このページの一番上へ

リノベーションマンション事例「住まいをダウンサイジング。ミニマムハウスで愉快な都心生活」

雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、大阪府大阪市のOさんご家族の事例をご紹介します。一戸建てからコンパクトマンションをリノベして住み替え。住まいの無駄をなくし、街なかの魅力を享受しながら毎日を豊かに生きる。(text_ Manami Eto photograph_ Takashi Daibo)

自然豊かな庭付き一戸建てで、のびのびと暮らしたい―。子育て世帯の郊外思考が高まるなか、Oさん一家が選んだのはその真逆。都心のコンパクトな家がいいと、最初から決めていた。

「3人家族ですし、掃除も大変なので、余分な部屋はいらない。息子が閉じこもってしまうことも避けたいと思いました」(奥さま)

螺旋階段を撤去し、開放的な景色が誕生。玄関から見渡せるコンパクトな住まいが家族を一つに。「宿題をしているふりはできなくなったけど」と息子さんも笑う。

数年前に大阪市内で建売住宅を購入したものの、部屋数の多さに暮らしにくさを感じていた。ご主人の転勤を経て大阪に戻り、新生活の拠点に選んだのが、繁華街まで自転車圏内、教育環境が良く、公園の隣で静かなマンションの一室。間取りは1LDK+ロフトのメゾネットタイプで、螺旋階段があり、狭さが素材として面白そうだと直感したという。

「リノベーションを依頼した藤井さんとは、たまたま同じ芸術大学の出身。ユニークな空間をつくってくれると期待しましたね」(ご主人)

個室をつくらず、シンボルのように存在していた螺旋階段を取り払い、ロフトは寝室ではなくリビングに。新しいアイデアを求めるご主人の期待通り、思いがけないプランが生まれた。

階段は空間を邪魔せず、強度を保てるラインを探って何度も試作した。ひし形にデザインした壁が高さを強調。FLOSのストリングスライトが空間を切り取る。

上階のリビングにいても階下の家族と会話できる。テレビは壁掛けにして空間を広く使う。
天窓から奥さまは空や月を、息子さんは飛行機を眺めるのが好きな過ごし方。

「珍しい狭小メゾネットの縦空間を活かしました。高さを強調し、広々と見せるため、ミニマムな階段製作には時間をかけました」(藤井さん)

キッチンは端正な印象の柾目の桐を使ってオリジナル製作。愛猫が入り込まないようにシンクやコンロを隠せる真鍮張りの引き戸も取り付けた。外光や照明の明かりが真鍮に反射し、あたたかな雰囲気を放っている。ダイニング横に配した寝室も壁で仕切ることなく、天窓やバルコニーからの光を室内全体に届けている。

ご夫妻からの唯一の希望は、「収納を多く」ということ。ベッド代わりの小上がりは下部をすべて収納に。キッチンからのびる壁面収納には本やシーズンオフの洋服を。リビングのテレビ裏は息子さんのおもちゃをしまう「秘密の倉庫」だ。玄関横にもクローゼットを設けた。

クールなコンクリート壁と優美な桐や真鍮のギャップを楽しむ。棚の奥行きを活かして手前に本、奥に衣類を詰めたボックスを収納。棚板はガラスで軽やかに。
キッチンとオープン棚を隠す引き戸。真鍮に暮らしの風景が映り込む。把手はアーティスト作。
左・上下運動の好きな猫も楽しい空間。階段がお気に入りの場所。/右・収納兼ベッドとなる小上がりは、タイルとラワン材で製作。
玄関まわりにウォークインクローゼット、洗面、トイレ、バスルーム、洗濯機を配置。無駄な移動がなく、時間を有意義に。ウォークインクローゼットの扉を鏡張りにして空間を広く見せている。

「持ち物は半分に減らしました。学習机も手放して、家具は必要最小限にしています」(奥さま)

息子さんはいつも姿が見える場所にいる。それぞれが好きな音楽を一緒に聴き、3人でライブハウスへ出かけるのも都心ならではの楽しみ。小さな家と街を余すところなく活用し、濃密な家族の時間を紡いでいる。

素朴ながら印象的な玄関のブラケット照明はLUMINABELLA 。

さりげなく飾られたアートやインテリアアイテムが、日々の暮らしのスパイスに。

建物データ

〈専有面積〉53㎡〈バルコニー面積〉12㎡〈主要構造〉鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉1991年〈リノベーション竣工〉2019年〈設計期間〉3ヶ月 〈工事期間〉2ヶ月〈設計・施工〉studio m+

※この記事はLiVES Vol.109に掲載されたものを転載しています。
※LiVESは、オンライン書店にてご購入いただけます。amazonで【LiVES】の購入を希望される方は

関連する記事を見る
不動産お役立ち記事・ツールTOPへ戻る