遠くなっていても、アームを伸ばして適切な高さに設置可能です。

ブラケットライト

ブラケットライトは、壁への取り付け・埋め込み型になった照明です。ブラケットライトは、設計段階で取り付けができるように準備しておくのが基本ですが、なかにはコンセントにつないで使用できるタイプもあります。壁照明のため、吹き抜けのように天井が高い場合でも、フロアに近い高さに設置して使えるメリットがあります。

スポットライト

スポットライトは、一箇所に集中して明るくするタイプの照明です。比較的小さめのものが多く、吹き抜けの梁や壁などにダクトレールを設置し、複数個使用することで部屋全体を明るくする例が多くみられます。また、シーリングライトやペンダントライトなどのメインの照明に加え、明かりの足りない部分に補助的な照明として活用するケースも。向きや位置を変えるなどして明るさや雰囲気を変えたりして楽しみたい方におすすめです。

シーリングファンライト

シーリングファンライトは、送風機ファン（プロペラ）と電球が一体となった照明です。シーリングファンライトなら、空気循環と照明の双方の機能を利用できます。部屋の明かりの確保にも、冷暖房対策にも使えるので、天井が高い吹き抜けにおすすめ。シーリングファンライトでは、ペンダントライトのようにアームで吊り下げて高さを調整できるタイプもあるため、吹き抜けに使いやすいのがメリットです。

間接照明

間接照明は、基本的には壁や床などを照らして、やわらかな明かりを演出するものです。例えば吹き抜けによってできた梁や高めの壁を使ったり、フロアに直接立てられるスタンドタイプを利用したりして、おしゃれな雰囲気をつくり出せます。

参考にしたい吹き抜けのある家のアイデア事例

ではここからは、吹き抜けのデザインや活用方法の参考例についてご紹介します。事例ごとに、さまざまなアイデアが詰まっているので、ぜひチェックしてみてください。

ミニマムハウスでも吹き抜けで広々

こちらは、キッチンの真上部分のみを２階として、ダイニングスペースを吹き抜けにしています。縦の空間を活用して広いリビングをつくると同時に、ダイニングを吹き抜けにして部屋全体の圧迫感を軽減。吹き抜けによって、狭い物件を開放的に活用した事例です。

４mの木を育てる吹き抜け

こちらは、リビングダイニングの上を吹き抜けとしている事例です。高さ４mの木「シマトネリコ」をダイニングテーブルの一部に組み込むという大胆なアイデアで、日当たり・風遠しがよく高さのある吹き抜け空間を効果的に活用しています。室内では育てにくい「木」を吹き抜けで育てることを実現し、吹き抜けに面したワークスペースから木を眺めることも可能に。吹き抜けの特徴をうまく活用したことで、「本当なら森に住みたい」という願望を叶えた住まいになっています。

インナーガレージと居住空間をつなぐ吹き抜け

こちらは、インナーガレージと居住スペースをつなぐような吹き抜けにしている事例です。インナーガレージの一部を吹き抜けにすることで、居室と切り分けつつも趣味が垣間見える、おしゃれな空間を演出。吹き抜けをうまく使って、住まい全体の統一感を出しているのが魅力です。

まとめ

吹き抜けは、上下階のフロアを一体化させながら、明るさと開放感を演出できる住まいの形です。採光がしやすい分、外気や日光によって室温が左右されやすい一面もありますが、さまざまな対策方法で解決することも可能。また吹き抜けという特殊な構造だからこそ、照明にもこだわることで、より心地のよい居住スペースをつくり上げられます。ぜひ本記事を参考に、素敵な住まいづくりのエッセンスとして、吹き抜けのある家も検討してみてください。