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リノベーションマンション事例「古今東西のアイテムが不思議な調和を見せる旅するインテリア」

雑誌「LiVES」に掲載されたリノベーションマンションから、今回は、大阪府大阪市の向條さんご家族の事例をご紹介します。ネイビーの大きな箱に、アジア・ヨーロッパ・アメリカのヴィンテージ…。異文化とクリエイター夫婦の好みが濃密に交わる、活気あふれる家。(text_ Akane Kitaura photograph_ Takashi Daibo)

築42年のマンションをリノベーションした向條さんの住まい は、自転車で通勤できる交通至便の好立地。大阪市内の中心部にありながら、正面に高いビルがなく、窓の向こうには空と街の景色が広がる。物件見学に訪れた時点ですでにスケルトンの状態で、この開放感をそのまま残せたらと個室をつくらず、空間の大部分をワンルームとして使うことにした。

「間仕切り壁がないことに加えて、白を使わないこともテーマでした。日本の家を見た外国人が『清潔感はあるが、病院のよう』と評するのを聞いて、ものすごく共感したんです。白をまったく使わない家って、どんな風になるのかな? そんな興味もありました」(ご主人)

リビングはアカシアの無垢フローリング。床を上げた分、天井も少し高くしてゾーニング。ファン付きの照明が引き立つよう、埋め込みのLED照明を周囲に配した。

LDKとワークスペース、ベッドスペースをまとめたワンルームの壁面は、コンクリートの躯体現し、濃茶に着色した構造用合板、ラフな足場板、ネイビーのクロスで構成。「新しすぎるもの、画一的なものは好きじゃない」という夫妻からのリクエストで、床は仕上げ材を剥がした際の接着剤跡もあえて残したままに。天井はネイビー一色で統一した。

アメリカンヴィンテージ(左)と北欧デザイン(右)の照明が同居するワークスペース。ニトリで購入したデスクはDIYでアイアン塗料を塗り、やすりがけして仕上げた。

鉄の机やワゴンにグリーンを載せて、ベッドルームの間仕切り代わりに。天井にはハンギングレールやカーテンレールとして使えるようにガス管を配した。

「ネイビーをベースに、ターコイズとマットな赤を指し色にするアイデアは、トルコで買った手描きタイルからの着想。まさか自分が家を持つとは思っていなかったけど、『いつか使うかも』と大切にしていたタイルをキッチンのポイントに取り入れました」(奥さま)

ダイニングテーブルは「赤紫の独特の色味に魅せられた」というパープルハート材の天板と鉄脚で造作。個性豊かな表情を楽しめる素材は向條さんらしいチョイスだ。
水まわりは玄関前に集約。廊下もネイビーを基調色として、ターコイズの塩ビタイルと壁面の赤を差し色にした。リビングドアのガラスも同じ色使いで造作したもの。

トルコだけでなく、タイ、インドネシア、スリランカ、イタリア、中国、韓国、台湾、それにご主人が仕事で出掛けるアメリカからやって来た家具や調度品の数々。海外で購入したものに加えて、ネットオークションで手に入れたものも多い。夫妻それぞれが惚れ込んだものを持ち寄って、気が付けば異文化が溶け合うミックス空間に。しかし、ここに至るまでには、ちょっとした苦労もあったと振り返る奥さま。

「イタリアのアンティークキャビネットを食器棚として使っています。これが見つかるまでの数年間は、食器棚なしの暮らしで不便でした。だけど、好きでもないものを間に合わせで置くのは違うなと」

リビングに造作した書棚にはデザインのアイデアソースとなる美術書がぎっしり。合板の棚板は防虫・防腐効果のある柿渋でDIY 塗装。古書が多いため、機能面でも重宝。
左・NYのアートコンペティションで入選した奥さまの作品も、そのままオブジェに。/右・脱衣室の暖簾は特注の家紋入り。木格子のパーティションが和の趣を添える。

向條邸は国籍や時代、ジャンルを超えて、まさにボーダレス。「アジアンテイスト」や「インダストリアル風」、「ミッドセンチュリーぽい」などと、訪ねてきた友人たちから違った表現をされるのも楽しいのだそう。

「○○テイストとか、○○風と決めてしまうと息苦しくなるし、飽きてしまうこともある。外しがあることで、生活感とうまく馴染ませることができると思います」(ご主人)

家中の隅々まで、目からウロコのアイデアが満載。多種多様な質感と、さまざまな文化的背景を持つアイテムが混ざり合い、見る角度ごとに印象が変わる住まいだ。

バリのお面とタイのネックレスを組み合わせて壁面の飾りに。

中世ヨーロッパの様式美を踏襲するご主人作のジュエリー。

成長とともに個性的な形に変化する植物も住まいを彩る。

【CREATOR’S TIPS】

好きなものだけ詰め込んだ縦横無尽のMIXテイスト

テイスト違いでも、無関係のもの同士でも、自由に組み合わせると新しい世界が生まれる。ただし、心に響かないものはいっさい排除。

[左上]/洗面カウンターはアフリカ産一枚板、ボウルは信楽焼、スツールはトルコの布に張り替えたもの。どんなルーツのものも自在にMIX。
[右上]/キッチンのワンポイントに取り入れた手描きタイルから家全体のカラーイメージを決定。「オリエンタルボヘミアンが好き」と奥さま。

[中央左]/鉄製キャビネットにはバリの木彫りの置物やタイで買った孔雀のうちわ、友人の絵などが。すべてが不思議な調和を生み出している。
[中央右]/床面積が広いから敷物選びは大切。中近東のオールドギャッベはライオンや鹿のモチーフが圧倒的に多い中で、孔雀の柄は珍しい。

[左下]/トイレは赤×黒でコーディネート。アクセントウォールには大胆な模様の輸入クロスを採用。居室でないところにも遊び心を。
[右下]/イタリアのヴィンテージワゴン。家にあるものは1点ものが多く、リサイクルショップの「ガーランド」で購入することも多い。

建物データ

〈専有面積〉73.45㎡〈バルコニー面積〉9.10㎡〈主要構造〉鉄骨鉄筋コンクリート造〈既存建物竣工〉1977年〈リノベーション竣工〉2015年〈設計期間〉2ヶ月 〈工事期間〉2ヶ月〈設計・施工〉アートアンドクラフト

●ジュエリー職人/グラフィックデザイナー・アーティストの家 施主プロフィール
夫はシルバーアクセサリーブランド「LEATHERS AND TREASURES」のクラフトマン。
妻はフリーランスのグラフィックデザイナー・アーティストで、海外のオンライン画廊で作品を展示販売。2歳の長男との3人暮らし。

※この記事はLiVES Vol.108に掲載されたものを転載しています。
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