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団信の特約は本当に必要?つけるべきか、つけないべきかを徹底解説!

住宅ローンを組む際、団体信用生命保険(以降、団信)の特約を付けるべきかで悩む方は多いのではないでしょうか。特約を付けることで、がんや重大疾病などのリスクに備えられます。しかし、その分金利が上乗せされ、返済額も増加します。一方、特約を付けない場合は、コストを抑えられるものの、万が一の時にリスクを抱えてしまうケースも。本記事では、団信の特約を付けるべきか、付けないべきかを詳しく解説します。

団体信用生命保険(団信)とは

団体信用生命保険とは何かを解説します
団体信用生命保険とは何かを解説します

団信は、住宅ローンの契約者が死亡したり、所定の高度障害状態になった場合に、保険金によってローンの残債が返済される仕組みの生命保険です。住宅ローンを利用する際には、この団信を契約することが一般的で、ローン返済中の予期せぬ事態にも備えられる点が特徴です。

団信の契約方法

団信は、住宅ローンの申し込みと同時に契約手続きを進めることが一般的です。金融機関からの案内にしたがって進めるため、初めて利用する方でも安心して契約できます。

なお、団信は住宅ローンを新たに借り入れるタイミングでのみ契約可能であり、ローンの返済が始まってからあと付けで加入することは原則できません。ただし、住宅ローンを別の金融機関へ借り換える場合は例外です。その際は、新たな団信を契約する必要があります。

団信契約時には健康状態の申告が必要

団信を契約する際は、契約者の健康状態を正確に申告することが求められます。持病や既往歴など、健康に関する情報を所定の書類に記入する必要があります。

申告の際には、現在の健康状態の事実をありのまま記載しなければなりません。最近ではインターネットを利用して住宅ローンを申し込むケースも増えており、団信の手続きや告知をオンライン上で完結できる場合もあります。

万が一、申告内容に虚偽や記載漏れがあった場合、保険金が支払われず、ローン残債が返済されないリスクがあるため、正確な記入が重要です。また、契約者の健康状態や借り入れる住宅ローンの金額によっては、申告書だけでなく、健康診断や人間ドックの結果提出が求められる場合もあるため注意しましょう。

団信の特約の主な種類と保障内容

団信の特約の主な種類と保障内容を解説します
団信の特約の主な種類と保障内容を解説します

団信で、基本の保障を提供するものは「一般団信」と呼ばれることが多いですが、特約を付加することで保障範囲を広げられるタイプもあります。団信の種類や保障内容は金融機関ごとに異なる場合があるため、以下で主な種類と特徴を紹介します。

一般団信

一般団信は、ローン契約者が死亡または所定の高度障害状態になった際に、住宅ローンの残債をカバーする基本的なタイプです。一般団信の費用は通常、住宅ローンの金利に含まれており、個別に保険料を支払う必要はありません。

ただし、「フラット35」の団信(新機構団体信用生命保険制度)では、保険料(特約料)が別途必要となる場合があります。一般団信の保障対象は、死亡および特定の高度障害状態に限定されていますが、基本的な安心を得るには十分な内容です。

がん保障付団信

がん保障付団信(がん団信)は、一般団信に加えて、がん(悪性新生物)と診断された場合にも保障が適用されるタイプです。死亡や高度障害状態に加え、がん診断が確定した際に住宅ローン残債の全額または一部が保障されます。

一部の金融機関では、がんの診断や治療に対して一時金を支払う仕組みを設けている場合もあります。

契約時には、住宅ローンの金利に0.1%〜0.2%程度の上乗せが一般的。ただし、保険の責任開始日(※)前後90日以内に診断されたがんや、金融機関が指定する特定のがんなどは保障対象外となる場合があります。

※責任開始日とは、契約が承諾され保険の効力が発生する日を指します

疾病保障付き団信

疾病保障付き団信とは、一般団信に加え、がんや3大疾病などの病気に関する保障を追加したタイプの団信です。住宅ローンは長期間にわたり返済を続ける必要があるため、その間に死亡以外の病気やケガで返済が困難になるリスクも考慮しておかなければなりません。疾病保障付き団信の種類は金融機関によって異なるものの、具体的には以下が挙げられます。

  • がん団信
  • 3大疾病保障付団信
  • 8大疾病保障付団信
  • 11疾病保障付団信
  • 全疾病保障付団信

上記の疾病保障付き団信に加入する際には、契約者の年齢や返済完了時点での年齢に制限が設けられている場合が多いです。

例えば、加入可能な年齢が40歳以下または50歳以下、さらに返済完了時の年齢が76歳未満など。

金融機関ごとに異なる基準が適用されているので、事前に確認しておきましょう。

また、疾病保障を追加する場合には、保険料が別途必要となることも多いです。保険料の支払い方法は、住宅ローンの金利に上乗せする形が主流ですが、特約料を別途支払う形式を採用しているケースもあります。基本的に、年0.1~0.3%程度の金利が上乗せされます。

