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一戸建てリノベーション事例「乗り物も家も古びたものが好き。修理を楽しむ図工室的ガレージ」

雑誌「LiVES」に掲載された一戸建てリノベーション事例から、今回は東京都狛江市のNさんご家族の事例をご紹介。築50年の戸建てをリノベーションしたガレージでいじるのは70年前の自転車。時を重ねたものを愛でる楽しさを、家族とも分かち合う。(text_ Eri Matsukawa photograph_ Takuya Furusue)

修理する楽しさを反映したリノベーション

古いものを修理して使うのが大好きだというNさん。愛車のディフェンダーは13年間、毎日通勤の脚として乗り続けている。車よりも深みにはまっているのが、自転車だ。自宅に5台、実家には20~25台ほど。どれも年代物ばかりだ。

「特に好きなのはイタリアの古い自転車で、ふだん買い物などで乗っている1952年製の自転車は、コレクションの中では新しい方です」

あらゆるものを修理・カスタムする道具や材料が所狭しと置かれ、そのすべてが絵になっている。Snap-onの工具箱は赤が浮き気味なので買い換えたいと思っている。

上下にガレージとリビング。ガラス張りの間仕切りと内窓がお互いの気配を伝え合う。内窓のフレームはラワンだが、ガレージ側にはスチールのフラットバーをつけた。

インナーガレージの天井を一部撤去して住居部分へとつながる吹き抜けに。玄関から連続するように設けた内階段で行き来が可能。半ば生活空間の一部となっている。

愛猫「スマリ」はまだ2歳で、ソマリという種類。

その趣味性はガレージや家づくりにも色濃く反映された。新築への興味はなく、築50年の中古物件をリノベーション。半地下と1階はコンクリート、2階は木造という変わり種。元々車庫だった半地下部分を、作業場として使えるインナーガレージに改装。たわんで危険だったコンクリートスラブを撤去して木造の梁を架け、1階の床板を天井としたことで、ギリギリ高さを確保した。

道路との落差が激しかった庭の一部は、道路面と合わせてならし、ディフェンダーのための外部ガレージに。新たに設けたウッドデッキがその屋根となり、庭、既存テラス、ウッドデッキの3つのレベルで外部空間を立体的に楽しめる。

リビングとその向こうにガレージの吹き抜けを見る。色彩は木、グレー、黒に絞り、生の素材感を活かした内装で統一感を出した。革のソファは友人がデザイン。

天井は内装を剥がし、コンクリートの荒々しさを活かした。壁には高圧木毛セメント板を採用。ダイニングのYチェアやヤコブセンのペンダント照明はヴィンテージ。

ウッドデッキの床は、キッチンの腰高窓と高さをそろえた。

LDKと扉1枚でつながる洗面所。鏡はこの家にあったものを再利用した。鏡下部の古材は「どこかで拾ってきたもの」(Nさん)。

図工室のようなインナーガレージ

「小学生の頃から、図工室の匂いや雰囲気が好きで、いつかあんな部屋を持てたらと憧れていました」

インナーガレージには、主に自転車修理のための無数の道具や材料・パーツ類が。古い棚やキャビネットに、時を忘れたように収まっている。多くの家具什器は、捨てられるところを譲り受けたもの。それらが渾然一体となり、あの懐かしい図工室の匂いを立ち上らせる。

たわんでいたコンクリートスラブを撤去し、新たに木組の天井を造作。梁や垂木をむき出しにして低さを緩和したことで、頭がぶつからず作業しやすい部屋に。

左・階段下スペースにも作業台を置いて有効活用。作業台はいくらあっても足りないほど。/右・ツールケースは裁縫が得意な妻の手作り。道具がきれいに収まり、持ち運びしやすい。
ガレージ奥の倉庫。駐車場につながる扉があり、荷物の積み下ろしに便利。

インナーガレージの天井スラブを撤去してできた吹き抜けには、新たに住居部分と行き来できる階段を設けた。ガラス張りの間仕切りでリビングとつながり、作業中も家族の存在を感じていられる。ただ、このインナーガレージを使うのはNさんだけではない。妻も娘もものづくりが大好きだから、気が向くとここを創作の場として利用する。Nさんは、仕事の悩みやモヤモヤを抱えたとき、ここで作業台に向かい趣味のことを考える。そのうちに、気持ちがクリアになるという。

「不思議なことですが、そう感じるのは私だけではなさそうです。みんなリビングよりもインナーガレージにいる時間のほうが長い。ここは家族みんなにとって、大切な場所になっているんだと思います」

物件内覧時に魅力を感じた、アイアン+木の階段手すり。アイアン部分の塗装を剥がして、オリジナルよりシャビー感を強調。階段下の壁を抜いて裏動線をつくった。

住居部分は玄関と水まわりをつなぐ裏動線を新たにつくり、回遊可能に。
東面は古いシャッターとブロック積みの壁を撤去して新たに建具と壁をつくった。スチールの引き戸はあえて素通しのガラスに。

建物データ

〈敷地面積〉175.63㎡〈建築面積〉74.55㎡〈床面積〉地階 62.43㎡、1階 52.79㎡、2階 55.92㎡、合計 102.77㎡〈用途地域〉第一種低層住居専用地域〈主要構造〉鉄筋コンクリート造、一部木造〈既存建物竣工〉1971年〈リノベーション 竣工〉2018年〈設計期間〉9ヶ月〈工事期間〉5ヶ月〈設計〉Tsudou Design Studio/ 須藤剛建築設計事務所〈構造設計〉yasuhirokaneda STRUCTURE〈施工〉バレッグス

※この記事はLiVES Vol.120に掲載されたものを転載しています。
※LiVESは、オンライン書店にてご購入いただけます。amazonで【LiVES】の購入を希望される方はコチラ

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