ワイド団信

ワイド団信は、健康状態の問題で一般の団信を契約できない方のために、引受条件が緩和された団信です。申告項目が少ないため、持病や既往歴があっても加入できる可能性があります。ただし、一般の団信と比較して保険料が割高になることが多く、金利が0.3%程度上乗せされるケースが一般的です。

3大疾病と介護を組み合わせた保障

この特約は、3大疾病に加え、ケガや病気による要介護状態も保障の対象となるものです。具体的には、公的介護保険制度で定められた所定の要介護状態に該当した場合に、住宅ローンの残債が支払われます。

保障を受けるための要介護状態の基準や、保障範囲の詳細は金融機関によって異なります。そのため、契約の際には特約内容をしっかりと確認しておきましょう。

住宅ローンの団信に特約をつけるメリット

住宅ローンの団信に特約を付けるメリットを解説します
住宅ローンの団信に特約を付けるメリットを解説します

住宅ローンの団信に特約を加えることで、契約者やその家族にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、特約を付けた場合のメリットを詳しく解説します。

保障範囲が広がり安心感が得られる

標準的な団信では、契約者が死亡した場合や所定の高度障害状態になった場合のみが保障対象となります。そのため、がんや心疾患などの病気を発症しても、通常の団信では保障を受けられません。しかし、団信に特約を追加することで、病気に対する保障範囲を拡大できます。

例えば、特約の条件を満たすことで、住宅ローンの残債が一部または全額免除されるため、契約者だけでなく家族も経済的な安心感を得られるでしょう。病気やケガなど予期せぬ事態に備えられることは、長期にわたるローン返済を計画するうえで大きな安心材料となるでしょう。

万一の事態でも家族に経済的負担をかけない

団信に特約を加える大きなメリットは、契約者が所定の病気を発症したり、要介護状態になったりした場合でも住宅ローンの残債が免除されることです。例えば、がんや心疾患のような3大疾病に罹患した場合、治療費が高額になるだけでなく、治療期間が長引く可能性もあります。

さらに、病状によっては仕事が継続できず、収入減少によりローン返済が難しくなるケースも考えられるでしょう。

こうした状況下で特約による保障があれば、家族が住居を手放すことなく生活を続けられます。万が一の時でも、家族の住まいを守れる点が大きなメリットです。

保険料が割安で手厚い保障を受けられる

医療保険や生命保険では、年齢が高くなるにつれて保険料が上昇することが一般的です。一方、団信の特約では、住宅ローンの借入額に基づいて保険料が計算されるため、契約者の年齢が上がっても保険料が著しく高くなることはありません。

そのため、年齢が上がるほどリスクが増加する病気に対しても、比較的割安な保険料で手厚い保障を受けられる点がメリットです。高齢までローンを返済する計画を立てている方には、保険料の負担を抑えつつリスクに備えられる特約は特におすすめです。

住宅ローンの団信に特約をつけるデメリット

住宅ローンの団信に特約を付けるデメリットを解説します
住宅ローンの団信に特約を付けるデメリットを解説します

団信に特約を追加することで多くのメリットが得られる一方で、いくつかのデメリットも存在します。ここでは、特約を付けるデメリットを解説します。

保障を受けるための条件が厳しい場合がある

特約による保障を受けるためには、所定の条件を満たす必要があります。例えば、病気による就業不能状態が一定期間以上継続していること、もしくは症状が所定の基準を満たしていることが求められる場合も。

金融機関によって条件は異なるため、特約の保障内容や適用条件を事前に詳しく確認しておくことが重要です。また、条件を満たさなかった場合には保障を受けられない可能性があるので注意しましょう。

金利が上乗せされる場合がある

特約を追加することで、保障対象が通常の団信よりも広がりますが、その分、住宅ローンの金利に上乗せされる場合があります。金利が上乗せされると毎月の返済額が増える可能性があるため、注意が必要です。

特約付き団信の金利と通常の団信の金利を比較し、返済計画を綿密にシミュレーションしましょう。無理のない返済計画が可能な範囲であれば、特約の追加を検討することをおすすめします。

途中解約が難しい場合がある

団信の特約は、基本的に住宅ローンを完済するまで解約できません。仮に、家計の状況が悪化した場合でも特約のみを解除することは難しく、特約を解約するためには住宅ローン自体を借り換える必要がある場合が多いです。

ただし、解約に関する規定は金融機関によって異なるため、契約時に詳細を確認し、将来的な家計の変化に備えることが大切です。

住宅ローンの団信に特約をつける際の注意点

住宅ローンの団信に特約を付ける際の注意点を解説します
住宅ローンの団信に特約を付ける際の注意点を解説します

住宅ローンに付帯される団信は、金融機関によって保障内容や特約の種類が異なるため、契約を検討する際には比較が重要です。特に特約の有無は、慎重に判断しなければなりません。

団信に特約を付けるかの判断は、契約者自身のライフプランや健康状態に大きく影響されます。

注意すべきは、団信の特約を追加できるタイミング。団信に特約をつけられるのは、原則として住宅ローン契約時のみであり、ローン返済が始まったあとに保障内容を追加することはできません。

そのため、契約時には金利だけに目を向けるのではなく、団信の保障内容も慎重に検討する必要があります。「あとからつけておけばよかった」と後悔しないためにも、しっかり時間をかけて検討しましょう。

団信に特約をつける場合に返済額はどれくらい増えるのか

団信の特約を付けると返済額はどれくらい増えるのかを解説します
団信の特約を付けると返済額はどれくらい増えるのかを解説します

住宅ローンに団信の特約を付けると、病気やケガへの保障が拡大される一方で、金利が上乗せされるため返済額が増加します。では、具体的にどの程度影響が出るのかを見てみましょう。

以下では、保障内容別の上乗せ金利とそのシミュレーション結果を詳しく解説します。

特約をつける場合の上乗せ金利の目安

団信の特約を追加すると、金利は0.1〜0.4%程度上昇します。金利の上昇幅は、特約の種類や保障範囲によって異なります。以下で代表的な特約ごとの金利上昇幅を見ていきましょう。

  • 8大疾病保障特約:0.3%~0.4%
  • 3大疾病保障特約:0.2%~0.3%
  • がん保障特約:0.1%~0.2%

上記を見ると、保障範囲が広がるほど金利が高くなる傾向にあることがわかります。

上乗せ金利の影響をシミュレーションで確認

金利が上乗せされると、毎月の返済額や総返済額はどう変化するのでしょうか?

以下のケースをもとに、上乗せ金利0.1%、0.2%、0.4%がどのように影響するのかを試算してみます。

<ケース1>

  • 借入額:3,000万円
  • 基本金利:年0.5%(全期間固定)
  • 借入期間:35年
  • 返済方式:元利均等方式
上乗せ金利 月々の返済額 総返済額
上乗せ金利なし 7万7,875円 3,270万7,560円
0.1% 7万9,208円 3,326万7,429円
0.2% 8万556円 3,383万3,403円
0.4% 8万3,294円 3,498万3,630円

<ケース2>

  • 借入額:4,000万円
  • 基本金利:年0.5%(全期間固定)
  • 借入期間:35年
  • 返済方式:元利均等方式
上乗せ金利 月々の返済額 総返済額
上乗せ金利なし 10万3,834円 4,361万126円
0.1% 10万5,611円 4,435万6,642円
0.2% 10万7,408円 4,511万1,275円
0.4% 11万1,059円 4,664万4,881円

上記の試算結果から、金利が0.1%上がるごとに月々の返済額は約1,300円~2,000円増加することがわかります。長期間のローンでは、こうしたわずかな差でも総返済額に大きな影響を与えます。

団信の特約をつけることをおすすめする人・おすすめしない人

団信の特約をつけることをおすすめする人とおすすめしない人を解説します
団信の特約をつけることをおすすめする人とおすすめしない人を解説します

これまで特約を付けるメリットやデメリットを見てきました。これを踏まえ、住宅ローンの団信特約を付けることをおすすめする人、しない人をそれぞれ解説します。

団信の特約を付けることをおすすめする人

以下の条件に当てはまる方は、特約を検討することをおすすめします。

  • 病気のリスクに備えたい方
  • がん家族歴がある方(親や兄弟など第一親などががんを患ったことがある場合)
  • 生命保険に未加入、もしくは死亡保障しか付けていない方
  • ローン債務者に万が一のことがあった場合、家族が返済に困る可能性がある方

特に、長期間にわたる住宅ローン返済中の病気のリスクに備えたい場合は、手厚い保障が受けられる特約を検討したほうがよいでしょう。

団信の特約を付けることをおすすめしない人

一方で、以下のような方は特約を付けない選択肢を考えてもよいでしょう。

  • 住宅ローンを借りる必要がないほど資産が十分ある方
  • 借入額が少額の方

特約の主な役割は、返済不能リスクへの備えです。そのため、資産や収入に余裕があり、病気が発生しても返済が困難になる心配がない場合は、特約を付けずにコストを抑えることも合理的な判断でしょう。

まとめ

団信の特約を追加することで、通常の保障内容よりも幅広いサポートが受けられる可能性があります。ただし、特約の有無を決める際には、がんや重大疾病が発生した場合の収入への影響を具体的に想定することが大切です。

住宅ローンを選ぶ際は、金利の条件だけに目を向けるのではなく、団信の保障内容や特約の詳細を含めて比較することで、自分に最適な選択ができるでしょう。

民辻 伸也

執筆者

民辻 伸也

宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能

大学を卒業し、投資用不動産会社に4年勤務後、選択肢を広げて一人ひとりに合わせた資産形成をおこなうため、転職。プロバイダー企業と取引し、お客様が安心感を持って投資できる環境づくりに注力。不動産の仕入れや銀行対応もおこなっている。プライベートでも、自ら始めた不動産投資でマンション管理組合の理事長に立候補。お客様を徹底的にサポートできるよう、すべての経験をコンサルティングに活かしている。
株式会社クレア・ライフ・パートナーズ

ライフマネー研究所
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